重なる音に呪いを籠めて   作:ZG

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呪いは消えず怨嗟は消えず

鳴り響く音楽とこだまする声援は際限ない破壊音と絶望の叫びへと変わっていった。

 

「来るな!来るなああああ!」

「死にたくない!死にたくない!」

 

特異災害ノイズ。二課が打倒すべき敵であり人類に対して殺意も目的もなく、唯々機械的に殺戮を行う人類の敵。

それが大群をなして会場へと現れたのだ。まるで狙っていたかの様に現れたそれにただの人間は成す術もなく、逃げる事すら許されない。

何処までも終わらないそれが引き起こす混乱と恐怖は十何万といる観客に伝播するのはそう時間もかからず、逃げ惑う人々が一人また一人と炭へと変えられていく。

 

「どうなってる⁉なんでノイズがここにいるんだよ!」

 

迫るノイズから怯える響を庇いながら逃げ道を探す。だが会場の出口には錯乱した観客たちが殺到し全く進む気配がない。そうして集まった人間をノイズが見逃すはずが無く、瞬く間に炭へと変えられていく。

 

(爆発が起こったのは地上じゃない。機材のトラブルや馬鹿な輩のいたずらを除けば地下のネフシュタンか?)

(だとしたら弦十郎さんたちは?)

 

通信機は逃げる途中で落とした上にこれだけ状況が乱れれば回収する術はない。この場で判断する必要がある。秘密の漏洩を覚悟して戦うか、先のリスクを考えて逃げに徹するか。

聖遺物というただでさえグレーな代物が今回のライブにかかわるなんて事が知られてしまえば、翼と奏にどんな影響があるのか考えられず、下手をすれば二課そのものが日本政府のスケープゴートにされかねない。

それだけは避けなければならない。二課を失ってしまえばこの先日本政府はノイズに対抗する手段を失い、大勢の人が被害にあうのは目に見えている。聖遺物に触れた事も無い初心者に任せるわけには行かないのだ。

迷っている間にも被害は広がっていく、いずれはこちらも見つかるだろう。それでも決めあぐねる。だが……

 

「私達……死んじゃうの?」

 

迷いも何も全てが消し飛び、思考よりも先に体が動いてた。

 

-大切な人が泣いている- -泣かせているのは誰だ?- -死ぬ?誰が?- -お前たちが死ね-

 

Kill them all

 

ノイズ達が振るわれた斬撃により炭素へと変えられていく。どれだけ他人が死んでも何も感じない。心底どうでもいい。福眞はノイズに恨みや憎しみが無ければ人を守ることに全く興味が無い。そもそもノイズを狩っているのも奏と翼が死なないように傍にいる為というだけで、戦う理由というものをろくに持ち合わせていない。だが……

 

「絶対に響を死なせない……赤の他人なんざどうでもいいがアイツらだけは許さねえよ!」

 

ウバワレルウバワレルマエニスベテコワセ

 

理不尽に数少ない繋がりを持つ者が奪われるのは我慢ならない。長い間腹の底に溜まっていた黒い何かが溢れるように流れ出すのを感じる。怒り、恨み、憎しみ何処までも暗く暗く濁っている感情は福眞に力を与えてくれる。体内にある名前も知らない聖遺物の力か、それ以外の要因か、はたまたそう思い込んでいるだけか、どれでもよかった。唯々黒く、以前の模擬戦の昂ぶりとは違う感情が福眞を支配する。それを裏付ける様に振るわれる斬撃も放たれる炎も黒く染まっていた。

 

-Croitzal ronzell Gungnir zizzl-

-Imyuteus amenohabakiri tron-

 

激情のまま暴れ狂う福眞の前に赤い槍と蒼い剣が降り注ぐ。ステージ上にいた奏と翼もシンフォギアを纏い戦い始めたのだ。槍が、剣が、炎が数えきれない数のノイズを炭素へと変えていくがそれを優に超える数のノイズが一人、また一人と逃げ遅れた観客へと襲い掛かる。

 

「どんだけ出てくるんだよコイツらは⁉」

「次から次へとキリがない。このままじゃ……」

 

終わりの見えないノイズの大群に獲物を振るい、絶え間なく続く断末魔に歯を食いしばりながら戦う二人を端に捉えながら、福眞は更にギアを上げていく。三人の力の源となるフォニックゲインを全て両腕へと流し込みノイズ目掛けて振り下ろす。斬撃はその軌道を描く様に複数のノイズを切り刻み炭素すら残さず消滅していくが、それと同時に会場すらも破壊していく。斬撃により破壊された壁や天井が会場の至るところに降り注ぎ、ノイズを巻き込んでいくが周囲にいる奏や翼をも巻き込みかける。

 

「福眞!何考えてんだお前!」

「まだ逃げ遅れている人もいる!巻き込まれたらどうするの!」

 

奏と翼は福眞を止めようと駆けよるが、その姿に絶句する。ソレは今まで二人が見ていた者とは違う。赤く赤く、そして黒く黒く、まるでソレの今を表すように炎や斬撃だけにとどまらず、その姿が染まっていく。そして、それに伴うようにソレから恐ろしいほどの殺気が溢れている。

 

「福…眞?」

 

ソレは止まらない。大切な者を泣かせる存在がいる限り、理不尽にすべてを奪われないように、もう誰も失わないように

 

スベテヲハカイシロ

 

今はただこの声に身をゆだねよう。

 

 

 

「ふーくん?」

 

突然のノイズによる惨劇と親友の豹変、目まぐるしく変化していく状況に思考が追いつけず。響はただ茫然とすることしか出来なかった。

何でこんなことになってしまったのか。ありもしない原因を探し現実から逃れようとする。だが、そんな人間を見逃すほどノイズは優しくなく、いたるところに伝播していく崩落もじわじわと響を襲おうとしていた。

 

「……あ…」

 

足元が崩れ戦場へと落ちていく。

逃げる手段が無い響を我先にと周囲のノイズが一斉に襲い掛かる。

 

「響いいいいいい!」

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