転生TSアリスの魔法譚   作:不審者γ

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二週間休んでたので取り返すために連投です。
が、元より多分鬱感が増してます。
あと残酷な描写タグがめっちゃ仕事してます。苦手な方はご注意を。


No.10:崩壊

今日も今日とていつも通り学校に行き、帰っていた。

バートは少し用事があるらしく、待っていようかとも思ったが「長くなりそうだから帰ってて」との事。

まあ家の用事もあるしね、と思って帰っていた。

そんな時だった。

 

「きゃああああああ!」

 

「!!?」

突然、どこからともなく悲鳴が上がった。

焦、ったぁ…何だろ?

すごい悲鳴だった…もしかしたら、なにか事件が…!?

そう思って走る。幸い…じゃないけど、方向は家の、方……

 

あれ、

 

何で、家の、周りに、人だかり、が…?

 

「っ…!」

そんなわけない。

集まっている人をかき分けて前に出て…

目に写ったのは、紅くなって倒れた、兄さんと父さん、母さんだった。

視野が狭まって、頭がカッと熱くなったかと思えば急速に冷めていく。

 

…なんで、あかいんだろ?

 

もう一人、人がいる。

 

…あのひとは、だれだろ?

 

手に、鋭い何かが握られている。

 

…あれは、なんだろ?

 

やけに頭の中に靄がかかったように感じた。

遠くで、誰かが叫んでいた。

3人が、近づいてくる。

違う、ボクが、近づいてる?

感覚が、薄くなる。

喉が、痛い。

 

叫んでいたのは、ボクだった。

 

「ああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

男が、そのままニタ、と笑って、こっちに向かってきた。

それどころじゃ、なかった。

 

頭の中に大量の疑問が湧いてくる。

どうして?

どうして三人共がうごかない?

どうして?

どうして3人とも、胸に穴が空いている?

どうして?

どうして、こんなことになっている?

 

「─?──、──。」

思考が停止する、その前に、頭の中が一気に晴れる。

 

「あ?」

こいつは敵だと、頭の中で告げられる。

 

視界が赤く揺れる。

胸の中からドロリと、ナニカが溢れ出る。

頭の中に、魔法陣と名前が浮かび上がり、ノーモーションで掌に展開される。口から、宣告が漏れ出る。

 

「…毒7魔法、フッカ」

同時に、男がその場に崩れ落ちるように倒れる。足が、腐りかけている。

きたない、なぁ。

 

 

 

こいつは殺してもいいやつかな?

───どうだろうね。

 

 

 

「…毒8魔法、ニコール」

倒れ伏したまま、男がビクビクと痙攣を始めた。白目をむいている。若干、恍惚とした表情にも見える。

きもちがわるい、なぁ。

 

 

 

こいつは殺すべきやつかな?

───どうだろうね。

 

 

 

「毒9魔法、オロチ」

私に纏わりつくように、緑色の霧でできた大きな大蛇が現れて、男の手足を食いちぎる。

それでも尚、男は恍惚としたままうわ言をつぶやいている。

…きぶんがいい、なぁ?

 

 

 

殺す?

───さぁ?

 

 

 

「毒、10、魔法…」

男に向けた右手に魔力が収束する。

何だろうな。あんまり良くわかんないけど、私が何も感じないなら死んでも変わらないか。

 

右腕を大きく掲げて…

 

「……?」

うごかない。

ふしぎにおもって、右うでをみる。手が、そえられてる。

 

「アリ、ス…!」

みたこと、ある。

 

…お姉、ちゃん…?

 

「アリス、駄目だよ…落ち着いて…大丈夫だから、私は、ここにいるから…!アリスは…アリスのままで…私が守る。だから………!」

ちからが、抜けていく。魔法陣は霧散して、無くなった。

 

 

 

───またね。

…うん、?

 

 

 

「…う、ん?」

待って?

待って、本当に待って。何今の。

 

「……ありがとう、アリス」

 

「……え?」

整理がつかないままに、お姉ちゃんの声が耳に届く。同時に、思考がまた戻る。

あぁそうだ、アイツだ。アイツのせいだ。

ただ、腕が動かない。魔力を、魔法陣を構築する気になれない。そこまで力が強いわけでもないはずのお姉ちゃんの手は、何故か退けれなかった。

 

「生きててくれて…私一人じゃ…多分生きていけない…」

 

「…お姉ちゃん……」

その後やっと警察が到着。

お父さんとお母さん、お兄ちゃんは、亡くなった。

男は元魔導師だった事が分かった。

 

 

本人は、自分はやりたくてやったんじゃないと、そう言ってたらしい。

 

 

 

 

そして、ボクとお姉ちゃんは、あの三日後に施設に引き取られることになった。

 

親戚に引き取られる話も出たが、既に子供がいてもう二人もは見れない人とか、ボク達の事じゃなく、遺産の事しか見ていない人しかいなかった(流石に前者の方が多かった。とはいっても7:3程。)から、施設の方に行くことになった。

 

割と資産多かったんだね、うち…まあ家に書斎がある時点である程度察してはいたけど。

少し前に家で親戚が数人集まって話し合っていて、その話がヒートアップしていったのか一部苛立ちの混じった怒鳴り声のようなものになっていた。多分それが誰が引き取るかの話し合いだったんだろう。

僕個人的には別に「あーやってんな」位のものだったんだけど体が勝手に反応していて、多分体の…元のアリスが怯えてるんだなと思った。大丈夫だよ、という意味も込めて耳を塞いでるとお姉ちゃんに勘違いされて泣かれた。ごめんって…

 

で。施設と言っても、そこにいるのは学校に行けなくなった子、捨てられてしまった子、親がいなくなってしまった子達が集まる孤児院的な所だった。

 

 

ー施設ー

「はい、じゃあ、今日からここのお友達になります!アリス・セナールちゃんと、アベル・セナールさんです!仲良くしてあげてね!」

 

「「「はーい!」」」

 

「よろしくねー!」

「よろしくお願いします」

それにしても相変わらず気分が晴れず、頭の中にずっと靄がかかったままみたいになってる。

…このままなのは良くないことは分かるんだけど…ダメダメ、しっかりしなきゃ。

精神年齢はもうすっかり二十歳を過ぎてるはずなんだから、こんな事でしょげてるわけに行かないでしょ。

 

 

 

 

《三日後:バートside》

おかしい。

ちょっと前からアリスが学校に来てない。

クラス替えがあっても、クラスが変わらなかったから、またおんなじクラスだね!って言ってたけど…三日位前の帰りに会ったときから、アリスの姿すら見ていない。どうしたんだろ…担任の先生に聞いてみてもが、「あー、今はちょっと訳あってお休み中でねぇ…」しか言われなかったし…。絶対何かあったんだろうと思うけど、パパからも「今アリスちゃん家は忙しいみたいだから行っちゃダメだよ」って言われてるし…。

そんなとき、一つ、会話が聞こえてきた。

 

「ねえねえ、知ってる?」

「んー?何を?」

「C組のアリスって子、人殺しかけて謹慎食らったらしいよ?」

「え、そうなの!?アリスってあの…超成績優秀才色兼備の?」

「…やたら何か言ってるけど…うん、何かうちのクラスの人が見かけたんだって。何か一人の男の人にいっぱい魔法発動して、後ろからお姉さんに止められてたってさ」

「嘘ー!そんなことしそうにないのにねー」

「人は見かけによらないって事じゃない?怖いねー」

「まあ初日にも怖い事してたって聞くし、ホントは怖い子だったのかもね」

 

…え?

そんなはずはない。アリスはそんなことしない。

あのアリスがそんな事するわけがない。

気がついたら、職員室に飛び込んでいた。

 

「あの!!」

 

「!?ああ、バートさん。どうしたの?」

B組の担任の先生がいたけど、ライ先生の姿が見えない。

んー…!こんな時に限ってぇ…!

 

「ライ先生はどこにいますか!?」

 

「うん?ああ、ライ先生は今中等職員室にいるよ」

 

「ありがとうございます!」

 

「あ、ちょ、走っちゃだめだよー!」

お礼を言って頭を下げて、すぐに渡り廊下を走る。なんか言われた気がしたけど一回無視。それどころじゃない。

事情は話してくれないかもしれないけど…それでも、じっとしてるのはできない…!

その途中、

 

「!ライ先生!」

前から、ダンボールをいくつか積んだ台車を押しながらライ先生が歩いてきてた。

 

「おや?バートさん。どうしたのかな?」

 

「あの、アリスの事なんですけど…その、教えてもらえないかもしれないことは分かるんです!でも、どうしても心配で、気になって、それで、」

言い終わる前に、すっ、とライ先生は目線を合わせて私の口元に人差し指を当ててきた。

ちょっと驚いて一瞬黙ると、先生は小さく笑った。

 

「…うん、そうだね…」

あんまり見ることのない先生の黄色い目が心を見てくる気がした。一瞬ママと姿が重なったけど、今はそれどころじゃない。

 

「…ここでは何だね。もう少し静かなところで話そうか」

 

「え、あ、はい…」

そのままライ先生に連れられて、初等職員室の隣にある生徒指導室(空きがなかったらしい)に入った。

まあ座ってよ、と言われて椅子に座るとその前にライ先生も座る。

 

「…で、アリスさんの事だけどね…お姉さんから他の人には言わないでくれ、と言われているんだ」

…やっぱり、か…「でも」…ん?

 

「アリスさんの親友の君になら良い、とも言われてる。でも…ちょっとびっくりしちゃうことかもしれない事なんだ、それでも聞くかい?」

そう言われて、首を縦に降るのに時間はいらなかった。

聞く。聞くに決まってる。

と、ライ先生は少しだけ困ったように眉毛の端っこを下げて小さく息を吐いた。

 

「アリスさんはね、今“忌引”っていって、家族の人が亡くなった時の休みを取ってるんだ。…この間、家族…お父さんとお母さん、お兄さんを亡くしたから。ちょっと前にニュースになってたけれど、詳しくは報道されなかったからね」

はっ、と息が詰まった。

一瞬目の前が真っ暗になって、自分が座ってるのか立ってるのか、ちょっと分からなくなった。

頑張って、先生の声を聞き取る。

 

「その後施設に引き取られたんだけど…どうにも、ショックが強すぎたみたいでね。しばらく休ませる、と彼女のお姉さんから連絡をもらったんだ」

 

「じ、じゃあ、アリスが…人を、こ、殺そうとしたっていうのは…」

それを聞いて、少しだけ先生から動揺の色が見えた。

 

「…何処で聞いたんだか…うん、殺しかけたのは事実だ。まあ、正当防衛ってことになってるし、実際そうなんだけどね。ランク7を相手に一人で圧勝、ちょっと過剰防衛気味で注意位は喰らうかもと思ったけど、それくらいしないと彼女が傷つけられていたかもしれない、って事で許されてるよ」

ランク7…それならランク9のアリスには敵わない。

本気で戦えばこの学年の生徒全員を相手できるかもしれない位強いんだ。専攻もしてないから、全部の魔法も使える。

でも、ホントにアリスが人を殺すために魔法を使うなんて…考えれない。あんなに優しいアリスが、命を奪う魔法を使うわけがない。

何かあったんだ。

 

「アリスが…アリスがどこの施設にいるか分かりますか?」

 

「えー、ちょっとそこまでは分からないなぁ…ごめんね?」

ライ先生は首辺りをかきながら答えた。

そっか…

 

「そう、ですか…分かりました。ありがとうございます」

 

「うん。辛いかもしれないけど…アリスさんがまた学校に来たときは、あまりそこには触れないであげてね。いつも通り仲のいい友達として接してあげるのが、彼女にとって一番安心できるだろうからね」

 

「…分かりました」

 

「うん。よろしくね」

ありがとうございました、って言ってもう一回頭を下げて部屋を出る。

…ちょっとだけ、胸が苦しい。っていうより痛い?…わかんない。

 

ちょっともやもやしたまま教室に戻ったら、妙に騒がしかった。少し見回してみると…アリスがいた。切り替えて、いつもと同じように…!って思ったけど、アリスを見た瞬間、胸が締め付けられるみたいに感じた。感情が、読めなかった。真っ黒で塗りつぶされているような、そんな感じになってた。

 

「よお、()()。遅かったなぁ。ま、人殺しかけたのを考えれば早い方か」

体の大きな男子がアリスの所で何か言ってる。

ふと、一部の人から小さく笑い声が聞こえた。

頭が、熱くなった。違う、アリスはそんな事…!

 

「………」

 

「なんだ、人の言葉も分かんなくなっちまったか?お?」

ガン、と音を立てて机が蹴られた。

むりだった。限界だよ、こんなの…!

 

「…怪物?」

自分でもびっくりした。

こんな低い声、私出たんだ…

 

「…何で…!?」

でも、そんな事言ってる場合じゃない。

…ホントのことは、多分周りに変に言わないほうが良いんだと思う。でも…でも、アリスがそんな風に言われてるのは、許せない。

 

「…アリスの状態が見えないの?何で今こんなに落ち込んでるか分かんないの…!?」

ギリ、と奥歯を擦る。

クラスには、最初から私の事を魔物扱いする人もいた。

はっきり人の感情が見えるようになってから、あからさまに避ける人も出てきた。

でもアリスは、ママの事を知っても、ずっと友達でいてくれるって言ってくれた。

 

「あ?何だよ魔物。…ああ、そうか。化け物と魔物はいつもセットか」

また一部から小さく笑いが起こった。

無理、もう限界…!

 

「っっ…!!水3魔法…ウォーター、スピア!」

右手を振りかぶって魔法を使う。

校則で駄目だって言われてたことだけど、アリスを馬鹿にされるよりはずっとマシ!

 

「うおっと!おいおい魔法使ったぞあいつ!」

「先生呼べ先生!」

一部の人がまた騒ぐ。

目の前が、ちょっとだけにじんで涙が出てくる。

何で泣いてるのかなんて分かんないけど、後から後から出てくる。

そんな、時だった。

 

「……バート」

「あ?」

「アリス…?」

ちょっとだけアリスが顔を上げた。…感情は、読めない。けど、その、悲しそうにしてる顔を見ただけで、また涙が上がって顔が熱くなる。

 

「…泣かないで、大丈夫だから」

大丈夫、?

大丈夫って…何が、何が…

 

「なんにも…大丈夫じゃないよっ!」

思わず机を叩いて、大声を出した。

アリスの目が丸くなる。

 

「全っ然!大丈夫、なんかじゃないよ…」

手をぎゅっと握る。痛い。爪が食い込んでいたい。

カタ、といすを引く音がした。

 

私の前から、気配が消えた。

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