【Limbus_Company】自囚人と創作キャラの創作物まとめ   作:彩花@clover

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アニーさんのことをあんまり語らないのはこの章のせいです。


XX章【抱える不幸と見える幸福】前編

[幸福な家庭はすべて互いに似かよったものであり、不幸な家庭はどこもその不幸のおもむきが異なっているものである。]

 

引用:[アンナ・カレーニナ] 著[レフ・トルストイ]

 

私は愛を知らない。

ううん、私は知ってる。愛を。だけどもらった愛が本当に正しいものだったのか。

それを、証明するすべはない。だけどそれを嘘のものだというやつがいるのなら

 

――――――――私が、全部壊すから。

 

T社を抜ける。色が戻ってみんなも嬉しそうだ。ロージャは食欲が返ってくる~!と喜んでいるようにも思える。

炳吾も色が戻って割と満足そうにしている。中でも一番嬉しそうなのがアニーだった。

確かに入ってからも怒っていた。瞳の色がどうとかって怒っていたのを覚えている。

アニーは自分の美しさを大切にする子だからだろうけども、あそこまで怒るのかと思っていた。

 

「やっと戻ってきましたわ…!」

<そんなに気にすることなのかい?>

「えぇ、もちろんですのよ!色というのはその人の認識のためにも一役買っているのですわ!例えば、管理人さんなら、真っ赤ですわよね?」

<そ、そうだね…?>

「この赤い色は管理人さんと認識できる。色の認識というのは大切なことなのですわよ!」

<ご、ごめんよ…。>

「分かればいいのですわ!この瞳こそは、アニーだとわかってもらえるためのものですもの!なくされるなんて許しませんわ!」

 

ご立腹の様子だ。怒らせてしまった。アニーとの会話はいつも難しいと思えてしまう。

すぐに癇癪を起こす子供のようだと前に誰かが言っていたのを思い出す。

だけどもまだ理解のあるほうではある。間違ったことは謝れるのだから。

 

「そういえば次ってどこに行くの?」

「…次はH社です。」

 

だが、普段ならこの言葉で誰かしら反応するはずだが、誰も反応がない。

何故誰も反応がない。次は誰がというのがわからないのは困ってしまう。

私も心構えができるというのは少々意地が悪いとは思う。

目的地までのんびりと過ごすことにした。

数日間のバスの旅はちゃんと景色が変わればみんなもそこまで悪い気はしない。

T社は色々とあったけれどもそれでもなんとでも出来たのだから。今回もなんとかできるといいのだけれど。

ほとんど目的地についても誰も何も言わない。本当に誰なのかと思っていると、意外な人物から言葉がかかる。

 

「アニー。あなたが知っている場所のはずだが。」

「…私?……H社のことはよく知りませんわ。」

 

ヴェルギリウスがアニーに対して言った。だが、アニーは本当に知らないと言った様子で考えてものを言った。

首をかしげて知らないと言った様子だ。

だけど、言われたからにはそういうことなのだろう。何故アニーだと言われているのにピンと来ないのだろう。

…アニーは囚人と呼ばれるのをあまり良い顔をしない。…いやみんないい顔をしないのだが。

 

「ふと、思うのですけれども、黄金の枝に何故私が共鳴できるのかしら…。理由が検討もつきませんわ。」

「え…。」

「そりゃ…管理人の旦那と共鳴できるからだろ?」

「でも、その前に何かしらをやらかしたから、ともいえない?」

 

大体のバスの人間は大きなことをやらかしているか、大きな後悔をしている。

だけど、アニーはそれに覚えがないという。これにはシンクレアも後ろの方に座っているリチョウも驚いている。

確かに私と鎖で繋がれた囚人たちなら黄金の枝の場所が何となく分かるというが、アニーはそのへんはどうなのだろうか。

 

「大体私が何故罪人と呼ばれなければ行けないのか。全く存じ上げませんわ。」

「やっていることに気がついていないとかじゃなくて?」

「実は大きなことをやってるけど悪いと思ってないとかじゃなくて?」

「覚えはありませんわ。」

 

これは驚いた。アニーは何も知らないという。何故そうなっているのかも検討も何もつかないと。

イシュメールと炳吾もいうが、きっぱりと言われる。

後、大体はそこに住んでいたとかではないのだろうか、アニーはどこに住んでいたのとか覚えているのだろうか。

どんなところでどんな生活を送ってきたのか。それもわからないのだろうか。

そんなふうに考えているとヴェルギリウスは言った。

 

「資料によるとあなたはここで暮らしていたとある。」

「まぁ、それでしたら綺麗なお屋敷があるということですのね。」

「…。」

「それに、私を愛して下さらなかった人たちもいるということですのね。」

 

ヴェルギリウスの言った言葉に反応を示したアニー。その瞳は笑ってなど居なかった。

その瞳を見てしまったときゾッと背筋に寒気を感じた。

アニーの表情は豊かで怒ったところをほとんどみたことがない。

怒ったとしても頬を膨らませてそっぽをむくと言った可愛らしいものだった。

だけど今回のは違う。まるで、本来覗いては行けない深淵を覗いたときのような、みては行けないものをみたような感覚だった。

 

少しだけ経ってバスを降りるように指示があった。

バスを降りるとそこにはきれいな野原が広がっていた。翼の中でもかなり治安の良いところの様子だ。

バスの降りた近くには大きな邸宅があった。ワザリング・ハイツもそれなりの大きさだったが、ここもなかなかの大きさだ。

そしてそこに埋もれるように旧L社支部があるという。黄金の枝の気配は旧L社の方からすると認識できた。

 

「あの邸宅とても大きいですね…。」

「あぁ、シンクレアの家のとか…ワザリング・ハイツくらいの大きさでもあるのか。」

「お金持ちのお家に今回もお邪魔するの~ちょっといやだなぁ…。」

<いいや、今回は旧L社の方からみたいだ。>

「それは良かったわ~。」

 

リチョウと炳吾が話している。二人は巣で過ごしていた経験があるからか割とあぁいう邸宅をみても割と普通だ。

ロージャは前回のワザリング・ハイツのせいであまりいい顔をしていない。

だけども今回は旧L社の方に行くことを伝えるとロージャにも安心した顔をしている。

愛憎渦巻く館とかよりはいいことは確かだ。

ただ、問題はアニー自身が何をみて何も思ったのかが一切わからないことだ。

心構えだけはしっかりとしておかないとと思っている。

そういえば、アニーは邸宅の方へ行きたいのかと思えばそんな感じではない様子だ。

むしろそちらには興味を示さないで、旧L社の方にしか興味を示していない。

 

「アニーさんはあちらは気にならないのでありますか?」

「え?気にはなりませんわ。だってほしいものはこちらにあるのでしょう?ならばそちらに行けば良いことでは?」

 

ドンキホーテが聞いたらさも当たり前と言わんばかりに答えられてしまった。

いやまぁ確かにその通りなのだが。きれいなお屋敷があると言っていたのに、気にしていなかったのか。

どこか、アニーの真意が読み取れない気がした。何かを隠しているのか、はたまた無駄なことはしたくないだけなのか。

どちらとも言えそうで確証がえられない。

旧L社に向かおうとすると、大きな声がした。

 

「アンナ……アンナなのか!?」

 

その言葉に振り向く。声は後ろからだった。知っている人間の声ではないと思えた。

そこにはがっちりとした体型でシュッとした顔付きの男性がいた。黒髪で綺麗にまとめあがっている。服は貴族なのかいい生地のものを使っている様子だ。

一応アニーも振り返ってそちらを見る。男は驚愕した。

表情が一気に変わったのがわかった。恐怖を抱いているようにも思える。

それか、化け物をみるような目とでも言えばいいのだろうか。

その後すぐに平静を装って先程の一度みた普通の顔に戻っていた。

 

「…き、みは?」

 

男は訪ねてくる。声は少しだけ震えているようにも思える。

アニーはいつもどおりに優しい声で答える。

 

「私?私はアニーと言いますわ。……貴方は?」

「……わ、私はヴロンスキー…という。……すまない人違いだった様子だ。」

 

ヴロンスキーという名前を聞いた途端アニーの顔が真顔になった。美しいけれどそれはまるで人形だった。

怒りでも笑いでもない悲しみでもただただ感情のない顔である。それを見慣れない私は少しだけぞわりとした。

恐怖でもあり、気味の悪さでもあった。

 

「あら、偶然。…私はヴロンスキーという名前の人を探しておりますの。同名の違う人だと嬉しいわ。」

 

そうはいっているが、心からではない。なんというべきなのだろうか。

上辺だけの言葉であり、深いものはなにもないというべきものだった。

ヴロンスキーを名乗った男もこれ以上アニーのこの会話が恐ろしいのか会話を切り替えた。

 

「と、ころで、君たちは何をしにここへ?……ギリギリ範囲外ではあるが、ほぼほぼ私の土地の私有地なのだけど。」

 

どうやらあの邸宅は彼のものらしい。なるほどだから気になって見に来たのか。

この目立つ集団を。そしたら、似た人間をみたということだったのか。

アンナと呼ばれた女性は何者なのだろうかと思ったが私達が気にするべきではないと思った。

ヴロンスキーの質問にファウストが答えた。

 

「私達はLimbus Companyの人間です。事前にLCCBと名乗った方々が旧L社の件でお伺いしていると思います。」

「あぁ!確かに言っていた。あの中の調査をして安全になるようにすると。」

「はい。そのために来ました。」

「確かに、あの不吉の象徴は困っていたんだ。危険なものはさっさと排除して欲しいな。」

 

少し傲慢な態度であり、それに苛立ちを覚えたとしても私達のやることは決して変わらない。

それが彼らの生き方でありそれに鑑賞したところで何も変わりはしないのだから。

ただ、ヴロンスキーはアニーの方を見てなんとも言えない表情をしている。

アニーは先程までの真顔も忘れてしまったかのように進み始めた。

 

「さぁ、行きますわよ!」

<そうだね>

 

いつもの元気そうなアニーに戻った。先程までの真顔はどこかになくなったかのようにそして、ヴロンスキーのことなども忘れたように。

旧L社の中に入ろうとする。扉の方はこじ開けている。幻想体がいるのはこのあたりじゃないので開けても問題はないそうだ。

珍しくもないがアニーはこういうところに率先して入る。もの珍しいのかもしれない。

この人それなりに年齢は行っているはずだと言うことを話していた気もするが、

いい所の家のでである事はロージャからもホンルからもお墨付きである。

ただ、ロージャからは追加で行動が少しだけ子供っぽいと総評を貰っている。

アニーはそのことを聞いてまぁ!子供っぽいというのは素直で良いことなのですよの!と言っていた。

否定はしないけれど、この世界でそれはいいのだろうかと思った。

 

旧L社支部に足を踏み入れる。やはりそこも惨状が広がっている。

明らかに人が死んだ後や、その体が残っていないところも含めて地獄みたいな場所であると

ただ、ひとつ問題があった。後ろから人の気配がしたままなのだ。

誰かがついてきていると数名は気がついている。だがそこを指摘しないのは、強くないからなのかもしれない。

アニーはそんなことを気にもしないでずんずんと進んでいく。気がついていないのだろうか。

少しずつ進んでいると、急に脳裏に声が響いた。

 

『■■■■■■■■■■』

「え……?」

 

誰かが何かを言った。誰が何を言ったのかわからなかった。ただ音が聞こえた。

アニーが小さな声があげる。アニーも聞こえた様子であたりを見渡す。

その瞬間、奥から大きな枝のようなものがアニーを捕らえる。それに気がついて動いたドンキホーテは弾かれてしまった。

ロージャもグレゴールも動いたが同じく弾かれた。

アニーは一切抵抗もしないで動けないでいた。驚いた顔のまま何処かへと連れ去られてしまった。

旧L社支部の奥に連れて行かれたようにも思えた。

 

<アニー!>

 

私達はすぐに追いかけようとした。だがその時だ。

後ろから物音がなった。ガシャンという音だ。

先ほどから居た人物だろう。こちらに害をなすのかもしれない。先に対処しようということで武器を構えさせた。

だが、そこに居たのは武器を持った誰かではなかった。

そう、そこにはヴロンスキーがいた。

 

「あ、さっきの!」

「ヴロンスキーさん…、でしたよね?何故…?」

「……先程のアニーという女性が気になってね。」

 

なんでもアニーのことが気になって来て決まったという。

知っている名前の女性に名前もよく似ていたのもそうだが、容姿も似ているという。

ただ、似ているだけで流石に容姿は同じでは無いらしい。

そうそう同じ人間が居てたまるものかとヴロンスキーは言った。

まあ、同じ顔で同じ人間が居たら流石に恐怖ではある。

…ふとR社がよぎったが、何もみなかったことにしよう。

 

そういえば先程も言った[アンナ]という、女性である事は明白だ。

一応[アンナ]がどういう女性かを確認した。

もしかしたらアニーの身内なのかもしれないしと思ったのもある。そこまで容姿が似ているのならというのもあるが。

彼は答える。それも過去を思い出しながら嬉しそうに語っていた。

アンナはとても美しい女性だった。彼女に憎しみを抱いてもその美しさで全てを柔和してしまうような美しさだ。

瞳の色はとても綺麗な黄色の瞳。柔らかい瞳がこちらを見つめるその姿はまるで女神のよう。

黒髪の美しい彼女に恋をした。柔らかいふんわりとした髪、その髪が風になびく瞬間優しい笑顔が見える。

時折見せるアンニュイな表情もまた素晴らしいものだったと。

だが、彼女は既婚者であり、母親だった。隣に子供もつれていた。それだけで理解はできる。

それでも恋をしたヴロンスキーは追いかけた。恋をしたものは確かに麻薬をキメたかのようにおかしくなるというが。

 

「ストーカーじゃない。」

「失礼な!恋の情熱故の行動だ!」

「ストーカーですね…。」

「悪人であるか?」

<とりあえず武器を収めなさい。>

 

ロージャがすぱっと言ってその後ヴロンスキーが反論するも元々既婚者であるリチョウが否定した。

その言葉にドンキホーテが武器を構える。ちなみに最初の時点でロージャも武器を構えていた。

ウーティスとイシュメールが武器に手を掛けていた。

ヴロンスキーは待て待てと言わんばかりだ。私はとりあえずすぐに武器を下ろすように伝えた。

大半の女性陣の怒りを買ったように思えた。まぁ…女の敵と言われてしまえばそうかもしれないと思えた。

既婚者の女性を追いかけて言ったのは素直に驚くが、まぁ、そういうこともあるのかと、思って考えないことにした。

特に考えないで奥に進むことにした。

 

「結婚している女相手に求愛とかなかなかだな。」

「結婚していたとしても、美しい女性が居たらしないか?」

「しねぇよ。」

「し、しないです…!」

「せず。」

「…しねぇ。」

「…。」

「しませんね…妻帯者でしたので。」

「わりぃ、しねぇかな…。」

「うーん僕は、どうですかね…?」

「あまり、味方が…いない…!」

 

炳吾がヴロンスキー相手に言われた。そしてヴロンスキーは求愛しないかと言われたが、何人かが否定した。

一番強い否定をしたのがリチョウだった。シンクレアも怒ったように言っている。

イサンはサラッと言った。ヒースクリフはなんとも言えない表情で言った。ムルソーは無言を貫いた。

後はあまり言う必要は無いだろう。大体予想がつくので私は黙っている。

 

 




まだまだ続くよ
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