ジョジョの奇妙な冒険×推しの子   |黄金を継ぐ者《イレーデ・デ・ローロ》   作:春雨シオン

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 星野アイの父親が判明していないのをいいことに、妄想を書き殴ったものです。クロスオーバーものを書いたのは初めてなので、至らぬ点等あると思いますが、何卒ご容赦ください。


ジョジョの奇妙な冒険×推しの子   黄金を継ぐ者(イレーデ・デ・ローロ)  前編

 

 

 

 

 

 

―――これは、()()()()を見つけるための物語。人間は皆、暗闇の荒野を彷徨い歩く旅人であり、自らが進むべき道は、自らの手によって切り開かれなくてはならない。その旅人に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――ジョジョの奇妙な冒険 黄金を継ぐ者(イレーデ・デ・ローロ)――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は昔、お母さんと二人で暮らしていた。お父さんの顔は全く知らない。でもお母さんが大好きだった人だから、きっと相当イケメンだったんだろうなって思う。私もすごくカワイイし。

 

 まあそのお母さんは、私のことを愛してはくれなかった。何もしてくれないのはまだいい方で、機嫌が悪くなると私を殴った。何かを投げつけるのもしょっちゅうで、特にガラスのコップは怖かったなあ。大きな音をたてて割れるし、飛び散った破片が傷をつけることもある。

 

 でも私にそういう傷がついた時、お母さんは決まって慌てたように私の体を見てくれた。その時だけは、大切にされているような気がして嬉しかった。だからって痛いものは痛いから、自分で自分を傷つけようとは思わなかったけど。

 

 

「み……見せてッ! 早く首筋を見せなさいッ!!」

 

「う……うん……。」

 

 

 お母さんは急いで私の服の襟を掴んで、下におろして背中を見ていた。そこに傷がないのを見て、安堵のため息をつく。

 

 

 そのため息が……うん、今ならはっきり言える。そのため息が好きだった。自分の娘に怪我がないことがわかって、安心するお母さんらしい姿だったから。私も他のたくさんの子たちと同じように、普通に愛された子供だと思えたから。

 

 

 

 

 でもある日、それは急に変わった。何でもない、暖かい春の日だった。

 

 

 

 

「あ……ああッ!! ()()()()』……!! あの人はッ! 死んでしまったッ!」

 

 

 怒られないよう公園で時間をつぶしてから、家に帰ってきた私を迎えたのは、頭をかきむしるお母さんの姿だった。いつも綺麗に保っていた髪の毛を振り乱し、整えられたネイルが頭皮を削り取って爪の中に血がにじんでいた。

 

 

「お母さん……?」

 

 

 声を、かけた。かけてしまった。お母さんの首が人形みたいにぐるりと回って、私を血走った目で見た。

 

 

「あんた……ッ! あんたなんかッ! あの人がいなかったら、あんたなんかに価値はないのよッ! 返してよ!! 今まであんたにかけてきた『お金』『時間』も全部、全部ッ! あたしに返しなさいよォーーーッ!!」

 

 

 ……その時のお母さんの顔は、最後まで忘れられなかった。こっちに向かってくる両手に捕まったら絶対にダメだと思って、来た道を引き返して必死に走った。追いかけてくる足音はしなかったけど、公園に駆け込んだ。公衆トイレの男子トイレに―――女子トイレだったら、見つかるかもしれないと思ったから―――隠れて、日が暮れるまでガタガタ震えていた。

 

 夜になっても誰も来なかったから、震える指でドアを開けた。本当は帰りたくなかったけど、どうせどこに行ったって最後は家に帰されるに決まってる。どうせ無駄なら、そのまま帰った方がいい。そう思って家に帰ったら、明かりがついていなかった。暗くて怖かったけど、お母さんに怒られる方がよっぽど怖かったから、毛布をかぶって震えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ここからは、後で聞いた話だった。私は3日後、たまたま家賃の催促に来た大家さんに助けられた。何も食べてなかったからガリガリだったらしい。警察で食べさせてもらったコンビニのパンは、確かチョコチップの入ったやつだったっけ。

 

 お母さんは、どこかのスーパーで万引きをして捕まったらしい。初めてじゃなかったみたいで、そのまま刑務所に入ったって聞いた。お母さんが釈放されるまで、私は施設で暮らすことになった。まあ、結局迎えに来てくれなかったんだけど。

 

 ずっとお風呂にも入ってなかったから、職員さんに手伝ってもらって体を洗った。その時言われたことが、ずっと忘れられなかった。

 

 

 

「アイちゃんの首筋には、()()()()()()()()()()んだね。ほんの少しの傷もない、ぴかぴかのお星さま。星野って苗字にピッタリだわ。」

 

 

 

 背中。傷がない。『お星さま』―――。私は頭良くなかったけど、その時は全部わかった。お母さんが私の背中を見るのは、その星に傷がついてないかだけが不安だったんだって。お母さんにはない、お父さんとの繋がり……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……何でこんな時に、こんな昔のこと思い出したんだろう。

 

 

 それから……そう、それから私は、その『星のあざ』を隠すようになったんだ。理由は自分でもうまく説明できないけど、ただ何となくこれがあると、()()()()()()()()ような気がしてた。もし誰か私の事を()()()()()って言ってくれる人が現れたとしても、この『あざ』()()()()()()()()()()ような気がしたから。

 

 

 きっと走馬灯ってやつなんだろうけど、そんな暇があったらいっぱい伝えなきゃいけないことがあるのに。何が起きたのかわからないって顔で私を見てる、この世で一番大切な二人に、伝えたいことがあるのに。

 

 お腹の刺されたあたりがかあって熱くて、じくじくした痛みと一緒に何かが外に流れ出ていくのを感じる。アクアが一生懸命抑えてくれてるけど、そんなことしなくてもいいんだよ? あなたの綺麗な手が汚れる方が、私にはよっぽど辛いから。あなたにはきっと、明るい未来が待ってるんだから。

 

 ランドセルを背負って、学校に通う二人が見たかった。アイドルになったあなたと、一緒のステージで踊ってみたかった。役者になったあなたの、舞台を皆で見たかった。お婆ちゃんになるまでずっと、ずっと一緒にいたかった。

 

 

 ―――でも、ごめんね。もう全部、全部ダメみたい。体からどんどん、力が抜けていくのが分かる。もうここで死ぬんだって、頭じゃなくて心でわかった。だから、これだけは―――これだけは、ちゃんと言っておかなくちゃ。

 

 

 

「ルビー、アクア。 ―――愛してる。

 

 

 

 

 ―――あぁ、よかった。ちゃんと言えた。これは絶対に、嘘じゃない。心の底から、愛を告げられた。胸の中のアクアを、抱き締める力も残ってないけれど。それでも最後に言えてよかった。

 

 

「……ごめんね。本当はもっと早く、言ってあげたかったのに……。そうすればもっと、もっと沢山言えたかもしれないのに……。」

 

 

 あはは、私やっぱり欲張りだなあ。本心からの愛してるを言えて、満たされてるはずなのに。もっともっとって、やりたいことがどんどん出てくる。やりたくて、愛したくて、でも出来ないこと。それが頭に浮かんでは泡のように消えて、どんどん意識が沈んでいく。

 

 

 

 

 

 ―――死にたく、ないなあ……。

 

 

 

 

 

 

 かすんでいく視界に、綺麗な金色の髪が映る。きっとこの色はアクアだ。でも何でかな、いつの間にこんなに、大きくなったのかな―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なん、だ。誰だ、お前。」

 

 

 頭の中がこんがらがって、俺の口から出る言葉もよくわからない片言になっていた。アイが誰かに―――口ぶりからして恐らくファンの一人だと思うが―――に刺された。そいつに知識があったのかどうかはわからないが、ナイフは『腹部大動脈』を傷つけ、大量の血が流れ出ていた。

 

 『失血死』に至る血液の量は、はっきりとした基準はない。だがなんにせよ、短時間に大量の血を失えば間違いなく助からない。だから救急車を呼んで、必死に圧迫止血を行った。それでも流れ出る血は全く止まらず、アイに抱き締められて、愛してると言われて―――。

 

 

 

 

 そう、その次だ。その次に、妙な男が現れた。

 

 

 

 いきなり肩を掴まれ、驚く間もなくアイから引きはがされた。足音なんて全く聞こえなかったのに、それがごく当然のことのように、男は俺の後ろに立っていた。俺が呟いたさっきの台詞も、まるで聞こえないっていう風に、そいつはアイの刺された腹部に触れた。

 

 

「――――。」

 

 

 アイに触るな。ただそれだけの声が上げられなかった。その男のする行為には、何故か近寄りがたいものがあった。それは決しておぞましいものではなく、どこか神聖さを感じられるものだった。この感覚を、俺は知っている。この人を惹きつけてやまない何かを、俺はかつて感じたことがある。

 

 

 

 そうだ、アイのライブを初めて見た時と、同じような―――。

 

 

 

 次の瞬間、アイの体の男が振れている部分―――血を流していた腹部が、一瞬輝いて見えた。幻覚じゃないかと目をこすりそうになったが、そんなことよりも遥かに驚くべきことが起きた。

 

 

 

「ッ、アイ―――!?」

 

 

 アイの瞳に、再び光が戻った。血がこぼれていた口からはうめき声が漏れだし、手足が少しずつ動き出す。

 

 

「……ぅ、うぅ……アク、ア……?」

 

「っ、そうだ、アイ!! 俺は、俺はここにいる!!」

 

 

 アイの右手をとりながら叫ぶ。握りしめた右手からは、確かな力が感じられた。間違いない。アイは、息を吹き返した。俺は本当に、彼女の身に起こった奇跡に心から感謝した。

 

 

「―――なあ、感動のシーンの最中で悪いんだけど、先にこっちの用事を済まさせてもらえるかな?」

 

 

 聞いたことのない声に、俺はとっさに振り向いた。テノール歌手のようによく通るその声は、今まさに、アイに触れていた男のものだ。だがその声からも、エメラルドのような瞳からも、俺は全く何の温度も感じられなかった。俺は、あの瞳を知っている。いや、正確には、人間があんな風な瞳になる時を知っている。どこかで、そうだ、無脳症の赤ちゃんを取り上げる手術の時、人を殺さなくてはならない時、誰も彼もがあんな瞳を……

 

 

(……殺される?)

 

 

 男は、何もしていなかった。指一本動かしていなかった。だというのに、俺の中には奇妙な確信があった。目の前の男には、自分のような子供であっても、必要とあらば躊躇なく殺すだろうと確信させるスゴ味があった。俺は今、『ヘビに睨まれたカエルの気持ち』を理解したと思った。ほんの一呼吸もできない、死に至る静寂があった。

 

 

「ーーーベネ(良し)。どうやら彼女には、まったくその才能はないらしい。」

 

「……ハッ! ハッ、ハッ、ハァッ……ッ!」

 

 

 男から、スゴ味が消えた。それと同時に俺も呼吸の仕方を思い出し、荒い呼吸を繰り返す。全身に酸素が行き渡り、ようやく目の前の男の姿を正確に捉えることができた。

 

 ーーー彼は俺たちと同じような、黄金の髪を持つ男だった。彫りの深い顔立ちから見て、おそらくは外国人だろう。さっきまでまるで温度の感じられなかった瞳には、今はもう太陽のような暖かさが戻ってきていた。その瞳のまま、人好きのする柔らかな笑みを浮かべた。

 

 

ボン・ジョルノ(おはよう)、アイ・ホシノ。体の具合はどうかな? ゴールドエクスペリエンスは、あなたの失った血液もしっかり作ったはずだけど。」

 

「……ッ!」

 

「う、うわっ!」

 

 

 俺はアイに手を掴まれ、その背中の後ろに隠された。アイは自分の事をいい母親ではないと言っていたのに、その仕草はまさしく理想の母のそれだった。床に転がっていた血濡れのナイフを拾い上げ、話しかけてきた男に向けた。

 

 

「誰ッ! あなたが誰なのかはわからないけど、この子たちに手は出させないからッ!!」

 

「待て、アイ! 違うんだ、この人は……ッ!」

 

 

 アイが素早く動き、大声を出せるほど元気になったことに対する感動と、その無謀すぎる行動に対する焦りとが同時に押し寄せる。目の前の男は、その気になれば一瞬でアイを殺せてしまうだろうから。

 

 

「やめろ、アイ! そのナイフを下ろせッ!」

 

「早く出て行って! 近づいたら、本当に刺すからね!!」

 

 

 

「――――ッ。」

 

 

 

 

 

 

 ダメだ、完全に錯乱してる! いきなり刺された後に、色んなことが急に起きすぎて混乱してるんだ!男が息を呑んだのがわかって、焦りはさらに加速する。相手がその気になれば終わりだからだ。だが男はそれを制圧しようとしているのか、右手をゆっくりとナイフに伸ばした。

 

 

「……あなたはそんなものを持つべきじゃあない。そんな風に、危ないものを。」

 

「ッ、来ないでって言って……!?」

 

 

 俺は再び、『奇蹟』を見た。誓ってもいいが、男はナイフに触れてさえいなかった。男の手とナイフの間には、()()()()()()()()()()()()()()はずだった。

 

 

「これは僕からのプレゼントとでも思ってくれればいい。それに、とてもいいものを見せてもらったお礼でもある。」

 

「なにこれ、何で、()()()()()()……。」

 

 

 その男はナイフを鮮やかな花に変えてみせた。真っ赤な花……あの形はどこかで見たことがある。確か病院にやってきた患者さんの夫や、その子供が持ってきていたような―――。

 

 

「今のあなたに赤い花を贈るのはどうかとも思ったけど、本当にピッタリだと思ったんだ。花言葉を教えるのはこっぱずかしいから、後で自分で調べてくれよな。」

 

「……。」

 

 

 ああ、そうだ。思い出した。この花の名は()()()()()()()。花言葉は、母の愛―――。

 

 

 

 呆然とする俺たちを他所に、男は背を向けてドアノブに手をかけた。ドアノブを見ているからか、前傾姿勢になって首筋が見える。その首筋にあるものを見て、俺は息を呑んだ。

 

 

 

 ―――()()()()()。アイと全く同じ位置、全く同じ形の星が、彼の首筋に輝いていた。

 

 

 

「本当はもっと話していたいところだけど、僕もいろいろ忙しい身なんでね。残念だけど、これでお別れだ。」

 

「ま、待って!! あなた、あなたひょっとして私の―――ッ!!」

 

 

 

 

 その男は、ちらりとだけ振り向いた。危険な甘さと、奇妙な色気のある微笑みをたたえながら、たった一言だけ告げた。

 

 

 

さようなら(アリーヴェデルチ)sorella(ソレッラ)。」

 

 

 

 走って追いかけようとしたアイを、いきなり目の前に生えてきた樹木の枝が遮った。アイはそれを必死に掻き分けて前に進もうとするが、いばら姫を守るように現れたそれはビクともしなかった。半狂乱になっているアイが何故だか怖くなって、止めようにも止められなかった。あんなに必死なアイを、初めて見たからというのもあるのかもしれない。

 

 

 だからこそ、気づかなかった。俺の横と、アイの足元をすり抜けて、樹木の枝を潜り抜けて、外へと駆けだしていく妹に。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 私には、何が何だかまるでわからなかった。ママが刺されて、お兄ちゃんが救急車を呼んだりママのお腹を抑えたりしている間にも、私は扉の向こうで戸惑っているだけだった。あの男の人がママを助けてくれた時、やっと私の時間は動き出した。ママを遮る枝を潜りぬけて、足音のする廊下の方へ走った。そして焦がれていた後姿を見つけた私は、自分に出せる精いっぱいの大声で叫んだ。

 

 

「待って!!」

 

 

 足を止め、振り返るあの人。さっきまで確かにあった近づきにくさはなくなって、普通の外国の留学生とかに見えた。

 

 

「あれ、君の方なのか。てっきり男の子のほうが来ると思ったんだけど。」

 

「ハッ、ハッ、ハァッ……。」

 

 

 伝えなきゃ。そうじゃないと、ここまで走ってきた意味がない。思いっきり走れる体になったのはいいけど、まだ小さいから全力で走ったのなんて初めてだった。息が上がって上手くしゃべれないけど、何とか言葉を絞り出した。

 

 

「マ……ママを! 助けてくれて、ありがとうございます!!」

 

「……。」

 

 

 頭を深く下げて、お兄さんにお礼を伝える。私は何も出来ないし、頭だって良くないけど、それでもこれをしなきゃダメだってことくらいわかる。迷惑がられてもいいから、お礼だけは伝えなきゃって、心が知ってるから。

 

 

「……君はママっ子(マンモーニ)だけど、すごく綺麗な――宝石のような心を持っているんだな。」

 

 

 不意に頭に、ポンと手が置かれた。暖かくて大きくて、ずっと触れていたくなるような手だった。だけどどうしても気恥ずかしくて、その手を両手で握りしめて頭から下ろしてしまった。その恥ずかしさを誤魔化すように、どうしても聞きたかったことを聞いてみた。

 

 

 

 

「その、あなたは……あなたは、()()なの?」

 

 

「――――。」

 

 

 

 

 その時のあの人の顔を、私はきっと一生忘れられないんだと思う。夕日に背中から照らされながら、あの人は少しだけ愁いを帯びた顔で笑った。そして覚悟と希望を秘めた目で、私に向かってこう告げた。

 

 

 

「……いいや。違うね、シニョリーナ(お嬢さん)。僕は決して、『神』(ディオ)じゃあない。」

 

 

このジョルノ・ジョバァーナには、正しいと信じる『夢』がある! (ディオ)のように、気に入らない全てを破壊するのではなく、(スター)のような微かな希望を頼りにッ! 正義の道を進むことこそ、正しいと信じる夢がッ!」

 

 

 

 私は―――そう、全てを投げだして、この人について行きたかった。それこそがこの世の()()なんだと思った。私の全ては、この人の夢のためにあるんだと思った。

 

 

 

「だからこそ、ルビー。君はここまでだ。」

 

「……え?」

 

 

 なんで、私の名前を知ってるの?

 

 

 

「君たちの前には、明るい道がある。光の指す方へ歩くんだ。その道行きこそ、君たちに定められた()()()()なんだ。」

 

 

 

 気づけば私の意志に関係なく、つい頷いてしまっていた。言葉の意味はよく分からなかったけど、この人が言うならきっとそうなんだろうと思わせてくれた。それを見て、あの人もまた微かに笑顔になってくれた。

 

 

 

「さあ、今度こそお別れだ。さようなら(ボン・ジョルノ)、ルビー。」

 

 

 

 瞬きしたすぐ後、マンションの廊下の壁の向こうに、今までなかったはずの木が生えてた。その木に飛び乗ったジョルノは、あっという間に地上まで下っていって、すぐに見えなくなった。

 

 

 私の心には、爽やかな風が吹いた。ママと同じくらいすごいアイドルになるっていう夢も、だというのに上手く踊れない悩みも、自分が他の普通の人と違うってことに対する寂しさも。全て許された気がした。

 

 

 それから家に戻って、ママに力いっぱい抱き着いた。ママは泣きながら抱きしめ返してくれた。お兄ちゃんも一緒だった。そうして3人で抱きしめ合って、わんわん泣いて、生きてることを喜んだ。ひとしきりそうやってたら、私のポケットの中から、くしゃりという音がした。

 

 

「……? ルビー、ひょっとしてポケットに何か入ってる?」

 

「え? ……あっ、もしかしたら!」

 

 

 私は急いでポケットの中から紙を取り出した。さっきまで私のポケットには何も入ってなかったんだから、きっとあの人からの贈り物に違いない。そう思った。

 

 

 開いた紙の中身を、三人でじっと覗き込む。書かれていたのは、電話番号と多分人の名前。それから、『スピードワゴン財団』っていう、いつかのニュースで見たことのある名前。ママがそこに書いてあった人の名前を、確かめるようにゆっくりと読み上げた。

 

 

 

「―――空条、承太郎……。」

 

 

 

 

 







「ん……? この時期から、星野アイの首筋に、『星型のタトゥー』がある……。いや、『タトゥー』というより、『あざ』……?」


「もとからあったものなのかな……。だとしたら、それを急に隠さなくなった理由は何? 星野アイのパフォーマンスはこの頃から急激に良くなったっていう評判があるけど、この『あざ』が関係してるのかな?」


「何かしらの『トラウマの克服』か、それとも《b》『転機』《/b
》か……。」


「何にせよ、この『あざ』は間違いなく星野アイを再現する上で大事になる。絶対に暴かないと……。」
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