フィジカルお化けおじさん、異世界へ行く 1alternative 作:タラバ554
そうしよう
ロキファミリア幹部とダンジョン40階層まで潜った翌日。
熟睡してお目目ぱっちりという若い身体に感動を覚えながら高校で授業を受けた。
授業も終わりを示すチャイムが鳴り先生が教室から出ていく。
今日の授業でやった公式を改めてノートに書き出して授業内容の確認終わり。家に帰ったら要点だけ書き出して復習予定。
「(その後は……2週間くらい顔を出して無い映画スタジオに行くか)」
此の所、各地を歩いて弾き語りする事が多かった。あちこちで弾き語りしてると日本人が珍しいのか結構色んな人が話しかけてくれる。
色々と面白い話してくれた人にはお礼としてマッサージ(スキル付き)をしてから別れる様にしている。男女共に反応が面白くて施術してて楽しい。
そんな事を思い出し笑いしながら授業後の予定を軽く確認して荷物を鞄に突っ込んだ所で友達に一緒に帰ろうと誘われる、が寄り道する時間が無いから断って下駄箱へ急ぐ。
有助が出た後の教室では。
「相変わらず中真の奴捕まらなかったのか?」
「何か忙しいからって断られちまった」
「まじかー、このDVDの特典映像の話、聞きたいんだけどなー」
「なあ、いくら何でもアイツじゃないだろ。そりゃガタイはデカイけど体育の成績とか普通だぞ?」
「そりゃそうだけど……映像見る限りアイツにしか見えないんだよな」
クラスメイトがそんな事を話している等は夢にも思わず、下駄箱で靴に履き替えてから人目が無い場所へ移動して身体能力にものを言わせて跳ぶ。
通ってる学校は地方の田舎高校で都心から外れた立地の為に学校の敷地も広く、隣接しているのも山ばかりなので山方面に走り抜ければまず人が居ない。
「対象『自宅庭』テレポート」
という事で自宅庭までテレポート移動、今日も移動時間5分! この魔法覚えてマジで良かったと思える瞬間である。
「あっ! 有助兄、またズルしてる!」
「ミキ、別にこれはズルじゃないって」
縁側に即した和室で勉強していた末の妹、ミキがテレポートで跳んで来た俺に文句を付けてくる。
「え~、有助兄だけ使えるのズルい~」
「お前だって偶に使ってるだろうが」
「遅刻しそうな時だけじゃんかー」
ぶーぶー言う妹にチクチク口撃。
「健康の為にも歩け、デブるぞ」
「そんときは有助兄のアレ使ってよー」
「……アレがある前提は辞めろって言っただろうが」
「でもアレめちゃくちゃ気持ちいいし綺麗になれるし、最高だよね!」
俺のスキルが家族に割れてからは姉妹全員が事あるごとにマッサージを強要してくるのだけはホンマにどうにかならんものか……。
「はぁ……親父とおかんにだけ使うつもりだったんだけどな」
「無理無理、お姉ちゃん達が見逃す訳無いじゃん。私もだけど」
「そうね」
まぁコレのおかげで兄妹仲が良くなったのは良いのか悪いのか……良いと思おう。
「んじゃ、俺はちょっと勉強してから出かけてくるな」
「今度は何処?」
「ハリウッドー」
「シュワちゃんとか会う?」
「いや、まったく合わん」
「ちぇー、サイン欲しいんだけどなー」
庭から上がり、文句をたれる妹の横を通って自分の部屋へ。30分程今日の授業でやった公式なんかを改めてノートへまとめる。
このちょっとした事をやっておくと割と頭に残るから不思議だ。
「……俺のスキルって脳も弄れたりするんかな」
ちょっと考えてはいけない事に触れた様な気がするのでメモに走り書きして頭から追いやる事に。
「さて、気を取り直して……」
私服に着替えて部屋の隅に敷いた段ボールの上で靴を履く。
「対象『スタジオ』テレポート」
穴を潜ればディブスがメガホン越しに指示を出している場面だった。時差で丁度活動開始時間だから全員元気に撮影に勤しんでいる。
隅の方でぼーっと眺めてたら以前仲良くなった特殊メイク班の一人が気づいて声を掛けて来た。
『hi、ニンジャボーイ』
『やっほ』
『今日はボスに会いに来たの?』
『いや、何となく顔出しただけ。忙しそうだから適当に見て回ってから帰るよ』
『そう? 会っていけばボスは喜ぶだろうに』
『おっさんに喜ばれても俺は嬉しくないわぃ』
心底嫌な顔してたからかメイク班の人がめっちゃ笑ってくる。
『そりゃそうか、所であれから楽器は練習してるか?』
『アコースティックギターが割と手に馴染んだ。後はオカリナとラッパ』
『何か変なラインナップだな』
『弦楽器はある程度は大丈夫だけど吹く系はなーんかオカリナとラッパだけなんだよね』
『そんなもんか、じゃあ今度何処かでセッションしようぜ』
『OK、んじゃやる時は声かけてよ』
親指を立ててから仕事に戻るメイク班。彼を見送ってから振り返ればアディーさんがニコニコ顔で立ってた。
『アディーさん?』
『hi、boy』
書類片手にニコニコしながら片手を上げて挨拶してくるアディー。おじさんも思わず手を上げて返事をする。
『hi、それで、何か俺に用?』
『boyのスケジュール、次は何時頃空きそう?』
『スタントへの参加って事?』
『ええ、本来の契約だとそうなんだけど……ディブスがアクターとして貴方にやってもらいたい役があるらしいのよ。どうかしら?』
『一応俺学生なんだけど』
『……え?! あなた学校通ってるの!?』
俺はどういう風に見えてるんじゃろか……一度話し合った方が良いかもしれない。
◆◆◆◆◆
「ヘスティア様ー、『撮影』をお願いしても良いですか?」
「ヴェルフ君、って事はこの間作ってた奴が完成したのかい?」
「はい、ソレの試運転を今からベルにやってもらおうかと」
「解った、ソコの箱を庭に持って行ってもらえるかい?」
「こいつですね」
そう言ってヴェルフはヘスティアが指さしたカメラ等のガジェットが入った箱を抱えて庭へ移動する。ヘスティアはおじさんから貰って普段使いしているノートPCを一度閉じてからヴェルフの後をついて行く。
「それで、今回は何を作ったんだい?」
「ストライクベントを作りたくて……魔剣の効果を付与したカードを作ってみました」
「何かサラっととんでもない事を」
「でも出来上がりは思ってたのと違うんですよ……何かしっくりこないっつーか」
ヴェルフの愚痴を聞きながら到着した庭には試し用のカカシを立てているベルが居た。
「ベル! カカシは立てれたかー?!」
「あっヴェルフ! うん! バッチリ!」
「ベル様、小手です」
「あっ、リリ。ありがとう」
「ヘスティア様、机はこちらで良いですか?」
「ああ、ありがとう命君。ここに置いてくれ」
眷属達のやりとりを見ながら全体が撮影できる場所で機材の準備をするヘスティア。機材の準備が出来てからはヴェルフがカメラの前に立つ。
「えーっと、今回のカードは魔剣の効果をカードに込めました。使用制限ありでキックの様に何度でもって訳じゃないっす。ただカードにする事で取り回しと携帯性は格段に上昇。一番痛いのはカードになった事で誰でも使えるって前提が消えた事かな」
ザックリとカード内容と利点、欠点を上げていくヴェルフ。説明を終えてからはベルがカードをドラグバイザーを模した小手に装填して実演を始める。
「いくよ、アタックベント!」
ベルの掛け声と共に掌から射出される子供程の大きさがある炎の弾丸。更にベルが3発程連射、着弾と共に爆発する様はまるでグレネードを投げ込んだ様な威力だ。
続けてベルは別のカードを装填して今度は水弾を射出、着弾と共に水の爆破で消化する。
ベルの実演を撮影後に再度ヴェルフがカメラの前に立ち説明をする。
「今ベルがやってくれたみたいに一番の改善ポイントは連続使用の容易さと切り替えの速さ。対群れへの対応性の高さです」
◆◆◆◆◆
そんなヴェルフが説明しているビデオとレポートを軽く流しながらディブスの説明を受ける。
『なー、おっさん。コレって別に俺はスタントで良くない?』
『何だボーイ。映画に出るのは嫌いか? お前さんの助けになると思ったが』
『助け? よくわからんがあんまり興味は無いかな。アクションとして面白そうとは思うけどさぁ』
つーか俺の顔だと映画映えはしないぞ。日本人らしい顔だし。
『ふむ? だがコレは心躍るだろう!? 広大な大地を駆け回り、溢れるモンスターの大群をバッタバッタとなぎ倒し! 最後に魔法でドカーン! 最後は美女とランデブー! 王道のパターンだぞ!?』
『いや、別に』
『えぇー……駄目か?』
だってオラリオでモンスター相手は普通にするし魔法でドカーンも自前で出来る。美女って言っても普通の美人だしな。
おっさんが机に伏せて拗ねても可愛くない。せめて奥さん連れてこい。それかアディーさんと仕草を変われ。
『駄目っつーか、ソレだとスポンサー集まらんだろ』
『そこは上手い事やる』
ディブスがキリっとした顔でダメな事いってやがる。それで良いのかお前は。
『少なくとももうちょっと端役にしてくれ、出番多すぎだ。俺学生だからそんなに時間取れねぇよ』
『……boy、学生なのか?』
『何だよその意外そうな顔は。こちとら立派な高校生なんですが?』
『アディー?』
『本当みたい、さっき
指を指すのは手元のノートPC。未来の製品は余り出したくないが説明が面倒なので出した。
アディーさんがノートPCに興味津々みたいだがご自身で買って下さい。ディブスから給料貰ってるでしょう。
『少なくとも常時出る役は勘弁して。途中に出てくる役とか魔法バーンと使う役なら時間的に出来るけど、
呆れ声で言うとディブスは真面目な顔で切り返して来た。
『ボーイ、次のヤツは稼ぎを出すつもりだが……メインはソコじゃねぇ。
思わず自分を指差す。
『俺はなぁ……昔からファンタジー小説が好きだった。居ないはずの生き物を、あるはずの無い冒険を思い描くのが好きなガキだった。
そんな奴が映画ってもんに触れて、自分の想像を具現して他人に共有するメディアを作り上げる仕事についた。
だが自分の夢を適える為には必要なモノが足りなかった。
そりゃ最近はコンピュータグラフィックスが進化してきて大分サマになってきたがそうじゃねぇ。
撮りたいのは生の迫力とヒリ付くような緊迫感の中にある一瞬なんだ。
CGでの表現を否定はしないが違うんだよ……そんな所にボーイ、お前さんが来た。
お前さんのアクションがありゃ俺が本当に撮りたかったモノが取れる。
ガキの頃に夢想した空想を作品として世に送り出せる! 俺はな! ソレがやりたいんだ!
当然金は必要だがそれ以上に俺のやりたい夢だ! 頼む、ボーイの力を俺に貸してくれ!』
そう言って頭を下げてくるディブス。
その真剣さには目を剥くものがあるが……。
「No」
だが断る。
『駄目……か』
『学校あるっつーの。せめて卒業まで待ってよ』
『……卒業したら良いのか?』
『そりゃ卒業したら正式に働けるし、成人扱いなら色々と正式に手続き出来るっしょ。俺、今未成年よ?』
ディブスが呆けてるのでお茶を飲む。アディーさんが呆れた顔してるが俺何か間違った事言ってるか?
そう思っていたらおっさんが抱き着いてきた。
『ボーイ! ありがとうな! 最高の奴を撮ろう!』
『だー! 鬱陶しい! 男にくっ付かれても嬉しくねぇんだよ!』
そのままソファーに体落としで投げ飛ばしたが、俺は悪くねぇ。
夢を追うおっさんと夢を手伝うおじさん
おっさんとおじさんが出会う時、化学反応が……
次回「思い付き」
エンタメの第一歩はエンタメを意識する事