慎重術師   作:コケ

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3月頃に上げる予定だったけど余裕できたから投稿しちゃった。


内容忘れてる人もいるだろうけど、確か慎重な術師が多いという知識さえあれば読めます。多分。

それと、チマチマ読み返してて思ったのは慎重過程が雑すぎたなって。一人一人丁寧に慎重に落とし込みたかったって今更後悔してます。


転機

 

 ウニ頭が特徴的な青年――伏黒恵は自室で不機嫌そうな表情でパソコンの画面を見ていた。そのパソコンの画面には口元に傷があり、一般男性よりも遥かに肩幅が広く、着用中の服が悲鳴をあげそうな程の筋肉を持ち合わせている伏黒恵の父――伏黒甚爾が映っていた。

 

『今日は竜宮院に何を言われた?』

「今日も会ってない。てか、いい加減にしてくれ親父。毎晩、毎晩・・・・・・」

『俺はオマエが心配で』

 

「取ってつけたような理由なんていらない。親父は俺に竜宮院さんみたいになってほしくないだけだろ」

 

 甚爾は過去に――否、今も尚、竜宮院聖哉という男に頭を悩まされている。

 甚爾は未だに竜宮院に稽古をつけている。呪力ありなら甚爾を圧倒できる強さを誇る。だから、甚爾はやっと解放されると思っていた。しかし、竜宮院は呪力が使えなくなった場合を想定して、呪力なしでも勝てるまで続けると言い張る。甚爾は竜宮院との縛りがあるため、断ることができずにいた。さっさと強くなってもらって解放されたかったが、流石に天与呪縛によって異常な程の肉体を持つ甚爾には呪力なしで敵わない。そのせいで竜宮院にずっと付き纏われている。

 ただの稽古なら甚爾は不満がない。だが、相手は竜宮院。あまりの慎重さに日々、イライラが募る。そのイライラを解消してくれるのが妻の存在。彼女がいなければ、今頃怒り狂って実家を破壊し尽くしていたかもしれない。それ程、妻がいる家庭が支えになっている。

 そして息子である恵は主に、五条悟と竜宮院聖哉に呪術を教わっている。その竜宮院は実力はあるが、 "ありえないくらい慎重" で、過去に直接的であれ、間接的であれ、多くの術師を慎重へと陥れた不名誉な実績がある。息子が竜宮院のように "ありえないくらい慎重" になってしまうのではないか、と。もし、息子が竜宮院のような性格になって帰ってきたら、甚爾の温かい家庭が "慎重" という呪いに脅かされてしまう。

 そのため、毎晩ビデオ通話で息子の状態を確認している。いくら嫌われようとも――

 

「もう切るぞ。明日は任務の関係で宮城に行かないといけないんだ」

『あぁ、悪か――』

 

 恵は甚爾が何かを言い終わる前に電源を切った。

 

「ったく、気にしすぎなんだ親父は。大体、竜宮院さんみたいに慎重になる方がおかしいんだよ。そんな過度に慎重になって助かる状況なんてあるわけないだろ」

 

 恵は毎晩欠かさず、ビデオ通話を要求してくる甚爾に辟易していた。恵自身も竜宮院の異常性は理解できているので、わざわざ確認する必要ないと言っているが甚爾は全くやめる気配がない。それほど、彼は息子に竜宮院のようになってほしくないということだ。

 

「はぁ、特級呪物の回収か・・・・・・ どう考えても1年に務まる任務じゃない。五条先生が任務が終わったらすぐに向かうとは言ってはいたが・・・・・・」

 

 恵は若干不安に思うものの、なるべく手は借りたくないが最悪、五条先生が来ると言っていたから大丈夫だろうと楽観的に捉え、任務に備えて疲れている体を休めるために眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 恵は宮城県仙台市にある相沢第三高校にある特級呪物を回収しに来た。

 この特級呪物は呪霊の源になる人間の負の感情が溜まりやすいとされる学校で魔除けのために置かれている。しかし、今回回収しにきた特級呪物――両面宿儺の指。これは特級呪物の中でも一線を画す物であり、あまりにも危険過ぎる。そして封印された状態で保管されていたが、その封印の効力が薄くなっているため、回収することになった。

 本来であれば、特級術師あるいは1級術師に当てられるような任務であるが、何故か高専の生徒に行かせるように上層部から五条に言い渡された。そして、回収の日はタイミング悪く、五条が長期任務のため、付き添うことができなかった。

 

 恵は百葉箱に保管されていると事前に報告を受けており、学校にある百葉箱へと足を運んだ。

 

「ここにあるのか・・・・・・ こんなところに保管するなんて馬鹿すぎる」

 

 そして百葉箱の扉を開けるが――

 

「ない・・・・・・」

 

 なんと百葉箱はもぬけの殻だった。その周辺を探してみるものの、全く見当たらない。

 

 すぐさま、五条に連絡する。

 

「もしもし、五条先生」

『ん? 見つかった?』

「ないです」

『え?』

「百葉箱、空っぽです」

『マジで? 誰かが取っていっちゃったとか?』

「どうするんですか?」

『明日には任務が終わるから、それまで探しといて。ホントはセンパイや傑に頼みたいけど、センパイは海外に飛ばされてるからね。傑はミゲルと共に海外で憂太に稽古をつけたり、黒縄探したりしてるんだよね。あの呪具強いから沢山所持してた方がいいし。・・・・・・ あっ!?』

「・・・・・・どうしたんですか?」

『センパイが海外へ行く前に『特級呪物を回収することになった時の重要事項』っていう分厚いマニュアルを貰ったんだった。他にも『特級呪霊が大量発生した時の攻略法』とか『呪物を取り込んでしまった時の対処法』とか『呪詛師が高専に侵入してきた時の立ち回り方』みたいなのが色々あるんだよね。すっかり忘れてた』

「分厚いマニュアル・・・・・・」

『ま、頑張って。なるべく急ぐからさ。じゃ!』

「ちょっ!?」

 

 スマホからプープープーと音が鳴る。

 

「切りやがった」

 

 恵は青筋を浮かべ、後で殴ってやると己の心に誓った。

 

 

 

 

 

 

 翌日、恵は特級呪物を回収するため、相沢第三高校の学生として潜入した。

 

「死体でも埋まってんのか? それとも例の呪物の影響か・・・・・・?」

 

 恵は学校の敷地内にいる2級相当の呪霊を見て口にする。

 

(さっさと回収しないとな・・・・・・)

 

「クソ! 気配がデカすぎる」

 

 すぐ隣にあるようで遥か遠くにあってもおかしくない気配に、イライラしながら頭を乱暴に掻く。

 

「これじゃ、潜入した意味がまるでねー。特級呪物・・・・・・厄介過ぎだ」

 

 スマホを取り出し、ある木箱の中に封がされている何かが入っている写真を見ながら愚痴る。

 恵は気が進まないが、一旦学校を休校にしてから隅々まで探そうかと考える。

 と、そこでグラウンドの中央で人集りができているのを目にする。

 

「陸部の高木と西中の虎杖が勝負すんだよ!!」

 

「種目は!?」

 

「砲丸!!」

 

 ある男が砲丸を投げ、その記録に周りの者は騒ぎ立て、拍手をする。

 そして次に、1人の青年が砲丸を持ち、勢いよく投げる。

 その投球は凄まじく、まるでソフトボールを投げているのかと錯覚する程のスピードで宙を走る。砲丸はサッカーゴールポストに直撃し、大きく凹ませた。

 

(凄いなアイツ。呪力なしの素の力でアレか。禪院先輩と同じタイプかな。流石に親父程ではなさそうだが・・・・・・って見てる場合じゃなかったな)

 

 恵は思い直して、呪物の捜索に移るが――

 

「ああっ! もう半過ぎてんじゃん!」

 

 いそげー! と恵の前を駆け抜ける先程の青年。

 

 一見なんともない普通の光景。しかし、恵はその青年から感じとる禍々しい気配を感じ取った。そして、それが呪物の気配だと瞬時に理解する。

 

「おい、オマエ! ・・・・・・って速すぎんだろ!!」

 

 声をかけるが、青年のあまりの足の速さに残念ながら恵の声は届かなかった。

 

(アイツが呪物を持ってるのは間違いない、か)

 

 恵は青年の元へ向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 杉沢病院のある病室にベッドに横になる1人の老人とパーカーを着た1人の高校生。

 

「悠仁・・・・・・ 最期に言っておくことがある」

 

 老人は病室にいる高校生――虎杖悠仁に話かける。

 

「オススメの宗教が――」

 

「またその話? いいよ興味ねーから」

 

 虎杖は老人の言葉を遮り、拒否する。それ対し、老人は大きく息を吸い、口を開く。

 

「オススメの! 宗教の! ことだが!」

 

「だから興味ねーって。爺ちゃんさあ、死ぬ前に意味分かんねえ宗教ススメんのやめてくんない?」

 

「オ・・・オマエ」

 

 大声で虎杖の興味を引こうとするも、全く取り合ってもらえず、老人――虎杖の祖父は少し苛立ちを覚える。

 

「慎重になることは何よりも優先されるべきものなんだよ!! コレを読め!!」

 

 そう言って、横にある棚から1冊の本を取り出した。

 

「花とかいちいち買ってんじゃねえ。この本買え」

 

「爺ちゃんにじゃねえよ。看護婦さんに買ってんだ」

 

「尚更だ馬鹿。

 つーか、部活はどうしたよ。こんな消毒くせえところでサボってんじゃねー」

 

「うるせえなあ! 部活は5時前に終わんの! 俺だって暇じゃなきゃいちいち見舞いなんてこねーよ」

 

 虎杖は小言に言い返す。

 

「・・・悠仁」

 

「んー?」

 

「オマエは強いから人を助けろ。手の届く範囲でいい。救える奴は救っとけ。感謝されなくてもとにかく助けてやれ。

 オマエは大勢に囲まれて死ね。俺みたいにはなるなよ」

 

 虎杖はそう言われてから後ろへ振り向いた。

 

「・・・爺ちゃん?」

 

 声をかけるも、いつもの口うるさい反応が返ってこなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「うん、必要な書類はこれで全部」

 

「ウッスお世話になりました」

 

 虎杖は祖父が亡くなり、その際の書類を記入していた。

 

「本当に大丈夫?」

 

 看護婦さんは虎杖に心配の声をかける。何せ、家族が亡くなったのだ。それもたった1人の家族が。さらに虎杖はまだ高校生。状況の整理が上手くできなくても無理もない。

 

「そーっスね。こういうの初めてでまだ実感湧かないかな・・・・・・

 でも、いつまでもメソメソしてっと爺ちゃんにキレられるし、後は笑ってコンガリ焼きます」

 

「言い方・・・!」

 

 看護婦と2人で会話していると、虎杖に声をかける者が現れた。

 

「虎杖悠仁だな。呪術高専の伏黒だ。悪いがあまり時間がない。オマエが持ってる呪物はとても危険な物だ。今すぐこっちに渡せ」

 

「じゅぶつ・・・?」

 

 虎杖は急に現れた伏黒と名乗る見知らぬ男に質問されて少し混乱した。

 

「これだ。持ってるだろ」

 

 恵はポケットからスマホを取り出し、例の呪物の写真を虎杖に見せる。

 虎杖はその写真を見つめて、小さな脳みそから記憶を引っ張り出す。

 

「あーはいはい。拾ったわ。

 俺は別にいいんだけどさ。先輩らが気に入ってんだよね。理由くらい説明してくんないと」

 

 恵は説明を要求され、ザックリと教える。

 

「日本国内での怪死者・行方不明者は年平均10000人を超える。その殆どが人間から流れ出た負の感情。"呪い" による被害だ」

 

「呪いぃ?」

 

「オマエが信じるかどうかなんてどうでもいいんだよ。続けるぞ。

 特に学校や病院のような大勢の思い出に残る場所には呪いが溜まりやすい。

 残骸や後悔、恥辱、人間が記憶を反芻する度、その感情の受け皿となるからな。

 だから学校には大抵"魔除け" の呪物が置いてあった。オマエが拾ったのもソレだ」

 

「魔除け? なら、いいじゃん。何が危険なの」

 

 虎杖は恵の話を聞き、当然の疑問を浮かべる。

 

「魔除けと言えば聞こえはいいが、より邪悪な呪物を置くことで他の呪いを寄せ付けない。毒を毒で制す悪習だ。

 現に長い年月が経ち封印が緩んで呪いが転じた。今や呪いを呼び寄せ、肥えさせる餌。

 その中でもオマエの高校に置かれていたのは特級に分類される危険度の高い物だ。人死にが出ないうちに渡せ」

 

 そう言い、恵は返却を要求する。

 

「いやだから、俺は別にいいんだって。先輩に言えよ」

 

 そう言って、虎杖は呪物を入れていた箱を投げす。

 しかし、恵は箱を受け取って中身を確認すると空だった。そこで伏黒は気づいた。自身が追ってきてのは箱にこびりついた呪力の残穢だと。

 

「中身は!?」

 

「だァから、先輩が持ってるって」

 

 恵はすぐに胸ぐらを掴んで問い詰めるも、今この場にないことが判明した。

 

「ソイツの家は!?」

 

「知らねえよ。確か、泉区の方・・・?」

 

「なんだ?」

 

「そういや今日の夜、学校でアレのお札剥がすって言ってたな」

 

 恵はその言葉を聞いた瞬間、背筋に冷たい何かが伝う感触がし、それと同時に竜宮院の顔がチラついた。

 

「もしかしてヤバイ?」

 

「ヤバイなんてもんじゃない、ソイツ、死ぬぞ」

 

 2人はその場からすぐに離れて学校へ向かった。その最中、恵の脳内には早く回収しなければ、という思いとあの時、虎杖が呪物を所持していると思い込まずに"慎重" に判断していれば、という2つの思いが占領していた。

 

 




一応完結までの流れはできてるんだけど実際書こうとすると、先に呪物回収してんだろ、とか、こんな状況にならんだろ、とか・・・・・・ 慎重な奴がいすぎて話始まんなくね?ってなってしまう。初期は受肉させない方向で考えてたけど、一応伏線擬きを考えてたから受肉させないとなぁ、って。だから、羂索が必死こいて根回ししました。お疲れ様。
ちょっと無理あるけど許してほしい。
 「許してくれないかい?」
羂索もそう言ってるので許してあげてください。

次の投稿は今月中にできるかも知れないし、できないかも知れない。
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