前世の記憶が戻ったので、シャーレでハッピーエンドを手に入れたい   作:うどんそば

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お茶会

 「ナギサ様はすごくて……」

 

 「はいはい」

 

 ヒフミ先輩の話を聞き流しながら、今日お茶会を開いているであろう部屋への道を辿っていく。近づけば近づくほど、廊下ですれ違う人が減っていくのは、ここがそれだけ一般の生徒には関わりのない場所であるということを示している。

 それに、ただでさえ豪華な校舎の中でも、ひときわ豪華な内装になってきているのもあって、用事がないときには入りにくいというのもあるのかもしれない。

 

 しばらくその廊下を歩いて、目的地についた私達の目の前に現れたのは、教室のものより一回りほど大きな扉。今日はここでお茶会をしているはず。

 

 ヒフミ先輩はノックをする。しかし、中から物音はするが、ナギサちゃんは出てこない。勿論返事も返ってきていない。

 

「おかしいですね」

 

 不思議そうな顔でヒフミ先輩は首を傾げる。いつもなら一回のノックでも、ほぼ確実に気がついて返事をくれるか、ドアを開けてくれるかしてくれるから、こう言うことは少ない。

 

「まあ、気づかなかっただけかもしれませんし、もう一回ノックしてみたらどうです?」

 

 そういうと、ヒフミ先輩は「それもそうですね」ともう一度ノックをした。それでも中からの物音はするものの、なんの反応も返ってこなかった。

 

「どうしましょう?」

 

「うーん、まあ、入っても良いんじゃないですか? いることは確かみたいですし」

 

「でも、良いんでしょうか……?」

 

「良いでしょう。私もノックせずに入ったことありますし」

 

「うーん、じゃあ良いんですかね?」

 

 ヒフミ先輩は、私がそう言ったからか、もう入る気満々の顔になっていた。そして……

 

「ナギサ様! 本日はこの前お話していた本を……」

 

 勢いよくヒフミ先輩が開けたドアの向こうには、ミカちゃんに覆いかぶさりながら、無理やり口の中にロールケーキをぶち込んでいるナギサちゃんの姿があった。

 

 一瞬しーんとした空気が張り詰め、ヒフミ先輩は張り付いた笑顔のまま、ゆっくりドアを閉めていった。

 

「ぶっ! あはははは!」

 

 私は吹き出した。そしてヒフミ先輩は相も変わらず張り付いた笑顔で、閉まった扉のその先を向いていた。虚空を見つめるような表情に、更に笑ってしまう。……ず、ずるい……!

 

 どん! 勢いよく扉が開く。そこには澄ました顔のナギサちゃんが居た。

 

「先程は失礼しました。さ、どうぞお入りください」

 

 これは……なかったことにする気か?

 

 ぷふ、と少し笑い声が出て、ナギサちゃんににらまれる。肩をすくめて見せると、「それでよし」というような顔で先導するように中に入っていった。

 

 ちょんちょん、と肩を突くと、ヒフミ先輩は放心状態から戻ってきたのか、はっとした様子でナギサちゃんを追いかけるように中に入っていく。私もその後ろからその広い部屋に入った。

 

 中に居たのはさっき見えた通り、ナギサちゃんとミカちゃんだけ。セイアちゃんは居ないみたいだ。体が弱いらしいし、それが原因かも。入院とかかもしれない。後でモモトークで聞いてみようかな。

 

「さあ、お座りください」

 

 さっき置いてくれたのだろう新しい椅子2つ。そこに腰を下ろすと、ナギサちゃんが紅茶を入れてくれる。

 

「お茶菓子もご自由に。今日はそんな硬い場でもないですし、雑談でもしましょうか」

 

「んー、わかった」

 

「ちなみに、お二人はどのような要件で?」

 

「私はこの前お話していた本を持ってきました!」

 

「私は暇だったから来たよ」

 

 そう言うと、ナギサちゃんは、少し嬉しそうな顔をした。そしてそれを目ざとく見つけたミカちゃんがニヤッとしながら、

 

「あ、ナギちゃん嬉しそうな顔してる。お友達が遊びに来てくれて嬉しいのかな?」

 

 と言った。さっきの仕返しついでかな?

 

「……ミカさん。ちょっと」

 

「でも残念! キタノちゃんは私のお友達でもあるからあげないんだからね?」

 

 テンション高めにそういったミカちゃんは、私にマカロンを一つ向ける。それをパクっと食べると、ミカちゃんはナギサちゃんの方を向いて、見せつけるようににやにやした。どうもナギサちゃんが友達が少ないことをいじっているようだ。……それ、自分にも刺さってるよ? まあ、私はふたりとも友達だと思ってるけど!

 

 しかし、どうもナギサちゃんには効いていない模様。極めて落ち着いて、同じマカロンを取ると、私に向けてきた。またそれを食べると、ちら、とミカちゃんの方を見た。

 

 いや、違う! これちらっと見たわけじゃない! 勝ち誇った顔で見てる! ミカちゃんもすっごく意外そうな顔してるもん!

 

 ヒフミ先輩はといえば、この流れについていけず、ぽかんとした顔でこのやり取りを見ていた。

 

 ちょっと居心地悪くなったので、ごまかすように少し声の調子を上げて、話を変えにかかる。

 

「ね、ナギサちゃん。本は? ヒフミ先輩が持ってきてくれた本!」

 

 そう言うと、ナギサちゃんは少し厳しい顔で、

 

「この学園では先輩で、ティーパーティなのです。外でとやかく言うつもりはありませんが、ここではナギサ様と言ってくださいと言っているでしょう」

 

「ええ? もう癖になっちゃって直そうにも治せないよ」

 

「呼び方くらいいいじゃんね? ナギちゃんもそれくらい許したげなよ」

 

「もう……この学校でも中学の時からここまで関係が深い人も居ませんでしたから、こうやって呼ぶ人も居ないのです。だから、こう呼ばれると少し印象が崩れてしまうというか……。個人的にはすごく嬉しいのですが……」

 

 少し恥ずかしそうにそう言うと、紅茶を一口飲んだ。

 

「さ、じゃあヒフミさんの本の話でもしましょうか」

 

 

 ●●●

 

 

 皆でヒフミ先輩が持ってきた本の話をしたり、どのお菓子が美味しいとかの話をして楽しんでいると、いつのまにか日が傾いていた。

 ティーパーティーも毎日長く話しているわけではない。そろそろ日が落ちるということで解散になり、私達は正門で手を振って帰宅の道についた。

 

 その道中、ぴろんと通知を示したスマホにニュースが届いていた。見出しは、「治安の悪化、歯止め効かず」。

 

 はあ、最近の治安は本当に……そう思いながら顔を上げると、そこにはヘルメットを被った不良共が睨んできていた。

 

「なあ……ちょっとついてきてくれねえか? トリニティの生徒は金になんだよ」

 

 リーダー格の不良が下劣な笑みを浮かべている。

 

「じゃあ力ずくで攫ってみなよ」

 

 あえて煽るように言うと、無表情になったリーダーは、「やれ」とだけ呟いた。それに呼応するように、後ろに控えていた数十人の下っ端が襲いかかってきた。

 

「何人で来たって意味ないのに」

 

 ミニくんを構え、銃口を向ける。さあ、何分で片付くかな?

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