そこでリオカが出会ったものとは。
第二マップ タメシの森林
「第一マップはほとんど平原と古い建物ばっかりのマップだったけど、第二マップは街も大きくなったし、街の外には大きな森林や湖が広がってるんだね!一人で先に来ちゃうのは申し訳ないけど、来たからにはいっぱい楽しまないと!」
第二マップはタメシの森林。
チュートリアル的な内容の多い第一マップのサワヤカ平原と違って、それなりに手強いモンスターや複雑なクエストが多くなり、地形も死角の多い森林地帯や水泳スキルを要求される湖など、探索の難易度は上がっている。
「それにしても、サワヤカ平原の次がタメシの森林って、だいぶ安直なネーミングだよね…いや僕が言えることでは無いんだけど…」
初めての一人旅、どこに向かうべきか迷う。
そうは言ってもやる事の候補はいくつかある。
料理系スキルの習得をめざして、街で料理人NPCからクエストを受ける。
レベル上げと戦闘の練習のために、森林や湖の魔物を倒す。
ギルドメンバーを増やすために、他のプレイヤーと交流を行う。
何も考えずにあっちこっち歩き回って景色を楽しむ。
優先度が高いのはレベル上げと戦闘訓練だろう。
前回の第一回公式イベントで4位という好成績を納めた以上、第二回公式イベントで他のプレイヤーから警戒されるのは目に見えている。
「やりたい事は色々あるけど、今日は戦闘訓練をしよう!最近バトルしてなかったからね!」
という訳なので、リオカは早速森林地帯へやってきた。
大小様々な木々が並ぶ大森林は、木の裏側や大木の枝の上など姿を隠す場所が多く、獣系の魔物も多く住む危険な場所。
生半可な実力の者が迷い込めば、敵に気が付かないままやられる事も珍しくない。
「戦闘訓練となれば、試してみたいことが一つあったんだよねぇ。ネットで調べた情報によれば武器には熟練度があるらしい。」
熟練度とはこのゲームにおける重要な要素の一つだ。
同じ種類の武器を使い続ける事で、その武器種に対してボーナスを獲得できる。
例えば片手剣の熟練度が0から1になれば、与えるダメージが増加し、5まで上げれば新規スキルの習得など、武器種によって様々な熟練度ボーナスが得られるのだ。
「僕は基本的に片手剣と小型の盾を使ってるけど、フレッドは色んな状況を想定しろって言ってたからね!今の武器は熟練度が8まで上がってるし、試しに他の武器の熟練度を5以上に上げてみよう!」
簡単に言っているが、初ログインから片手剣を使い続けてようやく熟練度8なので、普通のやり方では複数の未使用武器で熟練度5以上など無謀である。
流石のリオカでもそこまでは想定している。
だからこそ、今回はいくつかの秘密兵器を用意してきたのだ。
「よし!まず使用する武器はアンジュさん作成のハルバード!実はこの武器憧れてたんだよねぇ!長いリーチ!槍としても斧としても使える反応性!使いこなせれば絶対にカッコイイ!」
ハルバードとは槍と斧を合わせたような形状の武器だ。
先端での刺突にも、側面での斬撃にも使用可能。
物によっては鎌のような形をしており、それを引っ掛けて騎馬兵を引きずり下ろす事も可能だとか。
「武器を装備したら次はバフポーション!余ったお金を全部注ぎ込んで買いまくったから種類も豊富で数も多い!筋力強化に加速、自然治癒に毒耐性!効果時間も10分とかなり長い!これ揃えるだけで所持金があっという間に溶けた!」
各種ポーションはどれも数百Gする物で、それを一日中使い続けられる料買い貯めたので、レベル上げで稼いだ分の貯金はもう既に使い切った。
「最後にこちらもアンジュさん特性のモンスター呼び寄せアイテム!このフラッグを立てれば周辺にスポーンしたモンスターが凄まじい勢いで集まるらしい!」
これらを用意したリオカの作戦は、バフポーションによって能力を強化しフラッグでモンスターを集める。
それらを一網打尽にする事で、レベル上げと熟練度上げを並行して行うという作戦だ。
「おっと、早速集まってきたね!」
タメシの森には大蛇や狼が大勢潜んでおり、稀にスライムも現れる。
そして今回フラッグに集まったのは、大蛇が8体に狼が13体、そしてスライムが3体だ。
「大蛇と狼はハルバードで何とかなるけど、スライムは物理攻撃に体制があるって聞いたからなぁ。スライムだけは片手剣の魔法攻撃に頼るしか無いかなぁ。」
奇跡の翼で飛翔し、エンジェルリングの効果が合わさって空中から素早く接近しヒットアンドアウェイを繰り返す。
物理攻撃の効き目が薄いスライムには、ハルバードと片手剣をわざわざ装備欄を開いてまで持ち替え、ポイズンスラッシュによる毒攻撃やウィンドカッターによる風属性攻撃で着実にダメージを与える。
翼の入手方法が限られ、基本的に魔法か弓矢しか遠距離攻撃ができない初期環境において、翼装備を持つプレイヤーや天使族・悪魔族等のデフォルト翼持ちプレイヤーはそれだけで強い。
特に翼装備は飛行可能種族の主めな弱点を気にせず飛べるので、持っているプレイヤーは羨ましがられる。
「よーし!ハルバードの熟練度5は達成!今度は大盾の熟練度を上げよう!ギルドマスターとしてみんなを守る盾になるんだ!」
さっきまでと同じ流れで、今度は自分の体ほどの大きさの盾による撲殺や圧殺でモンスターを倒しまくった。
そして、相変わらずスライム処理の時は剣に持ち替えて、属性のある攻撃を行った。
「うんうん!どんどん上がってく!ってあれ?スキル習得……高速武装変更?なにそれ?」
高速武装変更
現在装備している武器や防具を、装備変更画面を通さずに変更できる。
ただし、武器を変更する場合は熟練度5以上の武器にだけ変更できる。
戦闘中の再発度には5秒のクールタイムが必要。
習得条件
・戦闘中に装備品を切り替えて戦う。
・三種以上の武器の熟練度を5以上まで上げる。
「これって、敵に遭遇してから有利な武器に持ち替えれるって事!?すご!ジャンケンで後出しするのと同じじゃん!」
不意に戦闘に入った際に、剣で戦いにくい相手に対して槍に持ち替えるという戦術を取ることが可能な他、咄嗟の防御に大盾に持ち変えれば、受けるダメージを大きく軽減できる。
とは言えこのスキル、一種類の武器だけ使っているプレイヤーならまず習得することは無く、序盤から三種類以上の武器の熟練度を5以上まで上げるプレイヤーもそうそういない。
まして戦闘中に武器種を変更するなど普通はやらない行為なので、独特なプレイスタイルを取るリオカだからこそ習得できたスキルだろう。
「よし!この調子でもっと色んなスキルを集めよう!さてと、次はどの武器を使おうかな……」
ブツブツと独り言を言っていると、突然木の陰から小さい刃物が飛んできた。
リオカは咄嗟に大盾で攻撃を弾いた。
「いきなり何か飛んできた!これは……クナイ…?モンスター?それともプレイヤー?とにかく周りを警戒しないと!」
周囲を見渡すが、森の中なので葉っぱに陽の光が遮られて暗い。
生い茂る木々も天然の障害物となり、どこに隠れ潜んでいるか検討もつかない状態だ。
少しすると今度は背後から物音が聞こえた。
「後ろ!」
足音の聞こえた方向に盾を構えてクナイを弾き、すかさず武器を大盾から剣に持ち替える。
「ウィンドカッター!」
風属性の斬撃を飛ばし、直撃した木は真っ二つに割れた。
「何だ今の?武器を一瞬で入れ替えた?しかもウィンドカッターの威力も凄まじいな。」
「声聞こえた!こっちの方角だ!」
相手がうっかり思考を声に出してしまったその隙を狙って、奇跡の翼で接近する。
しかし。
「あれ、いない?確かにここから聞こえたのに。」
エルフ族の特性として、聴覚が優れており音でおおよその居場所を特定できるのだが、確かにその場所から音が聞こえたのに、その場所には誰もいなかった。
いや、性格にはその場所にいるのに姿が見えなかったのだ。
「残念、もう少し後ろだったね!」
「ふえぇ!?いつの間に!」
流石に避けきれず、一発攻撃を受けてしまった。
「イテテテテ……後ろにいるのに全く気が付かなかったよ…。」
「ふむ、この程度の攻撃では倒しきれないと。まぁ私のスキルの正体を掴めなければ、どの道負けるだろうけどね!」
「逃がさない!武装変更!」
リーチが長く、かぎ爪のようなパーツのあるハルバードで攻撃と捕縛を試みるが、見事に避けられそのまま姿を消した。
「恐らく姿を透明にするスキルだろうね。でも攻撃の瞬間は姿を隠さないみたいだし、動いたら音で分かる。次は確実に当てる!」
相手に聞こえない程度の声量で考えを整理し、追撃に備える。
そして再び、背後から音が聞こえた。
「二度も喰らわないよ!」
「そっちは囮だ!」
「な、分身!?ホントに忍者みたいなスキルだね!」
「そりゃ忍者っぽいスキルばっかり集めてるからね!」
そう言うと今度は本体が現れて、口から火を吹いて攻撃してきた。
「ファイアブレスさ。火遁の術っぽくてカッコイイよね。」
「く、流石にキツいなぁ…。君の目的によっては降参した方がいいかもしれないなぁ。」
「そう言ってくれると話が早い。」
勝てないと判断したリオカは、さっさと降参することにした。
「それで、目的は何?何でいきなり攻撃を仕掛けてきたの?」
「何かやけにモンスターが密集してるから、クエスト要素かなって思って攻撃してみたらプレイヤーだったからさ。やめ時が分からなくなってずっと戦ってたけど、おかげで対人戦について色々考えるいい機会になったよ。」
「そういう事か。となるとどちらかと言うと僕の方に問題があったのか。」
「ああ、気にしなくていいよ。えっと名前は…」
「僕はリオカ!君の名前は?」
「私はタケマルだ。まあ見ての通り忍者っぽいスタイルでプレイしている。」
「うんうん!カッコイイよね忍者!しかも見えなくなるスキルとか凄い強い!もう本当ギルドメンバーに欲しいぐらいだよ!」
「おや?もしかしてギルドメンバーを募集しているのか?」
「うん!一応メンバーは6人くらい集まってるんだけど、ギルドマスター的にはもっといた方が賑やかで楽しいかなって思ってる!もしかして来てくれるの!?」
「うむ。一緒にプレイする仲間がいなかったから、せっかくの隠密スキルを持て余していた所だ。是非ともこの力を使わせてもらいたい。」
「ありがとぉぉぉ!!スキル習得とレベル上げのついでに新しいギルドメンバーも見つけられるとか、今日の僕もしかして超ラッキーかも!よーし、このまま洞窟行ってアーティファクトでガチャ引こう!」
「ええ?ちょっと待った、流石に二人で洞窟攻略は無謀なのでは?」
「大丈夫だって!思い立ったが吉日って言うじゃん?運が向いてるうちにやっちゃおうよ!」
「う、うむ。まぁデスペナルティも一部のアイテムとお金のロストだけだから、付き合うのもやぶさかではないが。」
そう言って二人だけで洞窟に挑んで、ボス戦で見事に返り討ちにあったのは言うまでもない。
ギルドホーム【ステーキハウス香】
「という訳で、新しくメンバーに加わったタケマルさんです!」
「うむ。よろしくお願いします。」
「なるほど、隠密スキル特化型のプレイヤーか。確かにいると便利だよな。ナイス勧誘だなリオカ。」
「でしょ?それに戦闘も僕と張り合う強さだし、何より見た目がカッコイイ!忍者っぽくてスタイリッシュ!」
「へっ、俺の方が強ぇしカッケェな。」
「忍者風衣装…腕が鳴るわね…。」
「そんな感じでこれからよろしくね!」
ピコッ
「あ、運営からお知らせ!時期的にアレだね!」
「第二回公式イベント開催決定!一週間後に開催で、今度はギルド対抗戦か!案の定来たなギルド戦!」
「ええっと内容はっと。」
ルール解説
1.ギルド同士での一時的な結託は可
2.自分達以外のギルドホームには一定時間以上滞在できない
3.デスしたらギルドホームで蘇生され3デスで脱落
4.大会期間は3日間(ゲーム内時間)
5.アイテムは持ち込み可で使用したアイテムは大会終了後復活する
6.撃破したプレイヤーのレベルによって撃破時の獲得ポイントが変動
7.ギルドメンバーの獲得ポイントの合計が最も多かったギルドが優勝
「なるほど、低レベルギルドは楽に落とせるがポイントは少ない。高レベルギルドは倒すのが難しい分ポイントもウマいと。」
「自分達の実力を考えて相手を選ぶのが大事だね。」
「簡単なことじゃねぇか。最強ギルドに速攻しかけて全員潰す。そうすりゃ俺たちの優勝だ。」
「それが出来るなら苦労はしなさそうだがなぁ。俺たちみたいな小規模ギルドは大規模ギルドの数の暴力に食われがちだし、個々の強さが求められるバトルになるだろうな。」
「まぁ何にしても楽しそうだよね!それにタケマルもチームに加わったし、何より楽しむのが一番だからね!」
公式大会は一週間後。
第二回大会は、後に『DLRPG』プレイヤーの間で伝説として勝たられる名勝負の数々を生み出すことになるとは、この時のリオカ達は知る由もなかった。
本編で語られない設定について語るコーナー
タケマルが使用したスキル『透明感』は攻撃の直前で自動解除さるる仕様なので、近接攻撃の場合は攻撃の瞬間に相手にバレるリスクがある。
スキル『分身』は複数召喚する事も可能だが、五人より多く出した場合の分身は攻撃はできない。
また、分身のステータスは本体のステータス÷分身の数で計算される。