FAIRY TAIL転生記~炎の魔王の冒険譚~   作:えんとつそうじ

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どうも、最近あまりの暑さでだらけまくっているえんとつそうじです。もう本当に暑すぎて死にそうですはい。


今回はいよいよローズマリー村編のクライマックスとなります。結構やっつけで書いたので、いろいろ至らぬ点があるかと思いますが、どうかよろしくお願いします。


第五話 子供狩り

「ん?なんだ、あれは……?」

 

 

 ユーリがそれに気づいたのは、ちょっとした偶然だった。

 

 

 村の英雄だという、悪魔の墓からの帰り道、ふと顔を上げると、村の方角から、黒い煙が何条にも立ち昇っているのを確認できたからだ。

 

 

 ユーリは、最初それを、ただの焚き火の煙か何かだと考えたが、それにしては規模が大きいことに、なにかがおかしいと首を傾げる。

 

 

 そして、それはどうやら村長も同じだったようで、ユーリに釣られるように黒い煙の姿を確認すると、訝しげに眉を潜める。

 

 

「ひょっとして、火事か?いや、しかし、それにしても範囲が広い気が……」

 

 

 そう、村長のいうとおり、村の方角から立ち昇るその煙は、ただの焚き火や火事にしては範囲が広く、あの煙の量では村全体が火で覆われていることになる。

 

 

 しかし、この村の皆は、村長の方針により、田舎にしては安全意識が高く、火の扱いなんかも、かなり気をつけて行われている。

 

 

 そのため、俺も、そしてどうやら村長も不審に思ったらしい。

 

 

 と、そこで、俺は村から煙が立ち昇っている理由について、一つの考えを思いつく。

 

 

「(ひょっとして、盗賊にでも襲われているのか?)」

 

 

 実は、この世界、魔法があるとはいっても、治安的にはやは前の世界より大分危ないらしく、盗賊など、現代日本ではまずありえない存在も出てくるのだとか。

 

 

 幸いこの村の規模は田舎にしては大きく、また田舎であるために襲う旨みがないため、今まで盗賊の襲撃にあったことはないらしいのだが、それでもこれからも襲われないとは限らない。

 

 

 そう考えた俺は、村長に向かって口を開く。

 

 

「村長、悪いんだけど、俺が村の様子を見てくるから、あんたさっきの墓のところで隠れててくれるか?火事かなんかだとは思うが、もし盗賊とかが村を襲っているのなら、村長がいたら正直足手まといになる」

 

 

 俺はそういって、村長が手に持っている杖へと視線を向ける。

 

 

 村長は先ほど、墓の前で俺が成長するまでは現役でいられるといっていたが、流石に歳が歳なために足腰が弱っているらしく、そのためか、俺がこの村に来る前から今持っている杖を愛用していた。

 

 

 もし、今回の件が盗賊によるものだとしたら、足が不自由な村長よりも、俺が行ったほうが、戦うにしろ、皆を助けるにしろ役に立つに違いない。

 

 

「(それに、なぜかこの世界では、俺の身体能力は元の世界より格段に上がっている。そこいらの大人程度なら俺でも一蹴できるはずだ)」

 

 

 村長にも、自身が足手まといだという自覚があったのだろう。彼は悔しそうにしばし俯いていたが、やがて自身の心の整理がついたのか、顔を上げ、真剣な顔で俺に視線を向ける。

 

 

「……わかった。ワシは墓にてお前の帰りを待とう。じゃが、決して無理は禁物じゃぞ」

「ああ。それじゃあ、行ってくる」

 

 

 そして、俺は村長と一度視線を交わすと、村へと向かう。

 

 

 先ほどから、どんどんと大きくなる嫌な予感をその胸に秘めて。

 

 

「(俺の思い過ごしであってくれよ……ッ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 『子供狩り』というものがある。

 

 

 それはこの当時、伝説の黒魔術師ゼレフを信奉する教団が労働力を求めて、全国各地で行った奴隷狩りのこと。

 

 

 単純な労働力を求めるなら、大人を攫ったほうが効率がいいが、この教団が求めているのはただの労働力ではなく、反乱の心配が少なく、管理が容易。そして、いざという時は自分たちの思想に簡単に染められるのが望ましい。

 

 

 教団は、そのために標的を完全に子供のみに絞り、大陸中の魔導師たちを管理、統制する組織『魔法評議会』の目の届きにくい辺境にて、この子供狩りを行っていたのだ。

 

 

 

 

 ―――そして、とうとうその魔の手は、このローズマリー村にもやってきたのである。

 

 

「いやああ!!離して、離してよ!!」

「ええい!大人しくしろ、このガキ!!」

 

 

 少女、エルザ・スカーレットは、黒のローブを身に纏った男に、その腕を捕まれながらも、いったいどうしてこうなってしまったんだろうと、思わず考えずにはいられなかった。

 

 

 早朝、ユーリが村長に連れられてどこかに行った後に、この男たちは、突如空から竜のような形をした謎の怪物に乗り現れ、村を襲撃しだしたのだ。

 

 

 この男たちこそが、通称『教団』と呼ばれる、ゼレフの信奉者たち。

 

 

 男たちは村へと降り立つと、抵抗する大人たちを次々とその手にかけ、子供たちを捉えていった。

 

 

 エルザは男たちの手から逃れようと、村の中を逃げ回ったが、その途中シモンの妹であるカグラを見つけ、彼女を男たちの目から隠していたせいで時間をとられてしまい、こうして神官の一人に捕まってしまったというわけである。

 

 

「離して!離してよ!!」

「ええい、うるさい!!」

 

 

 必死に抵抗するエルザに、その神官の男はとうとう痺れを切らしたのか、エルザの頬を張り飛ばす。

 

 

「あう!?」

 

 

 男の張り手をくらい、地面に倒れ付すエルザ。

 

 

 幸い、怪我はないようだが、その一撃で彼女の心は折れてしまったようで、頬を片手で押さえながら、その場で俯いてしまう。

 

 

「(どうして、どうしてこんなことに……)」

 

 

 エルザは今日もいつものような日常が続くと思っていた。

 

 

 ご飯を作り、ユーリと一緒に食べ、シモンとユーリの特訓を応援し、カグラに家事を教え、四人で一緒に遊ぶ。

 

 

 そんな、平凡で、しかしそれでいて幸せな日々がこれから先ずっと続くと信じていた。

 

 

 だからこそ、彼女は今の状況になぜ自分が陥ってしまったのか、何度も何度も反芻する。

 

 

 村の人間の多くが男たちに殺された。よく様子を見に来てくれた隣のおばさん、おじさんに、今や家族の一員といってもいい、

 

 

 だが、神官の男にとっては、そんな彼女の事情など知る由もなく、震える彼女の姿に、満足げな笑みを浮かべると、エルザへとゆっくりと歩み寄る。

 

 

「やれやれ、ようやく観念したか。 手間かけさせやがって……」

 

 

 そして男がエルザを再び捕らえようとした、その時だった。

 

 

 

 

 

 

「―――エルザ!!」

 

 

 その声が聞こえてきたのは。

 

 

「へ?な、なn、ぶべらべ!?」

 

 

 神官の男は、突如聞こえてきたその声に、思わずといった感じで一瞬呆けたような顔をするが、そのすぐ後、その声と共に突撃してきた影に吹き飛ばされる。

 

 

「……え?」

 

 

 おもいがけず起こった、その出来事に、エルザは驚愕と共にその顔を上げる。神官の男が突然吹き飛ばされたこともそうだが、その声が、彼女にとって最も聞き覚えのある声だったからだ。

 

 

 そして、エルザが恐る恐る顔を上げると、そこには彼女が想像していた通りの人物、彼女の家族である少年、ユーリ・クレナイがそこにいた。

 

 

「大丈夫か、エルザ?」

 

 

 ユーリは心配そうな顔で、エルザの顔を覗き込むが、当の本人であるエルザは、ユーリの顔をしばらく信じられないようなものを見るような目で見ていたが、やがて目の前にいるのが本物のユーリだとわかると、緊張の糸が途切れたのか、じわじわと、その瞳に涙を浮かべ始めると、ユーリに勢いよく抱きついた。

 

 

「ユーリ……。皆が、村の皆が……ッ!!」

「わかってる。……ここに来る途中で血塗れの皆の姿を見てきたからな」

 

 

 ユーリはエルザの元にたどり着くまでに、村のあちこちで無残な姿を晒していた見知った人たちの姿を思い出しながらも、悲痛な顔でエルザの言葉に答える。

 

 

 エルザにとってもそうだが、彼にとっても、身寄りのないどころか、出自すら不明な自分に良くしてくれた村の人たちの死は、彼にとっても、心にくる出来事だったからだ。

 

 

 だが、彼はその悲しみを無理やり心に押し止め、今はエルザを、この世界での自分のたった一人の家族を助けるために自らの気持ちを奮い立たせる。

 

 

「とにかく、今はここを離れよう。やつらに見つからないうちにどこかに隠れ「ユーリ、後ろ!?」ッ!?」

 

 

 ユーリは、そのままエルザに避難を促そうとしたのだが、その途中、驚愕混じりのエルザの声に咄嗟に後ろを向くと、そこには一人の神官が、歪んだ笑みを浮かべながら、こちらに杖のようなものを向けている姿が見える。

 

 

 そんな男の姿に、ユーリは一瞬何をする気なんだといぶかしんだが、やがて、その杖の先についている水晶のようなものから、電流のようなものが帯電し始めるのを見ると、急激に嫌な予感を感じ、咄嗟にエルザをその場から突き飛ばす。

 

 

「危ない!!」

「きゃあ!?」

 

 

 エルザが咄嗟の出来事に悲鳴を上げたと同時、男の杖から大量の電流が迸り、ユーリに向かって直撃した。

 

 

「がああああああああああ!!?!!?」

「ユーリ!?」

 

 

 今まで体験したことのない激しい痛みに、悲鳴を上げるユーリ。そんな彼の姿を見て、エルザは悲痛な声を上げるが、その間にも、ユーリへの電撃は続く。

 

 

「(……な…なんだこれは!……ま、まさか……これが魔法か!?)」

 

 

 そして、しばしそのままユーリは電流を受け続けていたが、やがて魔法が切れたのか、それとも男が満足したのか、電流が止まると同時に、ユーリは地面へと倒れ伏した。

 

 

「……う…があ……」

「ユーリ……。ユーリッ!?」

 

 

 呻き声を上げながら、痙攣するユーリの姿に、エルザは急いでユーリへと駆け寄り、必死に声をかけるが、当のユーリは、あまりの激しい痛みに、彼女の言葉に返す余裕がない。

 

 

 確かに、この世界の彼は、前世の彼と違い、格段に丈夫になったが、それでも中身はともかく肉体は所詮まだ子供。それにこのような痛みは、流石に前世の記憶を持つ彼にも経験は全くなく、そのため耐性が全くない。

 

 

 それ故に、彼の精神は電流の痛みに絶えかね、彼の意識を混濁させ、その意識を今、無理やり闇へと鎮めようとしていた。

 

 

「(あ……やべ……意識が…)」

 

 

 どんどんと遠くなる意識に、このままではまずいと感じたユーリは、最後の力を振り絞り、先ほどから涙を浮かべながら、必死で自分に呼びかけてくるエルザの方へと視線を向ける。

 

 

「…エ……ルザ…」

「!?ユーリ!!」

「お前だけでも……逃げ……」

 

 

 

 

 

 

 ―――そして、ユーリの意識は、そこで完全に途絶えた。




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