フィジカルお化けおじさん、異世界へ行く 1alternative 作:タラバ554
『ボーイ!次のスタントもやるよな!?』
打ち上げも終わりに差し掛かった頃、おっさんが酒の勢いのまま突進して来たので右手で顔を掴んで止める。
『次もある? 俺』
『勿論だ! ボーイのスタントは他の奴じゃ出来ない! お前のスタントがあれば俺が長年撮りたかった本気でワクワク出来る冒険活劇の絵が撮れる!』
こいつ絡み酒タイプか……酔っ払い特有の勢いと熱量がうぜぇ。
正直ここのスタントを続けてもメリットは……美人と会える位? でも単に美人を探すだけなら別に此処じゃなくても良いし。
『暫く忙しい、なる。行く、遠い』
おっさんが残念がって項垂れるが諦めて欲しい。
というかオラリオでやる商売の準備がもうちょいで出来上がるから商売スタートしないと。販売用のカウンターは自宅の日曜大工で仕上げ間近だから後はちょっと手を加えれば販売のフェーズだし。
向こうでお金稼いで……軍資金が貯まったら今度は自分でアイテム作りに手を出しても良いな。
バトルホッパーを作るのも良いし、無意味に演出効果を出せるアイテムとか……。
折角だから後で演出班の人達に話聞いてみようっと。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「おじさんに良く似た子かぁ……」
ヘスティアファミリアホームのリビングで全員がテーブルを囲んでおじさんの情報を共有していた。
メンバーは主神ヘスティア、団長ベル・クラネル、リリルカ・アーデ、ヴェルフ・クロッゾ、ヤマト・命の5名。
ウォーゲームで増えたメンツで命だけはおじさんとの直接のやり取りが無く概要を説明されても余りピンと来てない。
他のメンツも正直想像が追い付いていない。というのも、あの『おじさん』が子供だったら……等と想像した事も無かったので全く思い浮かばない。
「それでベル君、ギルド職員君が言うには黒髪黒目で自分の事を『おじさん』って呼ぶ子だったと」
「はい、人を探してオラリオに来ているらしいとエイナさんは言ってました」
「うーん、正直ソレだけじゃ探しようがないよ~」
そう言いながらテーブルへへたり込むヘスティア。ついで口を挟んだのはヴェルフだった。
「ベル、それで他に情報は何か無いのか?」
「うん、エイナさんが言うにはその子は屋台をやるって言ってた」
「屋台……ですか?」
疑問を口に出しながら首を傾げるリリ。
「何の屋台をするかまでは……」
ベルが首を振って答える。件の人物との接点が薄い命はおじさんの情報を欲して口を開く。
「あの……そもそも私はおじさん殿と直接の面識がウォーゲーム終了後の少しの間しか無いのですが、どの様な御仁なのですか?」
「「「「……」」」」
沈黙が場を支配して戸惑う命。
「あ、あの?」
少しの沈黙の後、各々が思うおじさんのイメージを口に出す。
「愉快犯」
最初に口を開いたのは主神ヘスティア、最初に出会った眷属候補で色々規格外で無駄に人の機微に敏い癖に自分の手札をここぞというタイミングで切るのが上手い人物。
時折核心を突く癖にあえてふらふらしたり、商売が上手かったり、時折盛大にやらかして問題を産んだりもするが何だかんだで話を転がす人物。
そう話すヘスティアは困ったような、だが楽しそうな顔で話す。
「自由人」
次に口を開いたのはベル・クラネル。初めに自分に声を掛けて来た人物で凹んでる所に声をかけじゃが丸君を食べさせてくれた人物。
ヘスティアファミリアに入る切っ掛けをくれた人で冒険者としてのスタートを一緒に切った人物でもある。その自由さと大らかさに度々困らされたが、それ以上に助けられたと語るベルの顔は笑顔だった。
「傍若無人」
困り顔で口を開いたリリルカ・アーデ。最終的に助けられたがその過程が無茶苦茶で、傍から見ると滑稽で、それなのにやることなす事が全部良い方向に向かう破天荒。
思い出すと頭が痛いと言い、困り顔なのだがその口の端は少し上がっていた。
「型破り」
最後に口を開いたのはヴェルフ・クロッゾ。ヴェルフのおじさんへの第一印象は変な奴。
最初はベルとリリ助から聞いたら凄くて……面白い人だと、実際にその凄さを知ったのは18階層。黒いゴライアスと遭遇した時。階層主の腕を捥いでソレを武器として使うとか頭ぶっ飛んでるとしか思えなかったしその後に起こったウォーゲームでも……まぁ知っての通り。
そんな風に話すヴェルフの顔は苦笑だが結局皆笑っている。
「つまり……色々と規格外で破天荒で自由奔放な御仁という事ですか」
「「「「大体あってる」」」」
ヘスティアファミリアで改めておじさんの人物像が共有された。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ん~~~! 久々のオラリオだー」
背伸びをしてから朝日を浴びる。前日入りしてキャンピングカーを使って夜を明かし、街中をぶらぶら歩く。
確かこの辺りに出店出すのに許可とかはいらんからお店に店先使っても良いかだけ聞けば良かった……はず。昔の記憶だから曖昧だが、まあイケルやろ。すいませーん! 店先使わせてくださーい!
お店の人には困惑されたが1000ヴァリスで店先貸して貰った。やはり金、金は全てを解決する。
と、アホな事を考えつつも【トラベラー】で売買用のカウンターを取り出してホットスナック系を並べる。こっちでスタンダードなじゃが丸にホットドックや唐揚げ。
昔の記憶を頼りに調味料もお試しとして多少は用意しているので味変も出来るぞ。
朝から営業を始めて1時間位か? 結構売れて『良し良し』なんて考えてたんですけどね?
金髪金眼のチャンネー、剣姫さんがログインしてウチの商品貪ってます……何か既視感あるんだけど気のせい?
「神の気配がしたので……」
「この売店に神様は居ないんじゃが……」
「貴方から」
「オメーは何言ってんだ」
初期費用が貯まりオラリオでの商売をスタートしたおじさん
そこへ現れる剣姫アイズ・ヴァレンシュタイン
二人が出会う時、物語は加速する……訳ない