前世の記憶が戻ったので、シャーレでハッピーエンドを手に入れたい 作:うどんそば
おまちしてくださっていた方、申し訳ありませんでした!
泣き止んだホシノを連れて皆のもとに集まると、すでに準備もなんでも済ませて待っていたので、途中でたい焼きを奢って侘びた。皆はいいって言ってくれてたけど、ただ私が奢りたかったと言うだけの事情もあるからゴリ押しさせてもらった。美味しそうに食べてた。やったぜ。
というわけで、今はアビドス砂漠の近く。もとから砂漠であった場所だ。もっとも、今は街の残骸が少しぽつんと寂しそうに朽ちているだけだが。
「そろそろ砂も大変になってきます。銃器などの調子は常に気にかけておいてください」
アヤネちゃんがそう言うと、皆は首を縦に振り、自分の相棒である銃を確認していく。勿論、私も一応確認しておく。もし大変なときにミニ君がないのは心細いから。
「あ、先生も少し見てたほうがいいかも。砂が入らないようにね」
”大丈夫。しっかりホルダーに入れて制服の中に隠してるから”
注意すると、先生は少し誇らしそうに胸元を開けて、ジャケットの内側に忍ばせてあるホルダーを見せてきた
……それ、逆に撃ちにくくはないのかな? まあ、先生のところまでなんて、誰も通すつもりはないけどさ。
「じゃあ、いこっか」
リーダーのホシノがそう言うと、全員で固まって動き始める。
「そう言えば、先生。砂嵐が来たらすぐ私に抱きついてきて」
”え? どうして?”
「そのままだったら死ぬから」
”え?”
「こんな広い砂漠で砂嵐だよ? 砂は肺に溜まっていって、十分な空気も口に入らない。息ができなくなって死ぬよ。特に先生はね。だから、私の服越しに息して。嫌かもだけど我慢ね」
「うへー、そうだね確かに先生には危ないかも。しゃがんでやり過ごそうにも埋もれちゃうだろうし、はぐれたら終わりだしね」
「私に抱きついてくれてもいい。うん。先生なら大丈夫」
少し冗談のようになってしまったが、それは確かなことだ。実際前世世界でも砂漠の砂嵐は避けなければいけないこととして記憶している。
先生は少し頬を引きつらせると、身震いして”もしものときはお願いね……?”と私の裾を握った。かわいい。大人の先生のくせに。
注意喚起も終わったところで、砂漠をどんどん進んでいく。
カンカン照りは体力を消耗させる。先生もそこそこ歩いたら息を荒くしていたので、水筒を渡すと、少し飲んだ。
「あ、あんた達、同じ水筒なの?」
「うん。だって、二つもあったらかさばるし、砂漠を歩く先生に持たせるのはきついでしょ? なくなったらペットポトルで予備もあるし」
そう言うと、私達に少し困惑の表情を向けてくるセリカちゃん。うーん、何かおかしなことしたっけ。そんなことをぼーっと考えながら歩いていると、向こうからドローンがやってきた。
「うーん、この辺りはドローンが多いね」
さすが預言者のお膝元と言ったところか?
「じゃあ、左側は一気に潰すわね!」
「じゃあ、私は真ん中をいきますね」
「じゃあ、私は右側」
私とホシノは残党狩り。こちら側に流れてきたのを始末する役割だ。ノノミちゃんはそのマシンガンで一気に大量の相手ができるのはいいのだが、いかんせん逃しが多いからね。受け皿役が私達。もし強いのがいたとしても、後ろに流してもらえれば問題ないから、というのもある。
「ふう、終わりましたね」
「うーん、まあ細かく来ると、相手するのは楽なんだけど、いかんせんめんどくさいね」
「うん。……あ、オアシス」
敵がいなくなった先に、大きな窪地がある。すでに枯れてしまってはいるが、きっと昔は豊かなオアシスだったのだろう。ホシノが懐かしそうな顔をする。
「懐かしいなあ」
「ホシノ先輩、ここに来たことあるの?」
「うん。前、生徒会のときにさ……ここは、昔、アビドス砂祭りが行われていたオアシスだから。まあ、前回行われたのは十年以上前のことだし、今は枯れちゃってるんだけどね」
無理におどけたように笑うホシノ。過去を思い出しているのだろうか。
「大丈夫だよ。きっといつか、またオアシスとして皆に愛される場所になるはず。アビドスがなくならないうちは、きっとここも残り続けるから」
「……そうだね」
少しホシノが表情を緩めると、アヤネちゃんが大きな声を上げる。
「皆さん! その先に、何やら大きな建造物が!」
「この先? オアシスしか見えないけど……」
「いや、その先です! なにか、大きな、大きな建造物が……!」
皆で、オアシスの先を睨みつける。行ってみるしかない。そんな感じか。
行く途中も、かなりの数のドローンやロボットに襲われた。そして不思議なことに、それはその建物に近づくと、弱いものが混ざり始めた。きっと、カイザーのものも混じっていたのだろう。
そうしてたどり着いたそこは……有刺鉄線が張り巡らされ、高いコンクリートに遮られているため、ぱっと見ではその正体がわからないなにかだった。
「な、なにこれ……?」
「石油ボーリング施設ではなさそうですけど……」
「昔はこんなもの、なかった……」
セリカちゃんが思わず言ってしまうほどのもの。ホシノは少し真面目な顔をしながら中を覗き込む。その瞬間、警報音が鳴り響き、銃弾が発射された。
飛び出してきたのは、オートマタでも、ドローンでもなく、兵士だった。
「歓迎の挨拶なら、受けておいたほうが良さそうだね!」
ホシノが銃を構えると同時に、私達はその軍勢に向かい、陣形を組んだ。