フィジカルお化けおじさん、異世界へ行く 1alternative   作:タラバ554

32 / 34
はえー、めっちゃかかった


32 イシュタルファミリア

連絡は唐突だった。

平日の昼間、学校の休憩時間にPCを取り出してメールを確認していたらヘスティアちゃんからメールが届いた。内容は春姫ちゃんの儀式が3日後に執り行われるというもの。

内容を思わず二度見した。

 

ベル君に助け出させる方法、命ちゃんが助ける方法、色々と考えてたが物事は思った通りには進まないなと頭を抱えながらマイクを探す。

 

教室に戻って見渡せば教室の端に他の友人と話しているマイクの姿。

 

『マイク、用事が出来たから数日戻らん。適当に誤魔化しておいてくれ』

『ユウスケ、何だ。 トラブルか?』

『あー、マフィアとドンパチしてくる?』

『なんだそりゃ、まー何とかしとくから行ってきな』

『すまんな、今度飯奢るから!』

 

教室から出て自分のロッカーから荷物を取り出す。何だかんだでマイクとは相性が良いのか色々と頼み頼まれたりする事が多い。今回の無茶もなんとかしてくれるだろう。

それと次の映画のシナリオを詰める約束をしていたディブスにも謝罪と断りのメールをザックリと認めて送信する。

 

 

 

【ワールドテレポート】でオラリオへ転移してホームへ駆け込む。門を潜って玄関口を開けた所にヘスティアちゃんが居た。

 

「ああ、おじさん。来てくれたんだね」

「メール見たからね。それで情報を改めて共有して欲しいんだけど」

「ヘルメスからの報告書があるから執務室に来てくれるかい?」

「OK」

 

ヘスティアちゃんと連れ立って彼女の執務室へ行き報告書に目を通しながら彼女から説明を受ける。

情報の切っ掛けはヘルメスファミリア……ではなくロキファミリアらしい。

というのもヘルメス一行が情報を集めている際にロキファミリアのラウルに遭遇して相席したのが始まりで、彼が零す情報から今回の件に辿り着いたのだとか。

……ヘルメスファミリアが警戒されてた? おじさんとアソコの接点ってぱっと思い浮かばないはずだけど……。

 

「それで、残り時間は?」

「明日の夜には儀式だよ」

「そっか(メールだと残り3日って書いてあったけど……多分通信ラグだな。地球側の通信がまだ遅い時代だからメール受信に時間が……嫌なタイミングで通信ラグ出ちゃったか)」

 

こればっかりはしゃーないと切り替える。

 

「ベル君達は?」

「それがヘルメスからの知らせが来た日に中層へ進んでるんだ」

「うっわ、タイミングわるぅ~」

 

頭を搔きながら考えを巡らせる。こちらの手駒は全落ち、色々と関係をひっくり返す事になるがタケミカヅチさん所の子の縁だからなぁ……。

"あっち"の俺が満足出来たのもタケミカヅチさんの助力があった所大きいからな。恩返しと行きますか。

 

「ヘスティアちゃんは……どうしよう、タケミカヅチさんの所に非難で良い?」

「タケの所か、多分受け入れてくれると思うけど」

「理由聞かれたら春姫ちゃんの名前出しな。ソレで向こうは理由は分からなくても状況は飲み込めるはずだ」

「命君と関係あるから?」

「というかタケミカヅチファミリアの大半は関係あるんじゃないかな」

 

避難先の話をしながら装備を確認する。おじさん棒に丸盾、それにベルトも。

 

「あのさ……ベルトも使うの? 流石に過剰戦力じゃない?」

「……イシュタルちゃんってさ、意外と甘い物好きなんだよね」

「へ?」

「甘えたがりだし構ってちゃんな所もあるけど、やる事をヤルって決めたら一直線なのよ」

 

色々と思い出す。買い物とか趣味の事とか、本当に自分がやるって思った事に対して必要な手段を問わずに色々やる。

前のおじさんはソレを可愛いものとして見てたけど今回は障害としてソレを考えると厄介この上ない。

 

「多分色んな策を講じる様な気がするんだよね……最近やたらと彼女の夢ばっかり見てたし」

「夢ねぇ」

「うん、何か微妙に繋がってる気がする……こう、お腹の辺りが」

「脂肪的な?」

「そりゃ分からんけど」

 

へらっと二人して笑ってからタケミカヅチファミリアの前に【テレポーテーション】を繋げる。

 

「おじさんの出来る事って戦闘に限れば基本真正面から潰すやり方しか出来んから……今回は色々特殊だから全力でやらないと」

「おじさんが決めたなら良いけどね。あー、でもギルドに正式なLv提出はしないとなぁ」

「事後処理はちゃんと手伝うから」

「本当だよ、あぁソレとおじさん」

 

穴を潜る前にヘスティアちゃんが振り向いて"おいでおいで"と手で招く。

 

「ん?」

 

従って近づけばヘスティアちゃんが抱き着いてきた。

 

「ヘスティアちゃん?」

「……君が色々と経験してやれる事も増えただろうけど、ボクの眷属なのは変わらないし大事な家族だ。未来の家族だっていう子の為に頑張るなら全力でやっておいで。それで他のファミリアと戦争になったとしても……ボクは君の家族だ」

 

優しく抱き返す。

 

「ふはははっ、惚れそうだ」

「残念! ボクは既にベル君に惚れてるんだなぁ」

「知ってる」

 

一頻り二人して笑ってから身体を放す。

 

「んじゃ、行ってきますね。ヘスティアちゃん」

「行ってらっしゃい、おじさん」

 

そう言ってから笑って穴を潜ってタケミカヅチファミリアへ向かったヘスティアちゃん。

さて、イシュタルちゃんと話し合いが出来るかねぇ。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

歓楽街を歩く。昼間だが空いてる店も結構ある。

歓楽街特有の空気。ギラギラした欲望は少しナリを潜めて夜に向けての準備時間。

そんな時間に若い男が武装で入って来た事にイシュタルファミリアのアマゾネスが男を止める。

 

「おい、ここで武装は禁止だ。入るなら武器の類はこっちの詰め所に置いて行きな」

 

そんな彼女達にニコリと笑いかける。言葉に従って剣と盾を預ける。

そのまま歓楽街のメインストーリーを歩く。歩き続けて辿り着くのは当然イシュタルファミリア。

イシュタルファミリアの正面玄関を潜った先に居たのはズラリと並ぶアマゾネスの隊列。

 

「何しに来た?」

 

以前来た時にイシュタルの横に付いていたアマゾネスが口を開く。

 

「勿論話をしに」

「此方に話は無い」

「頼むよ、差し入れにイシュタルちゃんが好きなチーズケーキ持ってきたんだぜ?」

 

ケーキを入れた箱を掲げて見せる。なんとおじさんの手作りと嘯きながら。

 

「帰れ、主神はお前に会わない」

「うーん……男と女の関係に首突っ込むと()()()()()()って諺あるのを知らない?」

「総員戦闘準備!」

「そーかい、無理か」

 

ケーキを【トラベラー】に収めて身体を軽く動かし解す。

 

「蹴られても文句言うなよ? 蹴るのはおじさんだけど」

 

アマゾネス達が武具を構えるのに対しおじさんは身体を折りたたむ。膝に手を置き、身体を沈め、頭が元の膝の位置位まで下がった所で多数のアマゾネスの放つ矢がおじさんを襲う。

飛んでくる矢に追撃してくる前衛達。矢が此方に届く前に【トラベラー】から丸盾を取り出し全力前進する。

矢の雨の下を潜り、迫っていた前衛を盾で押し倒し腹へ一撃。汚い嗚咽を一つ漏らして気絶したアマゾネスをそのままに左へ跳ぶ。

床を蹴り、柱を蹴り、包囲を抜けて一番初めにやるのは遠距離潰し。二階三階に配置された弓兵だ。

全力で跳ねる。最近走る事に意識を割くようになったお陰か身体の動かし方を意識する様になった。

結果としておじさんの跳ねるという行為の精度に繋がる事となる。

身体が壁や床に接触するのをそのままにするのではなく、手や足、場合によっては肘や膝、頭等複数の接地面を儲ける事で任意の場所へ跳ねる事が出来る様になる。

そうなると跳ね返る運動エネルギーがそのまま攻撃へと転換される。

跳ね回っていたと思えば急角度に自分に突っ込んで来るという理不尽極まりない軌道を描きながらアマゾネス達が殴打されて崩れていく。

 

「相手は一人だぞ! 止めろ!」

「くそ、何だあいつ! 寝っ転がるような姿勢で跳ね回っ……あがっ!」

「チッ! 通路に下がれ! 射線を絞って対応しろ!」

 

弓兵が狭い通路に逃げ込んだ……けどソレは良い判断じゃないぞー?

 

「おじさんストライクV2ってか?」

 

通路手前の床に反射の力で罅が入る程に力強くヒーロー着地して足へ力を貯める。その力を走る力へ転換。

狭い通路に身を潜めた弓兵へ全力走行。初速で100km/hを超える70kg超の人間がぶつかればどうなるか。人間単身が行う所謂ひき逃げアタックである。

 

跳ねられた相手は何が起こったか分からない。

相手まで20メートルはあった距離は瞬きの間に潰されそのままぶつかって来る。そんな攻撃があるなんて冒険者である程考えない。

武器を魔法を使うなら分かる。だが相手が行って来たのは分かりやすく言えば体当たり。

そんな子供でも出来る技とも言えないものが冒険者としてレベル2以上の自分達を一撃で戦闘不能にまで追い込むなど埒外の攻撃。

 

「「「「ぎゃあああああ!!」」」」

「くそっ! 弓兵が!」

「急げ! アイツは今2階の通路奥だ!」

「おい! 誰かフリュネの奴呼んで来い!」

「アイツまだ寝込んでるぞ!」

「知るか! 良いから呼べ!」

 

 

 

「ふーっ」

 

待ち構えていたアマゾネス達を一掃して一息付いた所で話しかけられた。

 

「随分暴れたねぇ」

 

妙な倦怠感を感じながら声の方へ顔を向ければ巨大な斧を構えたフリュネが居た。以前なら身体と同じ位の大きさだったが今や背負うと身体が見えなくなる。

拳を構えながら向き直る。

 

「ちょっとイシュタルに会いたくてね」

「……何か余裕が無いね。何時ものへらへらした態度はどうしたんだい?」

「ちと疲れてるのさ」

 

返答と同時に振り下ろされる斧に盾を当てて逸らすと同時に一歩踏み込みつつ右の掌底をフリュネの腹へ放つ。

数歩後ろへ下がったが踏ん張った後の反動を利用して斧を振り回してくる。

身体は常識的な範囲に収まったフリュネだが武器の大きさはカテゴリーとしては両手斧の中でも一際巨大。一振りの範囲も威力も掠れば大ダメージは間違いない。

 

「あぶねっ」

 

ソレを避けながら身体へ幸運脂肪を使って調整を行う。

どうにもイシュタルファミリアのホームに来てから調子が上がらない……いや、むしろ悪くなってる。

武装無しに加えてこの状態だとフリュネ相手は結構しんどい。

防御と回避中心で立ち回ってるが……やばい、段々足にきてる。筋肉がピクピクしてるのが自分で分かる。

 

「精細を欠いてるねぇ、アンタも体調が悪いって口かい?」

「アンタ()って事はソッチも悪い感じ? それならいっそ争い止めね?」

「それは出来ないね、何せ主神様の望みだ」

「それじゃ無理矢理押し通るしかないか」

 

少し重心を下げて両手を構える。対してフリュネは斧を上段に構える。

全力ダッシュで近づくがフリュネは動かず俺に合わせて斧を振り下ろす。やばい、悪い方向に噛み合った。

上から振り下ろされる斧を盾で無理やり受け止めて、潰されない様に横へと移動しつつ衝撃を受け流す。

 

「いっっだ~~~」

「やっぱり変だね。()()()()()()()()ならもっと楽に避けてるだろうに」

「? イチチっ、【庇護脂肪】体質変化:流動硬化(モード:ゴライアス)

「……出して来たか」

 

全身を黒に染めたおじさんに対して斧を寝かせて水平に構えるフリュネ。

腰を捻り、左手を前に、右手を腰だめ。

受けた衝撃を身体の各所に設定、ソレ等を段階解放して初速を跳ね上げるおじさんストライクV2。

理論上はどんな動作でも加速が可能だ……理論上は。

ちゃんと形に落とし込んでないと自爆技になるし衝撃の配置量間違えても動きが阻害されるけど。ハマると強いのよ。

 

「いくぞ」

「きな!」

 

次の瞬間。おじさんの姿はフリュネの視界から消えた。

姿勢や構えとして突撃してくると予想して、おじさんを『点』として捉えていたフリュネは横へ跳ねるおじさんの動きに視界が付いて行かなかった。

 

おじさんストライクV2の良い所、見せ札として機能する&予想外の行動になる。

 

床を弾く音と共に構えの姿勢のまま壁へ接触するおじさん。触れた箇所を起点にフリュネの後ろに位置する柱まで跳ねる。

柱へしっかりと足で着地し、その勢いに貯めた衝撃を上乗せしてフリュネを押し倒す。

 

「ぐっ?! どうやって後ろに!」

 

うつ伏せで伏せるフリュネに馬なりになって右手を頭へ。

 

「加減無しだ。寝ててくれ【幸運脂肪】」

「~~~~~~~~!!!!!????」

 

スキルを使用した瞬間、フリュネの意識は快楽に押し流される。

普通の生活では一生味わう事の無い強烈な体感。前回イシュタルちゃんにスキル全開で使って本気で怒られたおじさんの裏技。

一度スキル使用の合意を取った相手にしか使えないけど……特殊な奥の手だ。

頭がクラクラしてる、二日酔いの様な、貧血の様な。

揺れる頭を気合で持たせながら立ち上がる。

 

「あ"~っ、くそ。何だコレ」

 

視界がぐにゃぐにゃだ。酒を飲んだ訳でも無いのに何でこんなに体調悪いんだか。

どうにか身体を動かしながらイシュタルの部屋へ進む。何はともあれ最初の目的を熟さないと。

 

 

 

両開きの扉を開け、深紅の絨毯を進み、玉座の奥にある私室へのドアを潜る。

そこを潜れば絢爛豪華な天蓋付の巨大なベット。自分の知ってる彼女は何時も香を焚いていたが……どうやら今日は炊いてないらしい。

千鳥足になりながらベットに近づけば汗をかいて眠るイシュタル。【トラベラー】から椅子を取り出し腰かける。

身体が重い。座った瞬間に瞼が重くなり目が閉じる。まずいとは思いつつも直ぐに意識は飛んだ。

 

 

 

イシュタルは例の記憶の混濁で寝ていたが頭痛が収まっている事に気が付いて目が覚める。

『別の自分』と『今の自分』の統合。それが完了したのだ。

別の自分の体験を追体験した今なら統合前の苛立ちの正体も分かる。自分への嫉妬とそれが手に入らない感情の発露。

結果としてあの男を遠ざける事になるだなんて。

 

「我ながら面倒な女だな……」

 

自らの事を笑いながらベットから身を起こして待機している眷属へ話しかけようと視線を横に向けると直前まで考えていた相手が居た。

椅子に座り眠るおじさん……いや、この見た目でおじさんと言うのは凄く変だが……まぁおじさんが居た。

 

「何でこんな所で寝てるんだこいつは……」

 

寝起きの上手く回らない頭でベットから這い出す。

男の身体を持ってベットへ寝かせて再度布団へ潜り込み再び目を閉じる。

 

「…………いや、違うだろ」

 

無意識下の行動に一周回って冷静になりながら目を開けてツッコミを口に出す。

横を見れば口を半開きにして寝ているおじさん。別の私はコレに救われたのか等と考えながら意外とまつ毛が長いなーとか、記憶と比較して若くなってるなー等を考える。

暫く観察をしてたら何か色々と気を張ってたのが馬鹿らしくなってきた。別の私が救われた事実と今の私は別人で、経験を共有しただけ。

未だにフレイヤに対しての対抗心だって残ってる。こいつと話す事はしてやろう、でもソレと私の内情は別物だ。

そう考えると心が軽くなる。

気分が良くなってきたので眷属に食事を用意させよう。

 

(あぁ、しかし春姫の成長の先が()()なら殺生石を使う前に追加の魔導書を用意するのも有りだねぇ)




イシュタルファミリアへ到着するが寝落ちしてしまうおじさん

色々と記憶が定まるイシュタル

春姫はどうなるのか

次回「イシュタル」

ギャグになるのかシリアスに転ぶのか……明日はどちらだ

この先の展開は?

  • ギャグ
  • シリアス
  • ミックス(自信は無い)
  • テンションで書ききる
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。