【Limbus_Company】自囚人と創作キャラの創作物まとめ 作:彩花@clover
おそらく前中後編に分かれると思います。
後、マリアさんとリチョウさん(敦君)が出ているのでそちらも含めて読むとそれなりにわかりやすいかもしれないです。
マリアとリチョウ達の件が終わって少し経ってから次の目的地に向かうことになった。
ただ、そこに行くために一度寄り道をするとのことでバスはとある場所へと向かった。
そこは何度も行ったことのある場所であった。
そう、そこはマリアの研究所…正確にはLCCA居住区兼研究所だった。そして扉の前にはマリア。
マリアは負担は持っていないであろう少し大きな箱をもっていた。
「あら、マリア?」
「どうも、色々あって同行させてもらいます。」
マリアがこんなふうにバスに乗っていること自体があまりないことで、そう考えると少し不思議ではある。
それにしても本来ならガラハドがついてくるのではと少し思ったが、
要件がある場所がガラハドとの相性が悪いので連れていけないということで断念してもらった。
普段通りの世話をお願いして今回このように出てきたという訳らしい。
「私はいつも通りに。」
マリアはヴェルギリウスの席の後ろにバスの面々を見られるように席が設置されているのでそこに。
席としては運転席にカロン。その後ろに私ことダンテ。その後ろにグレゴール。これらは一人席だ。
その後ろは三人席になっており、シンクレア、ドンキホーテ、イサンの順番に横並びで座っている。
次は二人席が3つほどあり最初の部分にファウストとホンル。その後ろに良秀。
で左側の方…運転席とは逆の助手席の方にヴェルギリウス。その後ろにマリア。
で一人席が3つほど続いて、ロージャ、炳吾、ウーティス。の順番に座っている。その後ろは二人席になっておりそれも3つほどあった。
イシュメールとムルソー、その後ろにヒースクリフ、その後ろにリチョウという感じで座っている。
バスはとある場所へと向かっていく。
とある巣ではある様子だ。今回も普通に陸路でとてもいつも通りだ。
少し長いとは思うがその程度だ。そういえばマリアが同行するというのでロージャが嬉しそうに話しかけた。
そういえば、この二人お付き合いをしてるんだったね…。
普段表情の変わらないマリアも少し表情の変化があるように見える。
「そういえば、マリアはこれからどこに行くのか知ってる感じなの?」
「…えぇ、まぁ。」
「言えない感じ?」
「そうですね…ファウストさんの判断次第ですかね…。」
そう行って判断を仰いだ。まぁおそらくそういうということは言えないだろうなとは思っている様子だ。
道すがら誰かがわかるだろうと思っているフシはある。
何日間か移動をしていると少しずつ口数が減っている囚人がいるとに気がついた。
明らかに巣の境界線を超えて今度はどこに行くんだろうなと聞いてくるだろう人物がいたのだが、それがない。
炳吾だ。
彼は興味があるからなのか色々聞いている。だけど今日は何も言わない。
どうやらそろそろ彼に聞けば場所がわかりそうだ。ただ、今聞くのはどうだとは思ってしまうが。
「これから赴くのはM社ですね。」
「へぇ、M社ねぇ。もう結構近い感じ?」
「おそらくは…。」
ファウストが言う。やっと目的地を言った。
ロージャは近いのかと聞く。マリアが目線を適当に合わせて言った。
誰かに合わせようとしたけど、どこにいるのかわからなかったのかもしれない。
彼女は人の顔が見えないのだから仕方がないことではあるのだが。
ロージャの顔だけは認識できる様子である。というか一応私の顔も認識はできているらしい。
人の顔じゃないから問題なく認識はできるという。
「…炳吾、さん。」
「…なんだ?」
「あ…えっと、その…。」
「…あー。気を使わせたか。」
シンクレアが不安そうに炳吾に声をかけた。確かにシンクレアの位置からだったらよく見えるだろう。
私も炳吾の方を見る。外を見てぼーっとしているようにも見えるし普段は持っていない本を手に持っていた。
その題名に【女生徒】と書かれていた。作家名には【太宰治】と書かれているのが見える。
「あれ?珍しい、普段ならあのへん何があるんだ~とかいうのに。」
「もしかしなくても、だろ。」
「……あぁ、俺の番だな。」
「意外と、冷静ですね。」
「……そりゃ、あそこについたら俺を恨んでいるであろう人達が来るだろうからな。今のうちに冷静になっておきてぇんだよ。」
ロージャがいつもの炳吾を少し茶化すように真似をする。ヒースクリフがその後、察して言う。
まぁロージャも気がついてはいた様子だが、わざとの様子だった可能性もあるが。
それにしても意外と冷静だ。…いや、冷静になるために努めようとしている可能性はあるが。
イシュメールが言うのはてっきり大騒ぎされると思っていたんだろう。まぁ声もそれなりに通る声だしわからなくはないのだけど。
恨んでる。炳吾はそういった。彼を恨んでいる人がそこにいるのだろうか。
…いや、囚人たち…おそらく私も含めて何かしらをしてこうなってしまったのだから、何があっても不思議はない。
でも、冷静にならないといけない理由は思いつかない。
マリアもファウストも何かを知っている様子だったが黙った。
バスは目的地に到着する。
正確には目的地よりも少し前、の様子だが。そこはどこか荒廃している場所にも思えた。裏路地かと思ったがどうやら違うらしい。
「…全員下車。」
「私が依頼しているフィクサーがいます。その彼と合流しましょう。」
ヴェルギリウスが言う。その後マリアが依頼をしているフィクサーと言った。すでにマリアは先に降りていた。
私も一番最後に降りる。マリアが場所を一応把握しているらしく先頭に立ってくれたドンキホーテに対して説明をしながら向かう。
目的地についた様子でそこには紺色の髪のショートヘア緑のきれいな瞳の青年がそこにいた。
濃い緑のジャケットに黒のインナーをきている。身長はヒースクリフよりは大きいくらいだろうか。
靴で身長を持っているわけではなさそうであるが。
炳吾はその姿を見て少し止まる。青年はこちらを見たときにお辞儀をした。少し驚いた様子でもあったが。
「本当に無事で良かった。炳吾。いなくなったと聞いたときはどうしたものかと。」
「……思ってねぇくせに。」
「思ってるさ。」
「お前は…!津島が一番だろうが!あいつを……一番、おまえが、俺のことを恨んで…!」
「違う。俺はあれをお前のせいだなんて思っていない。」
炳吾に近づいた青年は本当に心配している様子だった。だけどそれを信用しないというか、珍しく人のことをしっかりと見れないといった様子だった。
おかしい、炳吾は意外と人を見る目はある。はずだ。距離感の取り方がうまいというか、人の顔を見てどんなふうに行動するかを理解できる人のはずだ。
…いいや、違う。この炳吾の言葉は俺を許さないでくれと言ったいるように思える。
だけど、眼の前の青年は彼と、炳吾を許している。お前は被害者だと言わんばかりだ。
その言葉は炳吾には届いていない。炳吾がその言葉に対して耳を塞いでいると言っても過言ではない。
マリアはこのままでは埒が明かないと言わんばかりに無理やり話を進める。
「とりあえず、炳吾さん落ち着いてください。…彼は檀一雄さん。このあたりに住んでいるフィクサーです。」
「っと、はじめまして、リンバスカンパニーの皆さん。今回案内させてもらいます。壇一雄と言います。壇と呼んでください。」
マリアが青年…壇のことを紹介した。顔が見えないのによくわかったなとは思ったが。
事前に色々やり取りはしていたのだろう。おそらくファウストも彼がここに来ることは知っていたのだろうか。
しかし前にもフィクサーに依頼をしたことはあったがあれは初回限定と言っていた。
今回はマリアが個人で依頼したらしい。
今回の幻想体について知っていることがあるということでマリアが呼んだのもあるらしい。
前述しているけれども、護衛ならガラハドと思っていたのだが、色々とタイミングが悪いということでやめたらしい。
旧L社支部付近まで案内ができるというので個人で雇ったということだった。
炳吾と知り合いであるのは知っているのかという問に関しては一応はと答えてくれた。
「……とりあえず目的地までいきましょうか。」
「あぁ…。」
マリアが先導するように告げる。炳吾はすでに軽く疲弊を感じる。
私はどうするべきなのだろうか。彼に言葉をかけるのは間違っている気がする。
少し話すべきかとは思ったが、違う。おそらくこれは下手に言葉をかけると悪化するというのがわかった。
普段の彼はとてもじゃないがこんなふうになるような人ではないと思っている。
もしかしたら私が見えないところで精神的な疲弊でどうにもならない様子なのもあるのかもしれないが。
その背中にはどこか憔悴しているようにも見える。そこには何があるのだろうか。
「ずっと、思っていたんですけども。」
その場所へと向かっている最中リチョウが声をあげた。
数名何事かと思ってちらっと見る。確証は無いがあっているはずだと言わんばかりである。
シンクレアが気になって言葉を言い放つ。
「どうしたんですか?先生…。」
「いえ、先程なんですけども。炳吾さん"津島"とおっしゃいましたよね?」
「……どうだったかな。」
「……もしかして、あの太宰治先生とお知り合いなんですか?」
"太宰治"とリチョウははっきりと言った。そしてその言葉に壇と炳吾は少しだけ反応する。
壇はどこか嬉しそうに反応をしていた。炳吾は決してリチョウの方を見ないで前を向いて歩いていた。
そういえば、リチョウは本に詳しいが当人の本も原稿が部屋に残っていてエンサンが"中島敦"の名前で勝手に出しているらしく本が存在する。
その本を見かけたとき当人は顔を真赤にして恥ずかしがっていた。
というかその本がマリアの研究所にあったらしくそのときに発見したらしい。
なぜあるのかというと、勝手に印刷して本を作った当人が届けにきたらしい。
名前からしてエンサンの策略というか敦への仕返しのようにも思えるが、その点に関しては何も言わないでおいた。
まぁ今回はこの話はおいておこう。
「あんた、太宰治を知ってるのか!?」
「え、えぇ、私は鏡花先生のファンですが…本であればだいたい読んでいるので…。」
「そうかそうか!…なら織田作之助や坂口安吾も読んだか?」
「はい、読みましたよ。素晴らしい作家達ですよね。」
壇は嬉しそうだった。
どうやら彼らのファンなのだろうか。先程小さく反応を示していた炳吾は先程から何も言わないで黙っていた。
どこか気になる様子ではあるように思えるが、だけども見ないようにしているという感じだろうか。
私は彼の様子を見ているが、今このことを追求しても何も知らないと返ってくるだろうから何も言えなかった。
仕事の邪魔をしているわけではない。それにおそらく答えは何も帰ってこない。
言葉のかけ時は間違えたくはない。
「彼らのいづれの本や恋しき?(彼らのどの本が好きなのか?)」
「はい…太宰治さんだったら、【葉桜と魔笛】で…織田作之助さんだったら【夫婦善哉】で…坂口安吾さんだったら【夜長姫と耳男】ですかね。」
「お、人気どころから通なものまで…!」
「ありがとうございます。」
壇とイサンとリチョウとで話が意外と盛り上げっている。
ただ、読書に縁がない面々はなんのことやらという目を送っている。
あったとしても黙ってみている様子である。
特にマリアなんておそらく全部読んでいるであろうに話に入らないのはわざとだろうか。
シンクレアとドンキホーテは気になる様子でどんな内容なのかと少し思案していた。
壇が案内を続ける。そこには深めの森があった。ただそこは緑の森でも私が最初に見た黒い森でもない。
美しいほどの薄桃色の花が咲き誇っている森だ。それは桜だと言ったか。
あまりにも美しいと思える。ここまできれいに咲き誇るのは珍しいものだろうか。
だけどここが旧L社の支部なのだろうか。
本当に?と思ったが地下への入り口らしいものは見えない。基本的に旧L社支部は地下に沈んでしまっているはずだ。
なのにどうしてここに案内されたのだろうか。
そして、その美しい花を見て炳吾は顔を青ざめていた。
「…お前じゃないといけなんだ、炳吾。」
「わかってる。…わかってるんだ。」
手が小さく震えているのが見える。
それを無理やり抑え込もうとしているのも見える。旧L社支部に乗り込むためにこれをどうにかしなければいけないのだろうかと思っていると。
マリアが少しだけ話をしてくれた。
「私の情報が確かなら黄金の枝は外に出ており、今この桜の中心にあると思われます。」
<え…!?でも、私はまだ感じて…?>
「それはおそらく、すでに使用されいるからでしょう。感知がしにくい状態になっているからダンテがわかりにくいと思っているだけです。」
<そ、そんなこともあるのか…。>
私は驚愕した。確かに黄金の枝はある気配がするがそんなに近くにあるとは思っていない。
地下にあるからだと思っていた。だけどこの桜の中心部にあるという。
そんな馬鹿なと思ったが、ある程度の事情を知っているマリアとファウストが言うのだからこれは事実であろう。
そして、炳吾はその言葉にもっと唇を噛み締めて目をそむけた。
私は今言葉をかけなければと思った。彼が何を抱いているのか知りたかったからと言ってしまえば好奇心にもなってしまうが。
<……炳吾。>
「お説教か、ダンテ。」
<…違うよ。君はあの木に…桜、だったかな。それに何を抱いているんだい?>
「………孤独、だ。」
少しの無言があった後にかなり小さな声で言われた。ポツリと独り言のように言った。孤独だと。
「…どうしようもない、孤独に襲われる。あの中に入らないといけないものわかってる。…俺じゃないといけないのも、理解はしてる。」
だが、足がすくんでしまう。俺は、臆病で強がりで、弱虫だから。
そう、炳吾は言った。私は頑張れとは言えなかった。それは炳吾に無理を強いることでもあった。
きっと正しいのはそれなんだろうけど、私は管理人として彼の決意を待ちたいと思った。
決意を抱かせたいと思った。だけど私は彼に対してなにか言葉をかけてやることができなかった。
不甲斐なさを感じる。
「だけど、お前があの二人をあそこから出してくてるんだろう。」
壇が少し厳しい口調でそういった。炳吾は黙ってしまう。
沈黙がその場を襲う。どうにもできない沈黙だった。
ふと、そこでその沈黙を破った声があった。イサンの声だ。
「ひしと気を持ちて、……炳吾くんが朋を助けまほしくば進むべしと思ふ。(しっかりと気を持って、炳吾くんが朋を助けたいのであれば進むしかないと思う。)」
どこか声に重みを感じた。その重みを炳吾も感じているのだろうか。
その言葉にしっかりと答えた。
「……たすけて、やりてぇさ。」
「だったら、やることは決まってるじゃないの。」
「…………わりぃ。」
そう言って、ロージャが目の前の桜を見据える。炳吾は足を叩く。自分に喝を入れているみたいだ。
桃色の花…桜の森に向かって歩く。先陣を切るのは炳吾だった。
全員で入るとそこで桜が舞っており、周りにいた囚人やマリア達はどこかにいなくなってしまった。
いないはずいないはず…。