少女、伝説と出会う   作:彦星七

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風向きよし!

「それでね、この間の音楽の授業でね」

 

 金曜日の放課後。

 ポケモンバトルの練習を終えた私とコチヨは河川敷沿いの道を歩いていた。くだらない話で花を咲かせていた時だった。

 

「すいませ〜ん!」

 

 河川敷の遠いところからそう声がした。

 かと思うと、サッカーボールが勢いよく私達の方に飛んできていた。

 

「えっ、危な……!?」

 

 迫り来るボールを前に、コチヨの手を強く引こうとした、まさにその時だった。

 

「ギャーオ!」

 

 つい先程まで、私達の後ろをぷかぷか浮いていたはずの伯爵が、私とコチヨを庇うように立っていた。

 

「伯爵……!」

 

 伯爵のサイコキネシスならサッカーボールくらい簡単に止められるだろう。

 だけど伯爵は私が思っていたこととは違う行動に出た。

 胸の前で、マントのように重ねていた左の翼を広げた。手を挙げるような格好の伯爵だった。

 そしてタイミングを見計らった伯爵は、翼を団扇のようにしてブンッ! と強く羽ばたいた。

 瞬間、伯爵の翼からものすごい勢いで風が起こった。

 実際のところ、羽ばたいたのだから風は起こって当然なのだけど、その勢いは、団扇とかそんなやわなモノではなかった。

 ジェット機を思わせる勢いで、風が巻き起こったのだ。

 そしてサッカーボールは元来た方向へ、星になるような勢いで帰っていった。

 

「伯爵……今のって、何?!」

 

 ポカーンっと口の開いた私がそう聞くと、伯爵は自慢げに目元の仮面を青く光らせた。

 

 〇〇〇

 

「さっきの技はぼうふうだね」

 

 ポケモンバトルに詳しいコチヨが私に教えてくれた。

 

 ぼうふう。

 簡単にいうと威力が高いかぜおこしらしい。

 だけどその破壊力はかぜおこしの比じゃない。その一方で、命中させるのが難しい技でもあるという。

 

「あまりに強い風に襲われるから、その後で相手はこんらんすることもあるんだ」

「すっごい技だね……」

 

 確かに先ほどの技とコチヨの説明は話が合う。

 羽ばたいたことで巻き起こった風は、サッカーボールを流星のように吹き飛ばした。当てるのが難しい技とはいえ、一直線に進んでくるボールなら狙うのも簡単だろう。

 伯爵はエスパータイプとひこうタイプのポケモンだから、技を覚えることには何もおかしいことはない。

 

 ただ1つ、1つだけ全くわからないことがあった。

 

「そんな技いつ覚えたの? 伯爵」

 

 私にはその時が全くわからなかった。

 そもそもぼうふうという技自体、今初めて見たのだった。私は伯爵の覚えている技はサイコキネシスと仮面レーザーだけだと思っていた。

 だからこそ突然のぼうふうに私は驚きを隠せなかった。

 

 その一方で、当の伯爵は「何のこと?」と言わんばかりに、飄々としていた。もしかしたらガラル地方のカンムリ雪原出会った時から覚えていたのかもしれない。

 だけど伯爵の性格からしたら、その可能性も十分にあるだろう……

 

「でもスイちゃんやったね! 伯爵さんがまた強くなったよ!」

 

 コチヨが笑顔で私にそう言ってきた。

 確かに知らなかったし、伯爵がいつ技を覚えたのかはわからないけど、バトルだけで考えたら強くなったのはコチヨの言うとおりかもしれない。

 

「伯爵、もう一回やって! ぼうふう!」

「ギャーオ!!」

 

 私がそう言うと、伯爵は自信満々に両の翼を広げた。そして勢いよく翼を振り下ろした。

 

 ブォン!!! 

 

 瞬間、河川敷に風が走った。

 草葉が宙に舞い、土が抉れた。誰もいなかったから良かったものの、人がいたらもしかしたら怪我人が出ていたかもしれない。

 まるで台風のような凄まじさだった。

 

「すっごい……」

 

 私も言葉を失った。

 でもバトルでは本当に強力な技であることは間違いない。こんな強い技があるならどんなバトルにも勝てる気がしてきた。

 

「ねぇ、コチヨ。今ならいけるかな……」

 

 私は宙に浮いている伯爵を見ながら、コチヨに言葉を投げた。

 

 伯爵を凄さ見て、そして花火の成長を見て、思っていたことを……

 

「エリカさんの、ジムの挑戦に!」




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『第12話 風向きよし!
 スイカ
 手持ち:フリーザー(ガラルのすがた)、ヒノアラシ』

 スイカはレポートにしっかり書き残した!
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