少女、伝説と出会う   作:彦星七

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出会い

 ポケットモンスター。縮めてポケモン。

 この星の、不思議な不思議な生き物です。

 ポケモン達は海に、森に、町に、あちこちにいます。

 その種類は、100、200、1000……いや、それ以上かもしれません。

 そんなポケモン達と一緒に、私達は生きています。

 

 そして私の名前はスイカ。カントー地方に住む普通の女子高生。

 趣味は旅行をすることです。

 

 〇〇〇

 

「わぁああぁ……! すごい綺麗!」

 

 感嘆の声を上げた。

 眼下に広がっていたのは一面の銀世界だった。

 坂道は雪が積もってキラキラと光を反射していて、遠く湖畔の脇にある大きな木は鮮やかなピンクに染まっている。まるで小さな子供が絵に描きそうな風景は、自然が作り出した芸術だった。

 

 私は冬休みを利用して、ガラル地方へ旅行に来ていた。事前に綺麗な景色が見れるスポットを調べ、自分の足が許す限りあちこちを巡っている。

 そして今はカンムリ雪原というところに来ていた。

 

「山登りした甲斐があった〜。

 あっ、写真写真……」

 

 近くの木に立て掛けてリュックサックを広げる。

 取り出した小さなカメラは、私が5年くらい使い続けている旅のお供だった。小さいカメラで基本的な性能しかないが、私の思い出作りにはそれくらいでちょうど良い。

 レンズを覗き、雪景色にピンクの木を写し込む。綺麗な景色に見惚れながら、シャッターを切った。

 そしてもう一枚。

 私はカメラのボタンを押した。

 

 だけどその直前、何かが雪景色の前を横切った。

 

「なんだろう……これ」

 

 写っていたのは紫色のベールのようなものだった。ポケモンの尻尾と言えば、そう見えなくもない。

 だけど私はこんな尻尾のポケモンは見たことがなかった。

 もしかしたら近くにいるのかもしれない。

 顔を上げてあたりを見渡した。

 

 その瞬間、雪が花火のように舞い上がった。そしてサラサラと散っていく白色の中から、紫色の姿が現れる。

 立派な羽があり、鳥ポケモンだと思わせる。だけど羽ばたいておらず、羽をマントを纏うように体の前で重ねている。

 飛んでいるというよりは浮いているような感じだった。

 その尾は写真に写っていた紫色のベールのようなものだった。写真に写っていたのはこのポケモンで間違いないだろう。

 

 そのポケモンをじっと見つめる。

 瞳は黒い仮面に隠されており、その姿に私は美しさを覚えて、そしてどこか怖さを感じた。

 

「ギャーオ!」

 

 謎のポケモンが現れた! 

 

「えっ……! えっ、えっ……?」

 

 突然のことで私は理解が追いつかない。

 

 私の前に佇む紫色の鳥ポケモンは、仮面の下から私を射抜くように見つめていた。

 逃げる様子は全く感じられない。むしろ「かかってこい」と言わんばかりに、私のことを見下ろしている。

 もちろんこういう時は、ポケモンバトルを挑むのが1番良い手段なのはわかっている。

 だけど私には大きな問題があった。

 

 私はポケモントレーナーではなかった。

 パートナーのポケモンなんていないのだ。

 だからポケモンバトルなんてできるはずがない。

 

 もちろん年齢的には私もポケモントレーナーになっていてもおかしくはないし、別にトレーナーが嫌なわけではない。だけどお母さんや友達のポケモンを見ているだけで、満足していたのだ。

 だからこれまでの旅行でポケモンに襲われそうになったら、ピッピ人形を投げて対処していた。でも今はリュックサックは木の近くに置いてしまっていて、私の場所からだと距離がある。

 つまり頼みのピッピ人形も、今は使えないのだ。

 

 何でこんな状況になったのか。このままどうなってしまうのか。私は一体どうするべきなのか……

 色んなことを考えると、私の頭は逆に固まってしまった。

 

「ギャーオ!」

 

 先に動いたのは目の前のポケモンだった。

 手を振るように左の翼を広げると、バシュン! と姿を消した。

 5秒後くらいで私の前に再び姿を現したが、その姿は……3匹になっていた。

 

「えっ……! えっ……?」

 

 何が起こったのかわからなかった。

 

 1匹だけのはずだったが、目の前にいるのは確かに3匹だ。そして3匹の鳥ポケモンは私を煽るように、私を中心にクルクル回りはじめた。

 もしかしたら「かげぶんしん」なのかもしれない……私がそう考えた時だった。

 

「ギャーオッ!」

 

 3匹が一斉に私に接近してきた。

 

「きゃっ……!」

 

 思わず身構えるものの、痛みはない。

 たいあたりかと思ったけど、どうやら驚かせようとしただけのようだ。鳥ポケモンは3匹とも浮きながら後ろの方へ下がっていった。

 一方の私は驚いたことでバランスを崩し、尻餅をついてしまった。

 雪がクッションになったから痛みはない。ただ太もものあたりに、冷たさを感じるだけだった。

 だけど尻餅の衝撃でポケットに入れてたものが飛び出してしまった。

 携帯用のきずぐすり、糖分摂取用の飴、そしてモンスターボール……

 

「モンスターボール……!」

 

 それは私が護身用に携帯しているものだった。ポケモンが襲いかかってきた時に、ぶつけて逃げる時間を稼ぐためだ。

 

 間違いない……

 

 このモンスターボールは、まさに今の状況のためにあると言っても過言ではない。

 

「でもどれだろう……」

 

 目の前には3匹いる。

 ボールは1つしかない。

 

 2匹が「かげぶんしん」だとしても、本物を見分けなければ意味がない。でも私の周りでクルクル回っている今、どれが本物なのかはわからない。

 

「一か八か……」

 

 私はモンスターボールを握りしめて立ち上がった。

 もうどれがどれなのかはわからない。だから目の前にきた1匹に当てるだけ。

 

「えいっ!」

 

 声を出して私はボールを投げる。

 投げたボールは勢いよく、鳥ポケモンの1匹めがけて飛んでいった。

 目標の鳥ポケモンは一瞬、驚いたように動きを止めたが、そのままボールに吸い込まれていった。

 

 カクン……カクン……

 

 モンスターボールが地面で揺れ始める。

 

「逃げなきゃ……」

 

 私は後ろを振り返り、1歩目を踏み込んだ。あとは全力疾走……

 

 カチッ! 

 

「えっ……?」

 

 ボールが閉じた音がした。

 

「えっと……」

 

 周りは静かになった。

 そこにあるのは雪と木、そしてモンスターボールだけだった。3匹いたはずの鳥ポケモンは全て姿を消していた。

 

「もしかして……ゲットしちゃった感じなのかな……?」

 

 私もよくわかっていなかった。

 逃げることしか考えていなかったから仕方がないのだけど、その瞬間を見ていなかった。

 私と鳥ポケモンが対峙していた場所には、ただモンスターボールが雪の上に落ちているだけだった。

 

 恐る恐るモンスターボールを拾い上げる。

 

「えっと……ポケモンゲット!」

 

 意図しない形だけど、これが私の初めてのポケモンゲットだった。

 チャンピオンを目指すわけじゃないけど、これで私もポケモントレーナーとしてデビューしたことになる。

 雪の被ったモンスターボールの冷たさが、私とポケモンの壮絶なバトルを実感させた。

 

「えいっ!」

 

 少し嬉しくなった私はモンスターボールを雪に放り投げた。

 

「ギャーオッ!」

 

 鳥ポケモンがボールから出てきた。

 気品溢れる紫の体。ふわふわ浮きながら、羽を重ねる姿は貴族的な立ち振る舞いを思わせる。

 そして顔の不敵な仮面。

 黒い仮面が少しずつ青くなって……

 青くなって、光っていって……

 

 ギュドンッ!! 

 

「ぎょえぇええ!!?」

 

 私の足元の雪が爆散した。

 何が起こったのかわからない……ただ鳥ポケモンの黒い仮面から、レーザービームのようなものが放たれたのだった。

 

「落ち着いて、落ち着いて! 

 きのみあげるから」

 

 私はリュックサックからオボンのみを取り出した。

 すると鳥ポケモンは顔を、私の手まで下ろすと勢いよくつつき始めた。そこからは一心不乱にオボンのみを食べていた。

 

「よかった、よかった……って、それは私の髪の毛だよ! 食べちゃダメ」

 

 鳥ポケモンはオボンのみを食べ終わると、こんどは私の髪の毛をつつき始めた。

 慌てて両手で鳥ポケモンの顔を離して、その顔を見ると少し膨れているようだった。

 

「もしかして……怒ってます?」

 

 私がそう言うと、鳥ポケモンは私の手を甘噛みし始めた。どうやら図星のようだった。

 確かに私がゲットしたけど、その方法は少し強引だったかもしれない。いきなりモンスターボールを投げた時、驚いたような顔をしていた気もする。

 もしかするとポケモン側が、油断したことを認めたくないのかもしれない。

 見た目的にこの子プライド高そうだし……

 

 雪の上でそんなじゃれあいを数分続けると、流石に落ち着いたようだった。

 

 だけど1つ問題があった。

 

「私、あなたのお名前がわからないんだよね……」

 

 ゲットしたは良いものの、相手が何というポケモンなのかがわからないのだ。ベテランのポケモントレーナーなら、図鑑なりで調べられるだろうけど、今の私にはそれが不可能だった。

 でもだからといって名前がわからないのは、コミュニケーションを取るにあたって支障がある。

 

「じゃあニックネームをつけよう! あなたのニックネームは……」

 

 う〜んと頭を捻る。

 確かに容姿は気品があり特徴的だ。でも同時にプライドも高そうで、あまりに変な名前だと怒りかねない。

 だからそれなりにかっこいい感じで……

 

「決めた、『伯爵』! 

 それがあなたのニックネームね」

 

 理由は、何となく貴族っぽいからだった。

 

「ギャ〜オ!」

 

 だけど鳥ポケモン側もまんざらではなさそうだった。

 

 こうして私はガラル地方で新しいパートナー、伯爵と出会った。良い思い出になったのは間違いないし、根拠はないけど今後が楽しくなりそうな気がした。

 

 〇〇〇

 

 カントー地方のお家に帰って、伯爵をお母さんに見せたら、すごい驚かれちゃったのは別のお話。

 

「あのポケモン凄そうだけど、何を食べるかわかるの?」

「わからないけど、出会った時はオボンのみを食べてたよ」

 

 ご飯について私とお母さんは色々考えた。

 だけど最終的に、伯爵は普通のポケモンフーズの味が気に入った様子だった。




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『第1話 出会い
 スイカ
 手持ち:フリーザー(ガラルのすがた)』

 スイカはレポートにしっかり書き残した!
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