フィジカルお化けおじさん、異世界へ行く 1alternative 作:タラバ554
「んぁ……」
良い匂いと暖かさに包まれて目を覚ました。
めっちゃこのまま二度寝したい欲求にかられるが目をこすってどうにか耐える。
「んーー……」
「やっと起きたのかい」
顔を上げて声の方を向けばこっちを見ているイシュタル。何かスゲー美味そうなもん食ってる。
意識するとさっきまで包まれてた良い匂いとは別に食欲をそそる匂いにお腹が空く。
「(……あれ? 寝込んでるじゃなかったのか?)」
イシュタルから手招きされたので、頭を掻きながらベットから這い出して対面の席に着く。
「えーっと……あ、メシ終わってデザート食えるならケーキどう? チーズケーキ持ってきたんだけど」
「いいじゃないか。後で貰うよ」
おう……。そう口にだしながら椅子に腰かける。
「(何だ? 何か妙に……)」
「? 何だいそんなにこっちを見て」
「いや、何か色っぽいなーと」
「はっ、今更アタシの魅力に気付いたってか?」
左腕で頬杖を突きつつ、右手に持ったフォークでおじさんを指しながらあきれ顔で詰めてくる。
おかしい。動機息切れする様な肉体年齢じゃないはずだが……。
「まあいいさ、最近の頭痛の元が一段落したから気分が良いんだ。それでアンタは何しに来たんだい?」
「うぇ? ……あっ、そう! 春姫ちゃん」
「春姫?」
ピクリとイシュタルが食事の手を止め不機嫌そうに片眉を上げる。
「ウチの新しい団員の同郷で知人なんだ。身請けさせて欲しいんだけど」
「駄目だね」
「そこを何とか」
「……」
暫く無言で食事を続けていたイシュタルであったが大きく溜息を吐いてから持っていたフォークを置いて此方を見る。
「アンタとアタシ、互いに知らない仲じゃないんだ。ハラ割って話そうか、何で春姫を助けようとしてるんだい?」
言われた意味が分からず頭の中に「?」で埋め尽くされる。
おじさんの困惑顔を見て溜息を吐いたイシュタルが指を鳴らして眷属に煙管を持ってこさせ一服し始める。
「アンタ妙な所で察しが悪いから言っちまうけど……アタシも
イシュタルの一言に先ほどまでの思考が一気に吹き飛びボケっとイシュタルの顔を見る。
まつ毛なげー、とか顔綺麗だなー等の下らん思考しか出てこず先ほどの言葉を理解出来ない。
「(思考放棄してる時の顔だねこりゃ)つまり、アンタと過ごした記憶がアタシ、フリュネ、アイシャ、春姫にはあるって話さ」
「……ふぁっ!?」
おじさんの驚いた顔が面白かったのかイシュタルが盛大に笑いながら食事を再開した。
「くっくっく……アンタのそんな顔が見れるならあんだけしんどかった体調の分もチャラにしてやるよ」
一通り食事を終えたイシュタルに【トラベラー】からケーキの入った箱を取り出して手渡す。
皿に盛って互いにパクつく。うん、旨い。
「へぇ、美味しいじゃないかい。アッチで買って来たのかい?」
「いや……今回の為に作った」
「アンタ料理作れた……いや、作ってたね。凝った料理ばっかり、記念日の度に」
言いながらケーキを突くイシュタル。ここまで色々エピソード言われりゃ信じるしかねぇわ……完全に記憶引き継いでら。
けど今までスキルの効果が他人にも影響会った事なんて無かったはずだけど何だ?
「えーっと、イシュタルちゃんって呼んだ方がいい?」
「…………いや、そーいうのはアンタが呼びたくなったら呼びな。その内呼ばせたくしてやるよ」
「おっ、おう……えっとそれでさ、記憶が戻ったと言うか引き継いだのはイシュタル、フリュネ、アイシャ、春姫の4人?」
「そうだね、少なくともあたしみたいにぶっ倒れて思い出したのは4人だよ」
4人の共通点は何だ? イシュタルファミリアで女性。ソレくらい?
何かしらの繋がりが出来た? 肉体的接触なら今まで他にもあったけど……???
頭を捻ってたが答えは出ず、イシュタルに問を投げかけられた。
「それで? あんた何しにあたしの所まで乗り込んできたのさ」
「さっきも話したけど、春姫ちゃんの事よ」
「春姫?」
「殺生石に封じようとしてるっしょ?」
「……ヘルメスの所の探りは警戒してたはずだけどね」
「まぁソコとは別口で知ったんだけど」
「ッチ、ウチのファミリアはどうにもおしゃべりの規制は厳しいか」
煙管を取り出して火を着け咥える。イライラを紫煙と共に吐き出し落ち着き取り戻そうとするイシュタル。
「それで? そんな春姫の事を知ってあんたはどうしたいのさ」
「さっきの焼き増しになるがウチの今のファミリアに春姫ちゃんの知りあいが居る。助けたいと思ってる」
「その為にアンタが動いた? アンタ自身はどうなのさ」
「俺は……別に」
「は?」
おじさんの返答が意外だったのか目を丸くするイシュタル。本気か? って顔して此方を覗きこんで来る。
「アンタ本当にあのおじかい?」
「いや……正直に言うとイシュタルちゃんと親密になった時って精霊ちゃん助けたじゃんか。
後は最近インド勢に魂がずたぼろとも言われたかな?」
「はぁ? 魂が?」
そう言ってじっと此方を見てくるイシュタル。
段々表情が険しく、赤くなったり青くなったりと百面相してる。
珍しいなーなんて思いながらケーキの残りを食べきったらイシュタルが立ち上がっておじさんの横に来たかと思ったら頭を叩かれた。
「痛いが?」
「『痛いが?』じゃないよ! 何でこんなになってるのに平気な顔してんだい!」
「いや……コレが平常運転なので……」
「魂がそんな状態で平常運転な訳無いだろうが! ヘスティアは何で何も言わなかったんだ!」
「いや、そもそも
顔を真っ赤にしながら怒って来るイシュタルを椅子から見上げて返事をする。心配で怒ってくれてるのは分かるが……記憶に引っ張られてるんだろうな。
「まぁそんな事より」
「
「春姫ちゃんを殺生石に封じるのは延期してくんない?」
「……止めろ、じゃなくて
「俺の知ってる限りだと、イシュタルちゃ……イシュタルは春姫ちゃんを殺生石に封印して砕いて団員に持たせ『ウチデノコヅチ』を使わせて団員全員を即席レベルアップさせる。その団員全員でフレイヤファミリアを潰すって計画だったよね」
「あぁそうさ。けどソレをする前に……」
「ウチの団長に手を出してフレイヤブチ切れ、逆に奇襲を食らった」
椅子に座り直して煙管を吹かすイシュタル。
「あぁそうさ、だから今回はあの坊やに手を出す事はしない。水面下で静かに準備を済ませてフレイヤに電撃戦を仕掛けるつもりだったんだがね。それで中止じゃなくて延期にしろってのはどういう了見なんだい」
「結局の所イシュタルがフレイヤを蹴落としたいのってフレイヤより自分が上である事を証明したいって事だよね?」
「……まぁ端的に言っちまえばそうだね……」
「(よしっ)って事は
「……アンタ何する気だい?」
「あん? そんなの決まってるだろ。イシュタルが美の女神としてフレイヤよりも何倍も上だって事を周知すんのさ」
にやにやしたおじさんの顔を見たイシュタルは思った。
「(アタシの思った展開とは違うけど……こいつならいいか)」
引き継いだ記憶に毒されてしまっているイシュタルであった。
春姫を救う
イシュタルを満足させる
どっちもやらなきゃならんこの状況
おじさんの一手は!?
次回「コンテスト」
大衆よ! 奮い立て!!