トレセン学園の入学式には、ボクはライスと二人で参加する。
残念ながらお義父様とお義母様は、海外にいるので参加できないのだ。
もっとも二人の愛を疑うわけではない。
「で、なんでカメラ持ってるの?」
「そりゃお義父様とお義母様に写真を送るためですよ。『娘の晴れ姿の写真が欲しい、100枚ぐらい』ってお義父様から連絡来ていますし、送らないと仕事投げ捨てて帰ってきちゃいますよ多分。はい、チーズ」
そういいながらシャッターを切る。
また一枚、ライスのかわいい写真が撮れた。
「それならライスだけじゃなくて、ラプンツェルの写真も取らないとだめじゃない」
「え、ボクは写真いやなんだけど…… ああっ」
ライスにカメラをとられた。
言いたいことはわからなくもない。ボク自身いまだ遠慮はあるが、お義父様とお義母様はボクのことも娘とみてくれている。
『娘の晴れ姿の写真が欲しい』の娘にはボクも含まれている可能性も否定できない。
ただ、なんというか、写真は嫌いなのだ。魂抜かれる感じがあるし……
「やめてぇ、だめっ、こんなすがたみないでぇ」
「いいねぇ、ラプンツェル、かわいいよ♡」
嫌がるボクの姿を嬉々として撮影し続けるライス。
パシャパシャと、シャッターが連続で降りる音が響く。
ライスは普段は優しいのに、ボクに対してだけ時々こうやってサディズムを発揮することがある。
涙目なボクを撮影するライスの目は輝いており、非常に生き生きとしていた。
「うう、ライスに辱められた、もうお嫁にいけない」
「極端だなぁ……」
何十枚と撮影されたボクのメンタルはもうボロボロであった。
打ちひしがれ、悲劇のヒロインのように地面にうなだれるボクを見るライスの表情は、表面上は少し困っているように見えるが、付き合いが長いボクから見れば、楽しんでいるのが一目でわかる。
こういうのが好きなのはお互い解ってるし、そういう意味で趣味が似てるから義理の姉妹としてうまくいっている部分はあるのだろう。
およよよよ、とわざとらしく嘆くボクに近づいたライスは、腰に手を回して抱きしめながらボクのことを立たせる。
「それにラプンツェルは、ライスのお嫁さんになるんだから大丈夫だよ」
「っ!?」
そんなことをボクの大きな耳に向かってこっそりつぶやくライス。
急激なデレアクションに、ボクは真っ赤になることしかできない。何か言わなきゃ、と思うのだが、思考がぐるぐる回転して、言葉を紡ぐこともできずに口をパクパクさせることしかできない。
あわあわと動揺しているボクを見て、満足そうに手を離したライスは、いたずらに微笑んだ。
ボクの義姉は可愛すぎる小悪魔であった。そういうところも大好きなボクもまた、度し難いのだろう。