ウマ娘というのはよく食べる生き物である。
成人男性の食べる量を1としたら、ボクたち中学生ウマ娘でも、3か4ぐらいは食べる、それくらいよく食べる燃費の悪い生き物だ。
だが、ライスの食べる量はそんなものでは済まない。
10とか20とか食べるのだ。
ボクもライスも基本贅沢をしないのだが、このライスの食欲についてだけは、家がお金持ちでよかったなと、思うところである。
ぐうぅぅぅぅぅぅ
閑話休題、なぜこんな話をしたかというと、授業中、クラスに腹の虫の鳴き声が響いたからだ。
隣の席を見ると、ライスが真っ赤な顔をしていた。
クラスメイトの皆にも教官にも、聞かなかったことにする程度の情けは存在していた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「すごい音でしたね、ライス」
「むううううう」
授業後、ライスのご機嫌はずっと斜めだ。
昼食のためカフェテリアに向かっているにもかかわらず、クラスメイトからもらったゼリー飲料人参味をチューチューと吸っている。
「ラプンツェルがこっち見るから、みんなにばれちゃったじゃない」
「あの音だったらボクが見なくてもみんなわかってたでしょう」
ウマ娘は耳がいいし、そもそも音がすごい大きかったから、確実にどこが音の発生源かはばれていたはずだ。
現にゼリー飲料をくれたミホノブルボンさんはボクたちの席より前の席で、授業中ボク達のことは視界に入っていなかったはずだ。
だが、まあ、真っ赤になりながら、ちょっと不機嫌そうにゼリー飲料を飲むライスがかわいいので、これ以上いじるのをやめて観察するのにとどめる。ついでにスマホで写真を撮って義父へ送る。タイトルは 授業中にお腹が鳴ったライス である。
「何写真撮ってるの?」
「経過報告です。お義父様に送りました」
「何送ってるの!?」
ボクのスマホをライスが奪い取る。だが、すでに送信済みである。
ライスは恨めしそうにボクのほうを振り向く。それがまたかわいかった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「そもそも、ライスが夜更かしするのが悪いんですよ」
「ぷぅぷぅ」
「かわいく拗ねてもダメです」
ライスがお昼までもたなかったのは、単純に朝食を十分食べられなかったからだ。
寝坊して授業時間ギリギリで起きたライスの朝食は、ミニあんパン四つ。夜食用に保管していたそれは、ボクなら昼まで持つが、ライスには明らかに足りていなかった。だが、食堂で食べてる余裕がないぐらいライスが起きたのはぎりぎりだった。髪だってボサボサのままで、休み時間にボクが梳かしてあげないといけないぐらいドタバタしていた。
「夜更かししないようにしましょうね」
「や」
「や、じゃないんですよ」
「や」
「……」
「ぷぺぇ」
面倒になったのでほっぺをつついたらぶにゅん、とへこんだ。相変わらず柔らかい。
「ぷぅぷぅ」
「かわいく拗ねてもダメです」
「ラプンツェルがライスの選んだ寝間着着て添い寝してくれたら早寝する」
「嫌ですよ。ライスが選ぶ寝間着、基本スケスケじゃないですか」
「ぷぅぷぅ」
「かわいく拗ねてもダメです」
「だっていつものパジャマ、ゴワゴワしてるから抱き心地よくないんだもん」
「抱き枕買ってください」
昔はよく一緒に寝ていたが、最近は注文の多いライスシャワーなのでお断りしていた。ただ一緒に寝るだけならいいのだが、ボクのお気に入りの綿パジャマだと抱き心地がよくないと文句を言うのだ。
じゃあどんなのがいいかとライスに選ばせたら、絹製の薄手のミニスカートワンピース、いわゆるベビードールを選んできたので、それから添い寝に関しては冷戦状態である。なお、その時一回だけは一緒に寝たのだが、くっつき心地がよかったらしく、それ以降、ライスは常にそういう寝間着を勧めてくる。
まあ確かに絹の触り心地は最高だったのは認めるが。
「むぅ、じゃあ間をとって二人ともシャネルの5番で」
「……」
「ふえええええええ」
とんでもないことを言ったライスのほっぺを引っ張る。
今日もライスのほっぺはお餅のようによく伸びた。