慎重術師   作:コケ

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勢いで書けちゃった。お気に入りとか評価とかあざます!

見立てでは後8話くらいで完結するかも。気が向いたら番外編書いたり、書かなかったり。


人の指は食べるな!慎重になれば分かることだろ!?

 

 2人は学校に到着し、恵は虎杖を門外に置いて敷地内へ入り、呪物を回収しに行っていた。

 そして、恵は2人の男女、さらに呪物を呪霊が飲み込もうとしているのを発見した。

 

「クソッ」

 

 恵は間に合わないと悟ると同時に、竜宮院の顔がチラついた。

 しかし、呪霊が飲み込む前に窓ガラスを割って入ってきた虎杖が2人を回収することで防いだ。

 そして、隙ができたことで伏黒は呪霊に攻撃し、校内に入ってから召喚した式神――玉犬に喰わせた。

 

「なんで来たと言いたいところだが、良くやった」

 

 恵は虎杖の元へ向かい、安否を確認する。

 

「なんで偉そうなの?」

 

 虎杖は女を抱えながら、伏黒の召喚した式神に目を向ける。

 

「因みにあっちで呪いバクバク喰ってんのは?」

 

「俺の式神だ。見えてんだな」

 

「?」

 

 恵のセリフの意図が分からなかった虎杖は疑問を浮かべる。

 

「呪いってのは普通見えねぇんだよ。死に際とか、こういう特殊な場では別だがな」

 

「あー確かに俺今まで幽霊とか見たことないしな」

 

「・・・・・・ オマエ、怖くないんだな」

 

 恵は初めて呪霊を見たのにも関わらず、平気そうにしている虎杖に疑問の声を投げかけた。

 

「いやまあ、怖かったんだけどさ。

 知ってた? 人ってマジで死ぬんだよ」

 

「は?」

 

「だったら、せめて自分が知ってる人くらいは死んでほしくないって思うんだ。

 まあ、自分でもよく分からん」

 

「・・・・・・いや」

 

 恵が何かを言おうとした時、虎杖が抱えている女の手から呪物が落ちた。

 

「これが」

 

 虎杖は拾った呪物を不思議そうに見つめる。

 

「ああ。特級呪物"両面宿儺" その一部だ」

 

 2人がやり取りをしていると、虎杖の頭上には呪物を奪い取ろうとする呪霊がいた。

 

「逃げろ」

 

 呪霊に気づいた恵は虎杖が飲み込まれないように突き飛ばす。

 虎杖は何とか呪霊の攻撃を回避することができたが、代わりに恵が呪霊に捕まってしまった。

 

『鵺』

 

 恵は式神を召喚して抵抗しようとするも、壁に向かって投げ飛ばされてしまう。さらに呪霊は壁がブチ抜けるほどの攻撃を与え、恵は外へ投げ出される。

 恵は立ち上がり、思考を開始するも頭が回らない。そして慎重になっとけば・・・・・・! と後悔する。

 そんな時に、上から虎杖が呪霊に打撃を加える。恵は目の前で見た虎杖の馬鹿力に目を見開く。

 

「大丈夫か?」

 

「逃げろつったろ」

 

「言ってる場合か! 今帰ったら夢見悪ぃだろうが。それにな・・・・・・」

 

 虎杖には祖父から人を助けろと言われたのを頭に浮かべる。

 

「それに、こっちはこっちで面倒くせえ呪いがかかってんだわ」

 

 そう言い、虎杖は呪霊に攻撃を仕掛ける。しかし、虎杖がいくら強かろうと――

 

「呪いは呪いでしか祓えない」

 

 恵は呪霊に反撃を喰らい倒れ伏している虎杖に伝える。それに対し、早く言ってくれと文句を言う虎杖。

 

「今あの2人を抱えて逃げれんのはオマエだけだ。さっさとしろ、このままだと全員死ぬぞ」

 

 恵は端でそ割り込んでいる虎杖の先輩に目を向けて言う。今の恵は度重なる呪霊の攻撃で体がボロボロ。対する虎杖は攻撃を喰らっているものの、ダメージは少ない。さらに恵は自身の目で虎杖の優れた身体能力を目にしている。そして何より――

 

「呪力のねぇオマエがいても意味ねーんだよ」

 

 そう、呪力がないのだ。正確に言うと、あるにはある。だが呪霊を祓える程の呪力はない。そのため、この場ではただの足手纏いになる。

 

「・・・・・・」

 

 虎杖は呪霊を目を細めて観察する。

 

「なあ、なんで呪いはあの指狙ってんだ?」

 

「喰ってより強い呪力を得るためだ」

 

 その言葉を聞いた虎杖は思い浮かぶ。全員無事に生還する方法を。

 

「なんだ、あるじゃん。全員助かる方法」

 

「は?」

 

「俺にジュリョクがあればいいんだろ?」

 

 それを聞いた恵は一瞬理解できなかったが、ポケットに手を突っ込みゴソゴソと動かす虎杖を見て理解してしまった。これから何をするのかを。

 

「なっ!?」

 

 虎杖は特級呪物を口へ運び始めたのだ。

 

「馬鹿! やめろ!!」

 

 恵はやめるように言ったが、虎杖の手は止まらず飲み込んだ。

 

(特級呪物だぞ!? 猛毒だ!! 確実に死ぬ!!

 だが、万が一、万が一・・・・・・!!)

 

 呪霊は奇声を上げながら、呪物を飲み込んでから動きが止まっていた虎杖へ襲いかかった。

 しかし、呪霊は一瞬にして消え去った。

 呪霊を消し去った人物に目を向けると体には刺青のようなものが浮かび、先程までの虎杖とはまるで比べものにならない程、禍々しい気配を放っていた。

 

「ケヒッ ヒヒッ」

 

 独特な笑い声を漏らすと、目をカッと開き、口を大きく開けてゲラゲラと笑い出した。

 

「ああ、やはり!! 光は生で感じるに限るな!!」

 

 虎杖が呪力を得るために呪物を飲み込み、問題であった目の前の呪霊を祓うことができた。しかしそれとは別の大問題が起こってしまった。

 呪術全盛とされる平安の時代に当時の呪術師達が総力を挙げても勝つことができなく、死後呪物として時代を渡る死蝋(しろう)さえ消し去ることができずにいる、紛うことなき "呪いの王" が1000年の時を経て今、復活したのだ。

 

(最悪だ! 最悪の万が一が出た! 特級呪物が受肉しやがった!!)

 

「呪霊の肉などつまらん! 人は! 女はどこだ!!」

 

 恵は焦ると同時に竜宮院の冷たい目で見下す姿が思い浮かんだ。

 

(そんな目で見――)

 

『大体、竜宮院さんみたいに慎重になる方がおかしいんだよ。そんな慎重になって助かる状況なんてあるわけないだろ』

 

 先日自分で言ったこと。その時は慎重になりすぎても良いことなんてない・・・・・・ と思っていた。そう教え込まれてきた。

 今、目の前で起こってることは自身の不注意から始まったもの。竜宮院のように慎重になった方がいいんじゃないか? と今、思う。

 

(コレは俺のせいだ。俺が始末しなければならない・・・・・・!!)

 

「女も子供も蛆のように湧いている。素晴らしい、鏖殺だ」

 

 宿儺は街明かりを見下ろしながら、そう言う。しかし――

 

 ガッと自身の手で首を絞めはじめた。

 

「あ?」

 

 宿儺は不満そうな声を漏らす。

 

「人の体で何してんだよ、返せ」

 

「オマエ、なんで動ける?」 

 

「? いや、俺の体だし」

 

 恵は目の前の光景を見て、今がチャンスだと思い攻撃に移ろうとする。

 

「動くな。今のオマエは人間じゃない」

 

「は?」

 

「呪術規定に基づき、虎杖悠仁、オマエを――呪いとして祓う」

 

「いや、なんともねーって。それより伏黒ボロボロじゃん。はやく病院行こうぜ」

 

 そう言われるも、恵には今喋ってるのが宿儺か虎杖か判別できないでいた。

 

(クソッ!! どうすればいいんだよ・・・・・・!!)

 

 恵が打開策を考えている時――

 

「今、どういう状況?」

 

「あっ!? 五条先生!」

 

「や! 悪いね、少し遅れちゃった」

 

 恵の背後に担任の五条が現れた。

 

「で、見つかった?」

 

「・・・・・・」

 

「あのー」

 

 虎杖が遠慮がちに声をかける。

 

「ごめん、俺それ食べちゃった」

 

「マジ?」

 

「「マジ」」

 

 虎杖と恵が揃って返事をしたのを聞いて、五条は虎杖へ近づいて、顎に手を当て唸りながら見つめる。

 

「ははっ、本当だ。混じってるよ。ウケる。

 体に異常は?」

 

 虎杖は自身の体を見ながら、特にないと答える。

 

「宿儺と代われるかい?」

 

「スクナ?」

 

「君が喰った呪いだよ」

 

「あぁ、うん。多分できるけど」

 

「じゃあ、10秒だ。10秒経ったら戻っておいで」

 

 と言いながら五条は準備体操を始めた。

 

「でも・・・」

 

「大丈夫、僕 最強だから」

 

 ニィと口角を上げながら、全く問題ないと虎杖に伝えた。

 

「恵、これ持ってて」

 

 五条は恵に2冊の本を投げ渡した。

 

「これは?」

 

「電話で言ったでしょ? センパイからマニュアル貰ったって。それは『特級呪物を回収することになった時の重要事項』と『呪物を取り込んでしまった時の対処法』。取り敢えずこれ読んどいてよ」

 

(なんだこの分厚さは・・・・・・)

 

「僕 全然読んでないんだよね。面倒くさくて」

 

「後ろ!」

 

 恵は呑気に喋ってる五条の背後から迫り来る宿儺を見て思わず叫んだ。

 しかし、振り向かずに攻撃を避けた。

 

「生徒の前なんでね、カッコつけさせてもらうよ」

 

 恵には目で追えない速さで2人は戦い始め、あっという間に10秒が経ち、宿儺から虎杖に代わった。

 

「おっ、大丈夫だった?」

 

「驚いた。本当に制御できてるよ」

 

「でも、ちょっとうるせーんだよな」

 

「それで済んでるのが奇跡だよ」

 

 そう言い、五条は虎杖の額に指をトン、と置いた。すると、虎杖は力が抜けるように前へ倒れ、それを五条が受け止めた。

 

「何したんですか?」

 

「気絶させたの。

 これで目覚めた時、体を宿儺に奪われていなかったら彼には器の可能性がある。

 さて、ここでクエスチョン。彼をどうすべきかな」

 

「・・・仮に器だとしても、呪術規定にのっとれば虎杖は死刑対象です」

 

(竜宮院さんに会わせたら殺されかねないが、これは俺の責任だ。それに何よりもコイツは母さんのような善人だ)

 

「でも、死なせたくありません」

 

「・・・私情?」

 

「私情です。何とかしてください」

 

 そう聞くと、五条はクックックと笑い、

 

「かわいい生徒の頼みだ。任せなさい」

 

 そのセリフに恵は安堵した。

 

「あ、その代わりにそのマニュアル読んどいてね。特に『呪物を取り込んでしまった時の対処法』」

 

「分かりました」

 

 正直読む気にはならない程の分厚さだったが、この件は自身に非があるため、読むことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は? これ1000ページもあんのかよ。確かに信じられないくらい分厚いと思ってはいたが・・・・・・」

 

 恵は五条に言われた通り『呪物を取り込んでしまった時の対処法』を読もうとしていた。しかし、あまりのページの多さに思わずツッコんでしまった。

 

「えー、九相図の場合がP215で・・・・・・ えーっと、あった。特級呪物"両面宿儺" がP642か」

 

 恵は目当てのページを開き、読み込む。

 

「器としての適正があった場合はP725へ進む、か」

 

『すぐに処刑するのではなく、ある程度指を取り込んだ状態で処刑する。ここで全て取り込ませてはいけない。もし、全て取り込ませた状態で処刑ようと考えるのは非常に危険だ。もしかしたら、20本目を取り込んだ瞬間に19本取り込んだ状態の10倍、いや100倍強くなるかもしれない。もしかしたら、20本目を取り込んだ瞬間に周りの人間を絶命させる効果があるかもしれない。もしかしたら、20本目を取り――』

 

「もしかしたら、もしかしたら、うるせぇな」

 

 恵は少し読み飛ばし、次の項目へと移る。

 

『処刑するまでの器の扱い。まず、地下20階に閉じ込める(詳しくはP60を参照)。そして視覚、聴覚を遮り、身動きが取れないように拘束する。それだけでは当然不安だ。そこで組屋鞣造(→P904)という変態エプロンの元へ行き、動きを封じ込める呪具を貰え。竜宮院聖哉が必要としている、と言えば喜んでタダでくれる(貰う際には縛りを結ぶため悪用できないと思え)。不良品が混じっている、紛失、破損の場合があるので最低でも3つは貰っとけ。ただし所詮、変態エプロンのハゲオヤジが作ったものだ。宿儺には効き目がないかもしれない。だからその呪具を使ったからといって安心するな』

 

「組屋鞣造に対する当たりが酷いな」

 

 恵は3ページ程読み飛ばして、次の項目へ目を向けた。

 

『処刑する際の注意点。宿儺はとんでもないバケモノでありゲテモノだ。奴はとんでもない高度な反転術式が使えるかもしれない。心臓を破壊したところで死なないかもしれない。だからと言って、内臓を全て破壊しても死なないかもしれない。体を細かく斬り刻み、粉末状にしても死なないかもしれない。そのため粉末状にしたものをいくつかに分ける。その後、世界各地に飛び回りその都度、粉末宿儺を地下深くに埋める。しかし、これでも死なないかもしれない。そこで五条悟の無下限術式の術式反転『赫』だ。この術式は――』

 

「いや流石に死ぬだろ」

 

 恵は慎重になろうと思ってはいたが、流石にここまでの慎重さは病気だと改めて認識して本を閉じた。

 

 

 しかし、その考えが甘かったと近いうちに思い知らされるとは夢にも思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「爺ちゃん、これ・・・・・・」

 

 虎杖は昨日祖父が薦めてきた本『慎重のすゝめ』を手に取った。

 

「すげえボロボロじゃん。付箋もいっぱいだ」

 

 何度も読み込んでいたからか、古事記の最古の写本と見間違えてもおかしくない程ボロボロだった。恐らく、国立博文館に展示されてても違和感を抱かないだろう。

 死ぬ間際にも関わらず、この本を薦めてきた。虎杖はこの1冊は何よりも大切な、爺ちゃんの心の支えとなっていた1冊なんだ、そう思うと熱い涙が込み上げてきた。

 

「これは爺ちゃんの形見だ。たった1つの・・・・・・ 大切にするよ」

 

 涙を袖で拭い、本を胸に抱えて天国にいる祖父に誓った。

 

 

 しかし、その "爺ちゃんの形見" があと5冊あることを虎杖はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだよこれ! わけわかんねえ!」

 

 虎杖は実際に読んでみたが、何故祖父が自分にこの本を薦めてきたのか全く分からないほど、本の内容がめちゃくちゃだった。

 

 

 




伏黒君は何とか止まることができました。しかし、このままでは堕ちてしまうのも時間の問題です。ほら、パパの出番ですよ。



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