慎重術師   作:コケ

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戦闘の達人

 

 七海と灰原は高専を卒業した。

 七海は呪術師を辞めて証券会社へ入社。

 灰原はーー

 

 

 

「今日は、1級呪霊の任務です! 竜宮院さんなら大丈夫だと思いますが、万が一があるのですぐに対応できるように準備します!」

 

「別にいらん。俺のことを倒せる呪霊ならお前は勝てない。大人しくしてろ」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

 慎重補助監督として多くの呪術師を任務へ連れて行っている。灰原は強くなるために必死に頑張ってきたが、自分は呪術師を慎重にサポートする方が向いていると判断して補助監督の道へ進んだ。

 

 竜宮院は任務に行く際は補助監督を灰原に指名している。それは、前日に何度も任務の詳細を確認しているため。勿論、完全に信用しているわけでなく、しっかりと竜宮院自身も確認作業を行なっている。

 

 そして、この灰原が補助監督として付いている呪術師は未だに死者がゼロであり、元気で愛嬌がある。慎重すぎるところに目を瞑ればかなり好評である。

 

「最近、森川(もりかわ)(しょう)っていう呪詛師が暴れてて不安ですね。噂だと1級術師並だと聞きましたけど、本当なんですかね?」

 

「知らん。だが、そんな誰が立てたか分からん噂は信用ならん。常に相手が自分を上回っていると思いながら準備をしなければならん」

 

「僕もお手伝いします!」

 

「いらん」

 

 竜宮院は即断る。

 

「はい!」

 

 しかし、灰原は断られても元気な声で返す。灰原は憧れの人物とこうやって話せてるだけでも嬉しいのだ。例え、ここで死ねと言われても迷いなく自害できるほどである。

 

「あ! 竜宮院さん、もうそろそろ着きます!」

 

「うむ。よくやった。褒めてやろう」

 

「ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして数分、車を走らせて任務地に到着した。

 2人は車から降り、最終確認を行う。

 

「では、最終確認をします! 今回は1級呪霊で窓からの報告によると喋ることが可能であり、かなり知能が高いとされてます」

 

「他の呪霊より知能があるのは知っている。昨日軽く確かめに行ったからな。ボソボソ喋ってるのが聴こえた」

 

「それに人型の呪霊です。あの呪霊が完全に人間に化けることができるような術式だった場合、かなり危険だと思います」

 

「うむ」

 

「それからーー」

 

 2人は車から降りて30分間もの時間を確認に使い・・・・・・

 

「では、行くとしよう」

 

「帳下ろしますね!」

 

 灰原はポケットから数枚の札を取り出し、地面に置く。この札は灰原が毎日生産しているものであり、その効果は帳の強度を上げ、全く壊れない強固な帳を下ろすことが可能になる。尤も、かなりの技量がいるため並の補助監督では扱えない。

 

『闇より出でて 闇より黒く その穢れを禊ぎ祓え』

 

 すると、通常の帳より真っ黒な夜が落ちる。

 

 竜宮院は前を真っ直ぐと見つめ、呟く。

 

レディ・パーフェクトリー(準備は完全に整った)

 

「では、頑張ってください!」

 

「あぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 竜宮院は呪霊がいるであろう地に足を踏み入れた。

 すると、目の前には3つの目、そしてその目を3つのレンズがある不思議な眼鏡で覆った身長2メートル超えでヒョロヒョロで猫背の人型の呪霊が立っていた。そして、その呪霊からはあまり大きな呪力を感じない。

 

 その呪霊は竜宮院の姿に気づくと声をかける。

 

「あ、あの、ぼ、ぼくを祓いに、き、来たんですか?」

 

 呪霊は吃りながら、竜宮院に問う。

 

「お前が1級呪霊か」

 

「は、はいぃ。で、でも、ぼ、ほくなんてそ、そんな強くないですよ。ただ喋れるだ、だけの、ざ、雑魚呪霊ですぅ」

 

「そうか・・・なら、全力じゃなくて済むな。明日は忙しいからあまり疲労を溜めたくなかったからちょうど良かった」

 

 竜宮院は刀を抜き、目の前の呪霊に向ける。

 

「ひっ!? で、でもやるしかない!」

 

 呪霊は迫ってくる竜宮院にフラフラした足取りで真っ正面から突っ込む。

 竜宮院は突っ込んできた呪霊の左肩に刀を置き、下に振り下ろーーすことはできなかった。

 左肩に刀が置かれた瞬間に凄まじい速度で右手で刀を上から掴む。

 

「捕まえた」

 

 竜宮院は刀を持った腕を引こうとするも呪霊がそれを許さない。

 

「これで終わりだ、呪術師」

 

 呪霊の左手が光に包まれる。その左手を竜宮院の腹に撃ち込む。

 竜宮院は咄嗟に目を瞑る。直後、大きな光に覆われ、やがて大きな音を立てて爆発する。

 

「ハッハッハッハッ!! どうだ! 呪術師! まんまと騙されてよって!!」

 

 呪霊は大声で嗤う。

 

「強者はな、自分の手の内を明かさないんだぜ? あえて弱者の振りをして油断させる。お前はまんまと騙されたんだよ! 俺の策略にな!!」

 

 呪霊は自慢げに自分が強者だと言い張る。しかしーー

 

「何を当たり前のことを言っている。手の内を明かさないのは当然のことだ」

 

 竜宮院は傷ひとつ無く、姿を現した。

 

「な、なぜ!? あの攻撃はかなりの火力だったぞ!?」

 

「なら、大した火力ではなかったということだろう」

 

「お、おまっ!? ふぅ・・・ 落ち着け。すぐ頭に血が上のは良くない。常に冷静であることが戦闘において重要なんだ」

 

 呪霊は竜宮院の発言にキレるが、すぐに落ち着きを取り戻す。

 

「お前にあの攻撃が耐えられるはずがないんだが・・・もしや手を抜いていたな?」

 

「自分で言ってたことだろう。手の内を明かさないと」

 

「ほう・・・お前もその道の者か。どちらも呪力を程よい量に抑えていたか。まあ、いい。続きだ・・・・・・ッ!」

 

 呪霊は竜宮院に向かって一直線。竜宮院は刀で攻撃を受け止め、押し返す。そして、竜宮院が刀を呪霊に振り下ろす。反応ができず、呪霊の右腕が千切れて地面に落ちる。すかさず、竜宮院は腹部に刀を突き刺し、抜いて、左腕を切り落とす。一方的に竜宮院が攻撃を仕掛ける。

 

 呪霊は必死に後退する。

 

「まずいな・・・今のままでは負けてしまうな。なら、これでどうだ!」

 

 呪霊の右腕と左腕が生え、グニャグニャと変形し、右腕が剣に変化する。

 それだけでは終わらず、呪霊は全身に力を入れる。すると地面が揺れだし、眼鏡にヒビが入り、やがて割れる。細かった体が膨れ上がり、逞しい筋肉が浮き出てきた。

 

「これが俺の奥の手だ」

 

 太くなった脚で地を蹴る。地面には大きな蜘蛛の巣のようなヒビが入っていた。

 先程のスピードを遥かに凌駕し、竜宮院の首を剣で狙う。しかし、ギリギリのところで竜宮院が反応し、躱す。

 

「まぐれで躱したところで意味ないぞっ!?」

 

 呪霊は剣を振り回し、斬りつけようとする。

 竜宮院はギリギリのところで躱し、受け止め、なぎ払う・・・ ひたすらそれを続ける。

 

「バカな!? この速さについていけるわけない」

 

 呪霊は攻撃を止め、距離をとる。

 

「このまま続けても勝てるだろうが、念には念を入れるとするか」

 

 呪霊は、すぅぅぅぅ!! と大きく息を吸う。するとみるみる体が大きくなっていく。体が大きくなるにつれ、体のあちこちからブチブチと不気味な音が漏れる。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、この姿を見せるのは何年振りになるのか・・・・・・? これから俺に殺されるお前に教えてやる。本物の戦闘の達人は『奥の手の中に更にもう一つの手を隠し持っている』俺は頭が良い。常に思考を巡らせ、辿り着いた戦法だ! 俺の奥の手の奥の手でお前を屠ってやる」

 

 呪霊は先程よりも大きくなった剣で竜宮院を切り裂こうと突撃する。そのスピードは凄まじく、並の呪術師では目で追うことができないのほ勿論のこと、先程の調子なら竜宮院でさえも難しいだろう。しかし、竜宮院はそれを刀で防ぐ。だが、刀は折れてしまう。その瞬間に竜宮院は後退し、距離をとる。

 

「な、何故だ!? 何故反応できる!?」

 

 呪霊はあの一撃で殺すことができると思っていた攻撃に反応できたことに驚く。

 

「俺は常に自身に6つの縛りを結んである状態でいる。3つはいつもと変わらない縛り。残りの3つは日によって内容を変え、見抜かれないようにしている。そして、俺は今縛りを1つ破棄した」

 

 竜宮院は過去に五条の六眼をも欺いた縛りを破棄するとこで呪力出力が4分の3まで制限されていたのが解除された。そして、身体能力を強化することであの凄まじいスピードを見切ることができた。

 

 竜宮院は折れた刀を捨て、新しい刀を取り出す。

 

「そして、これは先程の刀のスペアだ。先程はいきなり呪力を込めてしまって耐えられずに折れてしまった。だが、これは折れた瞬間にすぐに呪力を少しずつ流し込んどいた」

 

 その竜宮院に握られた刀には火を纏い始め、次第に大きな炎となる。

 

「本当の本物の戦闘の達人は『奥の手のさらに奥の手を隠し持っている相手を想定して常に奥の手を隠し持っている』」

 

 竜宮院は呪霊を睨めつける。

 

「こ、この俺を上回るなんて・・・・・・!」

 

 呪霊は驚愕の表情に染まる。

 

フェニックス・ドライブ(鳳凰炎舞斬)・・・・・・!』

 

 竜宮院は先程の呪霊を上回る驚異的なスピードで迫り、炎を纏った刀を振るう。呪霊の体に真っ赤な線が走る。竜宮院はもう一振り、さらにもう一振りする。真っ赤な線が無数にでき、竜宮院は距離をとる。すると呪霊がいたところから凄まじい轟音が響き、大爆発した。

 

 呪霊は祓い終わった。しかし、まだ帳は上がらない。それは何故か。

 

ヘルズ・ファイア(地獄の業火)・・・・・!』

 

 竜宮院がこのように少しでも呪霊が生き残っている可能性を考え、術式を何発も放つのを灰原が知っているため、上がらないように細工をしているからだ。

 

ヘルズ・ファイア(地獄の業火)・・・・・!』

 

 もう1発。

 

ヘルズ・ファイア(地獄の業火)・・・・・!』

 

 さらにもう1発。

 

ヘルズ・ファイア(地獄の業火)・・・・・!』

 

 竜宮院はまだ続ける。

 

ヘルズ・ファイア(地獄の業火)・・・・・!』

 

 竜宮院は満足がいき、動きを止める。

 

「まずい、呪力をかなり使ってしまった。早くお家に帰らねば」

 

 そう言う竜宮院だが、まだ呪力は6分の1程度しか消費していない。

 

「スペアのスペアを買わなければ」

 

 竜宮院は縛りを結び直し、先程捨てた折れた刀を拾って灰原の元へ向かった。





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