フィジカルお化けおじさん、異世界へ行く 1alternative 作:タラバ554
ディブスのおっさんと卒業後に映画を撮る事を約束した日。
作る作品の話を色々した。
まぁ良くある奴だ。ぶっちゃけ売れない。
このままだと無理だと今までの経験則から答えが出る。
だがここで損切しても損がデカいのも又事実。
映画関係という特殊なツテが出来たし実績もアクション演者として積んだから別の所に移るのも手だが……めんどくさいな。
うん、何かあれば腕力で片付けよう。……いかん、オラリオのノリが抜けて無い。
向こうは神同士のパワーバランスとかあるけど最終的に腕力解決が効くから色々単純思考になっちまう。
肉体年数こそ10代だけど、生きた年数が数百年単位なのに考え方が脳筋とか神連中を笑えなくなるぞ。
『取り合えずディブス』
『何だ?』
『そのままだと売れないからシナリオ練り直しな』
ディブスとアディーが固まった。悪いなディブス、おじさん自分がちゃんと関わる場合は割と辛口なんだ。
『ジャンルと方向性は別に良いけど、捻りが少ない。設定をもっと作って設定がヴィジュアルに反映させたらよくなるでしょ。何だったらサンプル撮って来るから、また今度話そう』
『ぼ、ボーイ?』
『取り合えず今日はもう良いや、眠くなってきたから帰るね。ほんじゃの』
ディブスに言うだけ言ってさっさと部屋を出る。テレポートで部屋に戻って久々にちゃんと頭を回転させる。
振って湧いた話を自分なりの計画に織り込みながらサブプランに位置付けてシナリオのテコ入れを目指す。
仮にこのプランが潰れても特に問題無いし、当たればラッキーかな。
成功でも失敗でも俺の懐は特に痛まないし、顔を売るという意味では一定の効果が見込める所がとても良い。
元手の掛からない商売ってのはやはり良い。
特に他人の金で動くプランというのは特に。
そんなゲスな考えをまとめながらその日は眠った。
翌日。学校へ行く前にヘスティアちゃんへのメールを書く。
レポート内容は見た。
ヴェルフ君へはそのまま技術開発を続けて思ったままにどんどん試して良し。資金はこっちで稼ぐ。
今更言うまでも無いけど実用に耐えれる品になるまでは試運転のみでダンジョンへは持ち込まない。
くれぐれもベル君が勝手に持ち出さない様に管理する事。
ヘスティアちゃんはヴェルフ君の作った物を名前と用途を纏めてからリスト化宜しく。
それから後々の事を考えてイシュタルちゃんに会う約束を取ってもらえる? 商売の話って事でお願い。
追伸、来週次のライダーシリーズの映像持っていくわ。
用件を書いて送信。
そしたら今度はインド方面で良さげな企業を探す。
数字はやっぱコッチ側が強いんだよなぁ等と考えながらもこの時代だとまだまだネットが未発達なのもあって情報が今一集まらない。
おじさんがテコ入れしてネット技術進めた方が動きやすくなるかな。
◆◆◆◆◆
学校は何だかんだでちゃんと出る。改めて学ぶというより日常のルーチンとして。
拘束時間が長いが日本で学業ってなるとどうしても時間拘束が長い。それでも人との縁ってのは不思議なものだから通っていて損はない。
とは言え自分の事に時間使ってるから回りと少し壁がある。
授業時間に授業の要点だけ纏めて、先々の事業計画とネット技術を進める為の計画を練る。
隠れ蓑の会社を何処からか調達してソコから発表……ハゲタカ系が来るのは見えてるからソレを締め出しするかまとめ上げるか。
ソレをするにも管理、調整する為の人材が……やっぱ圧倒的にマンパワーが足らん。年齢が上がれば色々とやれることが増えるが……。
いっその事【超激運】の効果を発揮させるか?
自分のアビリティはある程度の効力の強弱は操れる様になってきたからフル活用して海外の宝くじを買い漁ってしまえば顔と名はこっちでも売れるか……いや、ソレだと名無しからの名前売りになって運が良いヤツで終わるな。
やっぱ地盤が無いと色々動き辛い。
「はー、早く大人になりてぇ」
「お? 有助、飯も食わずに珍しく黄昏てるな」
気付いたら授業も終わり、昼休みに突入していたらしい。集中して気付いて無かった。
「もう昼か……学食いかねーと」
「珍しいな、何時も弁当なのに」
「あー、昨日ちょっと疲れてたから弁当作って来なかった」
「……折角だ、一緒に飯食おうぜ」
「おん? 別にいいぞ?」
そう言ってクラスメイトと一緒に学食へ……。そういやコイツの名前何だっけ?
「おばちゃん、ちゃんぽん麺にコロッケ付けて頂戴」
「はいよ、200円ね」
「うっす」
200円を支払い出汁の効いたちゃんぽん麺コロッケ付きを受け取る。学生食堂は安くて旨いのが本当にありがたい。
余り広くない学食の隅、2席空いてたのでソコに座り早速麺を啜る。
出汁のうま味とちゃんぽん麺の歯ごたえがとても良い。
「うま~」
「有助、本当に毎回美味そうに喰うよな」
「そうか?」
「ちょいちょい教室で見かけてたけど毎回美味そうに喰うな~って思ってた」
「ふーん、んで、A君や」
「誰だよえー君って」
「え? アルファベットのA君、君の事」
「うぉーい、ちゃんと名前呼べや!」
「だって名前知らんし」
「はぁ?! いや、中村! 中村うさぎ! 教室で散々ネタにされてんだから知ってるだろ!」
……あー。なんか毎回騒いでる奴、コイツだったか。
「そっか、スマン。興味0だわ」
「えぇ~、この名前で名前忘れられたの初めてだわ」
「覚えやすくはあるな」
再度麺を啜る。うん、旨い。けど1杯じゃタラネ。もう2杯位頼んでこよう。
「ちょっとおかわりしてくる」
「早っ! もう食ったの!?」
結局5杯も食ってしまった。その間に中村君は自動販売機で飲み物を買い、横でパックジュースを口にしている。
「はー、旨かった」
「すげぇな。良くそんなに入るな」
「まぁ腹八分位?」
「まだ入るんだ……その割に太ってはないよな?」
「結構アクティブなのよ」
「帰宅部なのに?」
「部活入って無いけど運動部より動ける自信はあるぞ?」
「……だからスタントゃってる?」
「……ほ? スタント?」
「うん、映画スタント」
じっと中村うさぎの顔を見る。何か確信持って言って来てるなこりゃ。
「なーんでおじさんがスタントマンなの?」
「実はその事に関して話したくて声かけたんだ」
そう言って中村は腰に付けてたウェストポーチから何かを取り出す。DVD?
ってコレ、ディブスん所の奴じゃん。
「これの特典映像にさスタントやってるお前が映ってたから話聞いてみたくてさ」
「……え?」
「え?」
話を聞くとDVDの特典映像として撮影現場の映像があり、そこにおじさんの姿があったらしい。
念のためにその映像をおじさんも確認したいと言ったら。
「じゃあ部室来るか? 映像研究部ならDVDデッキもあるし直ぐ確認出来るぞ」
言葉に甘えて部室にお呼ばれして内容確認。
遠目にだが確かにおじさんが映ってる。
「確かに俺だなぁ……ただ話すとめんどいから話纏めてくるまで待って」
色々確認しないと迂闊に話せない。
◆◆◆◆◆
『ディブスー! 何で勝手に俺の映像が世に出回ってるんじゃー!』
『あだだだだだ!』
奇襲でディブスに縦四方固めをかけながら問いかける。
『言え! 理由は!?』
『ボーイの助けになると思ったんだ!』
善意からの行動だというのは何となく分かったので一旦肩を外すに留める。ゴキンッという小気味いい音を響かせてディブスの肩をぶらぶらさせてから起き上がる。
『ボーイ、これ外れてる? てか痛くないのが怖い』
『痛まない様に外したからな。それより説明はよ』
CM撮影中だったようだが知らん。そんな事より説明はよ。
どうやら善意で俺の顔を売ろうとしたらしい……いや、説明位はしておいて。嬉しいけど。
俺とディブスがごちゃごちゃやってるとCMのクライアントが喚いてたので目の前で鉄骨をむしり取って黙らせた。
『こうされたくなけりゃ黙れ』
その後はディブスと話を色々やって特典映像とかに乗るのは差し止める事が決定。
出回ってる分はもう良いとして以降に作られるものには乗らないらしい。
契約上映像を使うのは問題無いのでソコまで強く言えん。が、次からは使う前に一言貰えるようにしてもらった。
CM作成の邪魔しちゃったのも事実なので変わりに撮影の手伝いをする事に。
何か周りが色々騒いでたが気にせず撮影。ディブスの要望でスーパーヒーロー着地もどきをやったら何か黙った。泣いてる理由は分からんが満足したらしい。
その日、撮影で時間も使っちゃったので翌日は学校休む事をディブスの社長室から電話で家に伝えてアメリカで過ごす事に。
『ディブスー、電話ありがとなー』
『何処にかけたんだ?』
『国際電話で日本の実家に』
ベットにうつ伏せで寝かせてるディブスの背中を触診する。
『……まじでお前の生活どうなってんだ?』
『距離は関係無いからな』
『何だ、テレポートでも出来るってのか?』
『出来るぞ』
『はぁー、マジなら世界で唯一のテレポーターだな』
笑ってるディブスの肩を嵌め込んでついでにマッサージ。
『肉を食いすぎじゃね? 少し胃が疲れてるぞ。もちっと野菜食え』
『運動してるんだから肉くらいは良いだろ?』
『悪くはないけど少し意識して野菜食べた方が身体には良いぞ? 年とるとそれまでの食生活とかモロに影響するしな』
『何か実感ありそうだな。そんなに若いのに』
『ま、人生色々よ』
マッサージ後は何かお呼ばれしたのでディブスの家へ招待される事に。
『うまい、うまい』
『楽しんで貰えてるなら良かったわ』
『めっちゃ美味いっすよ、このステーキ』
『ディブスが追加焼いてるからどんどん食べて』
『あいつはもう少し野菜食った方が身体に良いっすよ』
ああやっぱり、そう言いながらため息をはく嫁のアンナさん。
斜向かいでステーキ食ってる娘さんも少々ふっくらしてるから食生活困ってるのかも。
そう思いながら4枚目のステーキを食べる。しっかり味付けされてるから美味しい。
晩飯をごちそうになってから食後にシナリオの事をディブスとあれこれ話しているとさっき一緒に食事をした娘さんが近づいて来てディブスの隣に座った。
学生でライター志望なんだとか。
折角なので会話に参加してもらう。違う視点が加わると色々出てくるし本当の意味で年代が違う視点ってのは大事だ。
そんな話をしていたら……。
『お?』
『!??!?!?!?!?!!?!』
『キャアアアアアアアア‼‼‼‼』
『オワアアアアアアアアアアア‼‼‼‼?‼‼』
地震だ。震度……3位?
呑気に考えてたらアンナさんがリビングに駆け寄ってきて目の前の三人は肩を寄せ合ってる。
アメリカの人ってこんな反応するんだなーとか思ってたら頭上の電飾が落ちて来たので三人の所へ移動してキャッチ。
危ない危ない。そんな風に思いながらキャッチした電飾を部屋の隅に下ろしてるとディブスがおろおろしながら話しかけて来た。
『ぼ、ボーイ? お前、大丈夫なのか?』
『あん? 何が?』
『何がって、地震だぞ! あんな大きな揺れ生まれて初めてだ!!』
『……???? 日本だと日常的に体験してるしな……』
『oh……』
『クレイジー……』
娘さんそれは日本の地震の頻度に対してって事で良いよな? おじさんに対してだったら泣くぞ。
ディブスは何かぼけーっとして……どした?
『こっ……これだー!』
突然の大声にディブス以外の全員びっくり。
『経験則による周囲との格差! これだ! これだよ! これならキャラクターにも深みが出せる! 良いぞ! こうしちゃいられん! 直ぐにメモを取らないと!』
そう言って直ぐにテーブルから落ちたメモを拾い上げて物凄い勢いで筆を走らせるディブス。
残された三人は笑ってから各々の行動に戻った。
おじさん? 当然ディブスとシナリオの話をしたが筆が乗ったディブスは一言二言投げかけると面白い様にアイディアを口に出し、ソレをメモしていく。
当然課題も同時に出来たがシナリオ進んだならヨシ。という事でついでにおじさんの事もネタとして提供してやろう。
演技が楽になるならソレはソレで良いからな。
頭脳は成人! 身体は子供! その名はおじさん!
燃え尽きの影響で見た目に反してシビアな目線を同時に持つおじさん
以前のおじさんにあったやさしさはどうしたの!?
次回「正論」
時に正論は人の心を傷つける