フィジカルお化けおじさん、異世界へ行く 1alternative   作:タラバ554

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遅くなりました
最近頭の中に栄養をため込む作業(エンタメ)をしているので執筆スローです
ご了承ください


30 転機

おじさん、飛行機に乗って渡米中にハイジャックに会う。

……いや、どんな確率やねん!

思わず自分の脳内で一人突っ込みをしてしまう位には状況に対して呆れてしまう。

周りは顔を青ざめて緊張している人ばかりだが……どうしたもんか。因みに幾つかの空港を経由してアメリカ本土を飛んでるタイミングでのハイジャック。

なので乗ってる人はやはり外人さんが多くて銃の恐怖から固まってるっぽい。

 

改めてハイジャック犯が持ってる銃を見るが……拳銃かぁ。それと耳を澄まして音を聞く限り複数犯で3人。

制圧は出来るけど討たれて流れ弾が他の人に当たると面倒。

暫く考えた結果、流れに任せる事にした!

 

という訳で再度寝ます。おやすみなさい。

 

 

 

『おい! 起きろ!』

「んあ?」

 

寝ていたら何か起こされた。目を開けたらハイジャック犯の一人が俺に銃を向けてた。

眼をこすって目ヤニを取りつつ挨拶。

 

『おはよう』

『さっきからグースカとイビキがうるせぇんだよ。どんだけ肝が太いんだテメー』

『んー? なんて?』

 

寝起きで頭が回って無い時に英語でベラベラ喋られると聞き取りきれない。

横の座席見たら既に人いねぇ。確か小太りなおっさんが座ってたと思うが……取りあえず水飲みたい。

 

『CAさーん、水もらえる?』

『てめぇ状況分かってんのか!?』

 

頭に拳銃を押し付けられるがやめて欲しい。寝起きなんだからゆっくりさせてくれ。

 

『すまんね ハイジャックとか初めてだから取り敢えず寝てたんだ。んで 何で起こされたの?』

 

返答が癇に障ったのか撃たれた。胸に3発。

周りの悲鳴が聞こえる。うん、撃たれたけど無傷だ、そしてそれ以上に驚いたのは。

 

「(うーん 躊躇ねぇな)」

 

銃社会の人間ってこういった時に躊躇っせずに引き金を引けるんだなと、討たれて直ぐに顔を伏せて撃たれた所を見てたら自分死んだと勘違いして犯人が色々語り出した。

 

社会正義や国への不満、人種に関して等等……。

 

共感する事が無いので適当に聞き流して次の行動を考える。

手を出されたので出し返したいけど複数犯みたいだからやるなら一度で一気にやるべきか。

リアルブロリーごっこに興じても良いが如何しよっかなーとか考えてたら犯人が自分の席に戻ってしまった。

その後CAさんが様子見ってか遺体確認に来たら平気な顔してるおじさん見て言葉失ってたのはご愛敬。

でも水下さいって言って応えてくれるのは乗務員として好感持てます。二重丸上げちゃう。

 

幸いこの飛行機の最後尾の席におじさんは居る訳で……一つの案が浮かぶ。

 

「対象『ハイジャック犯の後ろ』【テレポート】」

 

目の前に浮かぶ認知不可の穴が3つ。同時複数展開が意外に出来るもんだなと思いながら改めてテロリスト達を観察してみる。

 

筋肉もりもりマッチョマンに全身鍛えられてる軍人っぽい男、それとインテリヤクザっぽい奴。

インテリヤクザだけ武器が見当たらんな。別の何か持ってるのだろうか?

取りあえずマッチョマンには必ず借りを返すとして、大人しく自席で観察していると筋肉もりもり男が移動始めた。

すると穴からの景色も追従している。

対象を人物にしたからか? 等と考えてたら酒飲み始めた。

油断してるなぁと思いながらもハイジャック成功してる時点で何も言う事無いよなと穴を眺める事暫し。

今度はCAさんに手を出し始めたよ……。

 

「(これどうしよう?)」

 

ぶっちゃけ制圧は余裕だし真正面から突っ込んでも無傷で捕まえられる。

けど今の時点で身バレすると面倒くさい事この上ない。

俺のやりたい事って端的に言えば『自由に自分のやりたい事をやる』コレに限る。

その為にもせめて大人っつーか成人まで……少なくとも高校卒業までは大人しくしておきたいが、以前の人助けで身バレした事を思い出す。

 

アレは咄嗟の事で仕方が無かったと今でも思える。

目の前で零れ落ちそうだった命を助けた事に後悔は無いが後の事が面倒だったのは紛れもない事実。

あの時に無かったモノが今は有る事を思いながら幾つかの案が浮かぶが……何にせよ世界に一石投じる事にはなるだろう。

 

という訳でさっきのCAさんに頼んで毛布を大量に持ってきてもらう。

ついでに例の小太りおっさんが戻ってこないから聞いてみたら別の席に移ったらしい。そら撃たれた奴と相席は嫌か。

というか周りの席全部空いてるやんけ、しゃーないか。

んで、窓際って事を利用して毛布を丸めまして……人が寝てるっぽい塊を作りましてー。

 

「(対象『トイレ』【テレポート】)」

 

毛布にくるまった状態でテレポートすれば見た目は分からんだろう。

サラスヴァティーさんからシレっと聞いた技術を応用するとあら不思議。音もたてずに作業が出来る。

いや、テレポートも詠唱しなけりゃ無音なんですけどね?

狭いトイレですが無理矢理変身して……っと。

 

最後尾のトイレから出てゆっくり身体を揺らしながら進む。

気付いた乗客がざわつくが無視して足を進める。

マッチョマンのテロリストがこちらを視認すると怪訝な顔をして銃口を此方へ向ける。

 

『そこで止まれ、コスプレ野郎』

 

おじさん、変身したヒーローの姿でテロリストを倒す事に決めました。これなら顔もバレない。

歩みは止めずゆっくりと近づいて行く。マッチョマンが舌打ちをして3発発砲。

今度は余裕を持ってそれを右手でチャッチ。

歩みの止まらないおじさんに怪訝な顔をして一度銃を確認したマッチョマンが銃を改めて両手で構えておじさんの頭に狙いを定める。発砲。今度は左手でキャッチ。

思考停止したのか連続発砲するマッチョマン。全部キャッチしながら近づいてビンタ一発。

男は中央の通路から壁まで吹き飛び気絶した。内心ちゃんとキャッチ出来た事に溜息を吐きつつ次へ。

 

【テレポート】で軍人っぽい奴を見ればやっぱり警戒してるので、テレポートの穴を潜って背後から金的&延髄エルボー。首の骨は……折れて無いね。

 

「後はインテリか」

 

呟いたと同時に火薬の破裂音と軽い衝撃が頭を襲う。ゆっくり立ち上がり振り向けば人質を左手に取った状態のインテリヤクザっぽい男。

頭を撃たれたらしい。そしてインテリの後ろには4人目のテロリストが居た。

 

「(伏兵かぁ……)」

 

4人目の細身の男の手の中には女の子。どうやらインテリが捕まえている女性の子供らしいのが人質の女性の訴えから分かる。

 

『クソが、頭を撃ったのに死んでねぇ。どういう手品だよ』

『おい、コスプレ。動くと女が死ぬぞ』

 

首を左右に揺らして少し考える。が、こーいうのは俺が決めたら角が立つので本人に選ばせよう。

 

『選べ』

『あ?』

『子供か、自分か。どちらを生かす?』

 

両手の指先が子供と女性を指差す事で話しかけられているのが自分だと察した母親は愕然とした表情で眼を見開く。

一瞬の葛藤、叫ぶ一言。

 

『子供‼‼‼』

 

母親の一言を切っ掛けにして飛行機が壊れないギリギリの反射。

身体は宙を舞い、狭い室内を数回跳ねてインテリの後ろに構えていた細身の男の首を、文字道理もぎ取る。

血しぶきが掛かるのは忍びないので子供は腕に抱え、死体を床に蹴り倒す。

一気に血の匂いが充満するが反撃されても子供に当たらない様にするのを最優先。

……反撃が来るかと思ったが来ないので子供に死体を見せない様に座席に座らせた後、インテリの方を見れば震えて女性に銃を突き付けている。

 

『テメェ……何なんだ……一体何なんだよぉ!??!』

 

異常にかいてる汗に荒い息。ガチガチに固まった身体。

改めて自分を見れば背中や頭の一部はさっきの男の血で汚れてる。

 

「(素手で人間の首を引きちぎるコスプレイヤーとか確かに怖いな)」

 

変な所に納得しながらどうやるか思案。理想は無傷救出。最悪死んでもしょうがない。

でも出来れば助けたいなぁ等と考えながら口を開く。

 

『選べ』

『……』

『ああなるか、生き残るか』

 

そう言いながら後ろに転がる首なし死体を指差す。おじさんの問い掛けで犯人の眼は血走り呼吸は荒くなる。

たっぷり3分程待っていたが口の端から泡を吹きながら視点が定まらず、ついに銃を乱射してきた。

兎に角跳弾しないように弾をつかみ取りながら前へ進む。

犯人は弾を撃ち尽くしても尚、それ以外の行動を忘れた様に引き金を引き続けた。

取りあえず人質を掴んでる左腕を掴んで枝を折るようにして人質を解放する。

 

人質さえ解放させたら後は膝蹴りで鳩尾に打ち込んで気絶させる。

一件落着……と行きたかったが正直気分が悪い。

落ち込むとかではないけど……軽い乗り物酔いとか、悪い物を食べた時位の気持ち悪さを感じてる。

 

闇派閥で慣れたと思ってたが、地球側で他人を明確に手に掛けた事が無かった……意外とマトモな感覚がまだ残ってたのなと思いながら【テレポート】で沈む様に機内最後尾のトイレへ。

変身解除してからトイレから出て自席へ戻って静かに横になる。

 

気持ち悪さを忘れる様にそのまま眠りについた。

 

やがて飛行機は着陸して全員の健康診断実施。特におじさんはCAさんの証言があったのかレントゲン等撮られたが外傷無しなので直ぐに診断は終わった。

日本ならいざ知らず、アメリカは良くも悪くも大雑把なのでその辺りは正直助かった。

検査が終わり留学先の寮へ戻る頃には事件は報道され大きな話題になってたが、全く気にしてなかったおじさんがその事に気づいたのはソレなりに時間が経ってからだった。

 

 

 

短い様で長かった検査を終えて空港で大きくノビをしてアメリカの空気を味わっていたら一人の青年から話しかけられた。

 

『やぁ、君がユウスケ?』

『や、どーも。君がマイクか、写真通りだな』

『そっちこそ』

 

そう言いながら握手をする。細身で背は170超え、顔は……イケメンかもしれないと思える16才の同級生。

 

『今日からルームメイトになる奴だ、宜しく』

『君ってトラブルメイカー? 来る道中でハイジャックに会うなんてめったな経験じゃないだろ?』

『あったらしいな、ハイジャック。寝てたから知らんけど』

『寝てたのかよ!』

 

マイクがオーバーリアクションで笑う。うーん、感情が分かりやすいねぇ。

 

『何にせよアメリカへようこそだ! 歓迎するぜ、マイフレンド!』

『うぃ、宜しく~』

 

寮へ着く前にファーストフード店に寄ったけど……サイズデカすぎぃ! いや、おじさん的には補給に丁度いいから良いけどね。




テロリスト相手に正体を隠して倒すヒーロー活動もどきをして、正式にアメリカへ渡ったおじさん。
最初の洗礼としてファーストフード店の日本とのサイズの違いを受けるのであった。

次回「走る」

日本との違いを感じるおじさん

無事に学生生活を送れるのか
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