慎重術師   作:コケ

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いつもより長くなっちゃった。いつもって言うほど投稿してないけど


俺はお前も疑っている

 

 聖哉の初めての任務は無事に――終わらなかった。初めての任務とは低級呪霊に何発も、それも祓い終わってるのにも関わらず術式を使って辺りをめちゃくちゃにしたあの任務だ。あれを見た時、私は恐怖を覚えた。

 

 そのあと夜蛾先生に怒られていた。まあ、流石にこれは聖哉が悪い。怒られて当然だ。何故か戸田先生はその場から去って行ったが。

 

 そして、説教されても聖哉は『日本にはたくさんの呪霊がいる。ということはたくさんの術式が存在することだ。祓われたように見せかけて油断して襲ってくることもあるかもしれん。あえて力を隠して祓われたように見せかけ、油断させようとするかもしれない。そして、油断したところを攻撃してくるかもしれない。その場合手に負えなくなる。だから、どんな相手でも手を抜くことなどありえない。お前は考えすぎかと思っているかもしれんが、無いとは言い切れない。ほんの少しでも可能性が――』と、説教しているはずの夜蛾先生に逆に説教するという形になってしまった。あのヤクザ顔の夜蛾先生が押されてるのを見て可哀想な気持ちでいっぱいになった。

 

 余談だが、その聖哉の説教が終わった後、お説教を聞かされて疲れたため気分転換に外へ出たら、何故か戸田先生がボロ雑巾のように横たわっていた。

 

 そして、あの任務から1ヶ月が経った。聖哉はあれから3級呪霊の任務にしか熟していない。『階級が上の呪霊の任務はまだ早い』とのこと。いや、アンタ体術や術式を見る限り2級呪霊でも余裕でしょ、と思った。が、自分の階級が上がる可能性があるからダメなんだと。なので、階級がまだ上がっていない。

 

 そんな聖哉が明日、凖2級呪霊の任務に従事するらしい。私はその任務に同行はせず4年の先輩が同行するという形になる。同行する4年の先輩が不憫でしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽

 

 竜宮院聖哉は今凖2級呪霊の任務のため、4年の先輩である模部(もぶ)とともにいた。今回の任務先は廃病院で見るからに呪霊がいそうな場所。

 

 竜宮院は補助監督へ軽く10分程質問をして不安要素をゼロにした。

 

『闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え』

 

 補助監督が帳を下ろし、辺りが暗くなっていく。

 

「ではお気をつけて」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 模部のほうは補助監督へお礼を言う。

 

 そして、竜宮院は・・・・・・

 

「よくやった。褒めてやろう」

 

(なんで上から!? 車に乗ってた時もだったけど上から過ぎる!?)

 

 ここに来るまでの道のりでの態度を模部は思い出しながら思う。車の中で同じような態度であったため何度か小声で注意したが、竜宮院は考えとておく、の一点張りで直そうとしないため、模部は諦めた。

 

 そして竜宮院は前を見ながら、呟く。

 

レディ・パーフェクトリー(準備は完全に整った)

 

「ん?竜宮院君何か言った?」

 

 模部は竜宮院が何と言ったのか分からず本人に聞く。

 

「お前には関係ない。早く行くぞ」

 

 病院内へ向かう竜宮院に模部はついていく。

 

「う、うん! よし! 気合いを入れて行こう!」

 

 模部は竜宮院がどれ程の強さなのか知らない。等級から推測するに2級呪霊の任務ということで緊張で虚勢から模部や補助監督への態度が酷くなっているのだと思って、緊張している竜宮院を元気づけようと明るく振る舞う。

 

「うるさい、静かにしろ」

 

「は?」

 

 しかし、模部は竜宮院に対しての認識を大きく誤っていた。竜宮院は相手が強かろうと弱かろうと、歳が上だろうと下だろうと一切態度を変えない。それが良いことなのか悪いことなのか・・・・言うまでもなく悪いことであろう。竜宮院は慎重であるが、相手の対応においては慎重のかけらもない。

 

「余計なことをするなよ。手間をかけたくないからな」

 

「はぁ?」

 

 模部を放って置き、病院内に入る。足を踏み入れた瞬間、感じたことのない邪悪な気配が場を支配しているのが分かり、思わず竜宮院は足を止める。

 

「ちょっと竜宮院君どうし・・・た・・・の・・・?」

 

 模部はこの気配に動けなくなる。竜宮院は病院内から出ようとするがドアが無くなっていた。

 

「ふむ。生得領域か・・・・・・元凶を潰すしかないな。」

 

 竜宮院はすぐに思考を切り替えるが、模部の方はあまりの気配に未だ動けずにいる。

 

「おい、行くぞ」

 

「う、うん、ごめん」

 

 2人は警戒しながら進んでいく。すると、呪霊が2人に襲いかかってくる。模部はその呪霊を祓おうと構える。

 

 しかし、その攻撃が届く前に呪霊が燃える。模部は上から炎を飛ばして呪霊を消し炭にした元凶を見ると疑問の声をあげる。

 

「えっ……? ナニコレ?」

 

 その元凶は巨大な火の鳥が飛んでいた。その鳥は呪霊を尽く消し去っていく。

 

「『オートマティック・フェニックス(鳳 凰 自 動 追 撃)』半径10メートル以内の呪霊を感知し、自動的に炎で攻撃をする」

 

 竜宮院の生み出したこの鳥。名前はアレだが、3級呪霊であれば一撃で消すことができる。この鳥は竜宮院の炎を生み出し、操ることのできる『炎操呪法』という術式で精密な呪力操作と術式の応用で生み出した一種の式神である。しかし、この鳥が放出する炎は術者本人の呪力を消費するため万能というわけではないがそこまでの呪力を消費はしないし、竜宮院の呪力量を考えれば大したことではない。

 

 2人は竜宮院の式神が呪霊を祓っていく中を進んでいく。そして、とうとうこの生得領域を展開した呪霊と対峙した。

 

 竜宮院は先輩よりも一歩前に進み、模部に声をかける。

 

「おいモブ。下がっていろ。手出しはするな」

 

「竜宮院君・・・」

 

 模部は前にいる呪霊に恐れていたが竜宮院の男らしいところに感心する。先輩に対しての態度は酷いが今、この状況ではその態度が頼もしく感じる。

 

「竜宮院君、ありがとう。恐らく私じゃ敵わない。ここに入ってからあなたの実力を見たけど私よりも強い。だからーー」

 

 竜宮院は模部が喋り切る前に模部の腹を蹴り飛ばす。

 

「ぶはっっっ」

 

 模部は竜宮院に腹を容赦なく蹴られ、吹っ飛び、転がる。

 

「うるさい、早く下がれ。これだから足手まといは困るんだ」

 

「―げほっ! だ、だからって蹴ることないじゃない!?」

 

 模部はあまりの酷い態度に声を荒げ、睨む。

 

「もう1発蹴られたくなかったら大人しく端で縮こまってろ」

 

「わ、分かった。その代わり勝ちなさいよ」

 

「黙れ」

 

(私、先輩だよね?)

 

 2人がやり取りしている間に呪霊が前にでている竜宮院に襲いかかる。この呪霊は凖2級呪霊が変態を遂げたものであり特級呪霊に相当する。

 

 その呪霊に対し、竜宮院は臆することなく呪霊の攻撃を腰にある剣を鞘から抜き、呪霊の拳を剣で受け止める。そして、受け止めた拳を払い切り、左脚の脛で呪霊を蹴り飛ばし遠ざける。

 竜宮院はすぐさま地を蹴り、呪霊の元へ駆ける。迫り来る竜宮院に対し、呪霊は術式であろう光線を飛ばす。竜宮院はその光線を躱そうとするが左腕に当たってしまう。だが、竜宮院は顔を歪めるもののそのまま突き進み剣を持っている右腕を上げ、呪霊を真っ二つにする。その呪霊をさらに切る。そして、また切る。繰り返し切り刻み、まるでサイコロステーキのようになってしまった呪霊を見て竜宮院は剣を鞘にしまう。

 

 竜宮院は右手に炎を纏い、呪霊に放つ。

 

ヘルズ・ファイア(地獄の業火)・・・・・!』

 

 サイコロステーキのようになった呪霊は燃え上がる。そして、燃え盛る炎が消える前にもう1発術式を用いようとする。

 

 しかし、模部は呪霊が祓い終わったことで生得領域が閉じたことが分かった。そして、竜宮院が呪霊が祓い終わったのにもかかわらず右手にはまた炎を纏い、腕を上げ始めたのを見て模部は竜宮院が何をするのかを察し、慌てて止めに入る。

 

「もう終わったでしょ!?」

 

「まだだ・・・・・・!まだ生きてるかもしれん・・・・・・!」

 

「生得領域は閉じたの!! もういいの!!」

 

「分からないだろう・・・・・・!」

 

「分かるわよ!?」

 

 2人が言い争っている間に炎が消える。しかし、そこには禍々しい気配をもつ棒状のものが落ちていた。

 

 それを見て竜宮院は近づき、確かめる。

 

「これは両面宿儺の指だな」

 

「え!? 両面宿儺!?」

 

 模部が驚き、声を上げる。

 

 竜宮院は制服の9つあるポケットのうち1つから2セットの軍手を取り出して2重にして手にはめる。そして、次はポケットからお札を取り出し、指に巻き付ける。しかし、それだけでは終わらない。ジップロックを3枚取り出し、その内の1枚に指を入れる。さらに、残りの2枚のジップロックを使い、3重の状態で指を封じ込める。

 

「汚い。あぁ、本当に汚い。超汚い」

 

 竜宮院は親指と人差し指の2本で指の入ったジップロックを持つ。

 

「早く帰るぞ。呪霊の攻撃で腕に傷を負った」

 

 顔を歪めながら言う。

 

「えっ!? 大丈夫? 見てた感じ攻撃を受けたように見えなかったけど・・・・・・ちょっと見せてくれる?」

 

 模部は戦闘を見ていたが、竜宮院が攻撃を受けたように見えなかった。

 

 模部は竜宮院の怪我をしたであろう左腕を見るが、見当たらない。

 

「え? どこ? 見た感じ正常だと思うんだけど」

 

「ここだ」

 

 竜宮院は怪我をしている場所を指す。

 

「え? これのこと?」

 

 模部は腕にあった小さな、小さなかすり傷を指し、問う。

 

「あぁ、早く帰らなければならない」

 

「いやいや! それ痛むの!?」

 

 模部は術式を疑うが、竜宮院は本当にただの物凄く小さいかすり傷だ。竜宮院自身も全く痛くはない。痛くはないのだが・・・・・・

 

「ダメだ。こんなところを敵に狙われたら大変だ」

 

 竜宮院はこの物凄く小さい傷でも後に大きく響くことを恐れる。

 

「大丈夫よ。その時は私がなんとかするから!」

 

「バカを言え。お前では無理だ」

 

「酷い・・・・あっ! 私絆創膏持ってるよ。ちょっと待ってね」

 

 模部はポケットから絆創膏を取り出し、竜宮院に差し出す。

 

「はい。これ使って」

 

「いらん。その絆創膏に毒が塗られてるかもしれん」

 

「はぁ!? そんなことするわけないでしょ!?」

 

「信用できん。それに絆創膏くらい持ってる」

 

 そう言い、ポケットから消毒液を取り出して塗る。その上から絆創膏を貼る。

 

「呪霊の攻撃による怪我だ。だから、早く帰って調べなければならん」

 

「えぇ・・・・・・」

 

 竜宮院は困惑する模部を放って先に進む。

 

「ちょっと待ってよ!!」

 

「うるさい」

 

「酷いなぁ・・・・ねぇ、そんなに指持ちたくないなら私が持っといてあげる。先輩なんだから少しは頼ってよ」

 

 模部は竜宮院が嫌そうに持っている指入りのジップロックを見て、竜宮院に渡してもらおうと手を伸ばす。

 

 しかし、竜宮院はすぐに手を引っ込める。

 

「おい、触るな。俺はお前も疑っている。この指を再利用するかもしれん」

 

「は、はぁ!? そんなわけないでしょ!?」

 

「うるさい。それより早く帰るぞ」

 

 竜宮院と模部の2人は補助監督が待っている所へ向かった。

 

 竜宮院は補助監督が運転する車の中で傷が早く治すため反転術式に意識を集中させることで呪力の核心を掴むことができ、かすり傷(竜宮院にとっては致命的)が治った。

 

 そして、今回の件で竜宮院の階級は2級にあがった。実力的にはもっと上なのだが等級が高い呪霊を倒したのが今回だけであったため2級止まりとなる。また竜宮院自身は任務が回ってくる数が増え、修行の邪魔となり鬱陶しく、あまり喜ばなかった。

 




本誌の宿儺やばいね
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