慎重術師   作:コケ

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カイタヨ


パパの苦労子知らず

 

 竜宮院はある人物に呼ばれ、埼玉へ訪れていた。

 

「・・・・・・おい、隠れてないで姿を見せろ」

 

「ハッ、流石だな。呪力が一切ない俺の気配に気づくなんて」

 

 竜宮院の後ろから姿を現したのは伏黒甚爾。

 

「当たり前だ。呪力が全くない敵が襲ってくるかもしれないし、呪力を完全にシャットダウンできる奴に襲われるかもしれん。常に周りを警戒するのは当然だ」

 

「ハイハイ、取り敢えず家入れよ」

 

 甚爾はドアを開け中へ入る。その後に続けて竜宮院が中へ入ろうとするーーはずもなく、辺りを見回す。

 

「おい、早くしろ」

 

「ピアノ線が張り巡らされているかもしれん」

 

「あるわけねぇだろ。それにピアノ線で怪我なんて普通はねぇよ」

 

「普通は、だろう? 少しでも首、腕、脚が切り落とされる可能性があるなら気をつけるべきだ」

 

 竜宮院のこの慎重さを目の当たりにするのは何も初めてではない。しかし、甚爾この慎重さには全く慣れない。

 

「オマエ、そんな生き方してて辛くねぇのか?」

 

 甚爾はずっと疑問に感じていた、アホみたいな慎重さに。

 

「いざとなった時、『やっておけばよかった』では遅い。常日頃、何が起きてもいいように対策するのは当たり前だ。事故に遭った時に、『警戒しておけば・・・』となってしまうのはあってはならないだろう?」

 

「ア〜、もう入れ」

 

 甚爾は諦めた。そもそも竜宮院に何を言ってもダメなのだ。そんなの前から分かっていたが、ついつい聞いてしまった。

 

「本当に大丈夫なんだな?」

 

「前に縛り結んだろ? まだ継続中なんだから気にすんな」

 

「本当はその縛りが切れてるかもしれない」

 

「じゃあ、結び直せばいいだろ」

 

 2人は縛りを結び、リビングへ行く。

 

 

「あれ? 甚爾君、お客さん?・・・・・・って竜宮院君だ!!」

 

 声をかけてきたのは甚爾の奥さん。

 

「あぁ、今日は大事な話があってな」

 

「なら、事前に言ってくれれば色々と用意できたのに!! じゃあ、お茶だすね!」

 

 そう、提案するが、

 

「いや、いらねぇ。ってか、毎回言ってんだろ。コイツは飲まねぇから大丈夫だ」

 

「気が変わって飲むかもしれないから」

 

「おい、竜宮院。いらねぇだろ? てか、自分で持ってきてんだろ?」

 

 甚爾は竜宮院の方を向き、聞く。

 

「当たり前だ。持参したものじゃないと飲めやしない。もしかしたら、毒が入ってるかもしれんからな。信用できるのは自分だけだ」

 

 そう、竜宮院は毒が盛られている可能性を考えて相手からは基本的には相手からの施しを受けない。

 

「相変わらずだね〜」

 

「ホントに失礼な奴だな」

 

「ギャンブル狂いのクセによく言うな。所詮、パチンコ玉並みの小さな脳みそには他人からの施しの危険性など分からないか」

 

「分からねぇよ。オマエみたいな臆病者の気持ちなんてな」

 

「俺は臆病者ではない。何が起こっても大丈夫なように慎重に期しているだけだ」

 

「はいはい! ケンカはお終い! 大事な話があるんでしょ?」

 

「あぁ、そうだったな。オマエが余計なこと言うからだ」

 

「お前が聞いてきたんだろう? ・・・あぁ、そうか。ゴリラには人間の言葉が通じないから無理な話だったな」

 

「あ゛?」

 

 甚爾の頭に青筋が浮かび上がる。

 

「ちょっと!! また始めてどうすんの!?」

 

 またもや、止められる2人。

 

「悪りぃ。・・・ちょっと恵呼んできてくれねぇか?」

 

「恵に関係ある話なの?」

 

「そうだ。頼む」

 

「はーい」

 

 

 

 

 

 リビングには竜宮院と甚爾が向き合う形で座る。甚爾の横にはツンツン頭の男の子ーー伏黒恵がいる。

 

「それで話なんだがーー」

 

 甚爾が話を切り出すが竜宮院が急に立ち上がり、恵に近づく。

 

「コイツ、怪しいな」

 

 竜宮院は手に顎を当て、考える素振りをする。

 

「オマエ、会ったことあるだろ」

 

「会ったことはあるが不安なんだ。もしかしたら呪霊と入れ替わってるかもしれん」

 

 竜宮院は恵に手を当てる。すると、恵の体は白い輝きを見せる。

 

「?」

 

 恵は状況が読み込めずにいる。

 

「・・・何してんだ?」

 

「反転術式だ。もしかしたら、コイツは呪霊かもしれない。もし、呪霊であるならば正のエネルギーでダメージを受ける。・・・・・・ふむ。ダメージは受けないか。かなり耐久性が高いみたいだな。いや、正のエネルギーが無効なタイプの呪霊の可能性もある。油断できないな」

 

「いや、呪霊じゃねぇよ」

 

 甚爾は天与呪縛によって得たイカれた身体能力で竜宮院の肩を掴み無理やり座らせる。

 

「お前怪しいな? 後ろめたいことがあるから中断させたな?」

 

 竜宮院は甚爾にも反転術式を使う。

 

「もういいや」

 

 甚爾は竜宮院が納得いくまで付き合うことにした。

 

 

 

 

 

 やがて竜宮院による呪霊検査が終わり、席に着く。

 

「それで話とはなんだ?」

 

 竜宮院が何事もなかったように話を切り出す。

 

「はぁ、恵のことについてだ。コイツは持ってる側だ」

 

 甚爾は恵の頭をワシャワシャと撫でながら言う。

 

「それも、禪院家相伝の術式だ。禪院家の御当主サマは喉から手が出るほど欲しいだろうよ」

 

「あの酒カスのことか・・・」

 

 竜宮院の言葉を聞き、甚爾は目を見開く。

 

「・・・知ってんのか?」

 

「残念なことにあのゴミの巣窟に何度も呼ばれている」

 

 竜宮院は心底嫌ですと言わんばかりに顔を歪ませる。

 

「・・・へぇ、気に入られてるのか?」

 

「知らん。そんなことどうでもいい。それで俺に何をさせるつもりだ?」

 

「恐らく、いや絶対に恵を攫ってこようとする。別にあんな奴ら相手にもならねぇが、俺が近くにいられない時がある。だから、1人でも対抗できるように稽古をつけてくれ。

 それと五条と繋いでくれ。五条家の後ろ盾があれば問題ねぇだろ? それに、禪院家が嫌ってる五条家に取られるなんておもしれぇじゃねぇか」

 

「別におもしろいかどうかなんてどうでもいい。そもそもあのイカれたゴミ屋敷に異物であるお前の子供を放り込んだらさらに荒れると思うんだが。何より見下してきた奴の子供だ」

 

「まあ、中にはいるだろうが、術式大好きな禪院家のことだ。完全には受け入れてもらえないだろうが仲の悪い五条家にひと泡吹かせられるなら安いもんだろ」

 

「そんなものか。俺にはさっぱり分からんな。あのプライドだけ異様に高い奴らのところに放り込んだら足の引っ張り合いが始まっていつか内部崩壊するかもしれん。

 ・・・そんなことよりも手伝ってやるから報酬を寄越せ」

 

「呪具か? 別に俺はもう戦うことなんて目の前にいる呪霊を祓うのと家族を守る時くらいだから1つくらいならいいぜ」

 

「なら、縛りを結べ。裏切ることは許さん。裏切った場合、四肢を引きちぎるぞ」

 

「ヘイヘイ」

 

 そうして、2人の間で縛りが結ばれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 竜宮院が帰った後、リビングには甚爾と恵の2人が残った。

 

「勝手に決めて悪いが、今度からさっきまでいたアイツに呪術を教えてもらうことになる。オマエには強くなってもらわないといけないからな。

 呪術って言うのは前に教えてやったから分かるだろ?」

 

「呪力や術式を使って呪霊を祓うやつだっけ?」

 

「あぁ、そうだ。俺は術式がない。当然呪力もない。だから、俺が教えてやれるのは体術だけだ。それで、呪術に関してはアイツ、竜宮院が教えることになる。そこで気をつけなきゃならねぇことがあるから、しっかり聞け」

 

「うん」

 

 甚爾は真面目な顔つきになり、口を開く。

 

「アイツはありえないくらい慎重だ。頭がおかしくなってるんだ。アイツが言ってることは呪術以外なら聞く必要ないからな? 別にこれはフリとかじゃねぇよ」

 

「フリ?」

 

「いや、なんでもねぇ。取り敢えず、アイツに言われたことはその日のうちに俺に伝えろ。そしたら、俺はオマエにキッチリと竜宮院に言われたイカれた認識を正すから」

 

「よく分かんないけど、竜宮院さんに言われたことを父さんに言えばいいんだろ?」

 

「あぁ、そうだ。アイツは病気だから俺がかからないようにしてやるからな」

 

 甚爾は自分の息子が慎重になりすぎることを危惧していた。

 最近、何やら慎重教というものができたと以前の仕事仲間の孔時雨から聞いていた。その宗教はまだそこまでの広がりを見せてないと言うものの、一人一人が熱狂的な信者ということ。そして、その開いた人物というのが特級術師の夏油傑。その夏油は竜宮院を師匠と呼んで慕っていると言う。そんな危ない奴からの教えなど絶対に従ってはならない。自分の息子があの竜宮院のようになってしまったらショックで寝込んでしまう。そう考えた甚爾は必死にアッチ側へ引き込まれないようにしようと決めた。

 

(なんで俺がアイツに怯えねぇといけねぇんだよ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 甚爾と竜宮院が契約を交わしてから3ヶ月が経った。

 

 そして、甚爾と恵がリビングで話をしている。

 

「今日は『まず目の前のものを疑え、それは人でも物でも、だ。そこにいる通行人がお前を襲ってくるかもしれん。そして、今話している俺自身も俺じゃないのかもしれない。今、お前は俺じゃないかもしれない人物に騙されているかもしれん。その場合、お前は今ここで死ぬ。だから、常にありとあらゆるものを疑え』みたいなこと言ってた」

 

 恵は甚爾に今日、竜宮院に教え込まれたことを報告していた。そして、それは勿論甚爾が危惧していた慎重語録であった。

 

「チッ、小学生のガキに何教えてんだよ。

 いいか? 恵。疑うのはオマエの勝手だが、相手を疑いすぎたら母さんに嫌われるぞ? 疑うのはほどほどにしとけよ」

 

「嫌われるのはイヤだ」

 

「あぁ、そうだ。俺もオマエが常に人を疑ってたら仲良くできないかもしれない」

 

「じゃあ、なんで竜宮院さんはあんなこと言うんだ?」

 

「言ったろ、アイツは病気なんだ。いちいち気にしてたら身がもたねぇよ」

 

 甚爾は竜宮院によって教え込まれたことを矯正する。

 

(なんでこんな目に遭わねぇといけねぇんだよ)

 

 甚爾は竜宮院の慎重さに怯える被害者であった。

 

 

 

 

 




恵が慎重になっちゃうとこれからの展開に困るから是非ともパパ黒には頑張ってほしい。・・・・・・そう、頑張ってほしいんだ。

津美紀は・・・・・? 大丈夫、大丈夫。あと5話くらいしたら登場するから安心なされよ。
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