慎重術師   作:コケ

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この話の前に書いたやつがあったんだけど消えちゃって萎えた。まあ、あってもなくても問題ないやつだったからいいんだケド


被害者・1人目

 

 竜宮院聖哉は特級術師となってから度々任務を拒否して修行をするが、他の術師と比べて任務の数も相手にする呪霊の等級も格段に上だ。そのため、様々な術式を目にしてきた。その目にしてきた術式から他にどのような術式が存在するのかを想像し、いかなる相手にでも有利に立てるように思考する。

 

 そして竜宮院は今、呪具の扱いをより体に慣らすために呪詛師、呪霊が目の前にいる(てい)で呪具を用い、体を動かしていた。勿論、相手によって相性が良い呪具というものがある。そのため、竜宮院は自分の給料を使って呪具を買う。しかし、自分の給料だけでは足りない。お金を使いすぎると重要な場面で苦労してしまう。そんな時に五条家の次期当主であり、後輩である五条悟が夏油と一緒に稽古をつけてもらう代わりに呪具を譲ると申してきたのでしっかりと縛りを結んで呪具を譲ってもらった。これには普段喜びを表さない竜宮院もにっこり。と言ってもよく注意して見ないと分からないレベルだが。それにより、竜宮院は様々な種類の呪具があり、その扱いを良くするためにこうして今修行に励んでいる。

 

 そして、夏油はそんな竜宮院の動きを目で追っていた。夏油は竜宮院に強い憧れを抱いていた。自分や親友の五条よりも強い。夏油は自分が呪術師の中でかなり上澄みにいると思っていた。しかし、竜宮院はそんな自分より強く、さらには2人しかいない特級術師であるにも関わらず、慢心することなく日々強くあろうとする。任務に同行した時には竜宮院ならば瞬殺できる相手でも、まず遠目から呪霊を見て弱点や習性を探ってから戦う。そんな姿に夏油は自分も先輩のようになりたいと強く願い、暇さえあれば竜宮院の修行風景を見て参考にする。

 

 かれこれ1時間経ったところで竜宮院が動きを止めた。それを見て、夏油は手に持っていたスポーツドリンクを持って竜宮院に近寄る。

 

「お疲れ様です、先輩。これをどうぞ」

 

 夏油は竜宮院にスポーツドリンクを差し出す。しかし、竜宮院は受け取らずにスポーツドリンクをあらゆる角度で見る。

 

「大丈夫です。今から私がひと口飲みますから」

 

 そう言って夏油は3重なっているビニール袋の中に入っているコップを取り出し、ポッケから出した除菌シートで口元につける部分を拭き取り、数秒待って揮発させてからスポーツドリンクを注ぐ。この除菌シートは赤ちゃんの敏感肌にも問題ないものである。夏油はコップに注いだスポーツドリンクを口にして安全であることを示す。

 

「ほら、大丈夫ですよ」

 

 夏油は口を開けてちゃんと飲み込んであることも証明する。

 

「ふむ・・・・」

 

 竜宮院は何かを考えて、口を開く。

 

「・・・・・・ありがたくいただこう」

 

 そう言い、竜宮院はポッケから除菌シートを取り出し、手を拭いてからスポーツドリンクを受け取り、飲む。

 

「聖哉先輩に聞きたいことがあるんです」

 

「なんだ、俺の弱点は教えないぞ」

 

「違います。強くなる秘訣を教えて欲しいんです」

 

「ふむ・・・・強くなる秘訣か」

 

 竜宮院は顎に手を当て、考える。

 

「いいだろう。取り敢えずどこか座れる場所に移動しよう」

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

 そして、2人はベンチのある場所まで移動する。夏油と竜宮院はベンチの前まで行き、座る前にベンチの耐久性を調べるため手で力強く押して確かめる。

 

「大丈夫そうですね」

 

「あぁ、ここにしよう」

 

 2人は安全性を確認できベンチに座る。

 

「強くなる秘訣だったか・・・・」

 

「はい」

 

「秘訣かどうか分からないが、戦闘における心構えがある」

 

「心構え? ですか」

 

「フィールドでは常に呪霊、呪詛師に気をつけて歩け。右を見て左を見て上を見て下を見て後ろを見て、また右を見る。それを延々と繰り返しながら歩くのだ」

 

 普通はこんなことしていたら前に進めやしない。しかし、夏油は違う。

 

「おぉ! そうすれば何処で隠れてるから分からない相手にもすぐ対応できますね」

 

「目に入るもの全てを疑え。親兄弟ですら敵だと思え」

 

 竜宮院は一拍置き、言う。

 

「いいか、夏油。俺はまだお前のことも疑ってるのだ」

 

 普通はこんなこと言われたら怒る。怒るはずなんだが、

 

「す、すごい・・・! なんてことなんだ・・・!」

 

 夏油は感動で打ち震え、綺麗な雫が頬を伝う。

 

「もしかしたら、今のお前は呪霊が化けているのかもしれない。

 術式により俺に幻影を見せているのかもしれない。

 術式によってお前の体を乗っ取って俺を騙しているのかもしれない」

 

「す、すごいですよ・・・・先輩・・・・! そこまで考えてるなんて・・・・!」

 

 夏油にとっては目から鱗なことである。

 

「それともう1つ聞いていいですか?」

 

「まぁ、いいだろう」

 

「先輩はどうして呪術師をやってるんですか?」

 

「それは簡単だ。俺が呪霊という存在を認知しているからだ。呪霊は俺の生活を脅かす天敵だ。そんな天敵がウヨウヨいる。そんなんじゃ、まともに生活できん。だから、俺は呪霊が存在する限り、ひたすら祓い続ける。それを効率的にできるのが呪術師だ」

 

「そう、ですか・・・・」

 

 夏油は少し溜めて口を開く。

 

「・・・・私は非術師を守るためにあると思います。てっきり先輩もそうだと思いました」

 

「非術師を守るため、か」

 

 竜宮院は何かを考えている様子。

 

「何かおかしいですか?」

 

「いや、別に。お前の中で呪術師をどう思ってるかなんてどうでもいい。だが、最初に呪術師になろうと思った理由を忘れるな」

 

「呪術師になる理由・・・・呪霊が見えない家族を守るためになろうと決めました」

 

「そうか・・・・今日のところはここまでだな。まだたくさんあるが、これから呪具の手入れがある」

 

 そう言って竜宮院はベンチから立ち上がり、去っていった。

 

「先輩・・・・」

 

 夏油は去っていく竜宮院を見てそう呟き、頭を横に振る。

 

「いや、師匠・・・・・・」

 

 そうして、夏油は完全に毒されてしまった。

 

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