FAIRY TAIL転生記~炎の魔王の冒険譚~ 作:えんとつそうじ
今回はオリキャラと前作には無かった設定が登場します。どうか暇つぶしにでもお読みください。
あのシモンとの組み手から、既に二年が経ち、今や俺、ユーリ・クレナイも、完全にこの村の一員として馴染んでいた。
居酒屋の営業も完全に軌道に乗り、空手の技術も順調に上がっていく。そんな順風満帆な日々を送っていたある日、俺は、とある人物に連れられて、普段狩りに使う森のさらに奥。立ち入り禁止とされている場所までやって来ていた。
「いったい、どこに行くんだ村長?こんな朝早く……」
「まあ、待て。もう少しで目的の場所に着くのでな」
俺の言葉にそう、返すこの老人の名は、『スタン・ローズマリー』。
強面で、少し頑固な所はあるが、心根は優しい老人で、自身には何の徳もないのに、村に問題が起こったならば、率先してそれを解決しようとする、この村の頼れる村長だ。
ちなみに、彼の家は、この辺り一帯で一番の名士でもあるらしく、代々この村の村長を務めているのだという。
そして、なぜ俺がこの人と共に、こんなところを歩いているのかというと、今日の朝、久しぶりに狩りにでも出かけようと家を出ようとしたところ、村長がなにやら真剣な顔でうちまでやってきて、俺について来てほしいところがあるといわれたので、こうしてどこへ行くかもわからぬまま、彼に同行しているというわけである。
「(しかし、本当にどこ行くんだ?それにここは禁止区域だろ。こんなとこ、俺が入ってもいいのか?)」
禁止区域とは、前述した通り、俺が普段狩りに使っている森の、さらに奥の、立ち入りが禁止されている森のことで、ここに入ることができるのは、代々この村の村長のみ。つまり彼の家の人間のみ許されているという。それ以外は、村の有力者すら入ることは許されないらしい。
本来なら、村にだいぶ馴染んだとはいえ、余所者である俺が、この場所に入ることなどできないはずなのだが……。
と、そんなことを考えていると、いつの間にか、森を抜け、大きく開けた広場のような場所に到着した。
そのど真ん中には、何かの記念碑か何かなのか、掠れているが、なにやら文字が彫られた大きな石が設置してある。
「着いたぞ、ここじゃ」
「これは……?」
「ここは、初代よりこの村の村長が守ってきた墓。この墓には、この村を救った英雄が眠っておるのじゃ」
「英雄?」
「うむ」
なんでも、遥か昔、理由は定かではないが、大量の魔獣が発生し、この村を襲撃し、あわや壊滅しそうになるという事件が起こったらしいのだが、そこに突如として現れ、それを防いだのが、この墓に眠る「英雄」だというのだ。
「紅の髪をたなびかせ、体に紅色の炎を纏わせたその男は、瞬く間に魔獣の群れを殲滅し、村を救ったらしいのだが、なぜかその男は魔獣と戦う前から重症を負っていたらしく、戦いが終わった後は、もうその命は風前の灯だったらしい」
もちろん、村を救ってくれた恩人だということで、当時の村人たちはその男を必死で治療したのだが、しかし村人たちの懸命な看護もむなしく、その男はまもなく命を落としたのだという。
そして、流石に命を賭けて村を守ってくれた恩人の亡骸をそのままというのは、させられないということで、その男の亡骸をここに弔い、それから、代々この村の村長が、英雄の墓として、この墓を密かに守っているのだという。
と、そこまで聞いたところで、俺は村長の説明に、少し納得できないものがあることに気づいたので、その疑問を解くために、俺は村長に向かって口を開く。
「?ちょっと、待ってくれ、村長。英雄の墓っていうなら、なんでこんな所に隠れるようにあるんだ?というか、そこまですごいやつなら、こんなところで、密かに弔うんじゃなくて、村の公共墓地で弔ってやったほうがいいんじゃ……」
だが、俺のこの質問は元から予想していたのか、村長は俺の言葉に全く動揺することなく、静かに首を横に振る。
「それでは駄目なのじゃ。なぜなら、自らの亡骸を誰の目につかず葬るのは、その男自身の願いなのじゃからの」
「ん?どゆこと?」
わざわざそんなことをいうなんて、その男、ひょっとして、なんか訳ありかなんかなのか?
そんなことを考えていた俺をよそに、村長は、なぜか辺りを警戒するように一度見回すと、声を潜めて言葉を続ける。
「実は、この墓に入っているのは人間ではない。―――悪魔なのじゃよ」
「………は?」
村長のその言葉に、俺は思わず呆然とした声を出す。
え?悪魔って、あの聖書とかに出てくるあれのことか?っていうか、この世界に魔法があるっていうのは知ってるけど、悪魔もいんのこの世界!?
そんな俺の混乱を見て取ったのか、村長は僅かに笑みを浮かべながらも、言葉を続けてくれた。
「うむ。わしも伝承でしか知らぬので、もはや本当かどうかはわからぬが、ご先祖様の残した手記によると、その男は、今わの際にこう言葉を残したそうじゃ。『自分はとある存在に追われている。なので、このままここにいたら君たちの迷惑になる。だから、私の亡骸はどこか、誰とも知らない場所に葬ってほしい」とな。その男はそれだけ残して事切れたらしい。―――ご先祖様も男がそんな言葉を残したその理由まではわからなかったらしいが、なにぶん、村の恩人が残した言葉。それを聞かないわけにはいかず、こうして、元々ワシの家の所有地であったこの辺りの区域を立ち入り禁止とし、彼の亡骸をここに密かに弔ったというわけじゃ」
「へえ、そんなことが。……ん?ちょっと、待ってくれ。結局、俺はなんで、ここに連れてこられたんだ?」
今の話は、結局俺には関係ない話だと思うんだが……?
そんな俺の言葉に、しかし村長は、慌てた様子を見せず、「まあ、待て」と片手で制す。
「今回、お主にこのことを話したのは他でもない。お主にワシの後を継いでもらいたいと思ったからなのじゃ」
「へ?」
「つまり、ワシの息子にならないかといっておるのじゃが」
「……え、えええええええええ!?!?」
★
★
思わぬ村長の言葉に、俺は思わず叫び声を上げてしまったが、やがてなんとか心を落ち着け、村長の話をあらためて聞いてみると、村長は、別に思いつきでこのようなことをいったというわけではなく、実は俺を拾ってきた時から、そのことを考えていたのだとか。
彼には昔、一人の妻がいたらしいのだが、若いころに病死してしまい、妻を心から愛していた彼は、それからずっと独り身でいたらしいのだが、最近歳をとったせいか、自分が死んだ後のことが気になりだしたという。
「ワシは今は亡き妻に操を立てて、後妻を迎えることはなかったが、そのせいで、今のワシの家にはワシの後を継ぐ者がいない。このままでは、どこかの家から養子でもとるしかないと思っていたのだ。……そんな時だった。お主をこの場所で見つけたのは」
それは、三年前、村長が何時ものように、この墓の手入れにやってきた時のこと、この墓の前で一人倒れている少年を見つけた。それこそが俺だったんだとか。
「跡継ぎを探している時に、村の英雄の墓の前に現れた異世界の少年。ワシはそれになにか運命のようなものを感じ、お主を保護した。そして、お主の能力を見極めようと、一つの課題を与えた」
「!?エルザのうちの居酒屋の経営のことか!!」
「うむ。村を治めるのに、経営の知識はそれなりに役に立つからの。それに居酒屋は基本的に客商売じゃ。お主の人柄を見定めるという意味もあった」
そして、三年の間、俺の様子を見てきた結果、村長は俺を村長の跡取りとして問題ないと判断したらしく、こうして話を持ちかけてきたというわけらしい。
「でも、俺には居酒屋の仕事があるし……」
「なに、ワシの後を継げとはいっても、すぐにというわけではない。ワシもお前さんが成人になるくらいまでは、現役でいられるだろうしな。居酒屋の仕事は、その間にエルザにでも教え込めばよい。なんなら、村長の仕事といくつか兼任してもいいしな―――まあ、急にいわれても、どうすればいいかわかるまい。ゆっくり、考えるがよい」
そういうと、村長は「帰るぞ」といって、踵を返す。
俺は、先ほどの村長の突然の申し出に困惑しながらも、その後を素直についていく。
しかし、その内心は、未だに混乱していた。
「(俺が村長の息子に……?まさか、そんなことを考えてたなんて知らなかった)」
でも、村長の考えもわからなくもない。自らの跡取りがいなく、養子を取らざるを得なかった場合、おそらく村の有力者の間から、養子をとることになる。
その場合、村長の座を巡り、いらぬ争いが起こるかもしれない。ならば、村の有力者とは関係のない、俺のような人間を跡取りにしたほうが、安全だと感じたのだろう。
「(でも、俺にできるのか?それに村長になるのなら、俺の夢である冒険も諦めなくちゃいけない……。)」
俺は、村長に気づかれないように、こっそりとため息をつく。
「はあ。俺はいったいどうしたら、いいんだ……」
だが、この時の俺はまだ知らなかった。
―――このすぐ後に、そんな悩みは全くの無意味なものになってしまうということに。
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