転生TSアリスの魔法譚 作:不審者γ
前作は残すつもりなので、見たければあらすじから…
適当に睡眠をとり、適当に起き、適当に食事をしてそれなりの成績をとって家に帰る。そんな感じの高校生活をやってた。
まあ生きてることを深く考えることもなく普通に生きてて、将来のこととか気にし始める。これからどうなるのかなー、とか。
まさか…ね。
いつも通りの登校中駅で自転車に乗り換え、建設途中の建物の前を通った時、
「危ない!」
「えっ」
咄嗟で分からなかったけど、鉄骨が落ちてきたようだった。
人間、咄嗟のときは回避じゃなくて停止に追い込まれるんだな、ってその時初めて知った。
「!」
ガラガラガラガァン…
走馬灯なんてなかった。身動きができず、鉄骨の下敷きにされる。
息が、吐き出された息が、吸い込めない。
「まずい!どけるぞ!」
声は聞こえる。ただ、力が入らない。足の感覚もない。ないくせに死ぬほど痛い。多分折れたかな…あ、意識が…
☆
「………?」
とかさっきまで朦朧としてたはずなんですよね。ええ。
…目は覚めたよ、目は。
………ここどこぉ?
家にも病院にもいない。森か林か山にいる。どこだここまじで。
あ、それと今気づいたけどどこにも痛みがないや。鉄骨だよ?鉄骨。鉄骨に挟まれて無傷なわけが…いや、無傷ではなかったな。がっつり息吸えなくなってたし足やられてたし。とか考えてると視界の端にふと、薄黄色の何かが見えた。
「!!?」
…籠だった。
自分の手を見る。小さい。
自分の足を見ようとする。見れない。
体…には多分タオルみたいなのが巻かれてる。
………赤ん坊になってるんだけど。
いやちょっと待って、整理したい。
…ん?…んん?
「…えぁぅ…?」
はい、言葉喋れないです。言葉にならない言葉しか出なかった。
もしかして転生とやらかな…?いや、そうならまず、記憶は消してほしかったんだけど。というか落ちてくる鉄骨に押しつぶされて転生って割とテンプレかな…
…いや、それよりこの状況不味くない?
周りに人なし、記憶だけある赤ん坊がたったの一人で森の中。
詰みじゃん。
と、
「あら?あなた、あれ……」
「篭か?…赤ん坊だ!」
「え…こんな小さな子を…」
30代後半位であろう男性と30前後辺りであろう女性…おそらく夫婦であろう二人が近付いてきた。
よっしゃ、人だ!
…いや人だ!ってなんだ。
「ひどいな…」
「…ねえ、家で育ててあげられないかしら?ルオリーとアベルも喜ぶと思うんだけど…」
「…元からそうするつもりだよ。こんなところに赤ん坊が一人でいたら死んでしまう。…ここに来ていて本当に良かったよ」
と、男の方の人に持ち上げられる。うーわ、世界が広く見える。なんだこれ。
まあ、とりあえず助けられた…ってことでいいのかな?
とか考えてるうちに抱えられて山?っぽいところから抜けて、家に連れて帰られてた。案外普通の家だった。ファンタジーとかの舞台って中世感が強かったりするけど、ここはそうでもなさそう。
…というかこれ法律的に誘拐になったりしないのかな?とか考えてる間にも二人の間で話がトントン拍子に進んでいっていた。
いや、当人全然話聞いてなかったんだけど。
「この子の名前、どうする?」
「そうだな…アリス。この子はアリス・セナールにしよう」
「アリス…いいわね。お人形みたいな見た目にも合ってるわ」
え。
…ええ?
僕一応男なんですが。アリスって言われたら、まあ100人いれば100人…もしかしたら一人くらいひねくれ者がいるかもしれないから99人にしとこ。まあほとんどの人が女の子を思い浮かべるよね…?
それに、どこの国の人間だろ。不思議の国かな。それとも幻想の少女の国?廃墟の国…は色々不味そうかも。そこの所の著作権はあんまりよく分かってない。
というか多分どれでもないと思うからそこはいいや。
しかし名前はなぁ…。どうにかしてくれないかなぁと思っても、喋れないし。どうしようもないや、と諦めた。結局名前はアリスになった。…慣れるかな…
「…にしても、全然泣かないわね、アリス」
「ああ…何か病気とかじゃないといいけど…」
どうやら両親となる二人は、僕が泣かないことを心配してくれてるらしい。確かに、赤ん坊は泣くもの…だけど、そんな簡単に泣くのもできないんだよね。不便なのか便利なのか…いや、不便だなこれ。
というか、泣かない子とかなら手のかからない子、みたいにされそうなものだけど、良い人達みたいだなぁ。
「あー!赤ちゃん!お母さん、この子だあれ?」
「アベルとルオリーの
ふと聞こえてきた声に、答える女の人。
…うん、妹って言ったね。薄々感づいてはいたけど、これは…
「分かった!私はアベル。よろしくね、アリス!」
「……うぁぅぇぇ…」
はい、TSですありがとうございました。
もうこんなの
─☆─5年後─☆─
セナール家に引き取られて5年経った。
あ、今更だけどセナール家っていうらしいね。
容姿も確認したけど、やっぱり女の子になってたみたい。
中々に顔は整ってて、両親から美人だ美人だと言われてちょっとくすぐったかった。正直なところ周りの顔面偏差値も高いからそう見るとそこまででもな感じはするけど。
ただ、髪が白髪でその中に紫が入っていたり、目が赤がかった茶色…というかほぼ赤だったりで、もし羽と尻尾があれば悪魔にでも間違われていたかもしれないとは思う。あ、アルビノじゃあなかったよ、お日さまの下に出ても問題なかったし。
まあそんなこんなもありつつ、兄さんのルオリーと姉さんのアベルも仲良くしてくれたお陰で問題なく成長していった。
声が高かったり、身長が低かったりで違和感を覚えることは結構あったけど、割と早く順応できたんだよね。まあ、元々なら全力で拒否るようなワンピースを着る時にもあんまり抵抗を感じなかったし、女の子らしいしゃべり方をする事に対して苦痛に感じたりする事も無かったけど…。何だろ、女装欲求でもあったのかな。
まあ苦痛を感じなかっただけで、かなりやりにくかったんだけど。まあ、もうそろそろ中性的なしゃべり方に変えようかなーって思ってたりとか。
苦痛じゃなくても未だに違和感が…ね。
あー、あと。前世の記憶がある、とはいったけど、前世の自分の名前とか交友関係、家族とかの事はなんでか思い出せないんだよね。一般教養とされるような事は覚えてるんだけど…。
よくある記憶障害的なあれっぽい感じかな。
「じゃあ、今日は魔法を見せよう。」
そしてもう一つ。
この世界じゃ、科学より魔法っていうのが主流らしくて、魔物とかもいるらしい。
魔法の種類は魔法使いや魔物と同じく総魔力量に応じてランク付けされてて、ランク1~10まであるんだって。
5歳になるとランクの測定があるらしくて、僕ももうちょっとしたらランクの測定がある。
兄さんも姉さんも測定は終わってて、姉さんがランク3、兄さんはランク4。父さんのガーテはランク5魔法使いらしくて、ランク5は普通の人の中では高い部類らしい。大体平均的には4あたりらしいけど…なんで平均を5にしなかったんだろ。
ちなみに母さんのシャルが地味にランク6だったりする。魔法使いのランクを越える魔法は使えないらしいけど、ランク8以上の魔法使いなんかほとんどいないらしくて、途中でランクが上がることもそうそうない上にランク10とかになると存在してないからランク10魔法とかは机上の空論って言われてるんだって。存在はしてたんでしょ…じゃないと魔法も作れないだろうし。
あ、でも科学もある程度発展してるらしいよ。まあここはかなり田舎の方であんまりそういうのが無いけど、首都とかに行ったら普通に発展してるんだって。聞いた限りだと現代日本とそう変わらないくらいかな?
「じゃあ、ランク2から見せよう。」
で、今日はその魔法を見せてもらうことになってる。
父さんは火属性魔法使いらしくて、それ以外の属性の魔法は使えない。あ、無属性魔法は除くってさ。なんでなんだろ。
と、父さんは手のひらに薄い赤の魔法陣を出して、頭の上に手を上げて…
「火2魔法、ファイアボール!」
何かを投げるように、その手を振り下ろしてそう言うと、そこから小さめの火球が投げられたように飛んでいって…爆発音を立てて木をへし折った。
「…すごい…!…こんな感じかな…?」
いや、まあできるわけないんだけど…まあ、もしかしたらできるかもしれないじゃん?腕に力を込めて、そのまま振ってみる…ん?なんか手の方が熱い…
ふと、視界の端に赤橙が見えた。
同時に父さんの炎弾とは比べ物にならない火球が、これまた比べ物にならない速度で飛び出して…辺りの岩、木、草を焼き払った。一瞬音が消えて、数瞬後に爆発音が響いた。
「………え、」
「………え!?」
「…え、えぇ!?」
父さんも母さんも驚いてたけど…多分、誰よりも一番僕が驚いてたと思う。
だって考えてみてよ!?魔法なんか知らないし感覚で腕振っただけだよ!?なんとかファイアボールみたいな宣告もしてないし、魔法陣すら出してないのにあんな魔法が出てくるとか思わないじゃん!
まあそんな感じで思考だけぐるぐる回って腕を下ろした状態でフリーズしてた。多分今ボクのおめめぐるぐるだと思う。
「…あれ、ランク5位の魔法じゃなかった…?」
ポツリと母さんが呟いたら、はっ、と父さんが我に返ったみたいに詰め寄ってきた。
「…すごい…アリス!すごいぞ!」
「え、えぇ!?」
「スッゲー!アリス!どうやったの!?」
と、どうやら衝撃音で気付いたらしいお兄ちゃんも出てきた。お姉ちゃんは…あ、学校か。兄ちゃんは卒業してるらしくて、家で仕事のお手伝いしてる。
「え、見よう見まねでやってみたら…あんな感じに…」
「見よう見まねでランク5の魔法を…?すごい…!」
とまあ、こんな感じでまさかの才能が開花したわけ。元々なんの魔法も使えない人間だったんだけど…あれ、もしかして僕かなりヤバかったり…する?
元の人の正確が正確だったので、顔や行動に出さないようにしてるだけで内心割と暴れてたりします。