転生TSアリスの魔法譚 作:不審者γ
ここらへんの話、元々の面影なくしたせいで時間かかってしまいました。
家に帰ると先生からお姉ちゃんに連絡が行ってたみたいで、しこたま怒られました。泣きながら。
はい…ほんとにごめんってば…
それで、強制的に学校を休む羽目に。
行動範囲も限定付けられて裏山と孤児院の敷地内だけということになった。
何で裏山がオーケーかというと、一応孤児院の敷地で監視カメラとかも所々にあったりで何かあったときに対応できるから、だそう。
というわけで孤児院にずっといても日中暇だから裏山を散歩中。
散歩って良いよね。何も考えなくて良いし楽だし。普段からそんなに何か考えてるかと言われると困るけど。
それに、今回は別に目的がないわけじゃない。
……あの声…というかなんというか、まあ仮称するなら裏人格の引き出し?
何と言うべきか、あの声の聞こえている間は魔法のランクが跳ね上がるっぽいんだよね。現にランク10の魔法を使おうとしてたわけだし。
なら、やってみたい。
その時、
「…!何かいる…?」
微かに何かが動く音がした。
さっきも言った通り、ここは孤児院の敷地内。生き物がいないわけじゃないけどいても虫とか。鹿とか猪とかはいない。
もしかすると勝手にポップしてきた魔物の可能性もあるからゆっくり逃げるか…
とか思って少しずつ後退っていた矢先。
「うべっ、」
こけた。木の幹に躓いて。
その瞬間だった。
「っ!!」
ギュン!と何かが飛んできた。ギリギリ視認はできたから避けれたけど、何か、黒い槍みたいなものだった…気がする。いやそれより!
「どこから…!」
魔物の襲撃の可能性を念頭に置いて警戒する。と、近くの岩陰に魔力の反応が。
そこか…と思って遠目から岩陰を覗こうとした…けど、何もいない。でも魔力の反応はずっと出っぱなし。
どこだ…と思っていたその時。
「………!」
一匹の魔物が姿を表した。
岩陰の陰から溶け出るように出現した。
…これが普通の魔物ならそっと離れるのが普通。魔物は基本的に人間に対して敵対的だから。
…………何 で ド ラ ゴ ン が い ん の ?
真っ黒なドラゴンが横たわっていた。体を覆う鱗は木漏れ日を反射すらせず、体毛も光そのものも飲み込もうとするような漆黒の。
いやなんで!?ほんとに何で!?んで今攻撃してきたのこのドラゴン!?…よく避けれたねボク。
っていうかほんとに何でこんな所にドラゴンが…ドラゴンって捨てるところがないって言われるくらい素材とかとしても優秀で、乱獲とかされてたせいで数がもう極端に減っちゃってるはずなんだけど…何でこんな所に?
「……寝てる…?」
一瞬そう思った…けど、寝てるんじゃなかった。
ふと視線を落とすと、黒い水溜まりが広がっていて、今もゆっくりと、持ち主を離れて何処かに逃げようとしていた。
「っ!怪我してる…!?」
反射的にすぐに近寄って、手のひらに黄緑色の魔法を展開する。
死んではいないなら、回復魔法で治せる。
ヒールの魔法陣に色々と付け足して、効果を底上げする、上位互換の回復魔法。
「光7魔法、ハイヒール…!」
その魔法陣で黒いドラゴンを囲って治療に当たる。すると、
「グォ…グアァァァァァ!」
傷が痛むのか、ドラゴンが咆哮をした。けど、その勢いもちょっと弱々しい。まあそれだけでも気迫がすごすぎて身動ぎしそうになるけど…耐えて治療を続ける。
「頑張って…もうちょっと我慢して…絶対治すから…!」
「グルル…」
その時、
『…オい、』
「!」
ふと声がした。
…周りに人なんていない。しかも、聞いたことのない声だしそもそもその声は鼓膜を通って聞こえてない。
頭に言葉が直接叩き込まれているような感覚だ。
ふと前を見ると、真っ黒のドラゴンの金色の目と目があった。
「…あなた?」
『なニを…しテイる?』
間違いない、このドラゴンだ。怪我のせいか思念の言葉…というかこのイントネーションがちょっとおかしいけど。
「治療…!ちょっとでいいからじっとしてて…」
『…回復しタら…お前を喰い殺すかもシれなイゾ?』
じろり、と少し赤にが滲んだ金色の目を向けてくるドラゴン。怖い…怖いは怖いけど…!
「その時はその時、対抗できる力を持ってなかったってだけ…というか、そんな気があればそんなこと言わないと思うけど」
驕りじゃないけど、生物を相手にした時の毒魔法は最強格レベルに強い。ランクが低くても下手すれば死に直結させられるレベルの魔法だ。
生きているなら、ドラゴンでも殺せることは殺せる。
『…クク…ソウか…そうダな。お前は相当変リ者みタいだな…?』
「そうかもね…私自身もあんまり正常とは思ってないしね」
自分の身に何が起こってるのかすらわかってないし。二重人格なのか、はたまた
なぜこんなにランクが高いのか、何故前例のない魔法が優勢魔法として検出されたのか。わからないことのほうが多い。
まあ検証しようとしたところでコレなんだけど。
そんな話をしながら魔法陣にさらに魔力を込める。
魔法陣が自壊しないように加減して、ギリギリを見極めながら魔力を送る。
じわじわと滴っていた黒のインクみたいな血が収まっていって、やがて止まった。
「…グオォォォォォォ!」
と、元気になったドラゴンは首を擡げて空に吠える…うっわ、音量ヤバ…間近で聞いたせいか耳やられそう。
『…助かった。礼を言おう』
「いいよ、こっちが勝手にやっただけだし。多分だけど怪我させたのも人間でしょ?だったら私は同族だし…というか、何でこんなところに?」
ドラゴンがあそこまで負傷するとするなら野生のそこら辺の魔物とは考えづらい。
とすると人間に狩られかけたというのが適正。だけど何でこんなところに…
『ふむ…それが我にも分からぬ。かなりの数の人間に追われておったのだが、魔力を削られ翼を撃たれ、命からがら何とか飛び、至ったのがここであった』
ふむ…と少し唸ってからドラゴンが話してくれたけど、どうやら分からないっぽい。
あれかな、強い魔力に引き寄せられるってやつ。
もしかしたらボクの魔力を目印に飛んできた可能性…も、無くはない。
『ところでだが、そなたが何者か聞いてもよいか?』
と、金色の目を輝かせながらドラゴンが聞いてきた。
目を見つめ返すと少し険しそうな、どこか緊張したような面持ち…な気がした。分かんない。大きさが違いすぎて。
ってか何者か、って…お尋ね者みたい。
「何者か…アリス·セナール。あそこに孤児院があるでしょ?そこに住んでる普通の人間だよ」
『何?』
と、答えた瞬間、驚いたようにドラゴンが目を見開いた。あと威圧飛ばされた。
うお何。
『ニンゲン…人間、か?』
「そう、だけど」
え、なんか変なこと言った?え?
『……ふむ…いや、すまない。あまりに魔力量が凄まじかったものでな、てっきり
同族て。どこからどうみても羽も尻尾も生えてないでしょうに。
と、ズズ、と引きずるように腕を羽の下から這い出させてドラゴンは顎に手を置く。
…え、顎の下にそういう風に手置いて考え事するの全種族共通なの?ドラゴンもするのそれ?
『……そなたからは中々面白い匂いがする。ついて行ってみるのも良いかもしれんな』
「え?ついて行くって何を、」
言いかけて。
シュル、とドラゴンの体が縮んでいって、手のひらに収まるくらいのサイズに縮小。そのままヒュウと飛んで懐の中に入ってきた。
「うぇっ、」
『ふむ…少し狭いな』
「やかましいわっ!じゃなくて、え、どういう事?どういう状況?」
おっと素が出た。
ともかく誤魔化して(誤魔化せてない)上着の下を這いずり回るドラゴンに意識を割く。何してるの…?
『む、ここなら良いか』
と、結局座りが良かったのはローブの下のシャツの胸ポケットらしく。
そこに入って首だけだした。
…え、何この状況。全く入ってる感覚ないのにポケットから首だけ出てるんだけど。
『自己紹介が遅れたな。我は
影龍?それで真っ黒な体…いや待って待って待って。ポケットに入るのは良いけど冷静に自己紹介始めないで。こっちの整理がついてないんだわ、コレが。
「いやごめんどういう状況?」
『む?ふむ…理解が遅いな、要するに今日から我がそなたの軍門に降ってやろうと言っているのだ』
いやだからなんで?
まだ何もしてないんだって。せめてこう…なんかすごい力見せつけられて感心したから…とかならまだ内容薄くても納得できるけど!まだボク何もしてないのよ。ってか軍門に下るって何!
あとナチュラルに煽られたよねこれ。理解が遅いなって…これで即座に対応できる人、相当ハプニング慣れしてるよ。
…自分で言っといてなんだけどハプニング慣れとは。
「う、うーん…その理由を聞きたいんだけど。あとそなたっていうのやめて、違和感がすごいから…アリスでいいから」
『ふむ、そうか…そ…アリスは己がどれだけ強大な力を手にしているか理解しているだろう?だが、恐らくそれは単に魔力量が人並外れている、としか認識しておらんだろう。それだけではないのに』
「え?」
魔力量が人並外れているだけじゃ、ない?
どういう…毒魔法のことを話してるのかな?
とか思考を回して困惑の意思を見せるとため息を付くような声を胸元から出された。
中々失礼ね、この人…このドラゴン?
『やはりか。魔物は基本強い魔力に惹かれる…だが、ただ単に魔力が高ければ魔物が寄ってくるわけではない。…いやまあマーカーにもなっておるから襲いにかかっては来られやすいがな。まあともかく、量と同時に魔力の
魔力の、質。
なんだそりゃ…魔力は魔力じゃないの?魔素から人が扱いやすいように加工されたエネルギー、例えるなら魔素が石油で魔力がガソリン。授業じゃそう習ったけど。
質の差なんてどれくらい不純物が混じるか位のものだと思うけど。
『…まあよい、そのうち気付くだろう。我は少し寝る』
寝んのかい。何なんだこのドラゴン…(2回目)
まあ何やら大事の予感を感じつつ、こうして仲間(?)が一人…一匹?増えた。
これから、とんでもない大騒動に巻き込まれることも全く知らずに。
「そういえば名前とかないの?」
流石に影龍って呼ぶのはちょっとね…それ、ボクのこと“人間”って呼んでるようなものだし。
「影龍としか呼ばれておらんかったぞ。呼ぶのが不便なら名を付けてくれ」
「えぇ…じゃあ、“メア”とか」
「メア…
思いつきで付けた名前だけど…まあ、気に入ってもらえたならそれはそれで何より。