転生TSアリスの魔法譚 作:不審者γ
まあでも話数は追いついたので。
「…あーくそ…」
完全に失態だ…ぜんぜん本調子じゃないのに来るんじゃなかった…
お姉ちゃんがまだ休んでたら?って言ってくれたの半分無視して振り切って来たけど…裏目に出たなぁ…。
ってかバートあれボクの状況知ってたよね?秘密にされてるんじゃなかったの…?
…いや、もうそこは良い。
ちょっと見てられなくて教室出て…どころか校舎抜けちゃったけどどうしよ、これ。
というかバートが怒鳴るのなんか初めて見たし、そもそも何に怒鳴られたか分かんないんだけど…
あーもう、ホントに失態だ。泣かせる気なんかなかったのに…そんでアフターケアも何もせずに出てきちゃったね、ボク。大戦犯じゃん。
「くっそ…」
頭が、やっぱり靄がかかったみたいにうまく働かない…正直、堪えてるんだろうなとは思う。精神年齢云々もそうだけど、バートのお母さんと話した仮説でいけば
そんなのの前で大好きな両親と兄を一遍に亡くしたら…堪えるだろうね、考えるまでもない。
強いて言うならお姉ちゃんが残ってくれたのがまだせめてもの救いか。正直ボクも目の前で人が死ぬのはちょっと
裏手の山の中を歩きながらくしゃくしゃと髪を乱す。駄目だ、本当に思考がマイナス寄りにしか働かない。
「このままじゃ駄目なのはわかってるのに…」
どうすれば良いのかが分からない。
そんな時だ。
「…へ、」
視界が、急に真っ黒になった。
何事かと思ったけど、不意に心が軽くなった…気がした。不思議と、この暗い空間がとても心地良いように感じた。
体温くらいのぬるま湯の中をゆっくりと沈んでいくような、そんな感覚が体中を襲って、意識も、ゆっくりと落ちていった。
《バートside》
急に叫んじゃった。
一番つらいのはアリスのはずなのに、全然考えれてなかった。
とっさにアリスの方を追いかける。姿は見えないけど、アリスならきっと外に出る。
靴箱を見てアリスの靴が無いのを確認、やっぱりだ、一人になろうとしてるだろうから…多分学校の裏の山の中!
魔物討伐の訓練所にもなる場所だから魔物もたまにいるけど…行ける、行くしかない!
山に入って、アリスを探す。いるかどうかも分からないけど、ひたすらに探す。
「アリスー!、アリスー!!」
叫んでみるけど、返事はない。
ちょっとずつ焦りが出てくる。
ほんとにここにいるの?もしこうしてる間に魔物に襲われたら?
そもそも、アリスに、嫌われてたら?
「ッ!」
ブンブンと頭を振る。嫌なことは考えちゃだめ。と、道の先に白と紫の髪が見えた。
アリスだ!
「アリス!」
呼ぶと、ゆっくりとアリスが振り向いた。
…けど、なんか、違う…?
「バート…」
「アリス、ごめん!急に叫んじゃって…」
とりあえず違和感には目をつむって頭を下げて謝る。悪いのは私の方なんだ。びっくりさせちゃっただろうし、許してもら…えるかな?
「…あー…ううん、大丈夫だよ」
ちょっと無理するように笑うアリス。
…なんか変な感じがするのは悲しそうなのに笑ってるから、かな…
「…アリス、大丈夫?やっぱり調子が悪いならまだ休んでたほうが…」
「大丈夫。心配もかけたくないし、ね?」
ちょっとだけ笑うアリスは、やっぱり普段とはちょっと違う気がする。
と、一歩踏み出そうとして…そのままアリスが前のめりに倒れてきた。
「あぶないっ!」
とっさに一歩出て、アリスに抱きついて受け止める。
「大丈夫!?」
「あ…ごめん、ちょっとふらついちゃった…」
…絶対無理してるや。顔色もちょっと悪そうだし…
「辛いなら辛いって言ってよ、友達でしょ?」
「…そうだね。でも、大丈夫だよ」
本当に大丈夫ならずっと体重を預けたままにしないでしょ。
小さく息を吐いた…けど、同時にまた違和感を感じる。
「…アリス?」
「………」
返事がない。ただ見ただけじゃ小さく震えてるようにも見える…けど、私の目には「喜」が映る。
…笑って、る?
「ふふふ…、
「っ!」
耳元でささやくみたいに言われた瞬間、ちょっぴり甘い匂いがして、カク、と足に力が入らなくなる。
腰から下の感覚が消えたみたいに動かせなくなって、そのまま座り込む。でも、痛かったりするわけじゃなくてむしろちょっと気持ちいい…?
なにこれ…っ、
「アリ、ス…いや、誰…!?」
違う、目の前の人はアリスじゃない…!何か違うとは思ってたけど、そもそもアリスじゃなかった…!
「ふふふっ、誰って私はアリスだよ、アリス·セナール」
また甘い匂いが漂ってきて、頭がちょっとボーっとしてくる。
なんか、あつい…?
「ち、がう…」
『もー強情だなぁ、すぐ堕ちるかと思ったのに。思いの外毒の制御って難しいんだなぁ…まあいっか』
急に、雑音みたいな音と一緒にアリスの声が乱れる。
やっぱり…にせ、もの…!それは、私の方に手を向けて…
「おい」
次の瞬間、一気に頭が晴れた。
同時に、バシュ、と音を立ててアリスの体から黒い霧の塊みたいなのが弾き飛ばされた。
「っ!」
「ごめんねバート、ちょっとだけ危なかった。…私の後ろに下がってて」
この言い方と感じ…アリスだ。雰囲気は違うけど、今度こそ本物の…!
《??side》
「この程度で私を乗っ取ろうって?…いい度胸してるね」
本当にだ。
眼の前のモノに目を向けて、右手を向ける。
多分さっきバートに対しては媚毒みたいなのを散布して思考能力を低下させようとしたんだろう。まあ解除すれば消えたし、扱いも下手だ。
精々…ランク5程度かな。私の魔力量なら塵も残さず消せる。
何より、バートに手を出そうとした挙げ句
手加減なんてする必要がない。
『な、ゼ…!?イシきは、完全二落とシたハズ、なノニ…!』
「らしいね。でもね…」
右手の手のひらに魔力が収束する。
コイツの魔物としての特性は知ってる。だからこそ、動きなんか簡単に読める。
「悪いけど、あらかた読めてたから」
「───毒9魔法、ホーネッツオースロート」
六角形の魔法陣から無数の蜂型毒弾幕が展開される。
蜂毒…詳しい名前は
…中々えげつない魔法開発してるね、この子。知識があるからって何でもかんでも作ってると中々大変だよ?
『グ…!?』
「靄が本体じゃないでしょ。その靄の中に実体があるはず」
コイツはシャドウ。
精神干渉系の魔法を使ってくる厄介な魔物で、黒い靄を飛ばして相手を拘束、体を乗っ取って相手を同士討ちさせたりする厄介な魔物。
一般的には靄が本体で、氷魔法とかで靄ごと攻撃して封殺するのがセオリーと思われてるけど、生憎私には相手の手の内がバレてるわけだからそんな面倒な真似はしない。
そして、ここからがコイツの厄介な所。
『ク、そ…!』
…来る。
その瞬間、シャドウが靄を辺りいっぱいに広げ始めた。
コイツは靄を体から切り離すことで自分の幼体みたいなのを作り出すことができる。窮地に立てば自分を増殖しながら逃げる。
…ま、その警戒もしてたわけだから私相手には無意味だけど。
「毒9魔法…オロチ」
緑と紫の混じったマーブルのヘビのようなものを顕現させる。
毒霧に質量持たせるって何考えたんだろうねぇ…そもそも何でそんなのができるんだか。
まあいいや。作ったのは私じゃなくて
「喰らい尽くせ」
その指示一つでオロチは暴れまわる。小さな靄を飲み込みながら逃げようとするシャドウに突っ込んでいって、そのまま…
「っ!」
不味っ、この子が起きようとしてる…ちょっと待って今良いところなのに…、あ……
「日8魔法、バーニングフレア」
…何か聞こえたね…誰か助けに来たのかな。