前世の記憶が戻ったので、シャーレでハッピーエンドを手に入れたい   作:うどんそば

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絆ストーリー:かわいい洋服

 珍しくキタノが居ないシャーレのオフィス。一人で黙々と仕事をするが、余り集中できない。いつも居てくれているキタノやユウカ、たまに遊びに来るアリスを始めとする生徒たちが誰も居ないからか。ユウカから叱られ、キタノがそれを見ながら優しく微笑んでいるという日常がどれだけ恵まれていたことか。

 

 カリカリとしたペンの音が鳴る。その音とは正反対に、仕事の効率はひどいものだった。いつもは何でも手伝ってもらっていた弊害だろうか。

 

 やってもやっても終わらない仕事に嫌気が差し、少し休憩と言うことでコーヒーを一杯入れて、座り直したとき、ちょうどモモトークの通知が鳴った。

 

――先生。トリニティの正門前に来て! 学校が早く終わるので一緒にどこか行こうよ

 

――でも、仕事残ってるよ?

 

 キタノからのお誘い。それは甘美な響きをもって私を迷わせるが、仕事を終らせる前に遊びに行くのは少し罪悪感がある。

 

――大丈夫だよ。明日の私達がやればいいんだからさ。どうせあんまり進んでなかったんでしょ?

 

――なら、きっと遊んだほうが効率的にもいいって

 

 ……やっぱり行きたくなってきた。そうだよね。これくらいの書類なら一日あれば終わるし、わざわざ一人のときに終わらせなくても大丈夫だよね。もっと修羅場をくぐってきたわけだし、今回も大丈夫……なはず。

 

――わかった。すぐ行くね

 

 返信をすると、スタンプが帰ってきた。とりあえず向かおう。

 

 

 ●●●

 

 

 トリニティは全学園の中でも遠い方の学園だったりする。まあ、遠い学園のほうが多いんだけども。でも、キタノと会うことが多いからか、来る機会は多い。

 すっかり慣れてしまった道を通って正門前に着くと、キタノはこちらに気がついて駆け寄ってきた。

 

「こんにちは先生。何か早かったね」

 

 ”まあ、ちょっと急いだから”

 

「へー、急いできてくれたんだ。ありがとね……じゃあ、どうする? 私はお散歩でもしながらその辺りにあるお店でも見て回ろうかと思ってたけど」

 

 ”それで大丈夫だよ”

 

「うん。わかった。……じゃあ、先生と私のデートだね?」

 

 ”うん。楽しみだね”

 

 からかっているのが明白なキタノの言い方に、私もそう返すと、面白いのか、キタノは鈴の転がるような声で笑った。耳朶を打つその声に少し安心する。

 

 キタノは制服を着ている。いくつかバッジのついたコートを羽織って。シャーレに来るときは和服かこの格好だ。

 

 ”そういえば、キタノは私服を持ってないの?”

 

「突然どうしたの? 普通に持ってるけど……たまに着ていってるでしょ? あの女袴が私服。何着かの着物を少しずつ組み合わせてきてるから」

 

 ”へえ……あれはかしこまった場でしか着ないのかと思ってたよ”

 

「シャーレはかしこまった場じゃないでしょ……」

 

 少し呆れたように肩をすくめると、キタノは私の手を取って、引っ張るように進んでいく。

 

「じゃあ、先生が私の服を選んでよ。今度着てあげるからさ。ほらほら! 私を先生好みにする機会だよ?」

 

 そう言いながら、この辺りではかなり大きめなショッピングモールの中に入った。

 見回してみると、色々な種類の服屋がたくさんあり、なるほどこれは女の子が皆悩むわけだ、と思う。それぞれの好みがある子はいいけど、これまで服とかを買ったことがないと言っていた生徒たちは服でなにが変わるんだ、みたいな感じだったし……

 

「じゃ、ついたことだし、まずどんなの見に行く?」

 

 キタノの体をよく見てみる。身長は余り大きくなく、余り発達していない体だ。一緒に温泉に入ったとき確か腿までスラッとしていたのを覚えている……って忘れろ忘れろ!

 

 ”じゃあまずは……ここに入ろうか”

 

 近場にあった、フリルなどを積極的に使った服が沢山飾ってある店に入ってみる。少し子供っぽいような気もしたが、キタノなら問題ないだろう。

 

 ”こういうのとか、似合いそうだけど”

 

 手に取ったのはワンピース。白くて、割とふりふりが多いものだ。それでいてごちゃごちゃしておらず、可憐さを強調するようなものになっている。

 

「へえ……じゃあ着てみるね」

 

 試着室に入ったキタノは、すぐにカーテンを開ける。

 

「これ、めっちゃ着やすい。脱いだら後は着るだけだから。和服は手間があるからねー。こういうのもいいかも。どう? 先生?」

 

 思わず少し声が出なくなった。可愛らしさがいつもにも増して凄い。天使のような、そんな感じ。

 少し色の薄い髪は白いワンピースと合っているし、スラッとしたシルエットはフリルで少し少女らしい可憐さを付け足した。まだ一着目であるというのに、これ以上のものはきっと無いだろうな、というような程だ。

 

「ほーん。その反応……なるほど。じゃあこれにしようかな」

 

 ”……私が買うよ”

 

「え? いいよ。流石に自分のだし」

 

 ”いや、私が買う”

 

 不思議と今はキタノに貢ぎたい気分だ。

 

 高級店なので、値札がついているわけではなかったが、店員に聞けば十六万クレジットだった。それを大人のカードで一括で支払う。これくらいなら何の問題もない。何億クレジットか余ってるし。

 

「先生……ありがと!」

 

 キタノは花開くような笑みで、嬉しそうに感謝の言葉をくれた。これで十分元が取れてると思ったから。

 

 

 ●●●

 

 

――今日はありがと。服まで買ってくれて

 

――いいんだよ。私が着て欲しい服だし

 

――あーそういえば……先生顔出てたよ。あの服着た時の私見たとき、「かわいい!」って言う顔してたもん

 

――そんな顔してたの? 少し恥ずかしい

 

――まあまあ。私はうれしかったから。じゃあ、今度はこの服着てデートしようね!

 

 シャーレの居住区、ベッドに横になってスマホを見る。次のキタノとのデート……ちょっと楽しみになってきた。




なに??? もしかして付き合ってる?? っていうような距離感やばい
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