FAIRY TAIL転生記~炎の魔王の冒険譚~   作:えんとつそうじ

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どうも、えんとつそうじです。


最近いろいろ忙しかったのですが、なんとか楽園の塔編終了まで書きあげることができたので、初日にプロローグと一話。そしてそれ以降は朝十時に一話ずつ投稿しようと思います。


ローズマリー村編はともかく、楽園の塔編は前作と話の展開がそれほど変わらないので、前作を見ていただいていた方々には退屈かもしれませんが、見放されないようにがんばりますので、どうかよろしくお願いします。


プロローグ

 ―――これは、後にアースランド大陸で『妖精魔王(オベイロン)』と呼ばれその名を轟かせることとなる、一人の転生者の物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここは東京郊外にある古いアパート。

 

 

 とある会社が社員のために格安の値段で貸し与えている、いわゆる社宅と呼ばれる場所なのだが、そんな社宅の一室で今、一人の男の人生が唐突に終わろうとしていた。

 

 

「(……もう、駄目かなこりゃあ)」

 

 

 俗に祝い事のために使われる黒い礼服を着こみながらも、アパートの自分の部屋の玄関に倒れこんでいるこの男の名は『(くれない)勇里(ゆうり)』。

 

 

 彼は今年三十を超える、世間では所謂「おっさん」と呼ばれ始める年齢でありながら、そうは見えないほど整った顔立ちをしていたが、今の彼はそれを台無しにするほどに、その顔を真っ青を通り越して真っ白に染まりきっていた。

 

 

 なぜこのような状況に陥ったのか?その理由は実に単純で、彼は「過労」のせいで現在進行形で死にかかっているのである。

 

 

 彼はとある理由でどうしてもお金が大量に必要だった。

 

 

 だからこそこのような状態になるまで働き詰めの毎日を送っていたのだが、ではなぜ彼はそこまでのお金が必要だったのか?それは実は全て彼の妹のためだったりする。

 

 

 彼、紅勇里はごく普通の中流階級の家庭に産まれ、温厚な両親と産まれたばかりの妹と共に平凡な、それでいて幸せな毎日を送っていたのだが、そんな彼の生活はある日唐突に終わりを告げた。

 

 

 彼が高校生になったばかりの頃、両親が交通事故で死亡してしまったのだ。

 

 

 それは母が仕事を終えた父を駅まで車で迎えにいった帰り道に、対向車の暴走により起こり、そのまま両親は加害者である対向車の運転手とともに帰らぬ人となってしまったのだ。

 

 

 警察からそのことを聞いた彼は両親の死に深く嘆き悲しんだが、しかしそのままその気持ちに浸る暇もなく、彼ら兄弟に一つの問題が浮上してしまう。それは彼らの今後の生活についてだ。

 

 

 本来ならこのような場合、血縁である親戚などを頼るべきなのだろうが、実は彼の両親はお互いの家族に反対される中かけおち同然で結婚したらしく、そのせいか頼れる親族という存在が全くいなかった。

 

 

 不幸中の幸いか両親の遺産と、両親が念のためにと自分たちに掛けていた生命保険のおかげで、しばらくの間生活に困ることはなかったが、それでも高校に通うための学費、当時五歳になったばかりの妹にこれからかかるであろう教育費。そして両親が残した家のローンなど、それだけでは明らかに足りなかったために、彼は生活のため、そして妹のために必然的に若くして、働き詰めの毎日を送ることになってしまったのだ。

 

 

 そんな状況ではあるが、最低でも高校くらい卒業しなきゃろくに就職できないご時世だと以前から感じていた彼は、バイトを掛け持ちしながらもとりあえず高校だけはちゃんと卒業し、自身が入社条件を満たしている会社の中で一番条件がいいとある食品会社に入社し、妹の面倒をみながらがむしゃらに働いたが、実は彼が入社した会社は業界でも有名なブラック企業で、そのためか新入社員の身でありながらも、彼も馬車馬の如く働かされる毎日を送ることとなる。

 

 

 そのためか、どうしても妹の世話もおざなりになってしまうのだが、彼の妹は実に聡明で、幼心に彼が自分のために身を粉にして働いていることがわかったのだろう。文句もいわず、せめて彼が家ではゆっくり休めるよう、積極的に家事の手伝いをしだす。

 

 

 そのことに彼は心の中で感謝しつつ、さらに気合を入れて労働の日々を送り、そして彼はなんとか妹を大学を卒業するまでに無事に育て上げることに成功し、そして先日、彼の妹は卒業後働くことになった職場で出会った男性と結婚し、この(アパート)を出ていくこととなった。

 

 

 彼が現在滅多に着ない礼服を身に纏っているのは、その妹の結婚式に先ほどまで出席していたからだ。

 

 

 男手一つで育て上げた妹が、自身が認めた男に嫁ぐ光景をみた勇里はこれで自分の役目は終わりと、長年背負っていた肩の荷がやっと下りたような感覚に陥ったが、そのために気が緩んでしまったためか、長年の無理な労働で体に蓄積していた疲労が一気に押し寄せ、こうして帰宅するなり体の自由がきかなくなってしまったのである。

 

 

 実は、彼はだいぶ前から体を壊しており、医者から度々仕事を休んで養生するようにいわれていたのだが、前述したよう彼の入社した会社は業界でも有数のブラック企業であったため殆ど休暇などとれず、ましてや長期の休暇など、仕事を辞めなければ得られるものではない。

 

 

 なので彼は、妹の幸せのためにも辞めようとはせず、医者から薬を貰いながら、今までだましだまし仕事を続けていたのだが、その反動がここで来てしまったのだ。

 

 

「(……ああ、だめだ。意識がどんどん遠くなる)」

 

 

 勇里は自身の意識が遠くなるのを感じながらも、今までの自身の送ってきた人生を思い返す。

 

 

「(思えば、我ながらつまらない人生だったなあ……。父さんと母さんがいた時は働かなくてすんだけど、平凡でこれといってなにもない退屈な毎日。父さんたちが死んでからは寝る間も惜しんで働いて……)」

 

 

 一応いっておくが、彼は妹のために自分の人生を費やしたことを後悔しているわけではない。

 

 

 しかし、あまりにもなにもなかった自分の人生の薄っぺらさを嘆いてもいた。

 

 

「(特にこれといった夢とかはなかったけれど……。それでも少しだけでも自分のために何かしておけばよかったかなあ?中学や高校の時になにか夢中になれるものでも探しておけばよかった……)」

 

 

 思わずといった感じで自嘲の笑みを浮かべる勇里であったが、そこで彼は中学時代のある友人について思い出す。

 

 

「(そういえば、一時期あいつに勧められてネット小説にハマっていたこともあったけ……)」

 

 

 ネット小説とはインターネットやパソコン通信にて全文公開されている小説のことで、特にこれといったことがなければ基本的に無料で閲覧することができる。

 

 

 その友人は少しオタク気味の男性で、彼が特にこれといった趣味がないことを知り、お金もかからず、空いた時間に暇つぶし感覚で読めるとあって、これを趣味として進めてくれたのだ。

 

 

 最初、所詮素人が書いた小説と彼は軽く考えていたのだが、素人ゆえのその自由な発想と、拙いながらもその熱い気持ちが入った文章に彼は瞬く間に魅了され、一時期勉強そっちのけでさまざまな作品を読みふけっていたほどだ。

 

 

 高校に上がり、両親が死んでしまってからはバイトに忙しく、また、毎日生活のことで頭がいっぱいの生活を送っていたため、自然と読み機会がなくなっていったのだが、そんな状況になるまで彼が特に好んで読んでいたのが、俗に「転生物」と呼ばれるジャンルの、様々な理由で剣と魔法のファンタジーな世界に転生した主人公が活躍するという小説だった。

 

 

 当時の彼がそういうことが大好きな「ご年齢」だったということもあるが、まさに「その他大勢」に相応しい、平凡で退屈な日常を送っていた彼にとって、剣と魔法のファンタジーな世界の主人公である彼らが送る心躍る冒険の日々は、まさに彼にとって憧れの日々だったといえよう。

 

 

 薄れゆく意識の中、唐突にそんなことを思い出した彼は思う。

 

 

 もしも本当に転生、生まれ変わりというものがあるというのなら、今度産まれてくる時は、剣と魔法のファンタジーな世界で、大冒険な日々を送ってみたいなあと。

 

 

「(なあんちゃって。そんなこと実にあるわけないよなあ……)」

 

 

 自分の考えのあまりのバカらしさに、うっすらと笑みを浮かべる。

 

 

 そして彼は、とうとう意識がろくに保てない状況に陥り、そのまま誰にも知られぬまま、ひっそりとその命を落とすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 だが、この時の彼はまだ知らなかった。

 

 

「……あれ?どこだ、ここ?」

 

 

 

 

 ―――まさか冗談半分で願ったことが、本当に現実のことになってしまうとは。




どうでしたでしょうか?まあ、プロローグはこんな感じに変えてみました。


感想や誤字脱字の報告。そしてアドバイスなどあったら、是非よろしくお願いします。
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