フィジカルお化けおじさん、異世界へ行く 1alternative   作:タラバ554

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一瞬間違えておじさん3の方に投稿してしまった
あぶねぇ

中身が色々と投稿時の想定とズレた状態になってたので修正しました


31  走る

「おじさん、留学って奴は順調なのかい?」

 

交換留学開始から1か月程経った頃、ホームでヘスティアちゃんからそんな事を言われた。ロキファミリアを50層へ送って来た後だったので同行用カモフラージュ防具を外しながら答える。

 

「最初は苦労したけど今は悪くない……かな?」

「へぇ、例えば?」

「んっと、最初の頃はステータスを落とす事から始めて」

「ん??」

 

冒険者としてのステイタスが邪魔して力を抜いても早い状態だったので【幸運脂肪】で下半身の筋肉をギリギリまで落として走る練習に参加するようにした。

入院が必要なレベルにまで筋肉を落とすと流石にステータスが有ってもかなり動きが辛かった。結果、走る速度も人並みになるのでその状態で走るフォームを覚えると走り方の恩恵が感じやすかったのだ。

 

 

「じゃあ足が速くなったのかい?」

「フォームを意識して走ればね。その内慣れて無意識でもそうなるかな」

「じゃあ順調なんだね」

「あっちはね。それでヘルメスからのレポートは受け取ってる?」

「うん、コレ」

 

手渡されたレポートに目を通す、やっぱり真新しい情報は無いか。

儀式の時期とかもあったのでイシュタルファミリアの動向には結構注意を向けてたけど、上がって来る情報ではその辺りの兆候が見られないので様子見してる。

どうも主神イシュタルと自分が知ってる数名が床に臥せてるらしい。マジで大丈夫かな。

 

「コレ下手に干渉したらあかんよなぁ」

「おじさんからしたら分からないけど、ボクからすれば完全に他所のファミリアだからね。下手に手は出さない方が良いんじゃないかな」

 

思う所はあるけど現状維持が良いか……、ヘルメスの方に探り入れて最近イシュタルファミリアからの依頼があったか探ったけどこっちも空振り。

 

「上手くいかないなぁ」

「そんなもんだろ? おじさんは考えすぎな所があるから少しは気を抜いたら如何だい」

「んー、余裕あればそうする」

「……ハゲるよ?」

「そん時はスキル使います」

「……本当にそのスキル狡いよね」

 

戦闘能力はあんまりだけどね、なんて言いながら日本から持ってきた荷物を幾つかヘスティアちゃんに渡して自分の装備に着替える。

 

「あれ? また装備着るのかい?」

「隔週でダンジョン潜る位はしないとステータス伸びないからね」

「今回は何層に?」

「一応30から流してくる感じかな。ヴェルフ君が作った試作品のテストもお願いされてるし」

 

そう言ってカード型魔剣の束を見せる。

 

「彼ヴェルフは何処を目指してるのかな……」

 

そんなヘスティアちゃんの苦悩を背中越しに聞きながらおじさんはダンジョンの30階層へ【テレポート】で移動した。

 

 

 

転移先は密林のただ中、虫系が多く居る場所で気温は高い。密林という位で植物の密度が高く水分補給を怠ると直ぐに脱水になってしまう。

ただしこの階層特有の植物等もあり薬効がある植物も度々見つかっている、但し危険性は深層に区分されるだけ高い為全容は明らかになっていない。

 

植物の採取を行いながら出てくるモンスター相手にヴェルフ君のカードを色々試す。

各種属性現象を飛ばすタイプに纏わせるタイプ、設置するタイプ等様々。

 

飛んでる蛾型の体長1メートルを超えるモンスターにカードを使ったら、不意におじさんの身体に光がまとわりつく。

 

「おっ? こりゃ回復効果のカードか? 珍しい」

 

魔法を発動させたと思えば癒しの効果が出たのでカードを別に分けておく。これは追加が作れるなら作ってもらおう。

結構な数のカード型魔剣を試したが珍しかったのは先ほどの回復魔法が込められたもの、後はバフ系で速度が上がる奴。

このカード型の利点はカード効果の発動体が残り続ける事。やっぱ魔剣と違って『武器』が手元に残り続ける事は大きなメリットだしそう言う意味ではヴェルフ君がこの方式で色々と試してるのも良い事かもしれん。

後はこの方法と彼生来の魔剣作成の方法を繋げて考えられれば『壊れない魔剣』という解に辿り着くと思う。

 

「ふむ……魔剣のテストはこんなもんか?」

 

ヴェルフ君からテストを依頼されていたものは大体効果を確認したし、モンスター相手にテストする合間に30層の植物もそれなりに集まった。

次に足を運ぶのは同じ階層でも『砂漠の迷園』と呼ばれる場所。先程までの密林とは違い植生もモンスターもガラリと変わる。

 

「やっぱ熱いな」

 

外套にサラマンダーウールを着けても尚熱い。

スポーツ飲料水をちょいちょい飲みながらモンスターを倒す。砂漠の中にある岩の密林で反動を溜め込みながらドロップアイテムを確保していく。

サソリやトカゲ、アリ、ワーム等を倒しているとお目当ての奴が……。

 

「おっ、居たな。サンドゴート」

 

砂漠の岩場に稀に現れるヤギ。コイツ等は兎に角岩場の移動が速く、足場が悪いのもあって接敵することの難易度が高いので敬遠されがちらしい。

 

「普段ならおじさんも無視しちゃうけど、今回は君達のドロップが欲しいんだなぁ」

 

溜めていた反射用のエネルギーを足の裏から推進力に変えて跳ぶようにしてサンドゴートが居る壁と言える急斜面へ。

跳んでくるおじさんに驚いたのか慌てて移動を始めるが……残念、おじさんが跳ぶ方が早い。

空中で体勢を整え壁の僅かな起伏にしがみ付きながら【トラベラー】からピッケルを取り出して壁へ突き刺す。カードをセットしてピッケルを足場にしてサンドゴートへ狙いを定めて跳躍。

 

「オラァ!」

「メエ"エェェェ!」

 

蹴りを当ててヤギを足場に更に上へ、宙を舞いながら魔力をベルトへ。ポーズを取れない為に簡略版。

 

「変身、からの『ファイナルベント』」

 

翻る身体は緑の光を放ち、一瞬の内に緑の装甲に覆われる。そしてヤギの周囲に浮かぶ魔法陣。

引っ張られる様におじさんの身体は加速しヤギの身体を貫通する。

ヤギが爆散し、文字通り血の雨をまき散らしながら地面へ威力そのままに激突した。

 

「……、便利だけど威力過多だなこりゃ」

 

デカイクレーターの中心で一撃必殺に拘りすぎた技に別の方向性も考えておくべきかと反省。土煙を払いながらドロップを確認してみると……。

 

「ん-っと角……他は? おっ、出たなサンドゴートミルク」

 

サンドウールの雌個体が稀に落とすドロップアイテム。今回はコレが欲しかった。

ついでにドロップすればと思ってたけど【超激運】は今回も仕事してくれたらしい。

 

「おっしゃ、これで今日の残りはガッツリステータス上げに回せるな」

 

階層のモンスター全種を数体ずつ倒して階層を降りるを繰り返す事10階層分。

ちょいちょい休憩を挟んで40階層のモンスターをある程度倒した所で時間を確認したら時刻は17時を回る頃。一度ヘスティアファミリアに戻ってから装備を変えて……も面倒だったので直接フィン達を迎えに行く事に。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

50階層の安全地帯に行くと既にフィン達は集まっていた。

 

「おすおす、もう集まってたのか」

「やあ、おじさん。珍しいね、ソレ付けてるの」

 

フィンがおじさんの鎧を指差してくる。

 

「偶にはステータスを上げないとね」

「おじさん所のPTは?」

「まだ全体としてのLvは低いから今一緒に潜ると色々とやりづらいからまだソロでやってるよ」

 

世間話をしながら【テレポーテーション】で1階層へ繋げてフィン達を送り出す。

 

「もし今度機会があれば一緒にPT組まないかい?」

「んーーー主神同士が納得したら?」

「ははっ、それじゃあ上手い事説得しないとな」

 

そう笑いながらフィンは穴を潜って行った。

遠回しに断ったつもりだけど……あいつロキちゃんとヘスティアちゃんが根本的に仲悪いのちゃんと解ってるのかな?

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

「ただいまー」

「おじさん、おかえりなさい」

 

ホームの入口を潜った辺りに掃除をしているベル君が居た。

 

「おーベル君、って事は皆も戻ってる?」

「ええ、土曜には全員ホームに戻れる様に調整してますから」

 

どうやらヘスティアちゃんの提案で土曜の夜から日曜にかけて全員が集まれる様に皆にお願いしているらしい。おじさんが来るのが週末だしね。

毎回その辺に若干の申し訳なさを感じるのでついオヤツを差し入れてしまうのはご愛敬。

因みに今日の差し入れという名のオヤツは原色が前面に出てるカラフルなチョコレート。クソ甘いがヘスティアちゃんは昼に渡したら意外と普通に食べてた。

そんな話をしながらベル君とダイニングへ移動する。

 

「今日はヴェルフが調理担当なのでちょっと辛いメニューですかね?」

「あー、ヴェルフ君って辛党だっけ」

「おじさんに貰ったスパイスがテーブルに並ぶんですよね……そのままで十分辛いのに。美味しいですけど」

 

強めの味付けが苦手なベル君には極端な味は辛いらしい。

ヘスティアちゃんは料理が下手、ベル君は料理が下手というより上手じゃないという感じ。ちゃんと食べれるものが出てくるので回数熟すかレシピを覚えればまともなものが出来そう。

命ちゃんはファミリーの事情もあったのだろうけど薄味で出てくることが多い。リリちゃんは手に入ったモノをどう旨く食べるかというのを長年やってたので基本旨い物が出てくる。

ファミリアの中で唯一ヴェルフ君の料理……というか味付けが苦手なベル君。テーブルに並べられた料理はやはりというか辛い味付けでベル君は苦戦しながら食べる事になった。飲むヨーグルト(所謂ラッシー)を出してやろう。

 

「ほれ、ベル君。コレ試して見な」

「ミルクですか?」

「うんにゃ、ヨーグルト」

「え? 液体ですよ?」

「そーいうヨーグルト」

 

そう言いながらヴェルフ君の作った魚の煮つけを食べる。うん、旨いが辛い。そして米が進む。

 

「そういやおじさんは今日ダンジョンに潜ったんだよな? 新しい奴、どうだった?」

「どれも使い勝手は良いよ? 事前に使うカードをセットしておけば戦闘中にセットするって手間は省けるし、ただ切り替えに難があるからソコは要改善かな」

 

デメリットの『誰もが使える魔剣』から『特定の者』しか使えないものになるが『装備の喪失』を嫌うヴェルフ君的にはこの方式はアリらしい。

因みに使用する為の装備破壊は高レベルからの攻撃じゃないと装備の素材的に壊されない。尚、前ベル君用に作った小手は試作品として作っただけなので色々話し合って破棄している。

それにカードスロット部分を直接壊されない限りこのカードシステムは使えるんだよね。

 

「だからデッキセットとか作るのも良いかもね」

「デッキ?」

「消費タイプの利点を生かせばいけるかなって」

「利点? そんなのあったか?」

 

首を傾げながら食事を続けるヴェルフ君。え? 本気で気が付いてない?

 

「ヘスティアちゃんなら俺の一言で気づいたんじゃね?」

「えっ、ボクかい?」

「最近カードもののアニメ見てるし色々思いつくじゃろ」

「ん~……デッキって山札だろ? それから消費タイプの利点……あ! ヴェルフ君、カードって使い切ると普通の魔剣と同じように壊れて無くなるんだよね?」

「はい、そうです」

 

納得いった様に溜息を吐きながらおじさんの方を見るヘスティアちゃん。

 

「おじさん、実はカード型魔剣って今の形でほぼ完成してるんじゃないの?」

「正解」

「やっぱり……」

「「「???」」」

 

話が見えてこないヴェルフ君、ベル君、命ちゃんの三人は首を傾げてる。

 

「さて、デッキってのは所謂山札だ。命ちゃんも山札って言葉なら分かるだろ?」

「ああ、花札の様な?」

「そうそう、カードをこんな風に重ねた物ね」

 

そう言ってトラベラーからテストに利用したカードを取り出して見せる。

 

「この山札の一番上か下か、まぁ下かな。一番下のカードが自動的にカードスロットに装填されるとする」

 

山札の一番下のカードを抜き出してカードの表を向けてテーブルの上へ置く。

 

「スロットにカードが入ってれば当然それ以上スロットには入らないが、スロットが空けばカードが補充される機構を組む」

 

カードを裏に返して山札から一番下のカードを取り出し、表にして裏返したカードの横に置く。

 

「いや、ちょっと待て……それは」

「カードが消費されると壊れてスロットが空く。そこに山札からカードが供給されるって仕組みなんだろう?」

「ヘスティアちゃん、正解。これの良い所はやっぱり手荷物の圧縮だね。魔剣はどうしても携帯性が悪いから。悪い点はコスト、魔剣を大量に作って大量に消費するのと変わらんからヴェルフ君的には嫌かな?」

「そこの所はもう飲み込んでるんで良いですけど……なんか眼から鱗って感じです」

 

手にしていた箸を置いて背もたれに体重を預けるヴェルフ君。

 

「形は違えど『武器の喪失なく使える魔剣』だ。しかもカードの携帯性を上げる=デッキの物理的な圧縮に繋がる……」

「ぶっちゃけさ、ヴェルフ君。壊れない魔剣……もう作れるっしょ?」

「……作れます」

「だよねー」

 

のほほんと答えるおじさんと対照的にヴェルフ君の返事に驚く3人。

 

「ヴェルフ、本当に?」

「ベル、ヒントはいくらでもあったんだ。おじさんが持ってきたあのベルトコア、アレを作ったのは別の俺でしたっけ?」

「正確にはアスフィちゃんとヴェルフ君の共同開発だね」

「多分魔剣()()()()に同じ機能を持たせたんだと思う、そしてその作り方は大まかに()()()()()()

「同じ機能? どういう事ですか、ヴェルフ殿」

「魔剣の効果ってのは()()()()()、だがコレを満たすには()()宿()()()()()使()()って工程がある。恐らく別の俺は工程を()()()()

 

ヴェルフ君が目線でおじさんを見てくるので、おじさんはライダーキックのカードをヴェルフ君に渡す。

 

「このカードの核はおじさんのベルトコアを流用してる。このコアの機能は()()()()()()事、多分魔剣にも同じ機能を持たせたんだと思う」

「正解、因みに貯める事の利点は再利用が可能で注ぐ魔力さえ確保できれば何度でも魔剣が使える様になる」

 

全員がその有用性に沸き立つ中、ヴェルフ君だけ表情を曇らせる。

 

「で、そこまで解ってるのに何故()()()()?」

 

おじさんの疑問に困惑するファミリア。

 

「へ?」

「えっと……()()()()()()ではなく()()()()なのですか?」

「リリちゃん、さっきヴェルフ君が自分で言ってたじゃん。『作れる』って。それでも完成品が上がってこないってのは『作って無い』って事でしょ」

 

食事の雰囲気から一転、重い空気と全員の視線がヴェルフ君に刺さる。

 

「おじさんの言う通りだ。作って無い」

「『壊れない魔剣』はヴェルフの目標だったと思うんだけど……何で作ってないの?」

「ベル、例え作れてもそれじゃ模倣になっちまう……それが何となく嫌で……」

 

重い空気になってるけど……ヴェルフ君のソレって多分勘違いだな。

 

「因みにヴェルフ君、その今作れるって言った魔剣さ。材料に特別なものが必要だったりする? 他の魔剣と決定的に違う材料が必要とか」

「え? いや……無いですけど」

「うん、おめでとう。その一点で君は別の君を超えてるよ」

「へ?」

 

鳩が豆鉄砲食らったような顔をしおる。

 

「専用装備にする仕様上仕方ないけど、おじさんの装備っておじさんの血を使ってるけどさ。それ以外にもコアの色んな機能の根幹部分におじさんのスキル情報を使ってるのよ」

「「「「「???」」」」」

「おじさんの血を媒介にして色々と機能を作り上げてるから同じ物を作ろうとなるとソレだけおじさんが血を提供する必要がある。けどヴェルフ君のは他の魔剣と変わらない材料で壊れない魔剣を作れる。

 あっちの君がソレを作れたかは正直知らんが、その事実だけで向こう側の君を超えてると思うよ?」

 

そう告げてから食事を再開する。うむ、やっぱ辛旨い。

 

「多分引け目があったんだろうけど、確実に自分超えしてるからさっさと新しい魔剣作っちゃえ。そんで出来るならその辺の技術共有よろしく」

「お、おう……」

「まーきっと、おじさんから得た知識使うのは何かズルした感じがするからやだなーとか思ったんでしょ」

「そりゃまぁ」

 

あーあー、居心地悪そうにして。それでも追撃は止めんぞ?

 

「そんな事思う暇あったらまずは作ってしまえ。こーいうのは行動したもん勝ち、最初に走ったもんが勝つんだから、気にせず走れ」

「そんなもんですかね?」

「うん、少なくとも人間社会で数百年生活してるおじさんが言うんだから……ヘスティアちゃんの言葉よりかは信じられるだろ」

「おじさん!?」

 

突然刺されたヘスティアちゃんが椅子から立ち上がる。

 

「……ノーコメントで」

「ヴェルフ君もソコは否定してくれよ!!」

 

ヴェルフ君は正直だ。そんなやり取りを見て場の雰囲気が緩んだ為に他の3人が笑い始め。気が着きゃ全員で笑ってた。

まぁこの後ヘスティアちゃんのご機嫌とりに時間取られて深夜まで酒に付き合ったのはご愛敬だ。




別の形の魔剣を作る事に逃げていたヴェルフ
既に別の自分を超えていたことを告げられ本来の夢へ歩を進める決意を固める

猶予があると考えていた春姫の件が唐突に動き出す

次回、イシュタルファミリア
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