転生TSアリスの魔法譚 作:不審者γ
ええ、私です。
「──それにより、空気中に分散している魔力の元、
らしいよ。
魔法歴史の授業だけど、これが意外と面白い。
…まあ、周りの子にはちょっと眠たい授業っぽいけど…
「…バート」
「…んぅ…」
隣の席にいるバートに小声で呼んで見るけど…うん、ちょっと完全に寝ちゃってるや。まあ、ちょっと難しいよね、眠いのは分かる。
あと…まあ、こういうのはちょっと言わないほうが良いのかも知れないけど、先生の授業の仕方が…ね。たまにいるじゃん、覇王色覇気の持ち主かってくらい生徒を眠らせにかかる先生。おじいちゃんおばあちゃん系の先生は特に多いタイプ。あのタイプの先生なのもあいまって、本当に興味のある子くらいしか起きてられなくて、結果起きてる子のほうが少ないくらいなんだよね…
実際、ボクは元々魔法なんて無い世界で育ってたから興味深々だけど、実際に魔物が襲ってくることなんてそう無いし、元からこの世界の子なら、まあ「知った所で」みたいな立ち位置なわけだ。
「魔素は主に動物、人、物に取り込まれて、それぞれ魔獣、魔人、魔道具となります。どれも魔法を操る物ですが、現在我々人間が扱うことができるのは魔道具のみです。研究はされていますが、未だに魔獣や魔族を使役したという話は聞きません。そして───」
……にしても、人であっても魔人になったらもう人扱いじゃなくなるんだ。
魔人や魔獣になった人や動物に元の生き物としての意識とか本能、習性は残らないって聞いたけど、それでも元人を人権無くなった扱いするの…違和感だなぁ。
まあ、魔獣とか魔人になったら人に対する悪感情が増幅されて敵対的になるらしいけど。
で、問題のこの魔素なんだけど…魔力とはちょっと違うらしくて、まあ言うなら魔素を石油とするなら魔力はガソリンみたいな感じ?
魔素の中から不純物を除いて人の体に順応させたのが魔力らしいんだよね。
…つまるところ…魔素って魔力の元なのよ。
で、魔力を回復する方法って魔素を取り入れてその不要な物を外に掃き出すしか無いわけで。
そう考えると多分、魔力…その魔素の受け入れる量の大きい、ランクの高い人とは魔人とかになりやすいんじゃないかな。だから魔人とか魔獣はより強靭な力を持ちやすい、と考えるとちょっと納得できる。
……あれ、もしかしてボクこれマズかったりする?
いやいやいや、流石に無いよね?流石にランクが多かったら魔素への抵抗力も高かったりそもそも魔素の不純物は完全に除いたものだけが取り入れられてるとかそんな感じになるよね?え、流石にね?
…流石に…ね?
────
「うあぁ、寝てたぁ…」
「おはよう、バート。ぐっすりだったね」
そんな事を頭の中でグルグルと回してたらあっという間に40分過ぎて。
チャイムの音で起きたのか、バートが目をこすりながら唸ってる。
「授業の内容教えて…」
「うん。まあ、放課後にね」
どうせ今日はこれで授業終わりだ。
お姉ちゃんと帰ってたのも2年生までくらいで、今はもう普通に一人だったりバートとだったりで帰ってるし、帰る時間の調節も効いてる。
で、ライ先生が戻ってきて連絡事項を伝えて。
そのまま挨拶をして解散。ここ、掃除の時間無いんだよね。というか、日本だと給食の後に掃除の時間とかあったけど外国とかって掃除の時間が無いっていうよね。
それと同じっぽい。
「アリス!勉強教えてっ!」
で、こうなる。
バートも頭が悪いわけじゃないんだけど、記憶力方面に全振りしてるのか算数とかはダメなんだよね。あと魔法歴史と魔法陣学。魔法陣学は算数使うしね…
「分かった、図書室行こっか」
で、鞄を持って図書室へゴー。
ウィルヘム魔法学校、実は図書室が3つあってね。一つは普通の図書室。まああの静かーな勉強スペース兼ねられてたりする感じのところだね。もう一つは勉強方面にも使える、喋ってもオーケーな図書室。教えてもらったりとか、たまに授業でも使うこともあるところだね。そして最後に、魔法を使っても良い図書室。中学レベルの人たちが魔法陣学の本を借りながら試行錯誤できる所。本とか本棚、机、壁床天井に魔法無効の魔法陣が所狭しと敷き詰められてるらしくて、この学校で唯一魔法を使っても問題ない場所なんだって。かかった手間が想像するだけで恐ろしいんだけど。
で、行くのはまあ察すると思うけど二つ目。
大体中棟の人達とかしかいないけど、その中でボク達はちょっと目立つ。まあ、ボクもバートも平均より小さいのもあると思うよ…おかげで司書さんに顔覚えられたよ。あと周りの先輩方にも。
「お、今日も来たのね、アリスちゃんとバートちゃん」
で、入ると本の整理をしてたのかオレンジの髪の眼鏡の人が話しかけてきた。この人が司書さんのカリナヤさん。
「はい!アリスに教えてもらいに来ました!」
「あっはっは、そりゃ良い。存分に教えてもらうといいよ」
元気に言うバートと笑って答えるカリナヤさん。
何で謎にそんな評価付いてるんですか…
─────
「魔物は魔素から出来てるから、その魔素を使えば宣告無しで魔法が使えるの」
「んー…?でも、それじゃ魔法を使い続けたら魔物も消えちゃうってこと?」
「まあ…というか実際そのままならそうなるんだけど、呼吸したりとか食べ物を食べたりした時に魔素を体に取り込んでるから実際は消えないね」
「なるほど!」
「で、そんなのだから魔王っていう力の強い魔物に集まりやすいんだって。群れを作って、魔王から魔素をもらう代わりにその身を守る、みたいな」
本の整理をしながら私、カリナヤはそんな声に耳を傾ける。
第二図書室の一角で、常連さん二人組が勉強をしてる。
初等部四年生のアリスちゃんとバートちゃん。
入学する前から仲が良かったみたいで、家も近くらしいんだけど…どちらかと言うと姉妹みたいな関係にも見えるね。
ちょっとお転婆気味で底抜けに明るい妹と、それを隣でやんわりと見守るしっかり者の姉。顔は似てないけどそんな関係にも見える。
図書館司書の私だけど、一応教師職でもあるから初等部に寄った時にあの二人もたまに見かけるけど…普段を見ていてもやっぱりその認識になる。
特に、バートちゃんは交友関係がかなり広くて誰とでも仲良くなれる感じの子だけど、アリスちゃんと一緒のときはその時よりテンションが高い。
アリスちゃんは元々そこまで交友関係は広くないっぽくて特定の子と一緒にいる大人しい感じだけどあの二人のときは少しだけ饒舌気味になる。
性格的にもほとんど逆の二人だけど一番の親友、ねぇ。こういうのはやっぱり………
「てぇてぇわぁ…」
「カリナヤさん?」
いけないいけない、声に出てた。
お手伝いの子に怪訝そうに見られて慌てて取り繕う。
だって考えてみてよ、あの空間。あそこだけエフェクト掛かってるよ?キラキラしたピュアっピュアな空間が広がってんのよ。(真顔)
しっかし、バートちゃんはそこまででもないけど、アリスちゃんの方がちょっと気になるのよねぇ…
初等部の四年生といえばまだやんちゃ盛り。若干男子女子の性差も現れ始めてくる時期で手のかかることが多いはずなんだけど、その傾向がゼロ。
まあそういう子もいるんだろうけど、あの子の場合はちょっと違う。何ていうんだろうか…精神が達観してる、っていうのかね?
普通そういう落ち着いてる子って周りに興味がなかったり、そもそもコミュニケーションが苦手だったり、それよりも好きな事があったりするんだけどあの子はそういうわけじゃないっぽい。
コミュニケーションが苦手な感じでもないし、周りへの興味はむしろある方。ただ落ち着き払ってるだけじゃなくて、周りを観察して思考して行動してるみたい。
到底四年生、しかも初等部の子とは思えない。
図書館の本の中にはまあ、ファンタジー系のお話もあるわけなんだけど…転生とかしてない?
してるわけ無いか。そんな魔法があるならそんなのの乗った本とか震え上がる位の値段が付けられて裏ルートで売買されるだろうし、そもそもネット上のシステムに引っかかって捕まるか。
「さて、仕事仕事」
にしても、やっぱり子供は良い。
大人みたいに価値観が濁ってない、純粋な子供の世話をするのも私等の仕事だし。
…流石に言い方が悪いか。