前世の記憶が戻ったので、シャーレでハッピーエンドを手に入れたい 作:うどんそば
夜になり、私はラーメン屋の近くにいた。
ドアが開いて、セリカちゃんが出てくる。そうして店主さんに深くお辞儀をして帰路をたどりだした。私はその後ろを追う。
耳を澄ませながらよくよく聞くと、セリカちゃんは先生への愚痴を言いながら、一人なのに賑やかに帰っていた。一人でぷんぷんした様子なのに、道端の物にあたらないのは、彼女の優しさゆえか?
徐々に道は更に広々としたものに変わってきた。昔はきっとこのあたりが中心地だったであろうところ。ここで私は一段階警戒を強めた。
そうしてその中心地に差し掛かった時……ヘルメットを被った不審者が数人現れた。
「私は今、虫の居所が悪いの!」
セリカちゃんは銃を取り出し、その相手に銃弾を放った。ヘルメット団も黙っているわけはない。勿論撃ち返す。
私は物陰から飛び出し、死角から撃とうとしていた奴を撃った。
「キタノ!? なんで!?」
「危なそうだったから助けに入っただけ!」
複数人……では済まないほどの人数。徐々に増えていっている相手は絶望感を感じさせるほどだ。それでも……
「これくらいで止められると思ってるわけないよね?」
余裕だ。これくらい、普通に倒せる。多分だけど、殲滅するよりも、ヒナと演習したほうがきつい。
目に入った敵を、とにかく撃ち抜いていく。バレルが熱くならないように、常に若干連射速度を落としているのだけれど、その御蔭で一発一発使えるのが利点になっている。勿論引き金を引き続ければ連射も可能。
久しぶりにきちんと軽機関銃として、連射の運用をする。リコイルの調整には苦労したけど、今では体にあった跳ね方をするように感じるほど容易に操れるから問題ない。
周囲を一蹴した時、それは現れた。戦車だ。
ドン、という音がなって、セリカちゃんをかばうようにその弾を受ける。その弾は簡単に弾け、中から煙が噴き出した。
「まずい!」
気がついたときにはもう結構吸ってしまっていた。これ、かなり強い!
「キタノ! 大丈夫!? まずい、ヘイローが点滅してる……今あれに当たったら!」
セリカちゃんが何かを叫ぶ。しかし、それを理解することもできないまま、次の激しい衝撃とともに意識が落ちていった。
●●●
キタノが忘れ物をしたと言って、柴関ラーメンに行って、セリカちゃんと帰ってくると出かけてから数時間経つ。
未だに二人は帰ってこず、勿論連絡すら取れていなかった。
「どうしたんだろうね……」
誰とも言わず、重い空気の中で言葉がこだました。
”……迎えに行かない? そうだね……ホシノ。一緒に来てくれないかな”
居ても立ってもいられず、そう提案すると、ホシノもそう思っていたのか、特に異論もなく立ち上がった。
”他の子達は待っててほしい。もしかしたら、ここがまた襲撃されるかもしれないし、入れ替わりで帰ってくるかもしれないから”
全員が頷いたことを確認して、外に出た。
外はしんと静まり返っていた。私とホシノの足音だけが響くくらいだ。いつもなら落ち着いてくるはずのその状況なのに、何故か落ち着かない。胸は早鐘を打って、早く早くと足が進み、気がついたらホシノを置いていってしまっていた。
”ホシノ……ごめん”
「んー……気にしてないよ。それにしてもさ、先生落ち着いてないね」
”……”
「それは、やっぱりあの子がいるから?」
ホシノはこちらを見通すような瞳で見つめる。
あの子……キタノは、初めて見た時、びっくりするくらい不安定に見えた。今でもそれは変わっていない。なにか、想像もできないほど大きなものを抱えていそうな……そんな不安定さが、その笑顔の表情の裏にあるような気がした。
生徒に見えた。大人に見えた。その相反する気持ちが、私を揺さぶった。でも、それと同時に、同類に見えた。安心を感じた。信頼を感じた。
だから……シャーレに入れてほしいと言われた時、まだどうやってすればいいのかもわかっていないのに、即答してしまったんだ。
キタノは生徒だ。トリニティ総合学園一年生。確認を入れると、トップであるはずのティーパーティー三人全員からの信頼も厚い様子。でも、確実に生徒だった。
でも、私は彼女のことを生徒として見られているのだろうかと、たまに思うことがある。
たまに、彼女といると昔を思い返すことがある。それに、私を見通してくれる。それでいて全てを包み込んでくれる。ときには頼ってくれるし、また私が頼らないと怒る。
まるで、親友か、同士。そんなイメージになりつつあった。
キタノはよく、「生徒のためにがんばる」と言う。その中にはまるで自分は入っていないと言いたげだ。でも、私はそれに反論できない。不思議と、しっくり来るからだ。
それに、シャーレの相棒である彼女が、同じ志を持ってくれているという嬉しさのほうが大きいのかもしれないけれど。
ともかく、意外と私はキタノに執着してしまっているのかもしれない。
確かに、生徒がこうやって心配なことがあったら、心配になるだろうし、こうやって探しにも出ると思う。でも、ホシノが言った通り、私は今確実に冷静さを失っていた。
そしてまた別の心配もあった。私はキタノと似た思考をしている。だから……自分の近くで他の生徒が危険になったら、全く迷わず自らの命を捨ててでも助けようとするだろう。それに、たとえそのせいで自分が死んでも何も思わないだろう。その危うさを思うと、また心臓が激しく脈打ち始めた。
「……相当入れ込んでるんだね。なんだかその人間味、私は好きだよ」
”私はキタノだけじゃなくて、生徒を助けるために行くんだよ”
「……でも、そんなに不安そうなのに?」
”私は先生。生徒を守るためにいるんだから。それにキタノもきっとそれを望んでる”
でも、これが答えだ。私は先生。生徒を助けるためにいる。だから、今はキタノを助けに行くんじゃなくて、二人を助けに行くんだ。
「ふーん、強いんだね」
ホシノは目線を前に向けた。
「あ、そろそろ着くよー」
そうして角を曲がってそこに広がっていた戦場の後に、私は思わず駆け出した。
「んー、硝煙の匂い……確実に戦闘があった後だよ」
落ち着いてるように見せて、眉が少しだけ顰められているホシノは、いつになく真剣な表情でその現場を見た。そうして周りを見回して……驚いた表情を見せると、破壊された道の中心に走り、しゃがみこんだ。
”ホシノ?”
「……先生。見ちゃだめ」
コンクリートがめくり上がった場所に、小さな体を大きくして、被さるように、ホシノはしゃがみこんでいる。
「……襲われたので間違いないみたいだね。先生、後ろを向いて」
言われたとおり、後ろを向くと、そっと手元に立派な作りのバッジを手渡された。
少し汚れているところを拭うと、見覚えがあるバッジだ。ティーパーティー関係者のみに手渡されるバッジ。後ろには丁寧に、夜永キタノと彫られている。
制服の時のキタノがコートのつけているバッジは二種類。一つは友達と作ったという可愛らしいバッジ。もう一つがこれだった。
本来はティーパーティー専用のバッジらしいのだが、いつもティーパーティーの誰かしらのもとに向かうので、いちいちチェックを受けるのも煩わしいだろうと、ティーパーティーの関係者であると一目でわかるよう、三人からの入学祝いにプレゼントされたものだと嬉しそうに話していた。
”キタノ……”
「……うん。状況を見る限り、セリカちゃんも襲われたみたいだねー。さらわれちゃった可能性が高いかな」
私はさっきの忠告を無視して、後ろを向いて……そうして膝から崩れ落ちた。
「先生っ! ……だから見ちゃだめっていったのに……」
今ホシノが、セリカちゃんがさらわれたという証拠を見つけた場所……そこより少し離れた場所の、さっきホシノが立っていた場所のあたり。えぐれたコンクリートの内側……そこには飛び散った血がべっとりと残り、凹んだところには、血溜まりが浮いて残っていた。
ショックで立ち上がれず、這ってその近くに寄り、その血溜まりに触れた。ベットリとしたその液体は、冷たい、冷たい。冷たい。
両手で掬うと、月明かりが映って、若干黒く光った。よくそれを見ると、彼女のきれいなほんの少し色の抜けた髪が数本ある。
血がついていることなど気にせず、シッテムの箱を取り出した。
”アロナ……”
「先生……」
”ここの血って、どれくらいある?”
「2Lと少しくらいでしょうか……」
少し地面にしみてしまった分も含めたら、もうちょっと減っているか。
”……アロナ。ここを襲ったのは誰か、今どこにいるか探してくれる?”
「……はい。わかりました。」
そう言い終わった瞬間、ホシノがしゃがみこんでこちらを見てきた。その目は責めているようで、哀れんでいるようで、怒っているようで、同情しているようで……そして、共感しているようでもあった。
「……先生。アヤネちゃんにも、情報収集を頼んだからさ。帰って、二人を取り返しに行こう?」
なんとか立ち上がって、血がついた手で、頬をなぞる。
”……うん。二人を助けに行かなきゃ”
しっかり言ったつもりの声は、自分でも滑稽に思えてくるほど震えて弱々しかった。
先生とキタノ、めっちゃいちゃつくなあ……あれ?
文章にオリジナリティ入れる?
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原作重視!これまで通りでいく
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若干オリジナリティ入れる!