母なる海に抱かれて 作:どうしてこうなった?
診療室で語られる医療解説はド素人がどこぞのレポートを読み漁ってかみ砕いて説明してるものに過ぎません。
多くの誤り、曲解、事実と異なる点があることを念頭に置いてお読みください。
誤字・脱字の修正出来ました♪
報告くださった方々、本当にありがとうございました(o_ _)o))ペコ
ゴロー&さりな「ゴローと~♬ さりなの~♪なぜ?なに?診療室ぅ!」
ゴロー「さて今回はさりなちゃんの病気である『退形成性星細胞腫』について解説していく。」
さりな「これかぁ… というか、せんせ。画面見えないんだけどアクア今どうなってるの?」
ゴロー「確かに何も映らないな… ふむ、今日は電波の調子が悪いらしい。アクアはまぁ…元気にやってるだろう」(抜いたコンセント隠しながら)
さりな「そうなんだ。でもそういう日もあるかな」
ゴロー「あぁ、その代わりと言っては何だが… 暫く俺がここに居よう。話し相手くらいにはなるさ」
さりな「やった♪ せんせのそういうところ、好きー」(ぎゅう)
ゴロー「こらこら少しは落ち着きなさい。」
「アイツ、死んでなきゃいいんだが…」
さりな「せんせ?」
ゴロー「ふぅ、という訳で『退形成性星細胞腫』についてだ。文字通り『退形成性』の
さりな「なんか難しい病気だよね。私は…嫌でも覚えちゃったけど普通に暮らしてたらこんな病気知らないよ」
ゴロー「そうだな。そもそも『星細胞腫』の発症例も少なく、小児で発症する例は稀だ。」
ゴロー「『星細胞腫』の症状としては歩行困難、視覚の異常、嘔吐、頭痛などが見られる。」
さりな「あるなぁー。そういうの」
ゴロー「また『退形成性星細胞腫』では更に胞腫の進行が進んで脳内に蔓延しているため
さりな「一年で死んじゃうやつだ…」
ゴロー「そうだ。『膠芽腫』はまるで大脳全体に寄生するように脳腫瘍が広がり、凡そ一年以内に死亡する。WHOにおいて悪性度を表しているグレードその4に認定されている」
さりな「『退形成性星細胞腫』のグレードは3だっけ?」
ゴロー「その通り。ちなみにグレード5は存在しない。体温計が42度以上を測れない無いのと同じ理由だな」
ゴロー「話を戻そう。これらの治療方法は肉眼での腫瘍除去、腫瘍床への局所な放射線療法、抗がん剤・化学物質による化学療法が主となる。」
さりな「でも脳内まで転移してると直接的な除去が出来ないって…」
ゴロー「そうだな…」
ゴロー「それに加えて深部に腫瘍が存在している場合だと放射線療法でも治療が困難とされる。」
さりな「じゃあ薬物による化学治療?」
ゴロー「あぁ、
さりな「あっ治療法ちゃんとあるんだね …って、成人?」
ゴロー「・・・・・」
ゴロー「現在の医療技術において
さりな「それって…」
ゴロー「つまり現存する医療技術において君の病気を治す方法は存在しない」
椅子に座っていたせんせはいつの間にか立ち上がって私を見ていた。
「ペスト、エボラ出血、末期がん、虚血性心疾患…狂犬病だって快復した例は複数存在する」
「その快復例の中には、現代の医療技術では説明が付かないことが少なくないんだ。」
「尊厳死を考えていた末期がんの患者がある日を境に何故か快復に向かう。胸に銃弾を受けたSPが緊急手術をしたらその銃弾が蓋となって結局何も手を付けることなくそのまま日常を過ごしている。致死率の高い感染症に罹って、隔離されて粗末な生活をさせられていた人々がその村の生き残りとなったこともある。」
そう言って私を見つめるせんせの瞳に…はなかった
「ほんと、ずるい…」
分かってる…分かってるよ!
私の病気はもう治らないんだって! 奇跡なんて起きっこないんだって!
それでも、それでもさ
せんせは、せんせだけは…
「っ!せんせ、こっちきて」
「それは構わないが、どうした」
「いいから!早くこっち来て」
のそのそと歩いて来るせんせ
遅い!ぐちゃぐちゃになった顔を見られたくなくて、せんせに飛びつく
「おわっ!危ないケガするぞ!」
「せんせ好き!結婚して!」
もう何度目になるかもわからないプロポーズ
「はいはい、16歳になったら真面目に考えてやるよ」
「せんせ、いじわるだね」
この人はいつもこれだ。私が本気で言ってるのに全然相手にしてくれない
乙女の告白をなんだと思っているのか
「現実的なプランだろ」
そういいながら腕を背に回して私を支えてくれる。せんせに触れているところから流れてくる熱はとても温かくて…
毎日辛くて、いつ死んじゃうか分からない。
とっても、怖い…っ
けど
もう少し…
もう少しだけ、頑張ってみても良いかなって思えるんだ。
交差点に星々の光が降り注ぐ
その熱に、その姿に、その輝きに、どうしようもない程当てられる。
思わず拳を突き上げて叫ぶ人 腕を組んで頷きながら涙を流してる人 平気な顔しながらもついフレーズを口ずさんでしまう若者 サビに合わせて同じポーズで写真を撮る女生徒たち 知っている振り付けで思い思いに踊る子供たち
誰も彼もがその熱に浮かされる中、俺の足がリズムを刻む、そして腕を振り上げ心の底から叫ぼうとしたまさにそのとき
照らす光が強くなれば強くなるほど、その陰は濃く暗く深みを増す
「なにがファンだ」
強い光と共に混じっていたものが此方へと向かってくる。
照らす光が強まる
「なにが見届けるだ」
同時に向かってくるものの輪郭がはっきりとし始める。
「その焼け落ちた目でッ!」
それは俺の目の前まで来て…
「一体なにをっ、何を見るって言うんだ!!」
それは
ステージの上では瞼の裏にすら焼き付く純白の星が瞬き、他人と寄り添うぼんやりとした光が周りを包み込む、綺羅星たちは一つ一つが様々な色で輝き合っていた。
ステージの上で純白の星が舞う
それは一目見るだけで瞼の裏に焼き付いてしまうほどに鮮烈で…
「
あの映画の製作中、主演を任せられたルビーは過労と心労が祟り、追い詰められ、倒れた。。
復讐計画の真っただ中で全く手が回っていなかった俺は、周りと距離を取っていたこともあってMEMや有馬に気を配ってくれと声を掛けただけで深く考えることもしなかった。
結局俺がそれを知ったのはルビーが倒れた後。それも偶然魘された彼女が呟いていなければ一生理解することが出来なかっただろう。
18年も共に生きていたあの子のことすら分からない
暖かなぼんやりとした光が舞台を巡る
その光は決して強くない、だけど確かな温かさと共に周囲の星を包み込む
「お前はアイの何を見ていた?」
俺がアイの担当医であった期間は短くない。
それにもかかわらず俺は彼女のことを全く理解できていなかった! 彼女が何を見て欲しかったのか、本当はどう在りたかったのか。
彼女の
表面上のものしか見えていない
一つ一つ綺羅星がぶつかり合う
色彩も光り方もまばらな星たちは己の全てをぶつけ合いその輝きを増していく
「あかねを助けられたのはMEMが連絡をくれたからだろ」
台風の中あかねから飯を買いにいくと連絡があったとき胸騒ぎがした。俺はなにかあった時のため出かける準備をしていたが、実際にあかねの家に安否を確認するかどうか迷っていた。しかし俺がそんな葛藤をしている間にもMEMはあかねの親に連絡を取り、あかねが緊急事態であることをいち早く知り行動していた。あの連絡がなければ間違いなくあの日あかねは死んでいた。
目の前で死にそうな人の判別すらつけられない
「夢見てんじゃねぇよ!」
「
髪を掴まれ画面に向けていた顔を無理やり振り向かせられる。
「
軋む黒星の
そこにあったのはただの現実
人気モノへの嫉妬、稽古や中傷によって出来た生傷、徐々に楽しいと思えなくなる感情、常に雁字搦めの私生活、収入が少ないという現実、行き過ぎたファンに対する心労
そして芸能界にはそんな弱った心に付け入る大人が、誘惑が、手ぐすね引いて待ち受ける。
一度捕まれば最後。ダイヤモンドの原石はその輝きが尽きるまでその才を搾取され続ける。
あぁ見える。画面の中で輝いてる
彼女たちにも裏の顔はある。
ルビーが強すぎることに対する不満、自分がここに居て良いのか分からない不安、いつまでアイドル続けられるのかって焦燥、ここにいる全員を食ってやるという野心
そこに残ったのは
誰かに恋することもあれば、嫉妬することもある。泣いたり怒ったりした時の顔は可愛くないし、トイレに行かないなんてこともない。ただどこにでもいる少し可愛いだけの子供たち
「あぁっ! 僕は、君のファンにさえ、なれないのか…」
「ははは きっつ、死んじゃう!!」
光の瞬く中で僕の意識は闇に落ちた。
ライブは終わり、画面が移り変わった。
大型ヴィジョンには新発売だ、どこどこのニュースだのが放映されて熱気に当てられていた人達が離れていく。
「最悪な気分だ」
俺は人混みから離れ、近くにあった広場のベンチに腰掛けた。
黒くドロドロとしたものが胸から零れる。
後悔、遣る瀬無さ、無力感がキツく握りしめていた掌から零れる。
「くそっ、くそくそ、くそぉっ!」
ただ感情に任せてベンチに手を叩きつける。
「…どうすりゃいいんだよ」
そんなことしても現実は変わらない
近くで人の声がする。
こんな街中じゃオチオチ気も休まらない。人がいないところに行きたかった。
「はぁ」
そういえば海に潜ってそのままだったな。
服は乾いたとはいえ全身が気持ち悪い
「風呂入りたいな」
子供の声がする。
「パパ!見て見てルビーちゃんすごい。すごい綺麗でお星さまみたいだった」「うん、綺麗だったね。」
「あぁ…」
これは聞いてはいけない
「ねぇパパ、私もルビーちゃんみたいになれるかな?」
「やめろ」
「もちろんだよ。●●●なら凄いアイドルになれるよ」「そうかな。じゃあ私中学生になったらアイドルになる!」
「そんな顔すんなよ」
「やめてくれ…」
「やったっ!」「当たり前だろパパは●●●の
「もう、いいだろう」
「アクア、お前は自由に生きろ」
あぁ、憶えている
忘れられるものか
そこには血塗れの手をした俺と同じ、真っ赤な手にナイフを握った壱護が立っていた
「おいおい、そんな顔してんじゃねぇよ。俺はミヤコのこともお前ら兄妹のことも見捨てたクズだぞ。」
「ミヤコとお前らが大変だって分かってたのに。どうしようもなく悔しくて、許せなくて、やるせなくて…」
「やらなきゃなんねぇこと全部放り出したクズだ。」
壱護は床に落ちているナイフを拾って握りしめながら言った。
「だけどなぁアイのことは実の娘だと思ってたんだぜ。」
「だからアイの子供のお前たちは俺の孫…っていうにはお前ら賢すぎたからなぁ…」
「そうだ、アイと年の離れた兄妹だ。 まぁそんな風に思ってたんだぜ。」
どこか満足そうに俺に話しかける
「だからよ… 一度くらい親らしいことさせてくれよ」
「お前は運悪く居合わて、巻き込まれた被害者… それだけだ。」
「悪りぃな。」
「俺がちゃんとアイツの事見てやれてたら…っ」
「お前たちは今頃、ちょっと年の近くて仲がいい家族。やれてたかもしれねぇのに」
「ごめん ごめんなぁ…」
「俺が、アイツからちゃんと聞いていればっ!お前がこんな、思い詰めることも、なかったのに…」
「こんなダメな親父で、ごめんなぁ…」
壱護のすすり泣く音が聞こえる。
暫くしてアイツは俺に目を向けて言った
「アクア、お前は好きに生きろ」
「お前は俺とは違う。お前は…
「あぁ… ミヤコの顔、一度くらい見にいっとけば良かったな…」
煙草の香りと共に掠れた声が届いた気がした…
「違う!」
「違うんだよ壱護!」
「アイのことを見ていなかったのは俺だ」
「俺は知ってた。アイにストーカーがいることを!」
「そいつは既に人を殺していて、何をしてもおかしくないってことを」
「俺は…俺はっ」
「殺されていたのに」
「殺されてたのにっ、推しの子供に転生したって喜んで…」
「のうのうとアイに甘えながら生きて…」