母なる海に抱かれて   作:どうしてこうなった?

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全然本編に辿り着かない…


罅割れ

これから4年間を過ごす下宿先に着いた

 

一人暮らしには勿体ない2LDKの部屋

オートロックも付いて管理者が常駐している管理の行き届いたマンション

月7万共同費込みで年100万とちょっとだ。

 

俺もそれなりに稼いでいた身だ。

これくらいは余裕で出せるけど…やけに設備がいい気がする

 

田舎で土地が余ってるとはいえ、駅からも近くアクセスも悪くない、近くにスーパーやコンビニもあるし。

バブル後期に建てられ不良債権となったホテルを買い叩いて改修された芸能人の御用達の別荘みたいなものなのかもしれない。

 

「それか俺たちが昔住んでいた部屋みたいに事故物件だったりしてな」

 

鏑木Pからの紹介だしどちらも有り得なくはないのが

あの人ホラー漫画とかで出てくる敵役みたいな顔してるし…

 

「…ははッ!アイみたいな美人の幽霊と同居出来るならなら悪くないかもな‼」

 

くだらない妄言を垂れ流しながら荷下ろしを始めた

 

いつも使っていたノートパソコンに、段ボール一杯入れられた衣類、届いたばかり大学で使う備品、ほかにも細かい私物なんか

全部合わせるとそこそこの量になる。

 

事務所()に置いていた私物はここにある分で全部だ。

残っているものは全部捨てた‥ミヤコさんやルビーたちが俺のことをすぐ忘れられるように

 

ここにあるのだって持ち出すのに相当気を使っている

 

万が一にもルビーたちにバレる訳にはいかないから住所が残る郵便なんかが使えない。

自室から使うもの持っていこうにも自宅が事務所だから人がいるから見つかった時に上手く言い逃れ出来ない。しかもあの件があってからルビーによく見られていたからな… 

 

あと有馬

お前いつも事務所にいないか?

仕事ないときと寝るとき以外は居る気がする 一人暮らしで人恋しいのは分かるんだが流石になぁ…

 

「あんたは何も分かってない!」

 

とか言われたけど仮にもアイドルだろお前

 

…事務所の中とはいえ誰が来るか分からんのにそんな可愛い寝顔を晒してて良いのか?俺が居るときも普通に寝たりするし、衣装きたまま事務所でエゴサしてたりするし、危機意識なさすぎだろ。

偶にとはいえ最近はルビーの部屋で寝泊まりしてるし

耳付のパーカーのパジャマで目をこすりながら出てきた時は流石に焦ったぞ。

 

「あんた本当に、もう 感謝しなさいよ!」

って言われたけど眼福だった。

フリル風に言うなら視力が0.2くらい上がったかもしれん

 

アイドルもう少し続けてくれたら良かったのに…

 

 

気づいたら荷物を全部運び込んでいた

あとはケトルや生活品を買いに行けば終わり

 

「少し疲れたな、休憩するか」

 

 


 

買ってきたばかりのクッションを箱から取り出して、ぬるくなったペットボトルのキャップを回す

 

「ぬりぃ」

気の抜けた炭酸の刺激が喉を通り抜けていく

 

荷ほどきで二時間くらい経ってるし当然か

適当なニュースサイトを開いて眺める

 

 

『熱愛発覚!あの人気モデルお相手は一般男性か!?』

『韓流ブーム再来!新ユニット発足』

『今日福島県沖合で発生した地震の津波によって身元確認が済んでない遺体が…』

 

今日も世間の注目はひっきりなしに動いているらしい。

 

『すべて世は事もなし』どっかの哲学者が言ったことだったか

 

あの映画もアイツが殺された事件も全てなかったかのように世界は回ってる。

今日もどこかで誰かがやれ不倫だ・カップリングがなんだと叫び、今も誰かが生死を彷徨うような目に遭い助けを求めている

…だがそのどれもが俺にとっては他人事だ

 

「…お前の命の重さなんてそんなもんだよ殺人鬼。何人お前が殺そうが死んで1月も経てば忘れ去られる――その程度のものでしかない」

 

「でも、君は覚えてるだろう?」

 

スクロールしてるとあの男に殺された故人の特集を見つけてしまった。

そこにはアイツに殺されたと推測される故人の名前が挙げられていて、その中でもアイや片寄ゆらのファンが多くの追悼の言葉を残していた。

 

「平成のサイコパス」

「コイツがプロダクションの社長だったという事実」

「芸能界の闇じゃん」

「警察が無能すぎ」

「こいつさえ居なければアイもゆらちゃんも今活躍出来てたんだよな」

「頼むから死んでくれ→もう死んでたわw」

 

そこにはアイツに対しての罵詈雑言が止めどなく書き連ねられていた。

 

 

「・・・・・・」

 

「命には重さがあるんだ。より重く価値のある命はそれだけで人を引き付ける。…逆に価値のない命は軽い、吹けば飛ぶような軽さで居ても居なくてもそう変わらない。…あぁ君には言うまでもないことだったね」

 

「コイツの女性遍歴がヤバすぎる件」

「でもコイツの主演のドラマ出来良かったんだよな」

「中学生で不倫してたってマジ?」

ワンピース(催眠術)は実在する!!」

 

「僕の命は軽かったかい?」

 

「…っ!」

 

スマホに映り込んだそれ(・・)を見た途端

 

 

(ガンッ!――ゴト、ッ)

長方形の黒い塊が勢いよく壁に飛んでいき、弾かれてベットに落ちる

 

「はぁ‥はぁ…」

 

心臓が異常なペースで脈打つ

熱中症で倒れた時みたいに頭が回らない

指先が痙攣し全身から血の気が引いているのがわかる

 

 

(カーカー)

窓の外をカラスの集団が飛び去っていった

 

「っあ‥」

 

思ったより集中していたらしい

外を見るとすっかり夜のとばりが下りていた

 

「飯に、するか…」

 

とはいえ今から出かける気力も沸かない

買ってきてた菓子パンとカップ麺を無理やり腹に詰め込む

 

「…布団を出すのは明日だな」

 

シャワーを浴びてジャージでベットに向かうとさっき放り投げたスマートホンが転がってた

画面には壁に当たった衝撃でできた罅が放射状に広がっている

 

「…修理に出さなきゃな」

 

何の気なしに手に取る

罅割れた画面にはアイツと瓜二つな男が映り込んでいた。

 




なんでアクアはこんなに曇らせが似合ってしまうの?
アク虐よりかな虐派なんだけどなぁ(・ω・ )ウーム...

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