フィジカルお化けおじさん、異世界へ行く 1alternative   作:タラバ554

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29 身売り

日も暮れて暗くなった頃、おじさんはイシュタルファミリアのホームに来ていた。

ヘスティアちゃんが約束を取り付けてたってのもあって直ぐにイシュタルと会う事は出来た。

通された場所はイシュタルファミリアの主神イシュタルの居る部屋……なんだけどやたら大量のクッションが並べられ、そこで横になっている。

入って直ぐ、おじさんの顔を見るなりイシュタルは顔を歪ませ頭を抱えている。

 

「アンタがオラリオに戻ってきてから……ずっとこの頭痛に悩まされてるよ」

「寝不足かい?」

 

肩をすくめてみせるが余裕は無さそうだ。

 

「複雑な気分だよ、自分の事なのに分かりゃしない。だけど原因はアンタだ」

「? おじさん何もしてないけど?」

「そりゃそうさ、アタシの問題だからね」

「???」

 

話が噛み合わず首を傾げる。

イシュタルがしんどそうにもたれかかり頭を押さえてる。そんな彼女を守る様に女性の眷属が両脇を固めているが……イシュタルの側近って男じゃなかったっけ?

 

「まったく……」

 

大きくため息を吐いて、イシュタルは気合を入る様に話し始めた。

 

「良いかい、アタシはこの頭痛が治らないとまともに交渉なんて出来やしない。こんな状態でも会うのはアンタがビジネスパートナーだから顔を立ててやってるんだ……如何しても交渉したいのなら相応の対価で姿勢を見せな」

 

そう言ってからクッションに深く身体を預けるイシュタル。

 

「(対価、対価ね……)」

 

思案しながら辛そうにしているイシュタルの治療しようかと申し出たら……。

片手で遮られた。

 

「コレは治療云々じゃないんだよ」

 

辛そうにしているが強く拒否されたので引き下がる。

 

「色々言いたい事があった筈なんだけど こんな体じゃ碌に会話もままならないね」

 

薄っすらと汗をかき、褐色の肌が薄く見えるからよっぽしんどいだろう。

 

「まぁおじさんが求めてるもの(春姫ちゃん)は伝えたし、そっちも体調悪そうだから今回は帰るよ。養生しろよ」

アンタのせいだろうに

「うん?」

「さっさと帰りな」

 

ジェスチャーで帰る事を促されたおじさんは大人しく引き下がる事にしてイシュタルファミリアの正面玄関から外へ出る。

おじさんが玄関を潜った頃にイシュタルの部屋へ団長のフリュネが、こちらも顔色を青くしながら入って来る。

 

「イシュタル様……アイツは?」

「追い返したよ」

「そう……アタイらの頭痛はやっぱりアイツで確定か」

 

フラフラと足取りがおぼつかないフリュネが柱に手を突きながら頭を押さえる。

イシュタルファミリアの主神イシュタル、団長フリュネ、団員アイシャ、末端だが重要度の高い春姫。

この四名はおじさんがオラリオに滞在している間、頭痛に見舞われていた。頭痛と共にふいに訪れる自分の知らない記憶と感情に苛まれている四名。

有るはずの無い記憶と感情に振り回されそうになりながらも時間をかけてソレを飲み込むのが彼女等の今の日常。

 

「っ~~~。距離は関係なさそうだね……」

「はぁ……Lvに関係ない状態異常……魂の影響か。直接の接触をしたら分からないけど、接触をしなけりゃこの調子でいずれは収まるだろうね」

 

イシュタルはおじさんの魂から来る影響を浴びながら冷静に観察していた。

 

「あいつは春姫の事を知ってた……少しずつ入ってきてる私の記憶にも春姫が居やがる……フリュネ、お前は?」

「アタイの方は接触は少ないよ、アイシャの方が接触が多い位さ……その分強烈な体験が多いね。自分でも知らなかった感覚と経験(感情 性癖)がてんこ盛りだよ。」

「ふぅ、あの男も中々に厄介なモンを持ち込んでくれたもんだよ」

 

だが……とイシュタルは考える。頭痛と共に来る記憶はイシュタルの根本に巣食う嫉妬をそれ以上の感情で食いつぶしていく。

その記憶の中心があの男であり、その事を心地よく感じ始めている自分に苛立ちを感じる。

不変であるはずの神を上書きする事も、常識を破壊していく行動も、底なしに優しくされた別の自分も、向けられた記憶から来る甘く痺れる様な感情も。

全てがイシュタルの神経を逆なでするのに()()()()

 

「クソっ、今更止まれないんだよ……」

 

自分が行きつく先を自覚しながらもその歩みを止められない事に更なる怒りを覚えながら破滅に向かうイシュタル。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

イシュタルのホームから出たおじさんの足はヘスティアファミリアではなくディアンケヒトファミリアへ向いていた。

栄養ドリンクの様な類の物を探してだったが結果は空振り、そのような物は無いと言われてしまった。

仕方ないのでその手のモノは地球から持ち込んで今度差し入れするとして……命ちゃんに何て説明しよう。

 

特に案も思い浮かばずホームへ帰宅、命ちゃんに出迎えられ逃げられそうにないので素直に進捗を話す事に。

 

「つまり春姫殿が居るのは確定ですか?」

「うん、春姫ちゃんの引き渡しをガッツリ拒否されたからね」

「春姫殿がオラリオに……あの、春姫殿に会う事は出来ないのですか?」

 

首を横に振る。

 

「暖簾に腕押しっつーか、全く取り合って貰えんかったのよ。中から調べるっつー訳にも行かんしどうしようかなって」

「……分かりました、では私が中から春姫殿の事を調べましょう」

「へ? 本気で言ってる?」

「勿論です、春姫殿があのような場所で働いているのなら一刻も早く救い出さねば!」

「まぁそこら辺はヘスティアちゃんに舵取りして貰うとして……一回皆と相談だな」

 

 

 

ヘスティアファミリア全員で集まって食卓を囲む。この光景も久々だなと感じながら掻い摘んで状況を伝える。

 

「という訳で、命ちゃんの友人をイシュタルファミリアから引っこ抜くのは失敗。それを伝えたら命ちゃんが潜入捜査をすると意気込んでおります」

 

言い終えて命ちゃんの方を見れば力強く頷いている。眷属皆が思案しているが主神は待ったをかけた。

 

「命君が友人の事を思ってるのは良く分かるし何かをしたいという気持ちも汲んであげたいけど……君は娼婦の真似事は出来るのかい?」

「そっ、それは……」

「リリが言うのも何ですがお止めになった方が宜しいかと……仮に潜入出来て客を取ったとなれば誤魔化しは効きません。それに春姫様でしたか……その方の情報を得るだけなら潜入以外の方法でも手に入ると思いますから」

「しかし……」

 

リリちゃんがそこまでして得られるものは状況位だからデメリットが大きいので止めて桶と命ちゃんを説得している。

ベルとヴェルフはノーコメント、ヘスティアちゃんは悩み中。

晩御飯のカレーを食べつつおじさんが出来る事を考える……娼婦を買って情報を集める。

これは普通に出来る。別にイシュタルファミリアで遊ぶななんて言われてないし軍資金はある。

ただ一人だと効率悪すぎるが……ベル君は無理、ヴェルフは……なんか余りイメージ沸かないなぁ。

ここは色んな意味で強い()()を使うか。

 

「ヘスティアちゃん、飯の後ちょっと時間くれね?」

「うん? 別にいいけど?」

 

 

 

晩飯後、おじさんはヘスティアちゃんを背負ってオラリオの家屋の屋根を飛び跳ねてとある場所へ向かっている。

 

「おじさん、何でヘルメスの所に行くんだい? というかヘルメスとおじさんって接点無いだろ?」

「こっちだとそうね、接点無いね。でも別の世界だとヘルメスに首輪付けて働かせてたからねぇ」

「……おじさんが働いてたじゃなくて?」

「うん、おじさん『が』ヘルメスを働かせてたね」

 

意味が分からないとおじさんの肩に顔を埋めるヘスティアちゃん。意味分からんわな、おじさんも何でああなったのか……まぁ大体ヘルメスが悪い。

おじさんの過去に頭を痛めてたヘスティアちゃんだがそう時間もかからずにヘルメスファミリアへ到着。

ヘスティアちゃんが矢面に立ちヘルメスへ面会を求める。団員が色々と言って来たのでおじさんが一言。

 

「ギルドからのペナルティを食らった上で面談するのと、ここで素直に面談するのどっちがいいか上に確認してきてよ」

「はぁ? 何を言って……」

「アスフィのLvって幾つだっけ?」

「……ちょっと待ってろ」

 

先程までの態度が一変した事に怪訝な顔をするヘスティアちゃん。この辺りは後で教えてあげると言って納得させる。

ほどなくしてヘルメスとの面談は叶った。

通された部屋は大きくはないがそこそこに片付いた執務室という感じ。

家具のデザインとかを見る限りアスフィが選んだのだろう、落ち着けるようなものが選ばれ派手な装飾は無い。

部屋の主とはある意味制反対。そしてニコニコ顔でこちらを歓迎している体を見せるヘルメス。

 

「やあヘスティア! 久しぶりだね」

「ああヘルメス。18階層とウォーゲームでは世話になったね」

「いやいや、助力が出来たなら何よりさ」

 

皮肉を全く気にせず切り返す辺りは流石という他ねぇ。メンタル強いわコイツ。

 

「おっす」

「君は?」

「ウォーゲームに出てたおじさんだよ」

「……? ……???」

「ヘルメス、多分今想像してる子であってるよ。太ってた子が居ただろ」

「えっ、あ、そうか。この子のスキル」

「まあそんな所だよ」

 

やっとおじさんを認識してくれたらしい。ヘスティアちゃん以外はまぁこんなもん……あれ? イシュタルちゃんは何で直ぐおじさんが分かったんだろ?

新たな疑問を頭の片隅に追いやってから交渉を進める。

 

「えっと、つまりウチ(ヘルメスファミリア)の男の団員を借りたいって事かい?」

「出来ればアンタ(ヘルメス)も」

 

自分を指差すヘルメスに頷いて返事をする。

 

「アハハハハ! 他の神に雇われる事はあったけど……面と向かってオレを雇いたいと言った子供は初めてだなぁ。ヘスティア、この子をオレにくれない?」

「やる訳ないだろ!」

「俺もオマエが自分の主神ってのは嫌かなー」

「うーん、手厳しい! でもまぁ面白いから良いよ。それで、やらせたい事は何だい?」

「娼婦に通って情報集め。費用は此方持ち、あ、成果物として情報と経費は一緒に提出してくれ。コレがフォーマットな」

 

そう言ってプリントした用紙をヘルメスに渡す。暫く思案してからニヤリと笑うヘルメス。

 

「良いねぇ、実にウチ向きの依頼でオレが好む依頼だ。良いだろう、この依頼は正式にヘルメスの名で受けよう」

「うぃ、宜しく~」

「んで? 君は調査に行かないのかい?」

「俺は個人で探るよ」

「君と一緒に行った方が面白い事になりそうなんだけどなぁ」

 

ヘルメスが誘って来たがヘスティアちゃんの手前一緒にというのは断った。いうて処女神だからね。

 

そこからは週末にロキファミリアの送迎で金を稼いで娼館に通う。平日はパスポート作り等の正式な渡米準備。

そんな日々を送る。自分でも情報探しながらヘルメスファミリアから上がって来る情報と整合性を計る。

 

どうもイシュタルちゃんが体調を悪くしてるのは本当でこの所は男と遊ぶこともしてないという情報はヘルメス談。

イシュタルちゃん以外にも団長のフリュネ、他若干名が体調を悪くしているという噂があるとか。

原因は不明ながらも『時間をかければ治る』と言っているらしい。

 

 

 

「そろそろヘルメスに二重調査を仕掛けようかなと思ってる」

「……どゆこと?」

 

執務室でPCを弄ってたヘスティアちゃんと対面で向かいあって次に打つ手を相談している。

 

「ヘルメスの所がちゃんと報告してるか怪しいからアイツ等を調査する」

「……ヘルメスだからなぁ」

 

神故の快楽主義を否定しきれないヘスティアに、詳細を話す、当然理由があり()()()に対して意見が欲しいのだ。

 

「え”! ソレをボクがアドバイスするの?」

「うん、女性視点から見てどうかってのも意見が欲しいし。頼むよ」

「う、う~ん。ボクで大丈夫かな?」

「まぁ実験も兼ねてだから気負わなくていいから」

「まぁソレなら」

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

ヘルメスファミリアに対しての調査準備を進めながらも時間は進み、おじさんは交換留学でアメリカに行く事が決まった。

 

「そんじゃ、いってきまーす」

「いってらっしゃい」

 

母親と空港で軽く挨拶を交わして飛行機へ搭乗する。

正式にアメリカへ移動した履歴があれば色々と取れる事も多くなるし、移動の為の技術を得られるというのも良いという結論に至り交換留学の話を受ける事にした。

実情としては【テレポート】で行き来が出来るんだが、公式の記録ってのはやはり必要だと思う。少なくとも社会的発言が低い今はまだ。

 

そして無事にアメリカへ……となれば良かったんだけど。

 

『動くな! この飛行機は我々が占拠する! 余計な動きをしてみろ! こいつの頭を撃ち抜く!』

 

飛行機がハイジャックされた。どないしょ。




イシュタルと会ったおじさん

会話は碌に出来ず、最低限の事だけ伝える

地球側で交換留学で渡米を行う事に決めたがトラブルが舞い込み……

次回、転機

おじさんの取る行動は?
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