フィジカルお化けおじさん、異世界へ行く 1alternative 作:タラバ554
目の前でモリモリと無言でウチの商品を口に運ぶ金髪。剣姫アイズ・ヴァレンシュタイン。
オラリオで押しも押されぬ第一級冒険者……なんだけど。
「あの~、そろそろ他のお客さんがですね……」
「次、
「いや、だから」
「それと
確固たる意思でヴァリスを突き出してくるアイズに頭痛を感じながら店の横に椅子を取り出して座らせる。
「……はぁ、そこで喰え。金を出すなら食って良いから正面に佇んで喰うのは止めてくれ」
「んっ」
コクコクと口に物を入れたまま首を縦に振るアイズを横目に接客を再開する。客は横の剣姫に怪訝な顔をするが適当に『マスコットでーす』なんて笑って言って納得させる。(自分を)
そんなこんなで朝から販売を開始した俺の店の売り上げは好調(主にアイズが原因)で、昼過ぎには一度在庫がはけてしまった。
流石に在庫が全てはけるまで一日は掛かると踏んでいたのだが予想外の事態に仕方なく準備中の札を作って店の前に立てる。
幸いコンロとかは全部【トラベラー】に突っ込んでたから手っ取り早く作れるジャガイモの揚げ物……トルネードポテトを量産していこう。
じゃがいもを串にさして回転させながら切り込みを入れる。絶妙な力加減で身が崩れない様に縦に伸ばしてちょっと下ごしらえして熱した油へ潜らせる。
パチパチと跳ねる油と格闘しながら音を聞く。油の弾ける音は食欲をそそる……そそるんだが。
「おい、横でマヨネーズを吸う妖怪金髪金眼マヨチュチュ女。……後ろを向いて後方確認すな、おめーだよアイズ」
「私、まよちゅちゅ? じゃない、アイズ・ヴァレンシュタイン」
「それは知ってるっつーの。というか備品のマヨネーズを単体で吸うんじゃねぇ。オメーはマヨラーか」
口にくわえていた小ぶりのマヨネーズを『ちゅぱっ』という音と共に取り上げる。……小ぶりとはいえ1/3まで減ってるじゃねーか、どんだけ吸ったんだお前は。
「もう売り切れたんだから一回ロキファミリアに帰れ」
「久々に神に会ったのにこの対応はどうかと思う」
「だから俺は人だっつーの、つーか初対面だろうが」
頬を膨らませても知らん知らん。つーか半分くらいおめーが商品食うから店の知名度上がらんじゃないか。
取りあえず店の知名度を上げたいのに売り上げだけが上がるという悪くも無いが良くも無い状態になっちまう。
「あっ、こら! 揚げた端から食おうとするな!
アイズと商品の取り合いという攻防をしていると知りあいが声を掛けて来た。
「ユースケ、こんな所で何してるんだ?」
「お? おぉ、サラスヴァティーさん。何って商売だよ……売切れてるけど」
「へぇ、何売ってるんだ?」
「前食わせた様な食い物系。何が当たるか分からなかったから結構種類を用意した……んだけども」
「ん? 売れたんだろう?」
「大半が
そう言って親指でアイズを指す俺、困惑の表情のサラスヴァティーさん。そりゃそうだ、こんな所に居るのも変だし椅子に座ってポテトを食って……。
「ってオメー何時の間に!?」
「お金はソコ」
「……そーいう事じゃねーよ」
無理だ、この食欲モンスターを抑える事が出来ない。俺の商売の一日目はコイツに喰われて終わるんだ。
そんなアホな事を考えながら両手で顔を覆って空を見上げてるとサラスヴァティーさんから助け船が来た。
「ユースケ、必要ならウチの子達に手伝って貰うか?」
「お願いします」
流れる様に土下座をかます。戸惑われたがマジでお願いします、このマヨチュチュ女の消費量を上回る生産量は一人じゃ無理です……また吸ってるし。
とりあえずツッコミチョップ。割と痛かったのか叩かれた所を摩るアイズ。
「神様、強くなった?」
「とりあえずマヨネーズ返せや」
「んっ」
その一言で残ってるマヨネーズを殆ど一息で吸ってから容器を返してくるアイズ。目の端がピクピクなるのを我慢して粛々と容器を【トラベラー】へ仕舞う。
こいつが又マヨネーズ要求してきたらコレ出してやる。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
サラスヴァティーファミリアの協力もあったお陰で何とか
商品を作ってる間、結局剣姫は帰らず椅子に座り続けた。もしかして居座るつもりか?
手伝ってくれたサラスヴァティーファミリアの皆には冷たい飲み物を振る舞って、ついでに何かあったらアイズを押さえてもらう事にした。
取りあえず大き目のパラソルと椅子を出して音楽プレイヤーでリラックスして貰おうとしたら何か楽器出してくれと言われた。
どうやら演奏したいらしいので手持ちの楽器を適当に渡すと演奏会が始まった。
お陰で客足が途切れなくて良い。
ちょいちょい音楽が止まるのはアイズの仕業なので文句がある人は横の剣姫に文句言ってね? 言える人は居なさそうだけど。
そんな感じで音楽兼奇妙なスナックを売る、マスコットとして剣姫の居る店として変な評判が付いた俺の店がスタートした……。
最後のは全力で拒否します。