慎重術師 作:コケ
竜宮院聖哉は数週間前、禪院家の者が呼んだので今日仕方なく出向くことにした。竜宮院は行きたくなかった。それはもう本当に行きたくなかった。どれくらい行きたくないかというと、丸腰で任務に行くくらい行きたくなかった。
ただでさえ、呪術師の家系は変な思想を持っている奴らばっかりなのによりによって『禪院家に非ずんば呪術師にあらず。呪術師に非ずんば人に非ず。』というバカなことをほざいている気持ち悪い家の敷居を跨ぐなどしたくなかった。しかし、すっぽかすと後々面倒なことになるのは火を見るより明らかであり、行くという選択肢しか存在しなかった。
「りゅ、竜宮院さん。着きました」
竜宮院は今日禪院家まで戸田の運転する車で来ていた。戸田は竜宮院によって自信をなくし、竜宮院によってボコボコにされるのが嫌になり呪術師をやめたが、全く関係性は変わらなかった。
「よくここまで連れてきてくれた。褒めてやろう」
「へへっ、りゅ、竜宮院さんのお役に立てて何よりです!」
1年の時から既に立場が逆転していた竜宮院とその元担任。そして、今ではもう周知の事実となっていた。
竜宮院は車から降り、大きな屋敷を見上げる。そして、竜宮院はいつものように決戦の前のセリフを呟く。
「
竜宮院が呟いた後、1人の使用人である女性が顔を出す。
「お待ちしておりました。竜宮院聖哉様。私がご案内いたします」
「・・・・・・あぁ」
竜宮院は本当に行きたくないので不満を隠さずに返事をする。
竜宮院は白い無地のTシャツに黒いズボンというその場にふさわしくない服装で使用人に着いていく。そして、1つの部屋の前で止まる。
「一先ずこちらでお待ちください」
「あぁ」
竜宮院は部屋に入ってすぐに部屋を探る。押し入れやコンセント、畳の裏などを調べ、盗聴器やカメラといった類のものがないかを確認する。
しばらくしてコンコン、という音が鳴り、使用人が姿を現す。
「御当主様の準備ができました」
竜宮院は使用人について行き、長い廊下を渡る。その途中、金髪の男が話かけてきた。
「なぁ、あんたが噂の特級術師なんか? ちょっと付き合ってもらえへんか?」
「直哉様、今から御当主様の所へーー」
使用人が直哉という人物に声をかけるが、途中で遮られる。
「なぁ? 女のくせに俺に刃向かってもええと思っとるんか?」
「い、いえ! そのようなことは・・・・・・」
使用人は必死に否定する。
「なら、邪魔せんとーー」
直哉が喋ってる途中に竜宮院が遮る。
「おい、早く連れて行け。そんなドブカス、相手にするだけ無駄だ」
「あ゛?」
直哉はドブカス呼ばわりされ苛立ちを露わにする。
「え、え・・・?」
「こんなやつよりも当主が偉いんだろう?ならそんなやつ放って早く案内をしろ。こっちは早く帰りたいんだ」
竜宮院は前に進もうとする。
「逃げんなや!!」
直哉が後ろから蹴りをかまそうとする。しかし、竜宮院は脚を掴み、地面に落とす。
「がはっ」
直哉は叩きつけられた衝撃で声をあげる。
「な、直哉様!? 何をしておられるのですか!?」
使用人が竜宮院に怒鳴るが、竜宮院はそれを気にせず、直哉の顔を殴り意識を刈り取る。その直哉を脇に抱えて女性に言う。
「早くしろ。文句を言うな。さっさとしろ」
「な、直哉様を!?」
「うるさい、早くしろ」
「は、はい」
使用人は有無を言わせない竜宮院に対して肯定の返事しかできなかった。
竜宮院が向かっている最中、すれ違う禪院家の者たちが脇に抱えている人物を見て声をあげるが、全く気にせず進み、当主のいる部屋に着く。
「御当主様。竜宮院聖哉様をお連れしました」
「うむ。入れ」
中にいる男から許しが貰え、中に入る竜宮院。中には酒を飲んだ当主である男が待っていた。
「臭い。超臭い」
竜宮院は部屋に入った瞬間に鼻腔を刺激する酒の臭いに思わず口に出してしまった。
当主は部屋に入った竜宮院が脇に抱えている存在を見て、疑問の言葉を投げる。
「おい、脇に抱えているのは誰だ」
当主は顎で竜宮院が抱えている人間を指す。
「お土産だ」
竜宮院は脇に抱えていた直哉を当主に向かって投げる。
「こ、こいつは・・・・・・直哉か? お前がやったのか?」
「直哉か知らんが、それは俺がやった」
竜宮院はポケットから除菌シートを取り出し、直哉を触った手を丁寧に拭きながら言う。
「それがどういうことか分かってるのか?次期当主候補だぞ?」
「そんなことどうでもいい。正当防衛のようなものだ。そいつから蹴ってきたんだ、俺は悪くない」
「そんな証拠ないだろ?おいお前、一緒にいたんだろう?どうなんだ?」
当主は使用人に事実かどうかを問う。
「は、はい、そのようなことはありませんでした」
使用人はすぐに否定する。
「だ、そうだぞ?」
「なら縛りでも結ぶか? 俺はこれから真実を述べる。それで俺の言ったことが本当だったら酒カスにも罰が与えられるだろうが、結ぶか?」
因みに、と竜宮院は続ける。
「これがあるんだが、見るか?」
竜宮院は尻にあるポケットから携帯を取り出し、当主に渡す。
「これはここに来てからずっと録画してたものだ。レンズの部分がポケットから出るように閉まっていたんだが・・・・それでも縛りを結ぶか?」
「ブッハッハッハッ」
当主が竜宮院の言葉を聞いて笑い出す。
「これは一本取られた! 悪かったなうちの直哉が」
当主は何故か知らないが機嫌が良くなる。
「そんなことどうでもいい。さっさと要件を話せ、酒カス」
「この俺にそんな態度を取れるとは! ハッハッハッ流石は特級術師なだけあるな。
おい、お前は男の誰でもいいから直哉を運ぶように伝えろ」
当主は使用人に指示する。そして、直哉がこの部屋からいなくなり、当主と竜宮院の2人になってから当主は口を開く。
「俺はこの禪院家の当主である禪院直毘人だ」
「・・・・・・竜宮院聖哉だ」
竜宮院はこんな酒臭い場から一刻も早く抜け出したいが、そうもいかない。そのため苛立ちが募る。
「それで今回呼んだのは特級術師と色々話をしたくて呼んだんだ。もう1人の特級術師は女だからなぁ。それに、その女自身も呼んで来るような奴ではない。それに竜宮院はあの五条悟とも仲がいいそうではないか」
「そんなことか。なら、電話でいいだろう」
「そんな固いこと言うな。話し合おうじゃないか。あぁそうだ、酒でも飲むか?」
「いらないし、飲めない」
「そう言えばまだ未成年だったか。でも、バレなければ問題あるまい?」
「違う。こんな薄汚い家にある酒なんて誰が飲めるか」
「言うではないか」
「それにアルコールが回っている状態で敵に襲われたらどうする」
「お前なら酔ってても問題あるまい」
「そういう問題じゃない。それにアルコールが回って重要な情報が筒抜けになる可能性がある。お前は俺を酔わせて弱みを握るかもしれないだろう?そんな残念な思考だからゴミの掃き溜めのような家になるんだ」
「ガッハッハッハッ」
直毘人の汚い笑い声が響く。
「その物怖じしない態度、流石特級術師ということか」
「うるさい。笑うな、喋るな、口を開くな。臭くて敵わん」
「特級術師でも臭いには敵わないか?ワッハッハッハッハッ」
「チッ」
そして、直毘人からの問いに竜宮院が面倒臭そうに答えるだけの竜宮院にとって何の実にならない時間を過ごした。
因みに直毘人は大変満足そうにしていた。
「ハッ! ここは・・・・・・」
禪院直哉が気絶から覚めた。
この話は直哉を絡ませるために無理やり書いた話です。
こいつ沸点低そうだから煽られたら蹴り入れてきそう(偏見)