東方キャラを曇らせ隊   作:鉄の掟

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今回は魂魄妖夢ファンの方は閲覧注意でお願いします。


魂魄妖夢の曇らせ

 

 

 

 

 

 

 

 

「っは! やあぁ!」

 

「甘いっ! もっと力を入れて打ち込んで下さい!」

 

「はぁはぁ……ったく無茶言ってくれるぜ、妖夢」

 

 桜が舞い散る日本家屋の庭にて、魂魄妖夢はだらしなく力尽き倒れる○○を見下ろしながら、竹刀を握っていた。

 そうして女である自分に打ちのめされながらも弱音を吐く○○に呆れながらも、腕を貸し○○を起き上がらせた。

 

「自分から稽古をつけるように頼んできたのに……はぁ、これじゃあいつまで経っても上達しませんよ?」

 

「は、ははっ……面目ないよ」

 

「まったく……もぉ、しょうがないですね」

 

 妖夢の手を借り立ち上がった○○は、頭の後ろに手をやり申し訳なさそうに頭を下げる。

 そんな○○を横目で呆れたように見つめる妖夢は、数週間前の事を思い出していた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ? 剣術の稽古を受けたい?」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

 朝の稽古を終え、汗をタオルで拭っていた妖夢は門の前で立っている青年に気づいた。

 そうして話しかけると、どうやら自分の剣の腕前に憧れ、自分の剣を指南して欲しいとやって来たらしい。

 ……正直言って迷惑だと、この時妖夢は思った。

 

 自分もまだまだ未熟の身、人に教える余裕など無い。

 そう思い立つと妖夢は目の前の青年に言い放った、貴方に付き合っている暇はない、はっきり言って迷惑だと……。

 

「そ、それでも……お願いします!」

 

「……え、ええぇぇぇ……??」

 

 妖夢からしたら、キッパリと断ったつもりだった。

 しかし青年は通り過ぎる人目も気にせず、頭を荒い地面に擦り付けると妖夢に土下座でもう一度頼み込んだ。

 

 そんな青年の様子を見て、言葉で言っても帰らない事は明らかだった。

 仕方なく妖夢は青年に一回だけ稽古をつける、もしそれで見込みがなければ次は本当に帰ってもらう、と伝え青年もそれに頷くと、妖夢は青年を普段使う稽古場へと案内した。

 

「では、やりましょうか」

 

「は、はい……えっと……よ、妖夢……さん?」

 

「はい? 何でしょうか」

 

「……あの、それは……?」

 

 稽古場に着いた妖夢は青年にその場で少し待つように伝えると、唐突に歩き始め奥に消えてしまい、数分後戻ってきた妖夢の手には日本の刀が握られていた。

 青年が恐る恐る指を指すそれは竹刀でも木刀でもなく、真剣だった。

 

「……怖じけたんですか?」

 

「い、いやでも……それ真剣ですよね?」

 

「刀の稽古は真剣に取り組まなければなりません、とすれば持つ刀は当然真剣であるべきでしょう」

 

「いや聞いた事ないですってそんなの!?」

 

 自信満々に胸を張りそう言い放つ妖夢。

 しかし、青年の慌てようからも分かる通りそんな話はない。

 青年に帰ってもらう為に妖夢がその場で考え出した嘘である。

 

「……師範の言う事が聞けないのですか? なら帰って貰ってもいいですよ」

 

「うっ……」

 

 ニヤリと笑いながら妖夢は青年を見下すように見つめた。

 それもその筈、この青年は自分より確実に弱い、それに加えて真剣を使った勝負稽古……この人が自分に稽古を付けて貰いたいという気持ちは嬉しいけど、まだまだ私も半人前……人に教えを解くほど優れてないし。

 

「ほらほらー、帰り道はあっちですよー?」

 

 ふふっ、どうやらこのまま大人しく帰ってくれそう……はぁこれでやっと自分の稽古に戻れる……。

 

「……やります」

 

「……へっ? 今何て……」

 

「だからやります、やらして下さい!」

 

 予想もしなかった青年の言葉にしばしキョトンとした顔で見つめていた妖夢は、ハッとしたような顔で刀を見つめ、そのまま鞘から刀を抜いて見せた。

 

「言っときますけど……これ真剣ですからね?」

 

 もしかしたらこの人は私が嘘をついて、本当は刀が真剣だと思っていないかもしれないのでは。

 そう思い付いた妖夢は、鞘から抜いた刀身を青年に見せ、それが紛うことなき真剣であると証明した。

 

「分かってます! それでもお願いします!」

 

「え、ええぇぇぇ?? ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから数週間……彼は私の元に通い続けてる。

 はぁ、私が本気じゃなかったからといって○○に追い詰められ、一本を取られそうになったあの時は少しだけ期待を持ったりもしましたが……いざ稽古を付けてみれば、すぐ弱音は吐くし剣の上達はしないし……はぁしかし一度やると言った以上、ある程度までは面倒を見るのが師匠の役目……役目……。

 

「足が止まっていますよ! 足は常に動かし相手に間合いを詰めさせないようにっ!」

 

「こ、こうかぁ!?」

 

「全っ然出来てないっ!!」バシッ

 

「痛あっ!?」

 

 自分を悩ませる○○にイライラをぶつけるように、文字通り妖夢は○○の腹にフルスイングで竹刀を叩き付ける。

 しかし、いつもなら吹っ飛んで気絶するだけの○○は、向かってくる妖夢の竹刀を自分の持つ竹刀を使い上手く受け止めると、崩した姿勢を素早く直しその場に立ち上がった。

 

 その様子に妖夢の動きが少しばかり止まる。

 その隙を逃すまいと地面を蹴り踏み込んだ、○○の竹刀が眼前に迫り来る。

 

「はっ! くっ!?」

 

「くっそぉ、今のはいけたと思ったのに……」

 

「○、○○さん……今のは……?」

 

「え? あぁいや……毎日毎日散々吹っ飛ばされてたお陰で、妖夢の剣筋は何となく読めるようになったんだ。

 それでさっきのは何となくいつもより雑だったから、ここだって思ってやってみたら……よいしょっと、成功したみたい……かな?」

 

 ○○は竹刀を地面に立て杖代わりにしながら立ち上がる。

 今、○○が受けた攻撃は妖夢の反撃が咄嗟の事だった為、手加減無しの本気だった。

 ○○を驚いた表情で見つめる妖夢は、さっきの反撃もそうだが自分の本気の攻撃を受けて尚、立ち上がれる○○に驚いていた。

 

「……お見事です、○○さん」

 

「い、いやぁそれほどでもぉ……」

 

 純粋に私は○○さんの事を凄いと思った。

 この数週間で打ちのめされ続け、普通なら心を折られても違和感は無い、それ程私は○○さんの稽古を過酷なものにした。

 そうすれば○○さんの方から諦めると言ってくれると思ったから。

 弟子から辞めると言うならば師匠はそれを認めるしか無い……それなのに。

 

 まさか……心折れるどころか私への反撃の隙を伺い、それを逃す事なく打ち込んで来ただなんて……。

 しかも私の本気の打ち込みにも耐えている、この人は……もしかしたら。

 

「……○○さん、ごめんなさい」

 

「え、えぇ? ど、どうしたのいきなり……」

 

 突然頭を下げ謝る妖夢に○○は戸惑いを見せる。

 しかしそんな○○には構う事なく、妖夢は喋り続けた。

 

「今まで私は師範でありながら○○さんの事を蔑ろにしていました、どれだけ教えても上達しない○○さんに対して……早く諦めて欲しいとさえ思っていました」

 

「……え? 嘘……どいひー……」

 

「本来私のような心持ちでは到底師範にはなれません……ですが」

 

 妖夢は顔を上げ○○を見つめると、竹刀を左手に持ち○○へ右手を差し出した。

 

「もし……それでも私を選んでくれるなら、これからは……○○さんの師匠として誇りを持って稽古致します」

 

「……勿論だよ、これからもよろしくお願いします……妖夢師匠」

 

 そうしてお互いがお互いを弟子として師匠として、認め合った二人は固く握手を交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから月日は流れ……○○は強くなった。

 その成長は著しく高く、今では稽古で妖夢から一本を取る事も多くなり、妖夢と○○の剣の腕は最早互角に近いものとなっていた。

 

 剣術や稽古で教えられる事ももう少ない、そろそろ○○は卒業してもいいかもしれない……そんな事を考えながら稽古場でいつものように準備を進めていた妖夢の元に、ある男が忙しなく現れた。

 

「こ、魂魄妖夢さんですね!? 緊急で伝えたい事が……!」

 

「ど、どうしたんですか? というより貴方は……」

 

「私は○○の友人です……! それより今○○が人里の近くの森で……妖怪と戦って」

 

 話をそこまで聞いた私は準備していた稽古の道具を投げ捨てて、自分の刀だけ手に取ると、○○さんのご友人の横を走って行った。

 ご友人の話が本当なら○○さんが妖怪と戦うなんて危険すぎる、最早自殺行為と言ってもいい。

 それは○○さんもよく分かっている筈、それなのに○○さんが戦うということは……何か理由がある筈。

 

「……待ってて下さいっ! 今行きます!」

 

 再度刀を強く握り締め、私は人里の中を駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そうして人里近くの森に着いた時、私は直ぐに○○さんを見つけた。

 

「あっ……○○…さん……?」

 

 ○○さんは血溜まりの上で臓物を曝け出していた。

 腕はおかしな方向に曲がり、首から上はまるで力任せに捻り引かれた様に無くなっていて、その余りにも残酷な現実に私はその場に崩れ落ちた。

 

 

 

 

「あぁ? おいおい美味そうな女が来たじゃねぇか」

 

 そんな私の目の前から○○さんの頭を手に下げ、頭に角を生やした男が歩いて来た。

 こいつが……こいつが○○さんをっ!! 

 

「っ! はああぁぁぁ!!」

 

「あーはいはい、もう飽きたんだわそれ」

 

「くっ……がはぁっ!?」

 

 目の前の男は妖夢の刀を素手で最も容易く受け止めると、そのまま力任せに刀身をへし折り、妖夢の腹に目にも留まらぬ速さで蹴りを入れた。

 その想像を絶する衝撃と痛みに妖夢は後ろに仰け反り、口から胃の内容物を吐き出した。

 蹴られた腹を抑え目に涙を浮かべながら、妖夢は男を睨み付ける。

 

「き、貴様っ……よくも、よくも○○さんをっ!!」

 

「あー? それってこいつの事? いやぁ弱かったぜこいつ」

 

 男はさぞ面白そうに口を開きながら語る。

 

「男の癖に刀なんかに頼ってよぉ、しかもその刀も……ははっ! 全く俺様には効かねぇ始末だ! 弱過ぎて馬鹿にされてる気さえしたぜ」

 

「黙っ……れえぇぇ!! お前が! お前が○○さんを語るなっ!!」

 

「おっと、ムキになるなよ人間、お前この弱ぇ男の知り合いか?」

 

「そうだっ! 私は○○さんの師匠の魂魄妖夢、お前だけは……お前だけは絶対に許さないっ!!」

 

 妖夢は男を睨み殺さんとするかの様に目を見開き、悔しさと後悔と怒りで血が滲む拳を、男に向かって振りかぶる。

 しかしその拳すら妖夢は躱され、妖夢の腹に再び男の蹴りが突き刺さり、骨と肉が押しつぶされ砕ける様な、嫌な音が森に響く。

 

「ぐっ……うぅぅ……っ! ……はぁ……はぁ……」

 

「ほう……お前がこいつの師匠か、通りでクソ弱ぇ訳だ」

 

「っ! あああぁぁぁああぁああ!!!」

 

 気絶してもおかしく無い程痛む体を妖夢は気にもせず、また目の前であざ笑う男に向かって殴り掛かる。

 

「っ! あああぁぁぁ!!」

 

「うるせぇなぁ……少しは静かに死ねないのか、お前といいこの男といい」

 

 男は執拗に妖夢の腹ばかりに攻撃を仕掛ける。

 妖夢は体の中で男が蹴り上げる度、内臓がぐちゃぐちゃになっていく痛みについに耐えかね、大粒の涙を流しながら叫び声を上げた。

 

「きっ……さまっだけは……絶対に……殺す……」

 

「き……さま……だけっ……は……絶対……に……」

 

「…………き……さ……まっ……だ……け……は……」

 

 ドスッ、ドスッ、男は容赦なく妖夢の腹を蹴り上げる。

 その音は次第に何かぐちゃぐちゃしたものを蹴る音に変わり、男が満足したように血と内臓が付いた足を地面に置いた時、横たわる妖夢の腹は同じように側で横たわる○○よりも酷く損傷していた。

 

「あ……っ……○……○……さ……」

 

「おぉ俺とした事が……こんだけやったらもう不味くて食えねぇじゃねぇかよ」

 

 肩を落とし落ち込んだように妖夢を眺める男は、やがて興味を無くしたように、絶望の表情で固まった○○の顔を森に投げ捨てると、どこかへ歩き去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そうして男が去った森に残ったのは……

 

 ……見るも無惨に殺された男と……

 

 ……後悔と怒りと共に嬲り殺された少女の死体だけだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




書き上げた後に、これは果たして曇らせなのだろうかと不安になりました。
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