東方キャラを曇らせ隊   作:鉄の掟

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可哀想は可愛い。
異論は受け付けません。


博麗霊夢の曇らせ

 

 

 

 

「あ、来たわね! ○○!」

 

 幻想郷の東の端に建つ博麗神社。

 その縁側に一人で座る少女、博麗霊夢は落ち着きのない様子で足をふらふらと揺らしながら、神社に続く長い石階段の方を見つめていた。

 すると鳥居の下の階段から一人の男の姿が現れ、その姿を見た瞬間、霊夢は縁側から飛び出し○○の方に駆け寄ると、満面の笑みで話しかけた。

 

「随分遅かったじゃない? 私待ちくたびれたんだけどぉ?」

 

「ご、ごめん」

 

「まぁいいわ、さ、早く上がって頂戴」

 

 そう言って霊夢は後ろに振り返り、神社の方へ歩いていく。

 浮き足だった様子の霊夢だがこれには理由がある、今日○○を呼び出したのは、いつも博麗の巫女としてじゃなく一人の女の子として接してくれる○○に、気づけば抱いていた淡い恋心を伝える為だった。

 

 知り合いは妖怪や同性が殆どの霊夢にとって、妖怪に襲われそうになっていた○○を助けた時、助けて貰ったお礼として毎日神社にお賽銭を入れたり、境内の掃除を手伝ってくれたりと、そんな○○に霊夢は次第にうら若き乙女なら誰しもが持つ、恋心を募らせていった。

 

 苦手な料理も○○の為に練習し、その手には複数の絆創膏が貼られていた。

 そうして今日の為に用意した食事や酒を○○に気に入ってもらえるだろうかと、考えながら歩く霊夢だが、ふと○○が一歩も動いてないことに気付く。

 

「? ○○、早く来なさいよ、どうかした?」

 

「……実は言いづらいんだけど、どうしても外せない用事があって」

 

「……は?」

 

 ○○の顔は申し訳なさそうに下を向いている。

 しかし霊夢にとってはそんな事些細な問題だった、今日のことはずっと前から話していたはず、それなのに○○は何を言っているの? 

 

「本当にごめん、また明日来るから、それじゃあ……」

 

「あ! 待ちなさいよ!」

 

 たったそれだけ言い残し、○○は踵を返して階段を降りて行った。

 霊夢は○○の後を追おうとするが、○○が外せない用事と言ったことを思い出し、足を止めて少しばかり考える。

 

「……ま、都合が悪いなら仕方ないかしらね、今日作ったお料理はダメになっちゃうけど……明日また作れば」

 

 そう言って霊夢は今度こそ博麗神社の中へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねぇどれだけ待ってたと思ってるの? ○○」

 

「……」

 

 涙をうっすらと目に浮かべながら霊夢は○○を睨みつけている。

 ○○が霊夢の呼び出しを断ったあの日から、霊夢は健気にも○○の事を待ち続けていた。

 テーブルにはお世辞にも裕福とは言えない暮らしには似合わない豪勢な手作りの食事を並べ、人里で妖怪退治で貯めたお金を使い買った酒を片手に、霊夢の目は毎日鳥居の方を見つめていた。

 

 しかし待てども待てども○○は姿を見せない。

 それどころか、かつては欠かす事なく入れていた賽銭や神社の掃除にも顔を出さず、しかし霊夢にはどうして○○が急にそうなったのかすら分からない。

 理由も告げずに現れなくなった○○に、霊夢は次第に怒りにも似た感情を募らせていった。

 

 ……そうして数日がたったある日。

 ○○は数日前の様に鳥居の下から姿を現した。

 

「……私、ずっと待ってたのよ? なにか……納得する理由はあるんでしょうね……?」

 

 腕を組み、やや威圧的に霊夢は言い放った。

 そんな霊夢を○○はただ見つめ、やがて口を開いた。

 

「理由……か」

 

「! ちょ、ちょっと何してるのよ! あんた……」

 

 そう言いながら○○は、自身の着ている上着を脱ぎ出した。

 突然の行動に顔を赤らめ慌てる霊夢だったが、それは直ぐに驚きの表情へと変わる。

 

「○○、その傷……ど、どうしたの? っていうか誰にやられて……!」

 

 ○○の上半身には、全身に打撲や裂傷の跡があり、一目見れば彼が一体どんな目にあったのか、ありありと伝わる程その傷跡は深く痛々しいものだった。

 

「俺はさ、賽銭を入れたのも掃除を手伝ったのも全て、霊夢に妖怪から助けてもらった恩返しのつもりだった。

 でもさ……霊夢は知らないかもだけど博麗の巫女に恨みを持つ妖怪っていうのは、この幻想郷に沢山居るんだ」

 

「○、○○……?」

 

 霊夢は内心焦っていた。

 頭の良い彼女の事だ、博麗の巫女として自分が妖怪から少なからず恨まれているのは知らない筈がない。

 でも、それと○○の傷に何の関係がある? 恨まれているのは妖怪退治を生業とする私の筈、そう……○○は無関係のはずだ。

 

「俺は……妖怪達に博麗の巫女と知り合いというだけで、この数日妖怪に追い回された……やめてくれって言っても、あいつらは俺の声を聞こうともせず……ただ俺の事を痛め続けたんだ」

 

 霊夢は次第に理解していった。

 妖怪の下劣な思考や醜悪な戦い方、妖怪がどういうものかを誰よりも理解している自分の経験が、受け入れたくない目の前の現実を更に確かなものにしようとしていた。

 

 博麗の巫女、博麗霊夢は強い。

 そして強者には強者が集まる、そんな強者の人生を歩んできた霊夢にとって、○○の様に弱い人間のことを理解するには、余りにも経験が足りなかった。

 

 そうして霊夢は理解する。

 私の所為なのだと、妖怪は弱者を痛ぶる、そんな妖怪が何故○○に手を出す可能性を思い付かなかった? そして○○が苦しんでいる間、私は……一体何を……していた? 

 

「う、嘘よ……○、○○……わ、わたし……」

 

 全てを理解した霊夢は、その場に崩れ落ちる。

 両目からは大粒の涙が溢れ、一つ二つと境内の地面に落ちていく。

 涙を流す資格すらないと頭で必死に思う霊夢だが、そんな気持ちを無視して無情にも霊夢の視界は涙で歪んでいく。

 

「……今日はお別れを言いに来たんだ」

 

「っ! ま、待って○○! お願い……お願いだからそんなこと言わないで……!」

 

 霊夢の視界に何処からか刃物を取り出す○○の姿が映る。

 その瞬間、彼女の心は酷く恐ろしく痛み始めた、何故ならきっとそうさせてしまったのは彼女自身なのだから。

 しかし○○はまだそこにいる、目の前で死の一歩手前にいてくれている。

 

 博麗霊夢は涙を振り払い、走り出す。

 この数日間、彼女は○○が来なくなった不安から、飲まず食わずの毎日を過ごしており、本来体に力は入らない筈。

 それでも彼女は少し痩せて細くなった右腕を必死に○○の方へ伸ばした。

 

「……霊夢、俺は君が憎いよ」

 

「……!! ま、待って! ○○!!」

 

「もし本当に俺の事を申し訳なく思うなら」

 

「だ、だめっ!! やめて○○!!」

 

「なるべく苦しんで死んでほしい」グサッ!! 

 

「あっ……ぅあああぁああぁぁああああ!!!」

 

 

 博麗神社に悲痛な叫びがこだました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後、博麗の巫女が失踪したという噂が人里で流れた。

 そして彼女の最後の姿を見たもの曰く……

 

 ……博麗の巫女はおぞましい何かに成ったと云う……

 

 ……あるゆる苦痛をその身に受けて尚……

 

 ……彼女は不気味に微笑んでいた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




○○は主人公の名前です。
ですが毎話主人公は違うので、お好きな名前を当てはめてお読み下さい。
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