機動戦士ガンダムL(ルミナス)   作:C4-1341

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『ピースミーティア攻防戦』(5)

私は走る。ひたすらに走る。

 

「シーナ、早くっ!」

 

最愛の母の声を追いかけて、全力で走っていく。

私の周りには、子供や大人、老人、様々な人々が同じように走っており、皆必死の形相をしていた。ある人は手ぶらで何も持たず、またある人は大きなボストンバックやスーツケースを携えて、ある場所を目指して走り続ける。

 

「はぁ…ッ、はぁ…ッ!お母さん…!」

 

人々の波に揉まれながらも、母を追いかけて私は必死に走り続けていく。逸れないように、その姿を見失わないように。

そして、人々の荒い息遣いや足音を掻き消すように、私達の頭上から連続で金属音と爆発音が鳴り響いた。それが何なのかを正しく表現したのは、一緒に走っていた1人の男性だった。

 

「ジオンの…モビルスーツだ…っ!」

 

緑色の、18m程の巨大な鉄の塊。人型のそれは、手に持ったライフルを構え、あちこちに無差別に攻撃を加えている。ライフルのマズルが何度も火を噴き、巨大な弾丸を連続で発射していたのだ。撃ち出された弾丸を失った巨大な薬莢は、排出口から次々に飛び出ては辺りに降り注ぎ、家屋の屋根を破壊したり地面に穴を空ける程の衝撃を与えている。あんなものが人間に当たれば簡単に死んでしまうと、幼いながらに容易に考えつく。

 

『住民の方は、急ぎシェルターに避難するように!繰り返す……』

 

私達が走っている最中も、ジオンのモビルスーツによる攻撃は続けられており、加えて防災放送によって避難を促すアナウンスも、繰り返し流され続けていた。そして、ジオンのモビルスーツを迎撃しようと、コロニーの研究施設からロケット砲やミサイルを積んだトラック、そして戦車が出てきては、モビルスーツに向けて攻撃を始めている。

攻撃を避けたモビルスーツは、スラスターを噴射してジャンプし、迎撃に出て来た車両群に向けて進んでいった。私はその姿を、つい立ち止まって睨みつけてしまう。

 

(ジオン……、あんなのが来なかったら、めちゃくちゃにならなかったのに……!)

 

今日は、通っている学校の体育祭があったのだ。それが、この襲撃騒ぎで今朝から避難警報が出され、楽しみにしていた体育祭どころではなくなってしまったのである。

一瞬にして奪われた日常。その怒りの矛先を遠ざかるジオンのモビルスーツに向けながら、ギリギリと奥歯を噛み締めていく。

 

「シーナ、何してるのっ、早く!!」

 

立ち止まってしまったせいで、母との距離が離れてしまった。人波が壁となり、そう容易に母の元には戻れないだろう。母も流れを途切れさせてはいけないと進み続けているので、その声だけは聞こえたが、姿は徐々に見えなくなっていく。

私は直ぐに避難に走る人々の波に戻ろうと、踵を返した時だった。

ドンッ、という重低音の金属音と火薬が弾ける音が聞こえたかと思えば、私の真後ろから弾丸が飛来し、それは避難していた人々の人波の只中に着弾したのだ。

 

 

「ぅ、あッ、ああぁあぁぁ─────ッ!!?」

 

 

ほんの一呼吸にも満たない時間が過ぎ、凄まじい爆発が着弾地点で発生すると、私は爆風によって身体ごと吹き飛ばされてしまい、地面を何度も転がりながら倒れ伏してしまう。目を瞑りながら、身を丸めて頭を腕で覆い、しばらくの間は目を開けることも立ち上がる事も出来ず、ただ爆音によって生まれた耳鳴りが消えていくのを待つしかなかった。

…それから、どのくらい時間が経ったのだろうか。数分なのか、数十分なのか、何時間も経っているような気もする。耳鳴りはようやく治り、目をゆっくりと開けていくと、視界が僅かに歪んで霞んでいるのが分かる。恐らくは爆風で吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた際に、頭を打ってしまったからだろう。ズキズキと頭が痛む感覚もあるが、手で触れてみると幸いにも出血はしておらず、私は身体に力を込めながらよろよろと立ち上がっていく。

 

「……お母、さん……?」

 

見つめる先には、爆発によって出来たクレーターのような穴。焼け焦げ、煤けた臭いを放っており、その中に混じるように肉が焼ける臭いも鼻腔を刺してきた。

そして、大行列だった避難民達の人波は、ただの1人も立っている者も無く、肉片や服の切れ端が辺りに散乱している。一瞬で大勢の人々が死んだ事を突き付けられ、そして自身の母親の姿も大量の死骸の中に含まれているのだと分からされた。

 

「お母さん…お母さん…ッ、やだ、お母さん……ッ!!」

 

爆心地となった道を歩きながら、見慣れた服の切れ端と共に、焼け焦げて黒ずみ、千切れ飛んだ右腕が転がっている事に気付く。それは紛れも無く、母の手だった。

私は泣いた、泣き叫んだ。母の右腕をその胸に抱きながら。

 

「あっ…あぁ…ッ、ああ…あぁぁああぁあ────────────ッ!!!!」

 

U.C.0079。

この日、サイド7にジオンのザクが侵攻した事で、ごく普通の暮らしを送っていた少女シーナ・ランチェスターの運命は大きく歪み、そしてニュータイプへの革新に至る第一歩となっていったのである。

 

 

 

 

 

「今度の被験体はこいつか。」

 

「はい、博士。」

 

とある手術室に、1人の少女が運び込まれてきた。

その少女は麻酔を施されているのか、規則正しい寝息を立てており、手術台の上に複数の大人の手によって乗せられていく。艶のある長い黒髪は束ねられていて、これから始まる手術によって失われると思うと、若干名残惜しいような気もしてくる。

 

「今までの被験体の中では、ニュータイプ適応値が最高の値を示しています。何より、整形手術も必要最小限で済む程度に、顔のパーツも似通っています。」

 

「…確かに、あのお方と瓜二つになる下地は整っているな。」

 

メスを握る博士と呼ばれた人物は、手術台の上で眠る少女の顔をジッ、と見つめていく。

この少女の素性は、戦災孤児だ。もっと正確に言うのなら、少女の両親はあの『ブリティッシュ作戦』で地球に落とされたコロニーに住んでいたのである。偶々この少女はサイド3のエリート養成学校に留学していたので、毒ガスによる虐殺からは逃れられたが、その後に待っていたのは孤独と絶望であった事は容易に想像がつく。

資料によれば、彼女は天才的な頭脳を遺憾無く発揮して飛び級しており、専門はモビルスーツ工学。留学先のサイド3にて齢10歳ながら学徒動員され、その頭脳を買われてグラナダのモビルスーツ開発工廠にて働いていたとされている。その後、ジオンの敗北と共にアクシズに逃れ、こうしてイサベルへとやって来てくれた。ニュータイプ研究所としてはこの上ない逸材なだけに、今回こそは完全な人工ニュータイプとして慎重に強化を施していきたい所である。

 

「では、手術を開始する。」

 

少女の身体に、メスの刃が入れられていった。

 

────────────────

 

──────────

 

──────

 

────

 

──

 

 

ぼんやりと目を開けたその先は、見知らぬ部屋の天井だった。ゆっくりと身体を起こしていくと、まだ麻酔の余韻が残っているようで、あまり身体の節々の感覚を感じない。だが、今の自分が”違う誰か”に変わった事は何となく分かる。

 

「起きたかね、被験体H.K.62。」

 

私が起きたベッドの脇には、軍服を着た男性が情報端末を片手に佇んでいた。

この人を私は知らない。だが、ジオンに関係する人である事は、軍服のデザインですぐに分かる。

 

「貴方は……?」

 

頭と顔に包帯を巻き、目と口しか出ていない私の問いかけに、軍服を着た人物は淡々と答えてくれた。

 

「私の名はギムレット・クルス。この小惑星イサベルを預かる者だ。君にはこれから身体機能強化訓練と、精神感応波強化訓練を受けてもらう。まずは手術の傷を治し、身体の調子を整えたまえ。以上だ。」

 

彼はそれだけを言い残すと、くるりと踵を返し、部屋を後にしようとする。だが、何かを思い出したように足を止めると、こちらへ半身だけ振り返りながら顔を向けてきた。

私は包帯だらけの顔を僅かに傾け、彼をジッと見つめ返す。

 

「…”カトレア・ペンタス”。今日から君の名前となる、しっかり覚えるように。」

 

私は小さく頷く。彼に言われてから気付いたものの、私は自分の本当の名前を忘れていた。思い出そうとしても、思い出せないでいる。だが、こうして生きているのなら、名前なんて些細な問題だ。私はそう考える事にして、その名前を何の躊躇いも不安もなく受け取り、口に出してみた。

 

「……カトレア・ペンタス…。」

 

綺麗な名前だと、私はそんな事をまず思った。

この名前が小惑星イサベル、果てはネオ・ジオン全体に轟く事になるとは、この時の私には知る由も無かった。

 

 

 

 

ビームサーベルが交錯し、弾き合い、互いの機体に直撃する事は無かった。だが、決死の覚悟で突貫してきたキュベレイは、勢いそのままにガンダムに体当たりをお見舞いし、互いにそのまま地面へと崩れるように倒れていく。

このまま密着しながら、どちらが先にサーベルの刃を突き立てるのかという場面において、不思議な事に両者の機体はサーベルのビーム粒子展開を停止させ、あろう事か機体のメインジェネレーターすら切れてしまった。

ガンダムのデュアルアイと、キュベレイのモノアイの光が、ゆっくりとほぼ同時に消えていく。

 

「………カトレア…ペンタス…。」

 

ガンダムのコックピット内。メインモニターが消えて薄暗いコックピットの中において、キュベレイが衝突して機体が倒れた衝撃を受けながらも、シーナ・ランチェスターは全く別の事を考えるように小さな呟きを漏らす。

あの不思議な光景が脳裏を駆け巡り、敵パイロットの過去を知ってしまい、私の中にあった燃え滾る戦意が失われ、別の感情が胸の内に広がっていた。あまりにも悲しく、憐れで、彼女も戦争の犠牲者なのだと。作り物のニュータイプになる事を強要され、人格や記憶さえも操作され、本心ではない所で今まで祭り上げられていたのだと。そんな彼女を、私は殺す事なんて出来るのだろうか。

 

「……今、行くよ…っ。」

 

ガンダムのコックピットを開き、私は操縦席から立ち上がると、ガンダムのすぐ側に倒れている黒いモビルスーツへと近付いて行く。敵同士だろうが、同じニュータイプ能力を持つ者として分かり合えるなら、戦わずに済む道もある筈だ。

そう信じてキュベレイのコックピットブロックに辿り着くと、装甲に埋め込まれている強制開放のスイッチを押し、外からコックピットハッチを開いていった。念の為パイロットスーツに携帯している拳銃をホルダーから抜き、構えながらコックピット内を覗き込んでいく。

 

「っ……、気を失ってる…?」

 

コックピットの中に居たのは、目を閉じてぐったりとした敵パイロットの姿。操縦桿から両手が離れており、意識を失っている様子なのが分かる。

こんな敵を殺せる程、私は人間を捨てていないつもりだ。出来る事なら、生きたままラー・ネイジュへと連れ帰り、今回の事について色々と話を聞きたい。

そう思いながらコックピットへと足を踏み入れ、敵パイロットのシートベルトを外し、身体を起こしてやっている最中だった。

 

「う……、ぐ………ッ…」

 

「あ…、目が覚めた…?」

 

苦しげに声を漏らしながら、敵パイロットが朧げに瞼を開き始めたのだ。だが、次の瞬間…

 

「ッ、俗物が…!」

「うわッ!?」

 

敵パイロットは目をカッ、と見開き、私の胸を両手で押して突き飛ばしたのだ。咄嗟の事に対処出来なかった私は、そのままコックピットから放り出されていくものの、すぐにパイロットスーツに内臓されたスラスターを噴射し、無重力空間の中で姿勢を制御していく。

 

「私に触れるな…ッ!!」

 

敵パイロットがコックピットから姿を現すと、今度は向こうが拳銃を引き抜き、躊躇う事なく私に向けて発砲して来た。然し、私には不思議と恐怖心というものは感じなかったのである。ニュータイプとしての感応波なのか、彼女から明確な殺意というものを感じない。それを示すように、弾丸は私を掠めながら、壁や床に当たっていく。

きっと彼女も私と同じく、あの不思議な光景を目の当たりにしたに違いない。今の迷いのある射撃でそれを感じ取ると、私はスラスターを再び噴射しながら彼女へと向かって進んでいった。

 

「寄るな…ッ、来るなと言っている…ッ!!」

 

2発、3発、4発…続け様に拳銃から弾丸が放たれるものの、私の身体に当たりはしない。仮に当たったとしても、私は止まる事はしないだろう。私は両手を広げながら、真剣な眼差しを向けて彼女へと近付いていく。

 

「くっ……!」

 

弾を撃ち尽くし、拳銃を投げ捨てた彼女は、キッと私を睨みながらコックピットから離れ、隔壁の奥へと逃げるように去って行ってしまう。

私は「待って、逃げないで!」と叫びながら、直ぐにその後を追いかけて行くが、その背には直ぐに追いついた。袋小路となっていて、逃げ場は無かったのだ。

 

「…連邦に捕まるくらいなら、自らここで死ぬ…ッ。」

 

「早まらないで、カトレア!」

 

私が彼女の名を叫んだ事で、身構えていた彼女はあからさまに驚いた表情を浮かべ、目を見開いて動揺を示していた。それもそうだろう、彼女は私に名前を教えた訳ではないのだから。

この動揺を見て、私は畳み掛けるように叫んでいく。

 

「カトレア、私と一緒に来て!あんたの過去は全部見たよ…見たから、放っておけないの…!あんたの苦しみは私も理解出来るから…、だから…私も一緒に証言する…!あんただけを悪者にはしない…!!」

 

「……………。」

 

彼女…カトレア・ペンタスは顔を俯かせ、目を伏せながら黙ってしまう。出来る事なら助けてやりたい、命を失わせたくないと、私の身勝手な願いをぶつけられ、戸惑っているのだろう。その気持ちはニュータイプでなくてもありありと感じ取れる。

そしてカトレアは、ゆっくりと顔を上げた。

 

「…シーナ……ランチェスター…。私は……」

 

やはり、彼女も私の名前を知っている。私の過去も全て見たのだろう、敵意や殺意というものは一切感じなくなっていた。そして、私に歩み寄ろうとしているのが見えると、こちらも彼女へと近付いていき……

 

 

「うっ…ぐ…ッ、あぁッ…!!あぁあああぁあああああああ────ッ!!!!」

 

 

突如としてカトレアが発狂したように叫び出し、自身の胸元を苦し気に握りながら蹲ってしまった。これには一瞬ギョッとしてしまいながら、直ぐに彼女の元に近付いていく。

 

「カトレアッ、カトレアッ!?しっかりして、カトレア…!」

 

私の呼びかけに答える余裕もなく、そして私を見る余裕もないようで、彼女は何かから身体を蝕まれているように絶叫し続けていく。その声は私のヘルメットにもハッキリと響いてきており、感情だけでなく感応波でも彼女の痛みが伝わって来ているので、私自身の胸の内も痛みが広がっていった。

この不愉快な、脳を掻き回されるような、胸を鷲掴みにされているような、そして死を目前に意識してしまうような痛み。何故こんな痛みを彼女に突如として襲い掛かって来たのか、私にはまだ分からない。だが、今すぐ彼女を助けなければいけない事だけは分かる。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ…!あッ、ぐ…、うぅ…ッ…!!あぁああああ…ッ!!ああぁあぁあああぁぁあああ────────────────。」

 

数分程苦しみ抜いた末に、再び彼女の意識は途絶えた。感応波も感じ取れなくなり、身体の力は抜けて、地面にその身を臥している。

 

「カトレア…、まだ生きてる…っ。」

 

私は直ぐにヘルメットを覗き込んだ。僅かだが、まだ彼女は自発的に呼吸しており、命を失った訳ではない事が分かる。なら、私が今やるべき事は一つだ。

彼女を連れて、無事にラー・ネイジュへ帰還する事。こんな所でお互い死ねないのである。今の私にとって、彼女は敵ではなく、保護すべき対象だと認識しているので、彼女を抱えながら前へと進み始めた。ボロボロになった愛機、ガンダムの元へと。

 

(死なせない…死なせるもんか…っ。)

 

 

 

 

ピースミーティアの核パルスエンジンに点火する数分前。周囲を守るイサベルのネオ・ジオン軍は、窮地に立たされていた。旗艦アグライアのブリッジ内は、戦況報告を行う声が絶えず飛び交っている。

 

「第2次防衛ライン、突破されました!以前ロンド・ベル艦隊、中央突破をかけて来ます!」

「戦力の半数を喪失!艦長…これ以上攻め込まれたら保ちません!」

「艦長、ここは撤退して立て直しを図るしか…っ!」

 

ブリッジクルー達の気持ちはよく分かる。艦長に必死に撤退を進言するには十分過ぎるほど、防衛網をズタズタにされているからだ。だが、ロンド・ベルも無傷ではなく、攻撃の手をなんとか削ぎ落としている状況であり、艦隊同士の消耗戦が繰り広げられていた。

 

「まだだ、閣下がお戻りになるまでは防衛ラインを死守だ…!最終防衛ラインに戦力を集中させろッ、リベリオ隊も呼び戻せ!」

 

通常であれば、戦力の半数を失った時点で撤退は免れない。全滅するリスクを犯してまでも、この場に留まるのは危険過ぎる。

だが、現にピースミーティアは存在し続けている。そして、ガンダムとキュベレイが交戦状態に入り、その決着が着くまでは持ち場を離れる訳にもいかない。イサベルの主導者を見捨てられる程、アグライアの艦長は忠義を忘れてはいないのだ。何としてもロンド・ベルを押し返し、カトレア・ペンタスの帰還を待つ覚悟を決めると、艦長の姿を見たクルー達もまた覚悟を決め、各々通信を飛ばしていく。

 

「アグライアより、モビルスーツ隊各機へ!最終防衛ラインまで後退せよ!繰り返す…、」

「最終防衛ラインは死守だ、リベリオ隊も加われ!」

「ロンド・ベル艦隊を包囲し撃滅せよ!」

 

戦況はどちらに転ぶか分からない。だが、全員が必死の覚悟で戦闘を繰り広げている。ガンダムの艦隊奇襲による戦力低下が今になって響いているが、何としても押し返そうとしている最中に、それは伝えられた。

 

「か、艦長…!至急伝です!」

 

それは、1人の通信オペレーターから告げられた。こんな戦闘状況下において通信を送ってくるなど、何処の誰だと怒りを滲ませながら一瞬考えてしまうものの、艦長は務めて冷静に「すぐに読み上げろっ」と伝えていく。オペレーターは小さく頷くと、「読み上げます!」と声を張りながら、急遽送られてきた通信内容を読み上げ始めた。

 

「発、イサベルネオ・ジオン軍参謀長ギムレット・クルス大佐。宛、旗艦アグライア艦長殿。戦況の変化により、連邦政府代表団との交渉は決裂…。直ちに全艦隊を戦闘宙域より撤退させ、ピースミーティアの地球落下作戦を実行せよ。尚、カトレア・ペンタス閣下より、不測の事態が起きた際の決定権は譲渡されている為、閣下への確認は不要である。……以上です!」

 

「なん…だと……っ。」

 

この命令には、艦長だけでなくブリッジクルーの全員が驚愕の表情を浮かべていた。イサベルのNo.2であるギムレット大佐からの指示と合わせて、連邦政府との交渉が決裂したという内容に驚いているのだ。

本来であれば、ピースミーティアの威嚇を以て地球の主導権を譲渡される筈だったものが、決裂となれば実力行使で奪い取るしかない。それはつまり、地球への隕石落としの再来だ。だが、閣下自身はそれを心から望まれていない事を知る艦長は、複雑な思いに駆られる。果たして本当にピースミーティアをこのまま落とすべきなのか、一瞬判断に迷いが生じてしまう。

 

「艦長…!指示を!」

 

下士官からの声にハッ、と意識を戻すと、艦長は迷いを振り切って考えを纏めていく。閣下がガンダムに負ける筈はない、安全宙域にて閣下の帰りを待つしかない、上官である参謀長の命令には従わなければならない…と。

 

「っ……、艦隊反転…!ピースミーティアの核パルスエンジンに点火し、戦闘宙域より離脱するッ。点火後、信号弾を上げよッ!」

 

命令を下したと同時に下士官が強く頷くと、遠隔操作のスイッチが押され、程なくしてピースミーティア後部に設置された核ノズルに火が灯り、巨大な衛星はその身を地球に向けて進ませ始めていく。地球は目と鼻の先だ、ロンド・ベルの抵抗次第ではこのまま地球に落ちるだろう。

ピースミーティアを防衛していた部隊を撤退させる為、アグライアから全部隊撤退を告げる信号弾が放たれた。通信を介して指示を出すよりも、強力な光量を放つ信号弾の方が、隅々まで瞬時に指示を伝達する事が出来る。そして、信号弾を見つめるのはネオ・ジオンだけではない。

 

 

 

「艦長…、信号弾確認!ネオ・ジオン軍が撤退していきます!」

 

中央突破を図るロンド・ベル艦隊も、アグライアが打ち上げた信号弾の光を見つめていた。ラー・ネイジュのブリッジ内では、通信オペレーターのエヴァ中尉が声を上げ、アンダーソン艦長が何度も頷いている。

 

「よし…、このまま敵衛星を破壊するっ。ロビンソンは急ぎエコーズを回収、ネルソンは負傷兵を収容し、この宙域より離脱せよ!動けるモビルスーツは、破砕後の衛星の残骸を可能な限り破壊するよう通達!」

 

アンダーソン艦長の命令は直ぐに各員に伝達され、中破したクラップ級ネルソンを先に離脱させる決断をした。衛星内部は既にエコーズの手によって爆薬が仕掛けられているので、後は時間が来れば内部から爆発し、衛星は幾つもの破片に粉砕される筈だ。そして、衛星が地球の引力圏に到達する前に、核ノズルを破壊して勢いを殺す必要がある。

ここから先は更に時間との勝負となる。問題なのは…、

 

「…ガンダムの機影は捉えているかね?」

 

アンダーソン艦長の問いかけに対して、通信オペレーターのエヴァ少尉は、複雑な表情を浮かべながら首を横に振っている。

 

「いえ…、キュベレイと交戦後に衛星内へと侵入してから、機影は確認されていません…っ。」

 

ルミナスガンダムの力が一層必要となる局面において、シーナ少尉の姿が見えない事は、一抹の不安を誰もが覚えてしまう。だが、今はやれる事をやるしかない。ガンダムの無事を祈りながら、ラー・ネイジュはピースミーティアの最後部である核ノズルへ向けて、機関出力を最大にしていった。

 

「主砲発射準備、目標は敵衛星の核ノズル。ミサイルも全弾撃ち尽くしても構わない、全て叩き込む!」

 

アンダーソン艦長の命令に、緊張感を持ちながらしっかりと頷いたのは、砲術長のアレン少佐だ。コンソールパネル上で指先を素早く動かし、ラー・ネイジュの甲板前方と後方の全主砲が左舷へと向けられ、ピースミーティアと相対速度を合わせながら照準が合わせられていく。

 

「主砲発射準備完了、ミサイルも全砲門開きました!」

 

アレン少佐が声を張り上げると、アンダーソン艦長が右手を上げ、そして素早く振り下ろしながら命令を下していった。

 

「全砲門、撃てッ!」

 

ラー・ネイジュの艦首から複数の対艦ミサイルが発射され、狙い澄ましたように核ノズルの連結シャフト目掛けて突き進んでいき、見事に命中して次々に大きな爆発を起こしていく。続けて4基8門のメガ粒子砲が一斉射されていくと、シャフトの先にある核ノズル本体へと直撃していき、4基あるノズルの内の1つが巨大な爆発を起こして粉々に砕け散っていった。これで残る核ノズルは3基となり、地球の引力圏に突入する前に全基破壊出来れば、地球への被害を防ぐ事も現実味を帯びてくる。

 

「核ノズルの破壊を確認。目標、未だ健在!」

 

「攻撃の手を緩めるな!次弾ミサイル装填、主砲の照準も修正しろ!ノズルはあと3基だ、急げ!」

 

副長のエリス中佐の命令は、アンダーソン艦長よりも鋭く、ブリッジ内に隈なく響き渡る。攻撃の指揮は彼女に任せる事にした艦長は、通信オペレーターのエヴァ少尉へと視線を向け、ある事を問いかけた。

 

「エヴァ少尉、爆破予定時刻まであとどの位だ?」

 

エヴァ少尉は少し慌てた様子でコンソールパネルを操作し、ブリッジ正面の大型スクリーン端にカウントダウンのタイマーを表示してくれた。これで全員が確認出来るようになり、皆の気持ちが更に引き締まり、独特の緊張感がブリッジ内に漂う。

 

「爆破予定まで、残り400秒ですっ!」

 

400という数字が、ブリッジ正面のモニター脇に表示されている。それは1秒ずつ数を減らしていき、刻一刻と爆破予定時刻へと近付いていく。

アンダーソン艦長が気にしているのは、衛星内へと突入したガンダムの行方…シーナ少尉の安否である。この質量の衛星を破砕する程の火薬量を炸裂させようと言うのだ、いくらガンダムと言えど爆発に巻き込まれれば木っ端微塵になってしまうだろう。

 

「まだか…、シーナ少尉…。」

 

尚も砲撃は続行しており、次々に対艦ミサイルが発射されてはノズルの連結シャフトに命中していき、主砲のメガ粒子砲がノズルにダメージを与えていく。アンダーソン艦長の呟きは、熾烈な攻撃を加えている最中、誰の耳にも入る事はない。だが、艦長と同じか…それ以上の気持ちを抱く者が2人居た。

 

(シーナ……お願い、帰って来て……!)

 

1人は通信オペレーターのエヴァ・ヒギンズ少尉。絶えず戦況の移り変わりや通信を報告しながらも、心中は穏やかではなかった。今すぐにでもブリッジを飛び出して彼女を迎えに行きたい、助けに行きたいという気持ちを抑えながら、オペレーター席に座り続けている。

 

 

対して、もう1人はモビルスーツデッキに居た。

 

「整備長、準備は出来てるかっ!?」

 

「ちょっと待て隊長!今ビームライフルの調整が終わるとこだ!」

 

「早くしてくれ、頼むっ!」

 

ラー・ネイジュのモビルスーツ部隊を指揮する、ラプター1ことローマン隊長だ。中破したプロトタイプ・リゼルを修理に回し、現在は予備機のジェガンの発進準備に取り掛かっている最中である。

ローマン隊長は素早くジェガンのコックピットに乗り込み、メインジェネレーターを起動させると、全天周囲モニターのスイッチを入れて格納庫内の映像をモニターに映し出していく。だが、整備長からはまだカタパルトデッキへ移動させる許可が出ず、武装の調整が済んでいない事を告げられると、焦りからつい表情を歪めてしまう。

 

「くそ…、新入りが頑張ってるって言うのに…!」

 

焦りの原因は、シーナ・ランチェスターだ。いくら火力と機動力が向上した新装備のガンダムとは言え、単騎で艦隊戦を行った上にキュベレイを相手にするのは、骨が折れる事だろう。早く出撃して援護に向かいたい所ではあるが、敵衛星の爆破予定時刻も迫ってきている。モビルスーツ部隊を率いる立場としては、衛星の破壊に注力しなければならず、様々な状況と感情の板挟みとなりながら、コックピットの中でつい愚痴を溢してしまっていた。

 

『よし、完了だ!隊長、いつでも良いぞ!』

 

ビームライフルの調整が完了したのは、衛星の爆破予定時刻の2分前だった。整備長やメカニックマン達を見送る形で、カタパルトに接続された機体がカタパルトデッキへと移動していき、敵衛星を正面に見据える形で発進準備を完了させていく。

 

「生きて帰って来いよ…新入り…ッ。ラプター1、出るぞ!」

 

ジェガンを屈ませ、操縦桿を目一杯押し込んでいくと、カタパルトが打ち出されて機体を勢いよく射出していった。艦から発艦すると同時に、スラスターを全開にさせ、ローマン隊長は一直線にピースミーティアへ向けて飛翔していく。

やはりリゼルに比べると、ジェガンの動きは鋭さや軽快さと言うものは劣ると感じるものの、パイロットの操作に忠実に追従してくる安心感は高い。流石は正式採用された量産型モビルスーツなだけはあると思いながら、核ノズルへ攻撃を加えていく母艦の砲撃を横目に、既に展開しているモビルスーツ隊へと合流していった。

 

「いいか、あと1分で衛星はバラバラになるッ。デカい岩は艦に任せて、俺達は俺達に撃ち落とせる破片を処理するぞ!」

 

プロトタイプ・リゼルのラプター隊、ジェガンのブレイズ隊、双方のパイロット達から『了解!』と返事が返ってくると、各機はビームライフルやシールドを構え、衛星の行方を固唾を飲んで見守っていた。

そして、カウントダウンは終わりを迎える。

 

『3…2…1…、ゼロ!』

 

ミノフスキー粒子が薄くなった事で聞こえてきた、ブリッジからの通信。エヴァ少尉の声をパイロット達が聞いて間も無く、ピースミーティアの各所から爆発の閃光が迸り始めた。エコーズ部隊が仕掛けた爆薬は相当な火薬量だったようで、数度の爆発を経て衛星が真っ二つに割れ始めていく。

当然、細かな破片も凄まじい勢いで飛散し、周囲に展開しているモビルスーツの装甲やシールド表面を叩いてくる。すると、細かな破片の次に質量のある岩があちこちに飛び出していき、次々と地球に向けて進んでいく。ここからはモビルスーツの出番だ。

 

「各機、迎撃開始ッ!」

 

ローマン隊長の命令を受けて、周囲に展開しているモビルスーツ達は武器の引き金を引き、ビームの閃光やミサイルの軌跡が宙域に飛び交っていく。複数のビーム攻撃が残骸の岩に直撃していくと、更に細かな破片に爆散していき、大気圏に突入した際に燃え尽きるサイズにまで砕かれていった。

更に巨大な質量を持つ破片は、ラー・ネイジュの主砲で撃ち落としていき、ミサイルや機銃の掃射で破砕作業を進めていく。離れた場所では、エコーズ部隊を回収したロビンソンも破砕作業に加わり、巨大な破片に向けて主砲やミサイルでの攻撃を行っていた。その最中、ローマン隊長の操るジェガンだけ、次々に破壊されていく衛星の残骸の只中へ突入していく。

 

『隊長、危険ですよっ!?』

 

「うるせぇッ、いいから破片を撃ち落とし続けろ!」

 

同じラプター隊の隊員から制止の言葉をかけられるものの、ローマン隊長は止まる事は無く、スラスターを全開にしながらデブリと化した残骸の中を進んでいく。攻撃ではなく、ジェガンの索敵センサーを最大限作動させながら、ある熱源反応と通信波を探していた。

 

「何処だ…ガンダム…っ。爆発に巻き込まれたなんて言うんじゃねーぞ…!」

 

血眼になって探しているのは、ガンダムである。必ず何処かに存在していると信じて、コックピット内のモニターのあちこちに目を移していき、索敵を続けていく。然し、ジェガンのセンサーが映し出すものは、爆発によって熱を持った衛星の残骸ばかり。諦める訳にはいかないものの、1秒毎に焦りやフラストレーションが溜まり始めてしまう。

 

「何処に居んだよ、新入り…ッ!」

 

思わずジェガンのコンソールパネルを叩いてしまい、悔しさに表情を歪ませてしまうと、一瞬だけ目を閉じてしまう。まだ希望を捨ててはいけない気持ちと、諦めて破片の攻撃に戻らなければいけないという気持ちの鬩ぎ合いが、隊長の心を締め付けていく。

……そして、気付けば十数分が経過していた。結果的にローマン隊長はその場から動かず、索敵を続けていたのだった。地球に被害を及ぼす恐れのある破片達は余す事なく撃ち落とし、ロンド・ベル艦隊の攻撃は止まっている。不気味な程の静寂が宙域を支配しながら、ローマン隊長は虚しさを滲ませ、再びコンソールパネルを殴り付けてしまう。

 

「ちくしょう……、くそったれ……ッ!お前まで死んじまうなんて……ッ!」

 

その声は、コンソールパネルを殴りつけた事で通信スイッチがオンとなり、ラー・ネイジュのブリッジにも繋がっていた。ローマン隊長の悔しさを滲ませた悲痛な叫びは、エヴァ・ヒギンズの胸を押し潰していく。

 

(そんな……、シーナ……ッ…。)

 

彼女だけでなく、艦長や副長達も、居た堪れない悲痛な面持ちで言葉を失っていた。

 

涙が溢れそうになる。

 

叫んでしまいたくなる。

 

エヴァの肩は僅かに震え、指先も震えており、悲しみだけが彼女の思考を染め上げていく。胸を突き上げる濁流のような感情の衝動に駆られている、そんな時だった。彼女の耳に、ノイズ混じりの酷く聞き取り辛い音声が届いたのは。

 

『───────、───だ……、─────』

 

最初は何か分からず、聞き間違いの可能性も考えたものの、ノイズは徐々にクリアになっていき、音声も聞き取れるようになってきた。

 

 

『ラー……、こちら……、応答…───。ラー・ネイジュ、こちらシーナ・ランチェスター……!』

 

 

「ッ──!か、艦長…!シーナが…少尉が、生きてます…!」

 

涙が止まらなかった。堰き止めていた涙が溢れ出してしまいながらも、エヴァは自分の任務を全うするように、艦長へ報告をしていく。通信波もハッキリと探知しており、間違いなくルミナスガンダムが生き残っている事を示していた。

 

「直ぐに発信源を特定し、モビルスーツ隊にも状況報せっ。急ぎ少尉を回収せよ…!」

 

アンダーソン艦長の表情も、緊張感の中に安堵を示すものが浮かんでいる。仲間が1人でも多く生還してくれる事は、指揮官としてこの上ない喜びなのだから。

 

 

 

 

 

ピースミーティアの夥しい残骸の只中に、頭部と胴体、脚部の一部だけが残っている機体が漂っていた。正確には、ある方向に向けて生き残っているスラスターを噴射しながら移動をしている其れは、辛うじてメインジェネレーターが起動してくれたお陰で、こうしてデブリの中を進めているのだ。

 

「ラー・ネイジュ、こちらシーナ・ランチェスター…応答して…!こちらガンダム…!」

 

その機体は、ルミナスガンダム。キュベレイとの死闘を終えた後に、衛星を破壊する爆発に巻き込まれながらも、辛くも残骸からの脱出に成功していたのだ。その代償に、武装の全てを失い、頭部のセンサー機能の大半が潰え、両腕と左脚部を失い、機体の姿勢制御スラスターが数基だけ生き残っている状態になっており、正に満身創痍と言う表現が正しい。コックピットの中では、意識を失ったままのカトレア・ペンタスを抱きながら、シーナ・ランチェスターは操縦桿を握り締め、太陽と地球、星座の位置関係を確認しながら、ゆっくりとガンダムを移動させていた。その間、通じているかどうかも怪しい通信回線を開き続け、必死に声を張り上げていく。

 

「誰か、聞こえてないの…ッ!こちらガンダム…!」

 

救難信号は出し続けているので、その内何処かに拾われるだろう。だが、叫ばずにはいられなかった。自分達はまだ生きているのだと、この宇宙に示すように声を出し続けていった。

その答えは、程なくして目の前に現れる。

 

「……あれは…。」

 

太陽の光を背に、1機のモビルスーツがこちらへと接近して来る。逆光でハッキリと視認は出来ないものの、そのシルエットはとても見慣れたものであった。

 

『新入り、迎えに来たぞ!』

 

「…ローマン隊長…!」

 

こちらに接近して来たのはジェガン、声の主はモビルスーツ部隊の指揮を務めるローマン隊長だった。何故ジェガンに乗っているのか、その疑問はあるものの、今はそんな事はどうだっていい。

まだ私は生きている…生きているんだ。

 

「……行こう、カトレア。」

 

私は通信を切り、意識を失っている彼女に向けて呟いていく。その眼が開くまで、彼女の側から離れないと固く決意して。

程なくしてガンダムは、ジェガンに牽引される形でラー・ネイジュへ帰還するのだった。




【名前】カトレア・ペンタス

【年齢】24歳

【性格】
寡黙で無口。あまり他人と積極的に関わろうとはせず、誰にも心を開く事はしない秘密主義。一方では、他者を常に下に見ている差別的な思考を巡らせたり、口を開けば侮辱や強い言葉を用いる等、自らの立場を守りながら弱味を見せない姿勢を取る傾向にある。

【容姿】
身長166cm、体重47kg、細身で華奢な印象を持たれる。淡い桃色のミディアムボブヘアーをしており、青い眼が特徴的。お洒落というものに拘りはないものの、比較的フォーマルな格好を好んでいる。
普段はイサベルの指導者として軍服を見に纏っており、普段着を着用して人前に出る事は極めて稀。

【備考】
U.C.0070年生まれ、サイド2『アイランド・イフィッシュ』出身。当時はサイド3の学園コロニーにて寮生活を送りながら留学しており、ブリティッシュ作戦の被害から免れたが、両親はジオン軍の毒ガスにより抹殺される。当時は情報操作によって両親の死を知る事は無かったものの、後述するニュータイプ研究所において強化訓練を受けた事で、ジオンの本当の歴史をニュータイプ能力によって知る事となる。
ギレン・ザビにも匹敵すると言われる程の知能の高さを生まれながら持っており、留学先の学校では飛び級をしてモビルスーツ工学を専攻していた事から、周囲からは”神童”と呼ばれていた。1年戦争が勃発すると、学徒動員に際してジオン軍に動員され、高い知能を買われて月面都市グラナダにて新型モビルスーツ開発に携わる事になる。
ジオンの敗北後は小惑星アクシズへと逃れ、数年過ごした後に同じアステロイドベルトに属する小惑星イサベルに移住し、イサベル防衛と軍備の為にモビルスーツ開発に再び携わる事となった。
ハマーン・カーン率いるアクシズのネオ・ジオン軍が壊滅し、ハマーン本人も死亡した翌年には、アクシズから逃れた軍人や科学者達がイサベル内で極秘のプロジェクトを立ち上げ、ニュータイプ研究所を設立して強化人間を生み出し始める。彼女は研究所の62人目の被験体であり、研究所内の呼び名は『H.K.62』。当然ながら、カトレア・ペンタスという名前はコードネームで彼女本来の名前ではない。
高い知能とモビルスーツの高度な操縦技術、ニュータイプ適応値の高さ、そしてハマーン・カーンに似通っている容姿も相まって、H.K.計画の完全な完成品として歳月をかけながら極限まで強化を施され、その過程で両親の死の真相やジオンの隠蔽してきた歴史、そして自身のこれまでの記憶を失っている。人工のニュータイプとして完成して以降、政治的な理由を背景にイサベルの指導者に祭り上げられていく。
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