フィジカルお化けおじさん、異世界へ行く 1alternative   作:タラバ554

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28 正論

平日に中山……え? 違う? ああ、そうそう中村だ。中村うさぎ君の質問をのらりくらりと躱していたら体育の授業でもっと動けるんじゃないかという事になった。

 

「そりゃまぁ」

「何でやらないの?」

「別に理由は無いけど」

「そんなもん?」

「そんなもんっしょ」

 

そんな会話を聞いていた人が居た。そう、体育教師である。

そのせいで非常に、ひじょーーに面倒な事になった。

その日の授業はマラソン、郊外を2週で約5kmを走るのだが中村とダベりながら1週目を走ったおじさんに注意が飛んで来たので仕方なく2週目をソコソコで走った。

時速20km位に落としてたけど体育終わってからやたら陸上部の奴に絡まれるようになってしまった。

 

「なー、一緒に部活やろうぜ?」

「嫌、部活入るメリット無い」

「進学とか有利になるって! お前の脚なら大会でも成績残せるし!」

「別に陸上の成績無いと進学出来ないって訳じゃないし、それにおじさん行くならアメリカの大学行くから日本の陸上の成績とか意味ないぞ」

 

流石に押し黙る陸上部の子。諦めてくれた?

そう思ってその日は帰ったが、翌日に陸上部顧問の先生から呼び出された。

 

「中真、お前アメリカの大学志望って本当か?」

「はぁ……まぁソッスネ」

「英語出来るのか? それに向こうでやりたい事は決まってるのか?」

 

ん--? なんじゃろなこの質問は。

 

『できますよ? それに向こうでやりたい事は機械工学に薬学、経営と法律関係の勉強ですかね』

 

そう英語で返してやれば教師は黙った。……先生、ちゃんと聞き取れました?

 

「驚いたな。めちゃくちゃ流暢に話せるんだな……お前が本当にアメリカ行きたいのなら交換留学の話が上がってるがやってみないか? と言っても陸上の枠なんだけどな」

「交換留学……それこそ今の部員が行けば良いんじゃないです?」

 

そう言うと教師はめっちゃ悩まし気な顔をして愚痴を零した。

 

「俺だってそうしたかったケドさぁ……アイツ等全員英語嫌いなんだよ」

 

あ~、英語嫌いか。気持ちは解る。おじさんも覚えるまでは割と嫌いだった。

 

「ウチの学校って陸上それなりに強いの知ってるか?」

「そうなんです?」

「一応県大会では1位常連で全国でも上位に入る事が多いんだよ」

 

そこからは陸上成績が良い事、その縁で交換留学の話が来た事、交換留学なので最低でも1人は留学生を出さねばいけないが部員の中で英語が最低限出来る人間が居らず目を皿の様にして探していた。

そこでおじさんの情報が部員から上がって来た。そして体育の成績を確認したら全体のタイムは普通だが二週目のタイムがかなり良い。

これなら! って事で心情調査って事らしい。

 

「交換留学自体は興味ありますけど……部活に縛られそうっすね」

「一応名目上、陸上枠だからな。最低限向こうの部活には出て欲しい、週に3日で練習は1~2時間の予定と聞いてる」

 

内容を聞いてみればまぁまぁな練習量だが正直ソレ事態は問題にならない。

思えば速く走る技術なんて覚えて無いからここで覚えるのも一つの手じゃないだろうか?

取りあえず前向きに検討しますと言って話を持ち帰る事にした。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

週末のオラリオでロキファミリアの連中をダンジョンのマーキングポイントに送ってからヘスティアファミリアのリビングへ跳ぶ。

 

「ただいまー」

「おかえり、おじさん」

「おう、ヘスティアちゃん。あれ? ヴェルフ君は?」

「さっき今日までに作った奴を詰めた箱をテーブルに置いてまた工房に戻ったよ。まだ有るんだってさ」

 

椅子に座ってテーブルの端を指差すヘスティアちゃん。指の先を見れば小さ目の箱とそこに詰め込まれた多数のカードとベル君が使っていた小手。

 

「どんどん作って技術の習得を促したのは俺だけど……また大分作ったねぇ」

 

そう言いながら地球から買って来た遊戯王カードとアニメ、海外ドラマのDVDをヘスティアちゃんに渡す。最近のヘスティアちゃんは本気でオタク化しつつあるがコッチの文化というか考え方を覚えてもらうにはこーいうのに触れるのが早いので正直助かる。

 

「まぁ運営資金はボクが管理してるし作ったものはヴェルフ君自身がリスト化、その後でボクもチェックしてるから大丈夫じゃないかな。逆にベル君が勝手にダンジョンに持っていこうとして禁止した位だけど」

「うーん、カードが武器のロマンは分かるけど実践で使うにはベル君はまだ早いかな。lv4はまだ見えて無いんだっけ?」

「……この間Lv4になって安全が確保出来た階層でならって言ってからは物凄い勢いでステータスが上がってるよ」

 

溜息と共に吐き出すヘスティアちゃん。

 

「管理はしっかりね。駄目そうならおじさんが『トラベラー』に放り込むからさ」

「そうだね、冒険者として強くなるのは嬉しいけどさぁ……未完成の武器を持ち出すのは止めて欲しいよ」

「でもそんなベル君を見るのは楽しいと」

「うぇっへっへ……そりゃぁもう……ッハ」

 

頬杖つきながらヘスティアちゃんをボケーっと見てたがなんと顔のたるんでいる事。エロイ事を考えてる時は人も神もそんなに変わらんな。

色々と良い訳を叫んでるヘスティアちゃんを放っておいてヴェルフ君の所へ。

 

「おじさーーーーん!!!!」

 

 

 

槌を振るう音が聞こえなかったからノックすると「どうぞー」の声。

 

「おじゃまーす」

「あれ、おじさん?」

「追加の分見に来た」

「えっ、あっ、すまねぇ、つい思いついた事があったんでメモしてたつもりが、いつの間にか作り始めちまった」

 

二人して笑ってから何を作っているか見せてもらう。

 

「おじさん用のカードはベルトのサブコアを使う事で魔力のチャージを実現したろ?」

「うん、あれのお陰で『何度でも使える』って課題はクリアしたね」

「あのコア無しでも同じ物を再現出来ないか色々試してる最中だったがカードはどうにも上手くいかねぇ、ってのもこのサイズが厄介だ」

 

そう言って何も込めて無い素体カードを取り出す。厄介とか言いながらそのカードを作り出す事すらアッチじゃヴェルフ君とアスフィちゃんの共同だったんだけどねぇ……このヴェルフ君しれっと神秘アビリティ生えてないだろうな?

 

「魔剣と生成のプロセスが違う、そうなると今までのやり方を変えなきゃならねぇ。だから俺はこいつに後付けで力を注げるようにすればいいんじゃねぇかと思った」

「後付け?」

「今までだと鍛冶で武器という形を作る際に魔法を発現させてた。使う素材によって引き出せる魔法は様々だが……変な話だがオレが武器に対して魔導書の役割を行ってたのさ」

 

成程、武器を作る過程で魔法を発現させて使用する。但し無機物故に魔力が生成されないから使い終わると死ぬ=武器が壊れるのか。

 

「んでコレはその魔法を引き出すんじゃなく、注ぎ込めばれるようにすればいいんじゃないかと思ったのさ」

「消耗ってのは変わらない?」

「カードが耐えれる魔法なら何回でも使えるんじゃねぇかな」

「つまり回数制限はあるけど別途チャージすれば使いまわせる系か、事実上魔法をストックしておけるのね」

「って事になるか」

 

コレはコレで有用な物を作り上げそうだなぁ。

 

「ちなみに魔剣の方は順調?」

「うーん、何となく形は見えてるんだがコレって決めてが無くてなぁ。何か考えはあるが纏まらないというか……」

「取りあえず一回作ってみれば?」

「いやでも金が無い」

「技術研鑽の名目で費用は出しとくから先ずは作ってみればいいさ そしたら改善案も出てくるだろうし 産むが易いって言うでしょ」

「それもそうか。……というかおじさんはどうなんだ?」

「は?」

 

すっきりした様な顔でヴェルフ君が聞いてきた。

 

「ほら、ロキファミリア相手に金を稼いでファミリアに渡してくれてるだろ? それは有難いんだが俺からしてみるとおじさんに還元出来て無いっつーかよぉ」

「いや、還元して貰ってるが?」

 

ライダーキックカードをピラピラと見せる。

 

「そりゃおじさんが持ってきた技術と品を組み上げて造った奴だからな。俺が作ったとは言えねぇよ」

 

……こりゃマジメに言ってるな、天才ってこえーわ。おじさんはどうかって言われてもなぁ。

 

「分からん」

「何がだ?」

「自分が何したいのかが分からなくなってる」

「……」

 

おどけて見せたがヴェルフ君は真面目にこちらを見てるので佇まいを直して内心を吐露する。

 

「初めてココに来た時は偶然だった。

 右も左も分からない状態で偶々出会ったヘスティアちゃんが良いヤツでね、気が付けば流れで眷属になって、健康な身体を手に入れて、それでも帰りたいって思いで動いてたらいつの間にかソレが叶って……でも地元に居るのがきつくなってね」

「それで戻って来た?」

「戻ってこようとしたら別のオラリオに流れ着いた、後は前に大体話しただろ?」

 

頷いたヴェルフ君をみて続きを話す。

 

「何やかんやあってまたココへ辿り着いた……が、燃え尽きちまってて好きに生きよう! と奮起したまでは良かった。だが肝心のこうありたいというヴィジョンが浮かばねぇ。先立つものとして金、それに権力というか社会的地位を手に入れる為に動いてるけど今一しっくりこないんだよ。Lvも焦るもんじゃねーし」

 

ヴェルフ君が唐突に椅子から立ち上がり部屋の壁にかかったハンマーをおじさんに寄越して来た。

 

「……え?」

「何かグダグダ考えてるみたいだけどやれる事を全部やっていったら良いじゃないか。『産むがが易い』んだろ? 俺の知ってるアンタはなんつーか……型破りな奴だったし今でもそうだと思ってる。だから……何でも後先考えずやればいいじゃねーか。取り繕うのは上手いだろ?」

 

そう言ってハンマーをグイっと押し付けてくる。ハンマーの柄を受け取って思わず笑う。

 

「だから鍛冶でもやろうって?」

「俺が教えられる事なんざソレ位しかねーからな」

「まっ、鍛冶やってみるのも良いかもね」

 

工房に金属を叩く音が響く、素人故に時間をかけたがステータス補正のお陰でどうにか形になりヴェルフ君指示の元、着々と形が出来上がっていく様は何と言うか……ゲームやってるみたいで面白い。

 

「おじさん」

「うぃ」

「包丁が出来上がったのは良い」

「うぃっす」

「何で魔剣になってんだよっ!!!」

「……なんでだろ?」

 

総金属製の包丁を作って研ぎ作業してたら何か魔法が発動した。なぜぇ~?

水の刃が出るっぽい。ヴェルフ君の魔剣に比べると威力は無いに等しいけどね。

 

「というか魔法発動したのはヴェルフ君のお陰では?」

「魔法発現タイミングで触れてたのはおじさんだろうが……おじさんが発動させたんだろ」

「ほーん? まぁ水が漏れる魔剣?」

「威力が無いのは武器として作って無かったからか? おじさん何か精霊と縁でも結んだか?」(※ヴェルフ基準です)

「治療したり、いちゃこらしたり、命救ったり……心当たりしかねぇな」

「アンタやっぱ無茶苦茶だわ」

 

呆れ顔のヴェルフ君だが取りあえず完成までは手伝ってくれた。思えばヴェルフ君の先祖も精霊と縁があって魔剣作れる様になったんだっけ?

 

「精霊の血がな」

「ふーん」

 

何故魔剣が作れたかはこの際、置いておく。それより折角なので包丁を壊れなくしよう。

 

「は? どうやって?」

「こうする」

 

そう言って自分の掌を切って自分の血を包丁へ垂らす。

【幸運脂肪】で身体の傷を治すと同時に垂らした血を操作。包丁内へ染み込ませて魔力の通り道を作る。

 

「成功、おじさん式、無限魔剣の完成」

「はっ、はああぁああああ?!!?!?!!?!?!」

 

ヴェルフ君が転がる様な勢いで包丁に顔を近づけてまじまじと見る。

目の前で魔法を発動。そして魔力を流し込む。

魔力の許容量は……微々たるものだが魔力量が最低値を下回る前にチャージすれば壊れる事は無いだろう。

 

「凄ぇ……マジで壊れない魔剣じゃねぇか」

「おじさんのスキルありきのやり方だから技術的な汎用性は全くないけどね」

「~~~っ! 俺も負けられねぇ! 作るぞ! 俺の『壊れない魔剣』を‼‼‼‼」

 

奮起したヴェルフ君は早速工房にある材料で魔剣を作り始めた。邪魔しちゃ悪いしお暇しよう。

 

「んじゃ、おじさん行くから」

「おう! またな!」

「頑張れ~」

 

……魔剣とかは兎も角、自分の手作り包丁って何かテンション上がるかもしれん。職人ってのも楽しいかもな。

そんな事を思いながら約束を取り付けていたイシュタルちゃんの所へ向かう。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

「……春姫は譲れないよ」

 

ですよね~。




イシュタルと対峙するおじさん

顔を歪ませ対応するイシュタル

次回「身売り」

はたして春姫を救う事は出来るのか
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