【Limbus_Company】自囚人と創作キャラの創作物まとめ 作:彩花@clover
次の部屋に向かった。勿論マリアが先頭に立ってその鏡に映った。
だけどその鏡には何も映らない。
可笑しいなと思ってマリアはもっと近づく。偶然後ろにいたガラハドが映ってしまった。
それを見てマリアは急いで鏡を壊した。
ガシャーンと大きな音を立てて壊れてしまったのでかなり驚かれた。
「マリアさん!?」
「あ…すみません、少し驚きまして。」
「マリアが?めっずらしい~。」
「人の事を何だと思っているんですか。」
(成程、既に発動してしまっているから対象者しか写さない。……精神を壊すなら確かに最適解か。)
マリアは少し文句のありそうな顔でいう。目の前の鏡は割れてしまっている。だが、私からはちらっと見えてしまった。
そこにはガラハドが写りこんでいると。それを見えないようにするためにマリアは鏡を割ったのだろう。
少し考えてマリアはとあるものを手渡した。
「ガラハドさん。」
「!は、はい…!?」
「これを。いつもあなたの枕に入れてと言っているモノです。少しは落ち着くでしょう。」
「……ありがとうございます。」
手のひらサイズの匂い袋の様子だ。どうやらかなりいいにおいでシンクレアもドンキホーテもいいにおいだと言っている。
近くに匂い袋を持って小さく呼吸をする。少しずつだが落ち着いてきたらしい。
鏡は元に戻って嫌がらせと言わんばかりにマリアの姿を映した。
そこには普段のマリアが居たけれど、何処も見えていない様子だ。
マリアはその姿を見て
「……あぁ、私ってこんな顔だったんですね。」
「え…?」
「いえ…それでは行きましょうか。あ、もう一度…。今度は解かして置きますね。」
マリアがぽつりとつぶやいた事はかなり衝撃的な事だったように思えた。
今彼女は自分の顔がこんなだったといった。
ロージャは少し驚いた声で一瞬言ったが、マリアはさらりと会話を切り上げて先へと進む。
彼女がずっと自身の顔が認識できなかったのだろうか。
その事を誰も深くは聞けなかった。マリアはそれが当たり前だとするなら当たり前ですけどとしかないのだろう。
鏡がまた現れる。そこには小さな少年が居た。茶色の瞳の少年だ。おそらくというかあの回想にいる少年だろう。
「なんで、お前が写ろうとするんだよ!!何にも心残りないだろ!?」
怒りの声がする。少年の顔もかなり怒っている表情だ。
マリアはそのままの表情でさらっと告げる。
「あぁ、あなたは喋られるタイプなんですね。」
「お前になんて何もないくせに!ただの人形の様に生きるだけの屍のくせに!復讐も諦めた貧弱者のくせに!」
「……ふふ。」
「!」
微かに笑っている。鏡に映るその顔が見える。無自覚なのかくすっと笑っている様にも見える。
あざ笑っている様にも見えなくもない。
「…あぁ、そうかもですね。あなたの言う通りです…でも、人形のように生きる屍は間違っていますよ。」
「はぁ!?」
少し息を吸って吐いて。マリアは答える。優しい笑みで答える。
鏡に映ったその顔は普段は見るような
「私には愛があるので。」
ガラハドは少しぴくっとした。どうしたというのか。
「~~~~~~!!!!お前嫌い!!ガラハドを離せよ!!」
「お断りします。あなた方と違って彼は人として生きようとしています。…私が彼を拘束しているわけではないので。」
少年の姿が消えてマリアは冷めた目をしている。そうだと気が付いたようにマリアがつげてる。
「ガラハドさん相手にはないですけどね。」
「すみ、ません……わかっているんです。はい。」
顔色は大分戻っていた。愛がある無いというのはどういう事だろうか。
それが何の違いがあるというのだろうが、と思っているとそれが読まれていたのか。
そのまま進む。また鏡に映る。セピア色の風景だ。
「ねぇ、ガラハド!僕たちは騎士と同じ名前をしてるんだよ!」
「騎士…?」
小さな子供三人で話をしている。先程も映った子供がそう答える。
騎士と同じ名前をしている。と言っていた。
そうなのかと私は感心していた。マリアは黙ってみていた。ガラハドもその鏡の映像にかじりつくように見て居た。
自分の記憶の欠片なのだから。
子供たちは座っていた。先ほどの映像から時間は経っている様子だ。
「そう、誰かを守るたり、国を作る王を守る存在!」
「…名前が同じだからってそんなになれる訳…。」
「なれるって!僕たち騎士に!」
ペルスヴァルと名乗っていた茶色の瞳の少年は立ち上がってそう言った。
だが、ガラハドの少年期とゴーヴァンと名乗っていた青い瞳の少年は顔を見合わせて首をひねる。
二人もなれるっていってよ~!っとペルスヴァルがいうが、ふたりは夢を見えない子供の様だった。
「第一なれるってどんな騎士になるんだ。」
「んーとね!ガラハドは大きな盾を持って皆を守る騎士!」
「盾…。」
「優しいから傷つけたくないって、思ってるんだと僕は信じてる。」
「でね、僕はね槍で全てを貫く騎士!」
「…なら俺は剣で周りを切り裂くさ。」
ペルスヴァルとゴーヴァンは自分のそれを決めて話した。
ガラハドは盾という言葉に少し嬉しそうだった。
心の声は聞こえないが、おそらく彼は誰も傷つけなくてもいいんだと思っているのだろうか。
この世界にはもったいないほどの優しい子供だったのだろう。
「…すごい…。」
「俺たちはガラハドが守って、俺たちが本当にヤバいときはガラハドが守ってね!」
「…確かに、それはよさそうだな。」
「ね?ガラハドも一緒に騎士になろう?」
そんな言葉が楽しそうに聞こえる。小さなガラハドは差し伸べられた手を握る。
そのガラハドは怪我もないとても穏やかそうな顔をしている。
今の怪我もあって少しいかつい顔とは違う様子だ。ガラハドは自分のそれに驚いている様子だ。
「俺は…、あいつらと、友達、なのか…?」
何も覚えていない。と前に言っていた。父親捨てられて研究施設に入れられたんだという事と、
その研究施設での事は覚えていないけれど、そこで改造を受けてあの前にもなった事のある化け物に成れるようになった。という。
だが、こんなにも温かな記憶はない。これは何だとガラハドは混乱している。
だけど、まるで、友達であったはずなんだと心が叫んでいるようにも見える。
それでも、思い出せない。
ガラハドは正しいという答えを得られないで叫んでいる様にも見える。そこに。
「そうだ、俺たちは友人だ。」
鏡から声がする。先ほど同じような声を聴いた。
冷静な声の方が聞こえるおそらくゴーヴァンと呼ばれていた方だと思う。
「だが、お前は忘れてしまった。理由はわかっている。だが、ペルスヴァルは理解が出来ないんだろうな。」
「お、まえ…は、ゴーヴァン…?」
「あぁ、そうだ。お前が見た鏡は忘れた記憶を元にしている。」
ゴーヴァンは鏡の中から出てこない。ガラハドはそれに対して疑問には思わない様子だ。
というか、ここはそういう場所なんだろう。
鏡の映像はセピアの記憶だ。ガラハドの記憶だ。
だけど、おかしい。ガラハドの記憶はない。なのにこの鏡は映し出す。
「この鏡の内容は真実だ。俺たちの着色はない。お前の記憶そのものだ。」
「ゴーヴァン…。」
「…ガラハド、お前にはここに戻ってきてほしくなかった。」
少し寂しそうな顔をしつつ、ガラハドの事を見る。ガラハドはそれに気が付いている様子だ。
鏡には自分たちの姿が映っていない事には気が付いているのかわからないけれど。
ゴーヴァンはガラハドを身を、心を本当に案じている様子だ。
ただ、鏡からわかる情報でしかないけれど。
「……ここに戻ってこないで、お前が誰かを守るためにいきているのならそれでいいと思っていた。」
「…俺は。」
「俺は、お前が誰かを守るために生きていると信じているから。…その盾はきっと本当にそうなったんだな。」
嬉しそうだ。かすかだが笑っている。ゴーヴァンは少しずつかすれている。
ガラハドはゴーヴァンに手を伸ばす。だけど届きはしない。だって手を伸ばしているのは鏡だから。
手を伸ばしても鏡にしか手が当たらない。人のぬくもりに触れられることはない。
「ペルスヴァルは、まだ王を待っている。」
王、その言葉に頭が痛むようにその場にしゃがみ込む。
その間にゴーヴァンは消える。マリアは近づこうとしたが、無理に立たせたくないと足を止めた様子だ。
先程の事もあってやめたのだろう。わかってはいるのだが、マリアは優しいから近づいて手を貸そうとする。
だけどそれを決して受け取らない。
だが、マリアは言葉をかける。
「大丈夫、ですか?ガラハドさん。」
「…マリアさん…。へ、平気です。すみません、何度も迷惑をかけて」
「いえ、ここが何なのか分かった時点でなんとなくこうなるのではないかと思ってしました。」
「……あぁ、マリアさんは俺の事を、ある程度…。」
「はい。でも、教えないように言われているので。」
ちらっとファウストの方を見る。だが、ファウストはいつもと変わらない表情で知らん顔だ。
マリアはすみませんと軽く謝る。ガラハドは一切気にしていない様子で、何とか立ち上がった。
マリアはリンバスカンパニー内でもそれなりに事情を知っている人らしく、ファウストと同じくらいの情報を持っているらしい。
だけどもそれを基本的には言う事はない。言論統制されているからとしか言いようがない。
普段も言葉はそれなりに選んでいるらしい。言ってもいい事に関してはボロボロいうが。
「ここ、ってなんですか?」
シンクレアがやっと言えるといった様子で聞いた。
マリアは抽象的なその質問に答えた。
ここが何なのかと言われれば研究所だとその一言で終わりだろう。
だけどシンクレアが聞きたい事は違うことくらいわかっている。
「……私が聞いている話では幻想体を人力で生み出すための研究施設だと伺っています。」
「げ、幻想体を!?」
「幻想体の成り立ちについては私の黄金の枝の時に皆さん見ていると思います。」
確かにマリアの黄金の枝を回収した時に確認している。
そうだ、そこにあった。幻想体はコギトと呼ばれるものを人に注入してなるものだ。
だけどここはその事が全然わからないまま生み出そうとしていた。
その為に裏路地から子供をひっとらえたり、売られた子供だったりで研究を続けていた。
マリアの研究所もこの近くにあった気がする。
「それなら、マリアもやって…あれ?」
「…誘いなら来てましたよ。」
「一人で研究してたよね?」
「えぇ、私はあの時は誰かと研究するつもりはなかったので。」
ロージャが確認するように聞く。
確かにそうだ。マリアも一人でやっていた。何なら一人でコギトにまでたどり着いた。
だけど、その為の物をするのに耐えられなくてやらなかった。釣瓶を作れないで諦めたのだ。
コギトの抽出はかなりの難易度があったし、幻想体なんてそうぽんぽんと作れないと。
それでどうするべきかと悩んでたところに例の事件が起こったという事だ。
ここがこんな風になったのはそれがうまく行かなかったから。
こんなに鏡だらけになっているのはその内の一人がとんでもない化け物になってこうなったらしい。
マリアも知っているだけではこれくらいだという。
「本当かよ。…どうせ言わねぇだけでまだ何か知ってるんじゃねぇのか。」
「おい、そんなわけ…。」
「いいんです、気にしないでください。」
ヒースクリフが嘘つけといった様子でいうが、ガラハドは文句を言う。
マリアは否定しない。実際かなりの事を言えないでいるのはおそらく事実だ。
黙っているのは反感を買うが、それはこの会社を指針じゃ従うしかない。
どんなふうに見られてもその二本の足でしっかりと立っている。
(俺は、いつもその姿に助けられている、そんな気がする。この人はやっぱり、俺にとっての神様だ。)