母なる海に抱かれて   作:どうしてこうなった?

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(注)文字のボカシ具合はアクアが見ている幻影の強弱の描写となっております。
鮮明に文字を読み取れるモノほど幻影が強く現れ、ぼんやりと読めないモノほど幻影も弱く現れているって感じです。
あくまでフォントを使った表現の一つですので、全く読めないものは読む意味や必要がないです。
お目汚し失礼しました(__)


前書きという名の茶番

おい
おい,爺さん


「ん?」
「寝るならちゃんと布団にいけよ。爺さん」
「あぁ。いや、大丈夫だよ」

(夏の夜空の月が明るく庭を照らす)

「…書き始めた頃」

「僕は…アクあかで純愛モノを書こうとしていた…」
「なんだよそれ 書こうとしたって…諦めたのかよ」

「うん。残念ながらね。」
「アクあかはラブコメ限定で…他のジャンルに混ぜると、登場させるのが難しくなるんだ」
「そんなこと、もっと早くに気づけばよかった…」
「ふっ、気づいたらアクアとオリヒロイン達との修羅ブコメ(どうしてこうなった…)になっていた…」


「そっかぁ、それじゃあ。しょうがないな」
「そうだね、本当に。しょうがない」
「因みにオチ担当は、重曹ちゃんだった」

「…ほんとあかね出てこないな」

「・・・・・」
「・・・・・」

「あぁ…本当に良い月だ」


「…うん。」
「しょうがないから、俺が代わりに書いてやるよ」

「うん?」

「爺さんは話決めちまったからもう無理だけど 」
「おれなら大丈夫だろ。 任せろって」


「あぁ、爺さんの書きたかったモノ(アクあか交際中の純愛クソぼけエピソード集)は…


「そうか…」
「あぁ、安心した…」



渇き

「アクアは、さ。大きくなったらどんな大人になるのかな?」
「んぅ…。 〇○、○〇? なりたい、の? 僕は…みたい、になれたら…」
「・・・っ! ん~~っ♪ きっとなれるよ… アクアなら」

目が覚める。

 

 

 

顔を洗い、歯磨きしてる間に電気ケトルの電源を入れてお湯を沸かす。

 

冷蔵庫は空っぽだから何も作れないが、今の俺でも男料理くらいなら作れる。外食で済ませてもいいが訛ってる身体のことを考えるとある程度栄養を意識できる自炊の方がいい。

 

マンションの設備は充実しているし本格的な自炊を考え始めても良いかもな。

 

 

 

携帯でニュースを見ながら淹れたコーヒーを飲む。暫くして頭が冴えてくる。

 

「買い出しいくか」

 

 

 

近くのスーパーで保存の効くものを買って車に積め込んだ。

 

「結局、男の一人暮らしみたいなもんしか買わなかったな…」 

「でも海近くて朝市とかやってるみたいだし、魚捌いてみようかな」

 

そのまま近くのマリンショップまで足を延ばした。

地域で一番大きいところに行っただけあり想像していたより規模が5倍はデカかった。

てっきり海の家の拡張バージョンだと思っていたが、想像していたより多くのモノが売られていて驚いた。

釣り用具や海用のウェア、日焼け防止用具は勿論、ライフジャケットやフロート(浮き具)、マリントイレ、ヨット…

「コンパス、航海灯、メインセール…最近のバッテリーは風力発電を採用してるものもあるのか…」

 

ハルベルグ・ラッシー39

 

 

釣りもありかもな

海近いし何も考えずにウキを見つめるっていうのも悪くない。

目新しいものが多いマリンショップを割と楽しみながら見ていると向こうから中のよさそうな男女が数人、カップルといぅ距離感じゃなさそうだ。

 

「やはりここの品揃えは凄いなぁ」

「大きなとこだと色々扱ってるからね。うちじゃこうも行かないよ。」

 

「そういえばそろそろ新入生が入ってくる時期だな」

「そうねぇ、今年は私の従弟が入ってくるの」

「おおそれは良い。そいつもうちに入ってくれれば言うこと無しだな」

「うーん、その子とても良い子だから馴染めるのかなぁ」

「あー、あの子か。なんだかんだ言って馴染んでくれそうだけどぉ?」

「まぁ、どの道奈々華のところに居候するっていうなら、ウチのサークルとの関わりは避けられまい」

「そうだな。よし新入生第一号として盛大に歓迎してやろう!」

「あはは、あまり無理やりなのはダメだからね」

 

どこぞのサークル仲間のようだ。

男二人はボディビルダーでもやってるのかってくらい体格がいいし顔も悪くない。

女性の方はモデルかってくらい綺麗だし、あれが正に陽キャが青春してる大学サークルってやつだろう。

俺とは一生縁のないものだ。

 

「へぇ、360度全て撮れるカメラもあるんだな。」

 

あまり想定したこと無いカメラワークになるな。面白い…何かに使えるかもしれない。

カメラのことをメモに書き足してマリンショップを出る。

 

「楽しんでるんじゃねぇよ」

 

「・・・・・」

 

 

レンタカーを返しに行く前に海に寄った。

4月の海はまだ冷たくて、どこか少し、切なかった。

 

 


 

大学が始まった。

とはいえまだ履修登録期間で大した授業もない。

とりあえずある程度話せるドイツ語と、資格関係に強そうな授業を取った。

 

「ここ工業系だしな。何かに使えるだろ」

 

ここの大学は海関係の資格に強いだけではなく、デジタル関係から物理までけっこうな技術者を輩出している大学だ。

ここで有用な資格を取っておけばとりあえず就職先には事欠かないらしい。

大手のメーカーへの推薦枠もあるみたいだしな。

 

何故だろう、すこし胸が痛む

 

 

そんなことを考えながら暇つぶしに本を読んでると廊下が騒がしくなった。

人混みが出来てよく分からないが話し声を聞いていると半裸の男が現れたらし、い?

 

「いや、ねーよ。そんなのただの不審者じゃねぇか」

 

仮にそんなヤツが居たとしても警備員に摘まみだされる。

大学デビューの悪ふざけにしても質が悪いしな

 

周りが騒がしかったからイヤホンして本を読んでいた。

教授が到着して授業が始まった。簡単な説明を聞いて教授の人となりを調べていく。

「悪くないな」

 

この人は多少の出席不足は見逃してくれそうだ。何が起こるか分からないからそういう情報を調べていて損はない。

あとは適当に周りのやつに話しかけて、知り合いを作っておくか

 

…と考えていると妙に空いている空間があることに気づいた。

前の窓側だ。あの周囲だけヤケに人が居ない、なんでだと思って視線を向けると

半裸の男(・・・・)が黄昏ていた

 

「?」

えっ、なんで半裸?

 

「えっと教授は気付いてる、よな?」

えっ、もしかして俺の目がおかしくなった? 

でもアイツの周りが空いてるってことは他のやつも近寄らなかった訳で…

 

見なかったことにしよう。

俺は授業が終わった後、近くにいた男子に話しかけた。

 

「なぁ、良かったら連絡先交換しないか?」

 

「おぅ、お前もこの授業取るのか」

「あの教授の評判良いらしいから」

「俺は芥マリン。芥って呼んでくれ」

「俺は山本」

「俺は野島だよろしくな

 

「おーっす。俺もこの講義取るつもりなんだけど入れてくれない?」

「あぁ。はい俺の連絡先。講義に来れない時あったら頼むぞ」

「もちもち、代わりに俺が来れない時は…な?」

「いいぞ、野島と山本もそんな感じでいいか」

「あぁ、俺はそれでいい」

「俺もそんな感じで頼む」

「ん、じゃあグループ作っといたぞ」

 

話していて肩肘張らなくて済むやつらだ。

そこはかとなく、クズの匂いがしたが大学入りたての人間なんてそんなもんだ。

ガチのクズって言うのは…

 

「そういえば芥って下の名前マリンって言うんだな。なんか女っぽい?」

「そうだな、ちょっとイメージに合わないというか…」

「そうか、別に普通じゃね。ちょっとキラキラネームみたいだとは思ったけどよ」

 

あなたの名前は愛久愛海(アクアマリ~ン♪)

 

 

「っ!」

「…そうだな、俺には少し合わないかもな」

 

話を切り上げて足早に教室を出る。

 

「…野暮なこと言っちゃったな」

「これからは気をつけろよ」

 

 

 

廊下にでて次の授業までの空いた時間を大学の探索に使おうとしていたら。

 

 

「…いいじゃん。私は嫌いじゃないよ、その名前」

 

後ろから声がした。

振り向くと少しキツ目の顔をした髪の短い女がこっちをみていた。

あの講義を受けてる中だと女性が少ないし普通に可愛かったから記憶に残っている。

 

「…あぁ、ありがと」

そう答えるとその人は元いた方向へ戻っていった。

 

「態々伝えにきてくれたのか」

 

困惑半分、ありがたさ半分のままで授業を受けて一日が終わった。

充実した大学生活になりそうだ

 

 

「お前が? 許されると思ってるのか」

 

 

 

朝起きて大学に向かう

 

大学へと向かう電車は混んでいて逆に新鮮な気持ちになった。

ここのところずっと人気のない場所にいたからか。

 

「話せるやつも出来たし、このままやってれば大丈夫だろ。」

大学について昨日連絡先を好感したやつらを見つけたので話しかけた。

 

「よう」

「おはさん!」

「…おはよう」

「お前たちは今日どこの授業行くんだ?」

「あぁ俺は物理の基礎講座に…」

「俺は共通のやつ幾つか見て回ろうと」

 

そんな話をしながら講堂へと向かう。

あー、今大学生してるわ俺。内心そう感じながら会話を続けようとして前を見たら

 

 

 

 

半裸の男が増えていた

 

 

なんだこれ?

 

俺の目がおかしい? でもやっぱアイツらの周りには人が避けたようなぽっかりとした穴が開いている。

つまり俺だけじゃなくてこの講義を受けている人の目に半裸のアイツらが映っているということだ。

 

念のため野島たちにアレが見えているかどうか聞いておく。

 

「なぁ、俺の目には変態がもう一人増えたように見えるんだが… お前たちはあれがどう見える?」

 

「いや、どこからどう見てもアレは変質者だろ」

「あぁ、俺にも上半身裸の変態が二人いるように見えるぞ。しかも一人は昨日と同じ奴だ…」

「つまりアイツに関わると服を脱がされるのか…?」

「いや、そんな訳は、ないだろ…ないよな?」

「いや、どうなんだろ?」

 

 

意味が分からん。

 

暫く観察してると半裸の男二人は凄い顔で殴り合いを始めた

 

「何言ってるか分からないけど、やべぇな」

「あぁヤバい」

「なんていうか…ヤバい、な」

 

俺たちの語彙力が死んでいた。

やはり俺だけではなく他の人の目にも半裸の男たちが映っているらしい。

とりあえず関わりにならないよう注意して大学生活を楽しもうという話になった。

山本は彼女を求めに今日もまた近くの女子大へ行くらしい。

 

まぁ、その…頑張れ

 

明日の授業と資格取得の準備をして寝た。

 

学食の飯が旨い。海産物加工の研究もしているだけあって刺身が新鮮でクオリティも高い。

家でも食べたいな。本格的に朝市にいくか考え始めてた。

 

「のうのうと暮らしやがって…」

 

 

 

大学生活が始まって一週間が経過した。

 

 

「おーっす、芥」

「御手洗か、おはよう」

 

御手洗が話しかけてきた。

 

「今日の講義どこ取ってる?時間合うなら終わった後にサークル見学でもいかね?」

「サークルか、いいな。今日は4コマ目のドイツ語で上がる」

「おー奇遇、全く同じだ。そのまま一緒に見学いこうぜ」

「忘れてたコイツ藤原だ。コイツも一緒でいいか?」

「あぁ構わない。 俺は芥マリンよろしくな」

「藤原だ。見ての通り高校までラグビーやってた。よろしく」

 

流れで藤原とも友達になった。

握手してみて分かったがガッシリとして筋肉質の腕だ。相当やり込んでる、無口であまり喋らなそうだが仲良くなったら筋トレの話とか一緒にトレーニングとかできるかもな。

 

三人で回るサークル見学は楽しかった。

チャラ男らしく御手洗が女性率の高いサークルによく声を掛けていたのを藤原が窘めていた。

でも実はお前も興味深々だったの隠せてないぞ。

 

「なんだよ。お前女に興味ねぇのかよー!」

「そういう訳じゃないが」

「へっ、この良い子ちゃんめが…」

 

なんだかんだ三人で駄弁りながら帰った。

 

 

「はっ、次は友達ごっこか?」

 

 


 

「面会の時間だ」

 

 

 

 

 

看守から呼び出されて面会室へと向かう。

俺が収監されてから暫く経っていることもあり、面会室には行き慣れた。

 

「またかよ、今度はどこの記者だ」

大手の新聞社から始まり、マスコミ、週刊誌、個人のジャーナリストにユーチューバー、名前も聞いたことがねぇオカルト誌まで。

刑務所に入ってからこれまで散々押しかけてきやがってッ!

お陰で刑務時間より面談の時間の方が長いくらいだ。

 

…月の面会時間の制限どこ行きやがった? 刑務所にも規則はあっただろうが

はぁ。まぁ俺の言うことなんて何も変わんねぇのにご苦労なこった。

 

看守に連れられ面会室に着く。椅子に座らされて部屋から看守が出ていった。

 

アクリル板で区切られた向こう側に帽子を被った女の姿が見えた。

 

若いな…

 

ジャーナリスト気取りのフリーライターってところか?

騒動が落ち着いてきてるであろう今新しいネタでも探しに来たか。

 

「で、どうした?」 

 

「新しいネタなんかねぇぞ、あの事件のことはお前たちが散々広めてくれただろう?

それともまた俺の社長時代のエピソードでも蒸し返しに…」

 

 

「あまり時間がありません。手短に質問に答えてください。」

 

女が帽子を脱いだ。

艶のある黒髪が零れる。

 

 

「は?」

 

いや…

いやいやッ! なんでお前がここにいんだ!?

こんなところで油を売ってる暇なんてねぇだろが。

 

今や引っ張りだこの、大物女優様がよ

 

 

 

 

 

静かに俺を見つめてくる。

その姿が散々迷惑を掛けてくれやがったアイツと…どこか重なった。

 

 


 

 

 

 

時間が経つのは早いもので、もう大学に通い始めて2週間が過ぎた。

 

俺は空いた時間で大学内を散策している。

まだまだ学内を把握しきれていないが、使うところと主な施設などは一通り見て回った。

 

「地方で土地余ってるからとはいえ、だいぶ広いなここ」

 

複合大学とまではいかないが学部の数も多く、その多くがここにつぎ込まれてるんだから凄まじいほど広い。魚の養殖などの企業連携している施設もあるし、次世代エネルギーとして注目されている波力発煙設備の実験も行われているらしい。

ここら辺は機会があれば見学してみたいところだ。

 

 

「でさぁ…」

「大丈夫、大丈夫。絶対ウケるからきみ」

「じゃあ…私やってみます!」

 

同じTウニフォームを着ている男女の話し声が聞こえた。お互い顔は笑ってはいるが、雰囲気が…な

話が終わったのか女はそのままどこかへ行った。

 

「ははっ、マジでやるのかよアレw」

「いやいや絶対ウケるってw あー、でもあんな格好で人前出るとか俺だったら恥ずかしくて死んじゃうね」

「それな。まぁどうせ今年も俺らが取っちまうから。あんなお笑い枠でも出しとかねぇと他の所から妬まれちまう」

「それな。ほんとアイツが入ってくれて良かったぜ」

帰った女をダシにして男二人が笑いながら帰っていく。

 

 

このまま放っとくのも、気分悪いよな

 

「おあつらえ向きにテニサーか… ちょっと調べてみるか。」

 

 

「ん?」

「どうした?」

「いや、今向こうの林で何か光ったような… あーなんでもない。今行くわ」

 

 

 

「そんなことやっている場合か」

 

 

 

今、大学に通いながら探偵の真似事をしている。

 

髪を染め直して、雰囲気を変えて、話しかけやすいキャラを作る。

気になるサークルから出てくる女に声を掛けて話を聞く。

出るわ出るわ、惚れた腫れたの後ろくらい話が…中には相当えぐい話もあったが、まぁ大学生ならそんなもんかと思うようなことが大半だった。

ある程度情報が出そろった後はちょっと危なそうなサークルと先輩の話をして噂にしておく。まぁこんなもんでいいだろ。

 

調べるきっかけとなったサークルのやつも普通のクズだった。

ちょっと顔の良い男女がそこそこ居て、遊びとスポーツ半々くらいでやってるサークルってところ。

よその大学のメンバーも居るから人数も多い。悪い面がでてる陽キャのサークルって感じ。

悪い面も多くあるけど良いとこもある、陰キャだと辛いだろうけどなあそこ。

 

一応遊んでるやつらの交際関係をネタに幾つか仕入れてる。

なんかやらかしそうなときはこれでも使ってやろう。

 

しかしどう見てもアイツに気がある女が複数いた。少し顔が良くて、大学に入ったばかりの男慣れしてない女を誑かして、それで放置してる女ったらし…

 

…女の敵とはああいうヤツのことを言うんだろうな

 

 

まぁある程度のことは分かったので今日で調査も終わりだ。明日からはまた普通に大学にいこう。

最近は変装してたんで会ってない、久々に男子校のノリでアイツらとバカをやりたい。

 

「いやでもほんとにこの姿、アイツらには見せられないな…」

「山本から殺されてしまいだしな」

 

きっちりとした服に眼鏡を掛けた俺は髪を降ろしながら息を吐いた。

 

 

 

「よぉ、探偵ごっこは終わったか?」

 

「…ぁあ!」

眼前の陰に人影が見え始めた。

 

「楽しそうだなぁ… 次は友人との飲み会か?」

 

「仲良い友達がいて、資格の勉強も順調、人様の色恋覗き見て、上から目線であれこれ語る」

 

「良かったじゃねぇか、夢にまでみた理想の大学生活じゃ…」

 

「っあぁぁ!」

 

無理やり意識を切り替える。

思い浮かんだ大学生活から…に。湧き出た感情を心ごと螺子切るように

 

「俺には、まだやらきゃいかない事、がある!」

「約束が、あの子を、見届けるまでは…」

 

「こんな俺があの子を応援していてもいいのだろうか」

 

「次はサークルにでも入るか」

 

「それとも女でもつくるか?」

 

「良かったじゃねぇか」

 

「言われた通り自由に生きてるぜ(・・・・・・・・)、お前」

 

「・・・・・」

 

 

帰りがけに海に寄った。

波の音を聞きながら暫く歩いていた。

日が暮れたあとの海岸の風は今の俺には堪えた。

 

 

あれから一週間が過ぎた。

 

ちゃんと大学には通っているし、課題や資格試験も順調だ。

アイツらとも偶に話している。…今度飲み会やろうとラインが来たが、返事を出せないでいる。

そういやまた山本が通報されたらしい。懲りないなコイツ…

 

でも他のやつもそろそろ本格的に彼女が欲しいらしくて、積極的に噂やら合コンのことを調べていた。

殺気立っていて怖い… この力の入れようだ、抜け駆けで彼女出来たやつを血祭りに上げてもおかしくない。

俺には関係ないが、仮にこいつらに女との関係を気取られるとマズいことになると確信した。

 

はぁ、とりあえず噂で聞いたってことにして、新入生が集まり易いところや隠れた人気スポットなど前に調べた時の話をしてやった。

 

誰とは言わないが顔面崩壊するほどに感謝された。キモイ…ほんとうにそういうとこだぞ山本。

うーん。にしたって山本や野島に比べて御手洗に余裕が見えすぎる。

もしかして彼女、もしくはそれに近い女が居るのかもしれない

…何かに使えるかもな。メモ帳へこっそり書き記した

 

 

と、まぁこんな感じで過ごしている。

 

今大学では伊豆春祭の準備が行われていて忙しない。

大学をあげた大きな祭りで多くの露店が出るし、部活やサークルの殆どが参加する。

入ったばかりの新入生に出番はないだろうが、多くの文化系サークルの発表の舞台でもあり、どこも力が入ってる。吹奏楽のパレードや物理の実験披露、演劇サークルの劇場などみたいものがそこそこある。

 

 

大学恒例のミスコンや逆にミスコンの男版『ダンコン』も開かれるらしい。

 

「呼び方はそれでいいのかよ…」

 

まぁ、暇があったら見て見るか。

どうせミスコンはアイツらから連れていかれるだろうしな。

 

「お友達と仲良く鑑賞会か、良いご身分だな」

 

「・・・・」

 

 

 

家で目が覚める。

 

今日は伊豆春祭当日、午後からアイツらと一緒に回ることになっていたけど断った。

少し気分が悪かったのととてもそういう気分じゃなかったからだ。

 

ふと携帯に目をやればラインが来ている。

「ふっ、アイツら…」

 

しゃーない。祭りだけでも行くか。

 

 

ラフな格好に着替えてバッグ一つ持って出かけた。

時間帯が遅いとはいえ電車は結構混んでいる。

こりゃ大学はすごい込み具合だろうな、と悟りながらも向かう。

 

大学についてから運動部が使っているトラックに出る。

そこには多くの出店と祭りを見に来た人で溢れかえっていた。

 

「はーい、焼きそば3丁あがりぃ」

「おいしいよー。我らがサークル秘伝のから揚げだ」

「どうそこのお嬢さんクレープ食べてかない? ついでにうちのサークル入らない?」

 

呼び込みと勧誘が飛び交う。

どうしてだろうか、こんな威勢の良い声を聴いてるとこっちまで元気が出てくる気がする。

 

どこか楽しくなってきた。近くのたこ焼きを買って食べながら見回る。

実験室でプラズマの発光現象見て騒ぐカップルがいたり、歌自慢のカラオケ大会でマジでプロが出ていたり、ダンス部がB小町の曲をやっていたり、一人で過ごしていても普通に楽しめる。

 

ついでに興味のあった演劇に行ってみた。

演者の質がまばらで黒歴史を見せられていると感じたが、誰も彼も一生懸命にこの会場でやれることをやっていて嬉しくなった。

皆で一つのモノを下手なりに努力のあとが見れるものだったから。

「やっぱ演技は感情がノッてなんぼだよな」

 

人の流れが変った。

ミスコンがあるんだっけ? 

 

アイツらは始まる前からステージ前でスタンバってるんだろうなぁ…

 

だが、ちょうどいい。

人が少ない方が回りやすいからな、そのまま俺はヨット部の出し物へと向かった。

 

「しかし本当に出し物が多いな。」

 

単純に数が多いのでそれだけ参加しているサークルがある。

運動系は露店で良いんだろうけど文科系は発表会や実験コーナー、お化け屋敷、占いの館、アクセサリー、数珠繋ぎ、呪い本舗…

内容が被っているものも多くあり、クオリティもお察しのモノが殆どだが手の込んでるモノは普通に面白い。

さっきの演劇部だと他のサークルと一緒に組んで脱出ゲームをやっているらしい

 

ふーんと目についた呪いの札を買って、冷やかしを続けてしばらく。

 

「・・・・っ」

 

「あー!もう始まってるよ」

「今年も●●さん出るんだよね」

「○○の彼氏もでるんでしょ?」

「ネタ枠だけどね~(笑)」

 

 

前から古めかしい服を着た数人の女生徒が通り過ぎていく。

お化け屋敷の驚かせ役をしていたみたいで着物のような服(*******)を着ていたり、ボロボロのナース服だったり、生気のないのっぺらぼうの仮面を外していたりとしていた。

 

「この格好のままでいいのかな?」

「まぁ春祭だし、同じような恰好の人も多いでしょ」

「そうそう、ついでに宣伝にもなるし」

 

そう言いながら足早に去っていく

 

 

「ドクン。ドクン」

心臓の鼓動がやけに大きく聞こえる。

 

「違うっ」

目についた祭り飾りの色がヤケに目につく。

 

「あっあぁあl!」

使われていない教室、廊下から光が差し込んで薄暗くなっている。

 

「あぁ…ぁぁっ」

先ほどすれ違った着物の女性の胸元は真っ赤に染まっていた。

 

「アクアは、役者さん?」

「それとも…」

 

「          」

 

 

「夢見てんじゃねぇよ…」

 


 

俺はどこに居るのだろう 空が赤い 人は少ない

 

「マリンさーん!」

 

手から液体が滴り落ちる。

身体が痛む。どこかぶつけたのかもしれない

どこからか声が響く。

 

聞くな。どけろ。邪魔だ!

 

「マリンさん」

 

「マリンさんってば!!」

 

腕を掴まれる。

そのまま身体を引っ張られた

 

 

「…真、川?」

 

 

 

 

 

振り向いた先に居たのはあの時溺れていた少女

 

「はい、真川ですよ?」

うーん?と首をかしげながらこちらを見ている。そして納得したように頷く。

 

「ありがとうございました!」

 

唐突に礼を言われた。

 

「溺れてた私を安心させてくれて、病院まで送ってくれてすごく助かりました。」

「あの日マリンさんが居なかったらお別れ会が台無しになって… いえ、もっと酷いことになってたかもしれません。」

「だから、あの日私を助けてくれて本当にありがとうございました」

 

「どうして…」

声が震える

 

「マリンさんを探してたんです。マリンさんあの後すぐ帰っちゃったから…ちゃんとお礼を言いたくて治ってからずっと探してたんですよ」

「今日は人が多いので探すの無理だろうなって半分諦めてたんですけど、見つけられてほんとに良かったです。」

 

そんな…俺の事なんか気にしなくて良かったのに

 

「それで、マリンさん全然雰囲気違うじゃないですか! もう全然見つからなくて諦めちゃうところでした」

 

触れられている手には、濡れた感触なんてなく…人の温かさを感じられた

 

「って、マリン…さん?」

 

 

なにかが胸をこみあげてくる

自分の中にあった重く暗いドロドロとしたものが、少し。ホンの少し、だけど確かに一つ消えた気がした。

 

「・・・・っ」

 

周りのモノがぼやけて視界が滲む…

 

 

「えっ、マリンさん!?」

 

目の前にいる彼女の顔さえまともに見れない

 

 

「う…、ぁぁッ」

 

喉奥から嗚咽が漏れる

 

 

「えっ」

「えっ! マリンさんなんで、泣いて!?」

「えぇーっ!」

 

真川が困ったように周りを見渡していると、人のよさそうな金髪の偉丈夫が話しかけてきた。

 

「困りごとか?」

 

「っておぉ! 黒髪で、陰気で、精神ヤバそうな… もしかしてお前さんがマスターが言ってたいた?」

「マリンさんのお知り合いなんですか?」

「いや、知り合いって訳じゃないんだが…」

「うーん、ここで立ち話もなんだ。今サークルの連中とお疲れ会してるんだが一緒にどうだ?」

 

「えっ」

「その状態じゃオチオチ話も出来ないだろ?」

「っぐ…ぁぁぁ!」

 

「えっと、それは凄い助かるんですけど… お邪魔してしまっても良いんでしょうか?」

「いいさ。うちにそんなことで一々文句を言うようなやつはいないぞ」

「それにしみったれてるそいつも賑やかな場所にいれば良くなるさ」

「うーん。」

「…それじゃ、お邪魔させてもらいます!」

「OK。じゃあ行こうか!」

 

金髪の男を追いかける。

 

「あぁ。ところで二人ともダイビング(*****)に興味はないか?」

ダイビング(*****)ですか? 私あまり知らないので…」

「それは勿体ないな ぜひ一度体験してみるといい世界が変わるぞ」

 

 

 

真川に支えてもらって歩いていたらいつの間にか会場に着いていた。

着くころには涙も止まっていた

 

中では何人もの人が笑いあっていて、既に出来上がっているようで…

今の俺の状態もあって少し入りづらい…

と思っていたらコップを持った真川が戻ってきた。

 

「はい、マリンさんウーロン茶*1貰ってきましたよ」

「…ありがとう」

 

しわがれた声が出る。

暫く泣いていたせいか、とても喉が渇いていた。

いきなり泣き始めた俺のことを気遣ってくれる、本当に助かる。

 

「ふふっ。これくらい幾らでも任せてください」

 

可愛いな。

自信満々に胸を張って言ってるが、その低身長と小動物的な雰囲気のせいで背伸びした子供が褒めてほしそうにしてるようにしか見えない。

思わずその頭に手を伸ばして撫でた。

 

「んー♪」

ちょっとヤバいかと思ったが、なすがまま気持ちよさそうに撫でられてくれた。

 

その姿に癒されながら杯を傾けた。

 

「っぁ!」

 

瞬間、口の中に広がったのは燃え上がるような辛さ

うっすらと香る木の焦げたような臭い

 

「マリンさん?」

 

「ゲほッ! …ッあぁぁ!」

 

ヤバい! そのまま一気に飲みこんじまった!!

 

「ぐっぁあ!!」

 

「マリンさぁん!?」

 

「カハッ…み、水を…ッ」

 

これ絶対にウーロン茶なんかじゃない!

喉の焼ける感覚にせき込みながらなんとか口直しを貰えないか伝える。

 

彼女が慌てて水*2を貰ってきてくれた。

喉が焼け落ちるかと思っていた俺は、真川から渡された水を一気に流し込んで…

 

 

心配そうにこちらを覗きこんでくる真川の顔を最後に…

 

 

俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

*1
40%

*2
4%




投稿めっさ遅れました申し訳ないm(__)m
何が明日で序章終わらせるだよ… 明日(100時間経過)じゃねぇか

こんなに遅れた理由は。クロスに寄り過ぎていた展開やキャラの性格を再構築したりしてたからですね… 正直まだアクアがどうなってしまうのか決めきれてない… 絶対にこれ書きたいって話はあるんだけどな~((+_+))ウーン
やはりアクアはアレにするべきだったか? でもそうなるとキャラが増えすぎて扱いきれなくなるんだよなぁ...( = =) トオイメ目


とりあえず自分の書くペース把握できたのでこれからは2~3日おき位で投稿していくつもりです。待ってくださった方居ましたら本当にごめんなさい!

ウーロン茶と水を飲んだだけで倒れてしまったアクア…
よほど心労が祟っていたのでしょう、可哀そうに()


次回から本編開始です(`・ω・´)ゞ

タイトルまだ決めてないけど『新世界』とかになるんじゃないかな?
タグやあらすじの更新はその時に~ 



絶対にこれ終わらせて、アクあかくそボケ純愛SS書きなぐってやるからな…












おまけ

???「おーい、ウーロン茶持ってきてやったぞ」
???「いや、それは要らない。」(コトっ)

「あっ! じゃあそれ、私が貰っていっていいですか?」

???「あぁ、それは構わないg…っ!?」

「ありがとうございます! マリンさ…」(パタパタ)

???「・・・・・・」
???「なぁ、あんな可愛い子うちにいたか?」
???「ってお前なにやって…!?」

???「えm4sl9h53jyqxせ7jq3t。」

???「なんか壊れたぞコイツ ケバ子にでも押し付けとくか…」

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