フィジカルお化けおじさん、異世界へ行く 1alternative 作:タラバ554
「ッシャ!」
「フンッ!」
訓練場に響く斧と槌の交差する音。ガレスとの模擬戦を初めて既に10分。
時たまメテオストライクを混ぜたり、足技を使ってみたりとするが有効打には届かない。
動き続ける両名共傷はあるものの決定打は無いまま試合は進む。
おじさん棒での攻撃も大体試せたしそろそろ次のステップへ移ろうと【トラベラー】で武器と盾を収めて無手へ。
「おぅ? 何じゃ、降参か?」
「まさか。それよりガレス、息上がって無い?」
「はん! そんな訳あるかい!」
「そう?」
おじさんストライクを使っての移動&攻撃。
「おぉ!?」
今までべた足での殴り合いだったから油断したガレスはモロに食らい前へ倒れた。
「お~、一応素手でもガレスに攻撃通るか……ヘスティアちゃん、ぼちぼち使うよ~」
声を掛けられたヘスティアは諦め顔で力なく手を振る。その様子に興味をひかれたロキが声を発する。
「何やヘスティア、おじさんは何する気なんや?」
「うーん、説明が難しいんだけど……新しい装備を試すんじゃないかな」
「武器か?」
「いや、ベルト」
「は? べると?」
ガレスが起き上がるのを見ながら【トラベラー】から変身ベルトを取り出し装着する。コアへ魔力を流しベルトと自分の身体を繋げる。
変身は行わずベルトのステータスを自分へ反映する。完全には無理だがある程度は反映出来てるだろう。
鎧を纏うイメージを描きながら技を発動させる。
「【庇護脂肪】
全身が黒に染まり、眼も赤く、身体は一回り大きくなっていく。
「……アイズ相手に使っとった奴の全身版か」
「正解、因みに最近改修した技もどんどん使うので……しっかり耐えてね」
「っは! 青二才が吠えよるわ!」
ガレスが啖呵を吐いた瞬間駆け出す。おじさんの突進に合わせ振り下ろされる両手斧。
それを
「ぜぁっ!」
「むぉ!?」
おじさんを中心に走る衝撃波。ベルトの魔力制御補助と
「フルカウンター、成功……かな?」
「何じゃ今の……」
「あ、おじさんの新技。その内普段から出来る様にするのが目標」
「……今はその姿限定の技か」
「そゆことー」
そう言いながらおじさんストライクでガレスの視界から消える。
「くそっ! またコレか!」
ガレスからすると自分の周りを黒い残像が見えるだけで実態が捉えられない。
「最近気づいたんだけどさ」
前後左右上からおじさんの声が聞こえて来て位置が掴めない。
「何じゃ!」
「移動にも使ってたおじさんストライクって技……足限定で使わない方が使い易いのよね」
「は?」
「スキあり、疑似ライダーキック」
空中を蹴った反動でガレスの左後方からライダーキックもどきを決める。吹き飛ぶガレス。
10メートル程吹っ飛んでから地面に着地、地面転がって勢い殺してる。やっぱもどきじゃ一撃必殺には程遠いな。
それとヘスティアちゃん、席を立とうとしない。ステイ、ステイ。
とは言え、姿勢や勢いなんかは多分問題無し。もうちょい実験してから本命いくか。
ゴライアスモードでのメテオストライクやバレットストライクの感触は悪くない。以前闇派閥相手に使った時は自爆技だった『ごらいあすぱんち』改め『フルカウンター』もベルトの底上げが相まってかなりスムーズに繰り出せる。
「くそっ、ソレになってからやけに
「底上げしてるからねー」
殴り、蹴り、常時反射可能なストライク状態を維持しながらの戦闘。ある意味これからも続ける必要のある課題だがガレス相手に
合わせて戦闘中に【トラベラー】で障害物を置いたり、回収したりという戦法も結構有用みたいで模擬戦としての収穫は非常に大きい。
実験としてはまずまずだし、商談用の手札は大体みせた……ならばやるしかないでしょう。
右手を上げてグットサインをヘスティアちゃん、ロキちゃんに送る。ヘスティアちゃんは録画に熱を入れ、ロキちゃんはベートに声をかけた。
「ベート」
「あん?」
「今からおじさんがやる事、ちゃんと見とき」
「ああ?」
「今回の模擬戦、アンタの為ってのが大きいんやで?」
「はぁ?」
ベルトに送る魔力を増やしながら【トラベラー】から1枚のカードを取り出す。
「さて、ガレス」
「ふう、なんじゃい」
「互いに耐久高めのステータスで決着も中々付かない状態で長々と戦うのもアレだし、次の技で決着付けようか」
「よう言うわい。さっきまで散々色々試しておったくせに」
「それはそれ、これはこれって奴よ」
ベルトに新設したカードスロットへ手持ちのカード『ライダーキック』を差し込む。
必要量の魔力を流し込むとカードに込められた魔法が起動。緑色の魔法陣が空中に設置されガレスを取り囲む。
空中に現われたソレを観察しながら相手を見ればいつの間にか足に緑色の装甲。そこに込められ魔力の運用に難のあるガレスでも分かるほどの力。
戦闘感から模擬戦という意識は消え、実践の感覚に切り替わる。
「これがおじさんとウチの鍛冶師が開発したベート式:ライダーキック」
そう呟いた瞬間には蹴りがガレスの目の前まで来ていた。重く、鋭い蹴りを持前のタフネスで数歩後退し姿勢を崩しながらも防ぎきる。
まだまだこれからと声を上げながら踏ん張るガレスが見たのは宙を翻り空高く舞う男の姿だった。
「ファイナルベント」
呟きながら右足を真っすぐ、左脚を添える様に折り畳む。途端に宙に設置された魔法陣がおじさんの足先へ集まり輝き出す。
おじさんの身体が先ほどガレスを蹴りつけた場所へ加速して射出される。急激な加速にブラックアウトしそうになりながらも底上げされた耐久と
右足に確かな手応えを感じながら右足の魔力を勢いと共に叩き込む。
「ぬぐぉおおおおお‼‼」
咄嗟に持っていた両手斧で行った防御が成功したのは偶然だった。だがその蹴りは直前の蹴りと比べても余りに鋭く、重く、斧を容易く圧し折りワシの身体に突き刺さる。
だがワシにもロキファミリア幹部、Lv6のタンクとしての矜持がある。だからこそ、正面からブツかって来た青二才の技に倒れる訳にはいかん。
圧し折られた斧を放り出し突き刺さる右足を抱え込む。勢いを止められず身体は地面に溝を作りながら押し下がるがソレでもこの身は倒れん。倒されん!
「だよなぁ。ガレスならそうだよなぁ!」
そう来ると分かってた俺はストックしていた左脚の術を蹴りで叩き込みながらガレスの拘束から抜け出す。
翻りながら着地する頃には送り込んだ魔力と術が反応しガレス自身が輝き出す。
「これは……」
「ベート式の真骨頂……BOM」
おじさんの指慣らしと共に爆発するガレス。派手な爆炎と煙に加え爆風が全員の頬を撫でる。
「ちょお!?」
「ガレス?!」
「ちょ、大丈夫なんか?!」
ギャラリーが慌ててるが問題無い、何故なら……。
「あたた、何じゃ威力は見かけに対して弱いんじゃな」
「模擬戦だからね、本気の奴使う訳無いじゃん」
全員がほっと一息を付いた。
ソレに対しガレスは溜息と共に座り込む。
「はー、お前さん一体Lvいくつ何じゃ? 相性もあるがワシと変わらん程に耐久あったりせんか?」
「さてね~」
そこら辺は語らなくても良い事なので言いません。
「んで、ロキちゃん。模擬戦の内容としちゃコレで良い?」
「ん、ええで。ベートもさっきのちゃんと見たやろ?」
「……ありゃ俺のフロスヴィルトの模倣か」
「模倣っつーか……別方向へ発展させた形かな」
ぶすっとしたベートに対して色々説明していく。
「そっちのは魔法を吸収、攻撃への強化に使ってるでしょ。さっきのは元々用意してた術を発動、一発目の攻撃と更に攻撃後の追撃に利用してんの」
「手間じゃねぇか。それなら一撃で決めて次に行きゃ良い」
「乱戦なら今のベートの戦法で正解だけど1対1の場合火力欲しくね?」
「手数で押しゃぁいい」
「それもアリだけど一撃必殺って浪漫だろ」
「浪漫より実用だ」
「かー、現実主義~」
ベートが意外にもまともに対応している事に驚くロキファミリアの面々だがベートの事を解ってるロキはニコニコ顔でその光景を見ている。
「(これでベートも一皮剥けてくれるとええんやけどな)」
「それにしても……」
「おん? どうしたんや、フィン」
「いや、よく彼はベートの事を許したね。出会いは最悪だっただろ? 唆した側の僕が言うのもアレだけどさ」
そういえばと過去を振り返るロキ。アイズたんの事で説明に来てベートと戦って帰って行ったな~と薄っすら思い出す。
今更ながらちょっと冷や汗が出て来た主神に呆れたフィンだが、熱心に戦い方についてあーだこーだと話してる会話に入って聞いてみた。
「ん? あー。気にしてないよ? ガキのした事だし」
「あ"あ"!? 今俺の事をガキって言ったか!?」
「いやだって……おじさんより年下じゃん(こちとら何世紀分生きてきたと思ってんねん)」
ガーガー吠えるベートに暖簾に腕押しなおじさんの様子を見て安堵するフィン。
「問題無さそうだよ」
「……さよか」
一安心のロキともう一つ気になる事を主神に問いかけるフィン。
「それでロキ、始める前に僕に『この模擬戦は商談材料やで』って言ってた理由は何だい?」
「何やフィン、気づかんかったんか?」
「?」
「おじさんをサポーターとして雇う話してたんや」
「……は?」
ステータス更新後の慣らしにロキファミリを利用したおじさん
改善した技を試す壁(ガレス)に一通り試してご満悦なおじさん
優秀なサポーターが手に入りそうでご満悦なロキちゃん
生ライダーキックを見てご満悦なヘスティアちゃん
ボウケンシャーとして見ていた為に性能を見誤ったフィン
次回、ダンジョンアタック
尚、ヘスティアファミリアにライダー旋風が巻き起こったものとする
※カードシステムはヴェルフ君が一晩で作りました。