【Limbus_Company】自囚人と創作キャラの創作物まとめ   作:彩花@clover

28 / 42
終わり。


XX章【抱える不幸と見える幸福】後編

やはり自我心道の映像はぼんやりとしたままだ。ぼんやりとしたまま進んでいく。

そして、ここが最奥の様子で、そこには黄金の枝とアニーがいた。

アニーは何かを言う訳でも無く、ぼんやりと黄金の枝を眺めていた。ぺたりと座り込んで、黄金の枝を眺めていた。

 

「……アニー、さん?」

 

イシュメールが声をかける。だけどもアニーは反応しない。ぼんやりとしたままである。

普段ならば『まぁ!どうかなさいましたの?』とあどけない笑顔を見せてくれる。はずだ。

だけどもそれがない。まるで、何かが抜けているのかと思われるくらいには。

 

「………あぁ、そうでしたわ。あいつですのね。じゃあ、私やりますの。」

 

ゆっくりと立ち上がる。急に声を出してこちらを向く。

その顔はニッコリと笑っている。普段の笑みとは違う。まるでやっと見つけたと言わんばかりの表情だ。

普段では決してみないその表情にゾッと背筋が凍ったのを感じた。

まるで狂った映像作品とかに出てきそうな狂人の顔だった。

誰を狙っているのかは目線でわかった。その目線はヴロンスキーを狙っているのがわかった。

 

<ウーティス、アニーを!>

「っ!」

 

すぐに止めるように言って止めさせた。ウーティスはアニーを床に伏せさせて足で動きを止めるにする。

アニーは無理に動こうとしているが、そもそもの筋力差で勝てるわけがない。

暴れて脱げだそうとするが、抜け出せない。

 

「邪魔をしないでくださいまし!」

<アニー君は何を考えているんだ!>

「私はただ、ただ!ママを死に追いやった男を殺すだけですわ!」

 

ママ。アニーは確かにそういった。ママとは誰なのか。……いやなんとなくだが、予想はできる。

この予想が外れていてほしいと願うばかりだ。

そしてママと言う言葉を聞いた、ヴロンスキーはまさかと言った顔だ。おぼえがあるのだろうか。

本当にアニーの言う通りにヴロンスキーがアニーのママを殺したのだろうか。

…なぜだか私には答えが見えないと思えた。アニーは叫ぶように言った。

 

「私はアニー!アニー・カレーニナ!アンナ・カレーニナは私のママですわ!」

 

その言葉を聞いた黄金の枝は光り輝く。まるでその言葉を待っていたかのように。

そしてわたしたちの脳内に響く。…不思議な声が響く。

知っているようで知らない声が響く。

 

わたくしは、カレーニンの妻。アレクセイ・カレーニン。わたくしのとても優しい旦那様。

あの方は私に愛を誓ってくださった。優しくも情熱的な愛を。わたくしはそれが嬉しくて嬉しくてたまらなかった。

わたくしを育ててくれた人は

 

『愛は渡せば返ってくる。それがどんな形であっても必ず返ってくる』

 

そう教わった。子供の頃のわたくしは確かに愛を渡して返ってきた。

だからこそわたくしはその形が正しいものだと信じてきた。

だけども。結婚をして子供が生まれてあの人は、変わってしまったのかもしれない。

わたくしはたいせつにするべきだと子供をせめて幸せにしてあげなければと思った。

 

『子供が生まれたか。そうか。子供は資産だ。大切に育てておくれ。』

『もちろんですわ。あなた。……でも、資産って……。』

『何を言っている。子供はただの物だ。しっかりと後世に私たちがいた証を、そしてさらに栄誉と世界の歯車になるのだから。』

 

その言葉を聞いてわたくしは困惑をしてしまった。

子供は私達の愛の結晶で大切に育てていくものでは無いの?わたくしは初めてカレーニンに対して不信感を抱いた。

だけども非力なわたくしは一人で生きていくなど不可能。わたくしはあの人に従うしかない。

それでも、わたくしは子供を深く愛した。愛して愛情を注いだ。勉学は遊びながら染み付くように頑張った。

 

『セリョージャ。ステキね。本当にいい子だわ。』

『あー!』

『頑張って大きくなりましょうね。』

 

あの人はわたくしに興味をなくしたように子供の教育状態を聞く。

あのひとはわたくしへの愛情などなくしたような瞳を向けてきている。

 

『セリョージャの様子は。』

『問題なく教育を受けさせていますわ。』

『そうか。』

 

わたくしは、あなたの操り人形なのですね。あなたの視線はもうわたくしにはない。

仕事とあの子が大きくなった時のことしか考えてない。わたくしはただのお飾り。

せめて美しくあればあなたは愛してくれますか?そんなことは無いとわかっていながらもわたくしは愚かにも美しくあろうとする。

わたくしはどうにもならないことを分かっていながらも認めたくなかった。

それから冷めた結婚生活を送り続けた。それでもわたくしはセリョージャを愛し続けた。周りを愛し続けた。

そうすればあの人もいつか、こちらを見てくれないだろうか。わたくしはまだカレーニンを愛しているのだから。

 

<い、まのは。>

 

急に流れきた映像が私達の困惑を誘う。その瞬間を狙ってアニーが抜け出そうとする。

 

「ママ!やっぱり泣いてるの!可哀想なママ、私が殺して……!」

<ウーティス!止めておいてくれ!>

「はい…!ムルソー手伝え!」

「了解した。」

「離して!」

 

また、映像が流れ出す。

 

あれからそれなりの年月が流れてセリョージャはとても良い子だった。

勉学もしっか人で来て、優しさを持ったとてもいい子になった。わたくしは自慢の息子を持ったのだと安堵していた。

兄が浮気をしてしまって奥さんであるドリーが怒っているということを聞いた。

気晴らしも兼ねてそちらに向かうということを伝えた。カレーニンにも伝えたがあまり興味はなさそうだった。

ドリーの元には子供が沢山いた。可愛らしい子供たち。

わたくしは羨ましく思った。それほど愛し合った結果だと。

子供たちと話をしてそしてドリーと話をした。浮気。

それは悪いことでもある。だけども自分を見てくれなくなったという証拠でもある確かに辛い。

だけどもそれなら自分を見て貰えるようにその意味を証明してあげれば良い。

わたくしには出来なくてもドリーならば出来ると思っていた。

オブロンスキーことわたくしの兄はだらしないところもある人でありますが、大丈夫。人をちゃんと愛せる人ですものと。告げる。

数日お邪魔することになって社交界にもお邪魔することになった。

そこである人と出会った。それがヴロンスキーという方でした。

 

「ア、ンナ…私は。」

 

ヴロンスキーはうろたえたようにアニーの顔を見る。

アニーは憎悪に支配された顔をしている。今にも殺してやると言わんばかりの顔である。

だめだ、何もわからないうちは許可も出来ない。

殺すことだけが正しいわけじゃない。

 

その方はとてもわたくしに強い愛情を恋心を向けてきたのです。

恥ずかしくなってしまうほどに。だけどもわたくしは離婚も出来ない逃げることも出来ない弱い存在なのです。

どうかわたくしに希望を持たせないでくださいまし。

あなたはわたくしを逃がすことなどできないでしょう?もう、捨ておいてくださいまし。

それでも彼はわたくしの元まで来てしまった。

わたくしは彼を拒めない。彼の愛情がこんなにも心地がいいものであるせいだ。

わたくしは彼と浮気をしたのです。

 

「……ママ……。」

<……浮気。>

 

アニーは悲しそうにしている。拳を握って震えている。

彼女…アンナは浮気をして居た。私たちは何処か納得してしまった。

心はもう既にそこに無かったのだからそうなっても不思議は無い。

旦那のカレーニンはアンナのことを人形のように思っていたのだから。

 

また、流れ出すが、映像はだいぶ変わっている。邸宅で夫婦の二人が映っている。

 

『なんてことをしたんた、アンナ。』

『……あなたはわたくしをもう愛していないでしょう?ですから、わたくしもそれ相応の対応をした迄ですわ。』

『………君を家から出すのを禁止にする。無論息子に会うのもだ。』

『なっ!』

 

わたくしから自由を奪うだけでなく息子まで奪うと言うの!?

わたくしはたしかに悪い事をしましたわ、でも、それはあなたがわたくしを愛してくれないから。わ

たくしは、あなたの事を愛していながら彼を愛してしまっただけ。

いやよ、わたくしは自由でいたい。もう操り人形なんて嫌!

わたくしは部屋から出して貰えなかった。

誰もわたくしのいうことなど聞いてくれない。気分が悪い、何かしら。

いえ、これは分かった。あぁ、わたくしのもう1人の子供が産まれるのね。彼との愛の結晶が。

産ませて欲しい。わたくしは子供と一緒にいたい。ドリーのように。

私も強くなりたい。なりたいのです。

 

そしてわたくしは子供産みました。

許されないだろうと思ったけれども、わたくしは言いました。

 

『子供を産ませてくれないと死んでやりますわ!』

 

と、世間の目が気になるカレーニンはすぐに了承しましたわ。

そして、生まれた子供にアニーと名前をつけたのです。私と変わらないとても可愛い。

とっても綺麗な水の瞳。わたくしと違う綺麗な水の瞳。とても、清らかで美しい瞳。

わたくしの瞳は薄い金色に近しい黄色の瞳。…強欲な金の色。

 

<………えっ。>

 

私だけではない、全員アニーの顔をみた。アニーの瞳は水のような色の瞳と、……薄い金色に近しい黄色の瞳だ。

オッドアイなのは生まれつきでは無いということだった。カラーコンタクトというわけではないはずだ。

しかし、何故だ。いつその瞳は変わってしまったのか。

 

アニーを愛して育てた。アニーには自由になってもらいたい。

わたくしはカレーニンから逃げなければ行けない。カレーニンはきっとこの子を愛さない。

だから逃げなければ行けない。ヴロンスキーは手伝ってくれるかしら。

窓からヴロンスキーに届くようにと手紙を出す。セリョージャに不安そうな顔をされた。

セリョージャをおいていきたくはない。だけども私一人でこの子もつれていけるの?

セリョージャは言った。

 

『僕の妹なんだよね?』

『………えぇそうよ。でもパパは……。』

『行って、ママ。僕は妹まで悲しい教育を受ける必要なんてないから。』

『セリョージャ……ごめんなさい…。ママはずっとセリョージャのことを愛しているわ。』

『うん。わかってるよママ。』

 

わたくしは母親として、だめなところばかりですの…。セリョージャを助けることが出来ませんでした。

手紙を出して逃げることに成功した。ヴロンスキーはわたくしを待っていてくれた。

逃げて館に住まわせてくれた。カレーニンに合わないようにしてくれた。

わたくしはヴロンスキーを愛した。深く深く。だけど空回ってしまったのでしょう。

ヴロンスキーはわたくしを疎ましそうにしていました。

 

『君がそんなに重たい女性だとは思わなかったよ。』

『え……わたしくはただ、愛してるだけ。』

『それが重いんだよ。アンナ。』

 

ヴロンスキーは私をどん底に突き落としました。だから私はアニーに愛を注ぎました。

大人は愛を注いでも煙たがりる。やっと理解しました。わたくしは何もかもを間違えていたことを知りました。

愛は、誰かを幸せにしないのだと。悟りました。

ほんの少しだけ、きれいな声が聞こえます。……だけど、あなたにはわからないでしょう。

わたくしはあなたの声に負けたときどんなことになるのか想像も出来ませんわ。

だけども、それでも、わたくしの子どもたちへの愛は本物だわ…。それだけは絶対なの。

だから、どうか。

 

セリョージャ、アニー。わたくしよりもしあわせにいきてほしいのです。

 

「………そんな、に思い詰めていたのか。」

「お前が死んでいればよかったのに!」

 

アニーの口から出てきた言葉はとんでもない言葉だった。

アニーは少しだけほおけていたムルソーとウーティスの間をやっと脱走して武器を構えてヴロンスキーを殺そうとした。

それにいち早く気がついたシンクレアが止めた。ハルバードを持ってアニーの乾坤圏を弾く。

 

「どうして!どうして止めるの!」

「アニーさん落ち着いて!この人は……あなたの……!」

「そうよ!パパよ!でもそいつは私を愛したりなんてしなかった!ママを、自殺に最終的に追いやっただけ!」

「ママは、嘆いて悲しんで死んだ!冷たい湖の底で死んだ!」

 

わたくしはここに来た。近くに旧L社が見える。大きな湖。死はわたくしを終わらせてくれる。

だけど、心残りがある。アニーをキティというドリーの妹に預けてきた。

あの子は愛されるべきだから。あの子にはなんのしがらみもなくいきてほしいから。

少しだけ怖い。それでもわたくしはもう苦しいのです。

誰かを愛しても愛しても意味が無いと知ると悲しくて苦してくて仕方がないのです。

ポチャンとわたしくしは落ちていく。わたくしにふさわしい最後ですわ。

アニー。どうか幸せに生きて。 セリョージャ…こんなママを許してほしい。

 

 

ママの死を理解したくなかった。私は願った。ママを私にと。

この旧L社に行ってそうしたら願いが叶うよと誰かが言った。知らない人だった。とっても声が綺麗だった。

だけど、その人は私に他には何も教えてくれなかった。

他の声が言った。自身のなかにママを入れればいいのだと。

だから私はママの体とママの綺麗な瞳をママの魂を自分の中に入れた。全部は入れられなかった。

ママの記憶もぼんやりとしていた。だけどもママに一緒に居て欲しかったから。ママに幸せを感じて欲しかったから。

ママが幸せだったと言って死ぬのは良い。今ならそう思える。だけど苦しいって死ぬのは嫌だ。

ママが苦しいと思う全部を私が壊すわ。全部全部壊して幸せになりましょう。ママ。

 

だから、ここに来たかった。ママを枝から解放するためにだから私はバスに乗った。

囚人だのなんだの言われだけれども。

私は囚人なんかじゃない。彼らとは違う。ママは囚人なんかじゃない。ママはとっても優しくて愛してくれた。

だから、今度は私が助ける番。

 

 

「だから!邪魔をしないで!ママが死ぬ原因になったやつを私が殺すの!」

「アニー………そうか、だからアンナによく似ていたのか。」

 

アニーは最初からここの場所を知っていた。だけど何らかのショックで何故ここに来なければ行けないのか忘れてしまった。

おそらく、だが枝にアンナを閉じ込めてしまったせいだろう。正確には魂の半分だけを閉じ込めてしまった。

それはアニーがやってしまったことなのか、アニーが聞いた声のせいなのか。

誰もわかりはしないが。だが、一つだけ、気になった。映像の中のヴロンスキーが明らかに年齢が合わない。

もしもアニーが言った通りの年齢ならば、あの映像はもう30年以上も前のはずだが、そんなふうには見えない。

私はアニーに尋ねるしかなかった。

 

<アニー…君は一体いくつなんだい?>

「私の年齢?私の年齢は6歳だけど?でも凄いでしょ!ママの見た目通りなの!瞳だけはママの色を残しておきたかったからそのままだけど!」

<黄金の枝の力なのかい?>

「わからないわ…でもママの魂が半分くらいしか取り返せなかった!子供の体の私にはどうにも出来なかった。悔しかった。」

 

そう、アニーの体は何故か成長しているのだから。これはおかしいのだ。

先ほどから自分の思い通りにならないからか。かなり苛ついてきている。

 

「それでも、邪魔をするなら!」

 

アニーは大きな十字架を手に持っている。普段の武器とは違うものだ。

服装も囚人服ではない。白いワンピースである。袖のある白いワンピースだった。袖は長袖である。

肩にはカーディガンを羽織っている。頭にはまるで天使の輪っかのように黄色のきれいな輪っかが浮いている。

足は素足であるように見えるが、ほんの少しだけ浮いているようにも見える。

そんなときPDAが変な音を鳴り響かせる。

 

『聞こえますか!管理人さん!』

<…その声はマリア!?>

『とりあえず時計の音がしたってことは聞こえたみたいですね。時間がありません、端的にいいます。』

 

LCCAのマリアが話しかけてきた。人格牌をつけながらアニーのことについてマリアは話をした。

どうやら普段私達がみてきたアニーの姿は開花E.G.O.で大人に見せていたアニーの本来の姿ではないのだという。

本来のアニーの姿は子どもの姿が本来正しいがそれを出すのは禁止されていた。

今わざわざ連絡をしてきたのはアニーの開花E.G.O.の暴走が感知出来たからだという。

そのまま暴走をどうにも出来ないでいると、抑えきれなくなった力が、暴走してアニー自身がどうなってしまうのかわからないという。

だからアニーを助けたいのなら、素早く助けるしか無い。

ただ、本来の子どもの体力のままになってしまっているはずだと、マリアは告げていた。

 

『おそらく、ですけども、アニーさんの体力自体はそう高くありません。時間が経てば経つほど弱くはなるでしょう。』

<なら…!>

『ですが、それは彼女の開花E.G.O.がどこまで持つかの問題です。出来打つ限り迅速に対処をしてください!…時間切れです。検討を祈ります。』

 

マリアとの通信が切れた。すでに人格牌をつけた囚人たちがアニーと戦闘を開始していた。

今回の面々は檀香梅イサンと後悔E.G.O.ファウストとW社ドンキホーテとW社良秀とW社ムルソーとW社ホンルとR社ヒースクリフとR社イシュメールと

ディエーチ協会ロージャと握らんとするものシンクレアとセブン協会のウーティスとツヴァイ協会のグレゴールとツヴァイ教会の炳吾とシ教会の敦で挑んでいる。

先頭切ったのはヒースクリフとイシュメールだった。二人のツヴァイはターゲットにされているヴロンスキーの守りを依頼している。

アニーはその十字架を盾代わりにしていた。おそらくLCCAの研究室兼居住区のときのガラハドの戦い方を真似ているのだろう。

あの十字架は彼女の体くらいには大きいものだ。普段使っている武器とは全く違うのでどんな動きをシてくるのかも読めない。

 

「これでも!くらえ!!!!」

 

攻撃がやんだのを確認してアニーはその十字架をブンっとフルスイングする。

前に突っ込もうとしたシンクレアとドンキホーテがそのフルスイングに絡まれてしまって吹き飛ばされる。

十字の部分をもろに食らった様子だ。ドンキホーテの方はかなりダメージを負ってしまったが、シンクレアは強いダメージではあったが動けないほどでもなかった様子だ。

そしてその十字架を上に持ち上げて上下にブンブンと振り回す。回避は容易だった。

動かさないための罠だったのか、アニーは十字架をこちらに向かって投げてきた。

それをディエーチロージャが受け止める。

 

「ぐ、うぅ!」

「やられちゃえ!」

 

アニーは十字架に見えない紐でもついているかのように十字架を自在に操る。

すでに自分の手元も戻した。

だが、他にもあまり手を出せない理由があるようにも見えた。

それは今、アニーの姿がほとんど子供のままであることだ。おそらく攻撃に特化している状態であるため子供に見えるための余力がないのだろう。

だからこそ、手を出しにくいのかもしれない。

 

「おい。」

<敦…。>

「…あれはオレが殺す。」

<!>

 

アニーを殺すと言ったのだ。その言葉に少しだけピクリとなったものも居たが、このままでは何がおこるかわからない。

だけども手を出しにくい。そこに敦がわざわざ名乗り出た。

……私は、彼女を説得できる程の理由を言葉を紡げる気がしない。敦に、お願いするしか無いのだから。

 

<すまない、敦、お願い、するよ。>

「…。」

<イサン!その檀香梅を使って彼女の意識を分散させて!ファウスト!水袋を打つ準備を!>

「わかれり」

「わかりました。」

 

梅を当たりに舞うように咲かせるように見せている。フルスイングを受けても問題ないようにロージャが知識を捨てている。

アニーは見えにくいからわからなくなってしまった様子だ。

あたりがしっかりと見えていないのは事実だろう。

そこにファウストが打ち込んでいく。

 

「この戦闘には勝利するでしょう。」

 

そう言ってアニーに強く攻撃をした。痛そうに受けていた。

その姿にどうしても痛そうだと思えてしまうのだが、それでも、やらなければいけない。

すでに敦はスタンバイできている。私の指示は水袋だった。

そしてすでに敦は動いて、そのアニーの首を……落とした。

アニーは何が起きたのか理解が出来ていない様子だった。

ただ、体が動かせないと理解していた。そして…。

 

「ど…して。」

 

そう言って絶命した。

 

だが、彼女はまだ囚人であり、バス部署の仲間だ。

 

<アニーを甦らせるよ。>

「はい。」

 

アニーに対して時計を回したがアニーの目が覚めない。起き上がらない。

失敗したのかと思ったが、どうやら何かが違う様子だ。

近くに何かが見える。アニーの近くにいる。薄っすらとした姿が見える。

それは綺麗な黒髪で綺麗な薄い金色に近い黄色の瞳の女性だ。アンナだった。

 

『優しい方ですのね。アニーが大変な事をしたのに。』

 

クスリと笑っている姿はどこか、本当に何もかもを許せてしまいそうな美しさがあると思えた。

優しさもあるが、どこか引き込まれてしまう美しさだった。

 

<アニーは悪い子では無いから。>

 

私は率直な感想を述べる。いやそもそも事実だ。アニーは私が見る限り悪いことはしない。

ただいいこともどれが正しいかまだ理解出来ていないだけで。

それを理解できるいい子だと私は知っている。…だってあのとき最初からヴロンスキーを殺すことだって出来はずだ。

シンクレアが動いたけれど。それにあれは本気で殺そうとしていない動きだった。

…優しい子供だと私は知っている。

 

『……そうですのよ。アニーは悪い子では無いのですわ。だから、今後ともよろしくお願いしますわ。………大丈夫。もうヴロンスキーも殺させたりしませんわ。敵対してないですものね。』

「ア、アンナ!」

『ヴロンスキー。わたくしは怒ってなどいませんわ。世界がそういうものだと知っただけですの。だけどもアニーはせめて、アニーだけは幸せになって欲しいの。だからもうアニーに会わないであげて。』

「………それが、君の望みなら。」

 

その時のアンナの表情は微笑みだった。とても優しい微笑み。天からのほほえみ。恵みとも言えるほどだった。

恨んでなど居ない。だけど愛してほしかった。世界は残酷だとアンナは知った。

だけどもそれでも自分の可愛い子供だけは、幸せになってほしいと願っている。

だからこそ、死んだ後もアニーについてきてそして、黄金の枝に共鳴して私とつながってしまったのだろう。

…そう、最初からアンナとつながっていたのだ。

だから、アニーの言っていた「私は囚人ではない」は間違っていない。

アニーは囚人ではない。アンナが囚人なのだ。アンナの魂を自分のなかに入れているアニーが生きているからだとしてアンナが半分くらいはいっていたからこそ

生き返ることができるのだと言われているようだった。

…アンナに言われてヴロンスキーは立ち去っていった。私たちは黄金の枝を回収した。そしてアニーが目を覚ますのを待った。

 

「……わたしは。」

<おはよう、アニー。>

 

小さい体のアニーは目を覚ます。瞳は水色の瞳だった。身長は大体118cm程だろうか

この中でいちばん小さい体になる。…こんな体でずっと隠していてそれでこんな悲しい話を隠していたのだと。

おいていかれた悲しい子供。復讐の鬼になってしまっていた子供。

 

「おはよう。ダンテさん。」

<気分はどうだい?>

「………少し晴れた気がする。ママがヴロンスキーを殺さないでと言ったし殺さないでおく。」

<話せるんだね。>

 

アンナと話ができるのかとどこかで安心した気がした。殺さないでと言ったのは確からしい。

だけど話ができるというのはいいことなのだろうが、アニーはまだ悲しそうな顔をしていた。

 

「自由には話せない。でも、たまにママが外に出てきてみんなと話してみたいって言ってた。」

<それは歓迎するよ。優しい母親の話を色々聞かせて欲しいな。>

「あのね、ダンテさん。私、忘れてたの。」

<何がだい?>

 

アニーは泣いていた。ぽつりぽつりと、涙が流れていた。

天井に手を伸ばしてその手を自分の胸に戻す。その後目を隠すように腕で顔を隠す。

 

「ママの温もりがあんなにも暖かかったことを。忘れていたの。」

 

母親の愛をまだ求めていただろうに、それをもう貰えない。分かってしまった。

自分の中にアンナがいる限りもう抱きしめて貰うなどで気もしないのだ。死を認識しないでいた。だけどアンナは死んでいる。

それを再認識してしまったせいで、もうそれを得ることは無い。

黄金の枝は1度温かさをくれたけどそれは幻影でもう二度と味わうことは出来ないということを。

 

「……ぅ、うぅ………」

 

アニーは泣いている。小さな声で泣いている。

ロージャが優しく撫でた。私もその手を握った。シンクレアも逆の手を。ドンキホーテは抱きしめた。

沢山泣いていた。せめて少しの間だけでも、暖かさを無くさないように。温めた。

悲しいこの世界の世だけどもどうか、もう少しだけでも幸せになれるように。

母親の願いを叶えるように。どうか、この子に幸あれと願うのだった。

 

 




ただ、ただ、子供は求めた。
親の愛情を。この子供は自分にとても良く似ている。


そう、アンナはどこか思っていた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。