おじさんに簡単なものから必要な知識を教えて貰う。
「いいか、クリス。
勇者に選ばれると特別な技能が身に備わるらしいが、それに関しては昔から覚えていたような、手足のように使いこなせるらしいんで今は考えなくて良い」
「そうなんですね」
神様のやることはスケールが凄いなぁ。
──── 小一時間経過。
「とりあえずこんなもんで良いだろ。
そろそろ連絡も来るだろうし、茶でも飲んで待ってるか」
外は太陽が沈みかけた頃。
いつもなら外仕事を終わらせ始めて、家では夕飯を準備する頃だろうか。
「飯はギルドの横に飯屋があるからそこで食うぞ」
「あの、おじさん。
勇者になって、それで、終わったらどうなるんでしょう」
「勇者のその後か……
まあ割と色々あるが、この場合は元の生活に戻れるかどうかだろうしな」
「俺の知る限り、元の生活に戻る場合はある。
けど、完全に同じじゃないしな。多分クリスが農民として生きるには色々必要なものがあんだろうな」
おじさんも言う通りで、僕には継ぐ土地が無い。
街で住むなんて想像もつかないなあ。
「さて、そろそろギルドに向かうぞ。
どんなメンツが揃っているかは分からんけど、まあ割と優秀なのが集まってると思うぜ」
「は、はい」
しばらくの間、一緒に旅をする仲間……か。
どんな人が居るんだろう。
おじさんと共にギルドに歩いて向かった。
────
「ここがギルドだ。
割と目立つ建物だし、ここへの道も一本道だからすぐ覚えられるはずだ」
「凄いですね」
おじさんの先導でギルドに入る。
こっちだという声に従って着いていくと机と女の人がいた。
「そちらが噂のお方ですか」
「そうだ。上で待機してるのか?」
「はい。
そちらへどうぞ」
緊張してきた。
おじさんに着いて階段を上がり、少し歩いたところで扉があった。
おじさんはこちらを軽く見てからノックをして、声を掛けて扉を開ける。
「勇者様を連れてきたぜ」
「し、失礼します」
部屋に入ると、一番手前の大きなおじさんと目が合った。
「よくぞ来てくれた。
私はこの総合商業ギルド南東トカフレ支部の支部長、アズゴンドラだ」
そう言うと支部長のおじさんはゆっくり近づいてきて、しゃがんだと思ったら手を差し出してきたので、握手かなと思って手を出した。
「うむ、よろしく頼むよ」
おじさんは立ち上がってから横にずれる。
「君の仲間はここに居る3人がそうだ」
3人?
疑問が顔に出ていたのか、支部長のおじさんは困ったような顔になりつつ理由を教えてくれた。
「実はだね、あと一人は急いでこちらに向かっている最中なんだ。到着までに先に顔合わせをと思ってね」
そう言うと、後ろにいた人達がこちらに来る。
3人とも女の人だ。
ちらっとおじさんを見ると何とも言えない顔をしてた。
「私はカトレア。
獅子の獣人、階級はゴールド。よろしく」
金髪で背も高いキリッとした感じの人だ。
「わたくし、ゼルメダス・ライナリオと申します。
エルフの森から参りました。階級は同じくゴールド。今後ともよろしくお願いしますね」
エルフの人を始めて見たけど、なんだかとっても偉い人みたいだ。
「あたしはジャル・ロール・セナリナ。
出身は西の鉄鋼洞窟、階級はプラチナ。セナリナって気軽に呼んでね。これからよろしく~」
背は一番僕に近いけど、なんだか派手で凄い服装をしている。
「僕はクリス。この近くのトルグ村から来ました。お世話になりますっ」
頭を下げる。
僕はこの中で一番経験が無い。
それにさっきおじさんが教えてくれた話だと、ゴールドの階級はかなり高いはずだ。
「俺はゼルク。トルグ村出身で階級はシルバー。よろしく」
最後におじさんが名乗ってとりあえず顔合わせは終わりなんだろうか。
「よぉ、ゼルク~。久しぶりだなぁ」
さっきまで優しそうな顔をしていたセナリナさんが急に態度を変えておじさんに抱きついてる!
「……」
おじさんはお腹が痛いのかお腹を押さえているし、なんだか顔色も悪い。
「ああ、あれは別に病気とかそういうものではないから、安心していいわよ」
声を掛けられた方を見るとエルフのお姉さんがこちらにニコッとした顔を向けてくる。
「ライナと呼んでください。
クリス君で良かったかしら」
そう言うとそっと近づいてきて、僕の手を取る。
「うわぁー、手ちっちゃいし顔もちっちゃい。ヤバ」
ライナさんは顔を下に向けて固まってしまった。
それにかなりの小声で何かを呟いている。
なにかお祈りでもしてくれたんだろうか。
「ライナ、それは止めて」
カトレアさんがライナさんを持ち上げて、後ろにおろす。
「クリス、私の生まれた獣人族では友好の証として拳をぶつけ合う」
カトレアさんがこちらに大きな拳を向けてきたので、おそるおそる拳をぶつける。
「ん。これでクリスは仲間。よろしく」
「悪い悪い。顔見知りがいたもんで主役をないがしろにしてしまったよ。ごめんねクリス君」
セナリナさんが近づいてくる。
握手をして離れる。
「さて、早速で悪いのだが、一週間以内に結束を高めて欲しい。そのために隣の町との間にある管理ダンジョンに明日から通って欲しい」
支部長のおじさんが僕らに向けて話す。
「詳しい話は既に3人に話してある。
親睦も兼ねて隣のキツツキ亭で夕食を食べて、明日に備えてくれたまえ。勿論お代はこちら持ちだ」
なんだか話がどんどん進んでいくけど、緊張が緩んだのかお腹が空いたのは事実だし、ご厚意に甘えてご飯を食べよう。
────
キツツキの宴亭
通称、キツツキ亭
カウンターのおじさんは既に話が通っていたのか、僕達が店に入ると、奥のテーブルに案内してくれた。
個室のような作りになっていて、ここに来るまでにあった視線が無くなったのは少しホッとした。
「難しい話は後にして、飯を先に食べちまおうぜ」
「うむ」「そうね」「そうだな」
「はい」
飲み物は注文して直ぐに届いた。
村の人達もこういうときはだいたい同じだった。
グラスを持ち上げて……
「えっと、これからよろしくお願いします。カンパイ」
「「「「カンパイ」」」」
僕の長い一日がようやく終わりそうだ。
簡易的な人物設定
クリス
緑の勇者、外見と年齢は少年、金髪、身長はそれほど高くは無い。オタク用語で表すとワンコ系ショタ。
カトレア
獅子の獣人、外見は高身長でスタイルが良い、顔は整っている反面表情があまり変化しない、金髪、どちらかいうと小麦色の髪、目つきが鋭い、ゴールド階級は実質上から2番目であり、恐ろしく強い。
ライナ
エルフ、森エルフ、割と良い家生まれだけど外に出てきた、茶髪で柔らかい表情、背も高くスタイルも良い、あと尻がでかい、クリスのことを他とは違う目で見ている疑惑がある。
セナリナ
いわゆるドワーフの一族、しっかりと焼けた褐色肌、背はあまり高くない、スタイルはこう見えてというタイプ、顔つきが童顔なのを少し気にしている、おじさん(ゼルク)となにやら因縁があるとか。階級のプラチナはゴールドとシルバーの間、本業は鍛治職人だけど、自分で材料を拾いにいく過程で強くなった。
ゼルク
クリスの叔父さん、まじないし、呪い師は装備や人の呪いを解いたり、雨乞いしたりとか割と地域密着のお仕事だったり、戦闘経験もしっかりあるけど、本職の戦闘に特化した呪い師に比べると広く浅くタイプ、顔はおじさん、背は割と高い、意外とガッシリしている。