前世の記憶が戻ったので、シャーレでハッピーエンドを手に入れたい 作:うどんそば
いろいろ話したりして時間つぶしをした私達は、セリカちゃんを見つけたのだろうホシノに、一度帰ったほうがいいんじゃないのー? と助言のもと、シャーレに帰って、ものの数日で積み上がった書類を二人で片して、ほんの少し寝た。
……これもしかして、原作の一人の状態だったら徹夜しないと終わらなかったのでは?
まあ、とにかく寝られたのなら大丈夫。先生もこころなしか少し調子良さそうな顔をしていたので、手伝った甲斐もあったというものだよね。……栄養ドリンクを二人で買い込んだら、ソラちゃんに心配の声を掛けられてしまったのは少し心が痛んだけど、まあこれからもあることだと思うから誤差。
先生はちょっと前に出発した。……というより、一緒に出発はしたんだけど、行く途中のトリニティ自治区の公園で寝ていたレイサの対処のために少し遅れて向かうことになった。
先生は一緒についてこようとしていたけど、流石にこの二人は初対面なのに、許可なく家まで教えるわけにはいかない。
「っは! ここは!?」
「あ、レイサ起きた?」
抱っこして運んでいる最中、レイサが目を開けた。
「え……っと? キタノさん? なんで私はお姫様抱っこされているのですか……?」
「また公園で寝てたから」
「あ、あうう! そ、そういえば、パトロールに疲れて! も、申し訳ないですー!」
「まあいいよいいよ。頑張ってるの知ってるし」
そう言うと、レイサは少し顔を赤くしながら、「ありがとうございます……」と呟いた。
っかー! いつもは元気いっぱいなのに、こうやってしおらしさも見せてくれる。しかもかわいい。最高の親友だ!
「そ、それにしてもですね、いつまで私はこの抱え方されてるのかなー、と。流石に恥ずかしい……」
「だめ。家までこれね」
「え、ええ!?」
レイサは暴れるようにじたばたしだす。危ないので少し力を込めると、やがて抵抗を諦めたのか顔を更に赤くして静かになった。お、皆見てる。そんなに目立つのかな?
レイサの家について、だっこから下ろす、レイサは鍵を取り出して部屋を開けると、招き入れてくれた。
「久しぶりにレイサの家に入ったかも」
「そうですか? まあキタノさんはシャーレに出向になった関係で時間が長く感じてるのかも。そもそも私自身が家に帰ってないから誘えてないのもありますけど……」
「ちゃんと家で寝なきゃだめ。大切な親友だから言ってるんだよ?」
「わ、わかってます。でもついつい……でも、キタノさんがせっかく心配してくれてるんですもんね。ちゃんと帰って寝るようにします」
気恥ずかしそうに笑みを浮かべながら、少し嬉しそうに話した。無理をするのはいいことじゃないから。レイサは好きで自警団の活動をしてるけれども、だからって睡眠をないがしろにするのは肯定できない。それで体を壊したりしたら、私も悲しい。
「じゃ、レイサ、私は用事あるから行くね」
「行ってらっしゃい! あ、そういえば、キタノさんが探していたもの、ブラックマーケットに入荷したそうです。自警団的にはちょっとお薦めはできませんが……まあキタノさんなら行っても大丈夫だと思います!」
探してたもの……ああ、あれか。ちょうどそろそろ必要かと思っていたあれ。
「ありがとね。時間あったら買うよ」
手を振りながら見送ってくれるレイサに振り返して、その家を出た。
●●●
”あ、来たね”
大体お昼時すぎくらいの時間にアビドスに着いて、部室に入ると、セリカちゃん以外が勢ぞろいしていた。
「待ってたよー」
「お腹すきましたよね? 早速行きましょうか!」
「早速って?」
いきなり手を取られ、皆で外に向かっていくので、シロコに聞いてみた。
「柴関ラーメンに行く」
あ、なるほど……そういえば皆でラーメン屋に押しかけるのって、翌日の話だったっけ。つまり、先生は行く途中セリカちゃんに会ったってことか。
ちなみに、柴関ラーメンは私の耳に入ったことがあるくらい有名だった。客が多いわけではないけど、知る人ぞ知る……みたいな。
柴関ラーメンは、少し寂れた街の真ん中にあった。皆で喋りながら来たから余り目立たなかったけども、街自体は気味が悪いほど静か。鳥の声とか、自然の声がやけに大きく聞こえるくらいだ。
そこの中にある、一区画だけ整備が欠かされていないテナント。そこが柴関ラーメンの店舗。
「いらっしゃいませー……って!?」
ドアを開けると、セリカちゃんが驚いたような表情で固まった。
「来ちゃった!」
「あはは……セリカちゃん、頑張ってるね」
”どうも”
セリカちゃんは先生を見つけると、怒った様子で「先生か……!」と呟いた。
「今回は先生は関係ないよー。セリカちゃんがバイトしてるのは知ってたし、このへんでバイトするならここかなーって」
それを聞くと、「ホシノ先輩だったか……」と、ガックシと肩を落とした。
「おう、アビドスの生徒さんたちか? 少し話すのはいいけど、案内してやんな」
奥から例の犬店主が出てくる。この世界だからまあまあ見たことあったけど、本当に犬だ。ゲームのまんま。なんだかちょっと可愛いかもしれない。これで気前もいいんだから凄いなあ……。
「わかってます! 奥の広い席にご案内いたします!」
ボックス席に、奥からホシノ、シロコ。手前の方にアヤネちゃん、ノノミちゃんが座った。近くの席から持ってきた臨時の席に私が座る。最後の先生は……
「ん、私の隣が開いてる」
「私の隣も開いてますよ?」
シロコとノノミちゃんに誘われ、少し迷った様子を見せ、結局私の隣に座った。二人の隣は余り広くないし、まあ普通は開いている私の席に座るのは当たり前だと思うんだけど……シロコが若干羨ましそうな顔を向けてくる。
「ご注文は!」
「私は有名なとんこつラーメンを。ここのとんこつラーメンは驚くほど美味しいらしいね? トリニティでも聞いたことがあって、気になってたんだよね」
私がそう言うと、先生もそれに釣られるように、同じとんこつラーメンを頼んだ。
「うーん、豚骨の話を聞いてたら、久しぶりに頼みたくなったよー。私もとんこつ」
「じゃあ私も」
「わたしもお願いします」
「え、ええ!? 皆ですか? 私もとんこつでお願いします!」
「全員豚骨ですね! 了解いたしました」
注文を取ったセリカちゃんは、奥に戻って店主に伝えに行く。制服が翻ってかわいい。
「それにしても、どうしてここでセリカちゃんはアルバイトしているのでしょうか……?」
「うーん、やっぱり制服じゃない? ここ、制服かわいいもんねー」
皆で色々言いながら予想すると、セリカちゃんが少し顔を赤くして飛んできた。
「そ、そんなんじゃないから!」
「ほんとかなあー?」
ホシノは少し煽り気味に言うと、セリカちゃんは奥に戻ってラーメンの乗ったお盆を持ってくると、それを乱雑にテーブルに置いた。ああ……ちょっとスープこぼれた……
「はい! おまちどうさま! 早く黙って食べて!」
全員の前にラーメンが行き渡り、割り箸を割り、まずはスープを一口。そして麺もすする。……これは美味しい。どれが近いか……そう、前世で言うと、久留米方面に近い気がする。博多方面ほど細くないんだけど、しっかり細い麺に濃厚に炊きだされた豚骨……控えめに言ったとしても絶品だ。
私は隣の先生の肩を少しつついた。
「ねね」
”どうかした?”
「すっごく美味しいね」
”うん。……なんだか少し懐かしい味がする。食べたことある傾向の味なんだよね。それにしても絶品だけど”
「本当にね。……懐かしいね」
具体的には言えないので、先生は不思議そうな顔をしているけど、このなんとも言えない懐かしさと、美味しいものを食べた時の幸せは、共有することでより、大きなものになった。
皆の顔を見ると、一様に笑顔で、美味しそうに食べている。私はこの世界に来てからラーメン屋に行くときはだいたい一人だったんだけど、誰かと来ることの幸せを、久しぶりに感じた気がする。
残りが少なくなってきて、替え玉を食べようかな、と迷いつつも、皆は食べ終わったみたいであることだし、今度の楽しみにしよう。
「あ、先生大人のカードがあるじゃん! 奢ってくれるなんて太っ腹だなあー」
「まさかそのつもりで!?」
”え!?”
会計が近くなってきて、先生がたかられてる。でも、その表情は嫌そうではない。だから……
「だめ」
「え!?」
ノノミちゃんが先生の下から渡そうとしたカードを止める。
「先生もさ、大人だからさ……ほら、ね?」
「……でも……」
「いいんだよ。生徒のためにいるのが私達だって言ったでしょ? それに、もしこれで先生が金欠になっちゃったとしても、私達二人で力を合わせてなんとかするからさ、ね? 大人の男の人には意地を張りたいときだってあるとおもうな」
そう言うと、ノノミちゃんはそのカードをゆっくり戻した。
ストーリーでも払ってたし、大丈夫……だよね? まあ無理なら私が出せばいいしね。
皆が外で待機するなか、私達は会計にいた。先生は普通に大人のカードを使うと、問題なく決済された。少し財布は寂しくなったみたいだけど、やっぱり悲しそうな顔はしていない。どちらかと言うと満足そうな顔だ。先生らしい。
外に出ると、セリカちゃんも一緒に出てきて、帰る私達の後ろから、
「もう二度と来るなー!」
と、ツンデレ特有の捨てぜりふを吐いていた。
文章にオリジナリティ入れる?
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原作重視!これまで通りでいく
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若干オリジナリティ入れる!