背信の陰陽師   作:もやしナムル

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とある教師の独白

 

昼頃、まだ茹だるような暑さの頃

土御門本邸のはなれの一室で少年は授業を受けていた。

 

 

「ーーーーーーであるからして次代として選ばれ、『個性』を引き継いだ時、名を『清明』として当主を受け継ぐのです。今代の当主であらせられる貴方のお父上は四十四代目清明様になりますね。」

 

 

 

 

(…父さんが『清明』になる前の名前、本邸にいる人はみんな知らないって言うし…知ってる人もいるだろうに。…父さんに聞いても教えてくれないだろうし、そもそも会えないしなぁ…)

 

 

少年は頬杖を付きながらちょっと逸れたことを考えていたが、そんな雑念がバレたのか教師にひと睨みされたため姿勢を正した。

 

 

「…そして現当主がお亡くなりになった時『個性』の権利は次の当主に渡ります。この『個性』は土御門以外受け継がれることはありませんので、しっかりと子孫を残していかねばなりません。と、今日はここまでです。」

 

 

 

 

 

黒板に書かれている文字を背にして少年を見やると少年は座ったまま一礼し、きっと姉の所へ向かうのだろう、さっさと退出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教師は実に残念でならなかった。尊敬している現当主にして少年の父に似た顔。父と同じく優秀なその頭脳。少年は姉といる時にはいつも柔らかい雰囲気を纏っているが、一人の時は冷徹で冷静であった。

 

だが、自分が教師として少年に教え始める前に姉の方に五芒星が宿った。

 

つまり少年が次の『清明』になることはない。

 

 

 

姉が愚鈍な訳ではないのだ。優秀な事に変わりはないし、思いやりを持って人に接する彼女はほとんど会ってないはずの母屋にいる使用人たちにも人気が高い。

 

 

だが如何せん体が弱いのだ。

 

季節の変わり目には必ず熱を出し、ほぼ毎月体調を崩し、体術の授業などほとんど進んでいない。

 

 

だから当主としての仕事が到底あの姉に耐えられる物だとは思わないのだ。

 

 

 

土御門として世間に知られている仕事としては主にヒーロー関係が多い。

式神を使い偵察、迎撃。

たとえ式神を破壊されたとしても当人に傷が返ってくることもない。

ヒーロー飽和社会であるから偵察が主な仕事であるが。

 

 

他にも神職として祈祷をやることもあるが、それはまあ置いておこう。

 

 

 

世間に表沙汰にできない仕事、これが当主の仕事としては7割を占める。

陰陽師、元はそれは呪い、祟り殺すこともできるのだ。『個性』としてではあるが式神がある以上出来ない道理はない。

そして陰陽術を使える者がいなくなったこの時代に呪いを跳ね返す術を持っているものはいない。

 

 

 

つまり暗殺としてこれ程都合のいい物はない。

 

 

 

そこに目をつけたのが政府だった。

凶悪ヴィラン、脱走者、汚職政治家。会敵することなく抹殺でき、目に見える証拠などないし、呪いなんてものは誰も信じない。

 

 

公安がヒーローを抱える以前から土御門は政府直属の暗部であった。

 

 

 

 

これを知るものは政府のごく一部であり、ヒーロー達はこれを知らない。

 

 

 

 

 

 

 

少年ならば、必要悪。と断ずるだろう。

 

 

だか姉の方は優しすぎるが故に自責の念で更に体調を崩しかねない。今でさえ強い体とはいえないのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

当主になれるのは五芒星を持つもののみ。これが絶対であり、教師の望みは叶わない。

抜け道があろうと自分にそこまでの権限はない。

 

 

だから彼は今日もはひっそりとため息を吐く。





教師「当主ラブ」


姉「あらあら」
弟「姉さんの悪口絶許!」
父「ゾワッ」
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